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明細書 :動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体及びこの担体を用いる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3603103号 (P3603103)
公開番号 特開2002-142753 (P2002-142753A)
登録日 平成16年10月8日(2004.10.8)
発行日 平成16年12月22日(2004.12.22)
公開日 平成14年5月21日(2002.5.21)
発明の名称または考案の名称 動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体及びこの担体を用いる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法
国際特許分類 C12M  3/00      
C12N  5/02      
C12M  3/00      
C12R  1:91      
C12N  5/02      
C12R  1:91      
FI C12M 3/00 A
C12N 5/02
C12M 3/00 A
C12R 1:91
C12N 5/02
C12R 1:91
請求項の数または発明の数 10
全頁数 13
出願番号 特願2000-347924 (P2000-347924)
出願日 平成12年11月15日(2000.11.15)
審査請求日 平成12年11月15日(2000.11.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】竹澤 俊明
【氏名】今井 敬
【氏名】高橋 透
【氏名】橋爪 一善
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】田中 晴絵
参考文献・文献 特開2000-189158(JP,A)
特開2001-340076(JP,A)
THERIOGENOLOGY,1985,Vol.24,No.3,p.271-281
調査した分野 C12M 3/00
C12N 5/02
特許請求の範囲 【請求項1】
動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵と共培養して受精卵の接着及び三次元的発育を誘導するための細胞組込型三次元組織再構築体からなる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体であって、前記細胞組込型三次元組織再構築体が、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵由来の三次元の組織を発育するための足場となるものであり、動物(但し、ヒトを除く。)由来の細胞、組織又は器官のいずれかより再構築され、少なくとも一種類以上の細胞を1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分と共に培養することにより得られる、少なくとも一種類以上の細胞と1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分とを含有するものである、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体。
【請求項2】
前記細胞組込型三次元組織再構築体が、さらに1又はそれ以上のメッシュ体と共に培養することにより得られる、さらに1又はそれ以上のメッシュ体を含有するものである、請求項1記載の共培養担体。
【請求項3】
細胞組込型三次元組織再構築体に組込まれている細胞が、受精卵と同種又は異種の動物(但し、ヒトを除く。)由来の細胞であることを特徴とする請求項1又は2記載の共培養担体。
【請求項4】
細胞組込型三次元組織再構築体に組込まれている細胞が、子宮内膜由来の細胞であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の共培養担体。
【請求項5】
細胞組込型三次元組織再構築体に組込まれている細胞が、予めマイトマイシンCで処理されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の共培養担体。
【請求項6】
細胞外マトリックス構成成分が、ゲル化していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の共培養担体。
【請求項7】
細胞外マトリックス構成成分が、コラーゲンゲルである請求項記載の共培養担体。
【請求項8】
メッシュ体が、天然又は合成の糸及び/又はその織成体からなることを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の共培養担体。
【請求項9】
メッシュ体が、生体吸収性であることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の共培養担体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の共培養担体を培養容器に装入して動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵を培養することを特徴とする、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体と、この担体を用いる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法とに関する。さらに詳しくは、本発明は、培養系において動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の接着及び三次元的発育を誘導するための担体であって、細胞組込型三次元組織再構築体からなる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体と、この担体を用いる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法に関するものである。
【0002】
本発明によれば、培養系において受精卵を三次元的に発育させることが可能となり、生体内で着床した受精卵の初期発生胚子との相違点の解明、催奇形性物質の評価、もしくは受精卵より初期発生した胚子の移植等に有用である。
【0003】
【従来の技術】
これまでに、培養系で精子と卵子とを体外受精させて受精卵(接合子)を作製して、さらに受精卵を卵割、桑実胚、胞胚の段階を経て、透明帯が変性消失した後期胞胚の段階まで培養することが可能となり、この卵割から胞胚の段階にある受精卵を子宮に移植して産子を得る補助的生殖技術[ assisted reproductive technology(ART)]が、家畜領域のみならずヒトの不妊医療でも確立されている。
【0004】
また、受精卵(後期胞胚)は、生体内では子宮内膜へ着床して、内細胞塊(胚結節)が三層の胚盤に移行する原腸胚形成過程をはじめ初期胚発生の段階へと発育するが、培養系ではこのような発育を可能にする技術はまだ報告がない。
つまり、これまでの培養系では、受精卵(後期胞胚)を培養し続けても、二次元的に単層細胞を増殖するのみであって、原腸胚や神経胚の形成が起こるような初期胚様構造を有した三次元の構築体は作製できていない。
【0005】
一方、培養細胞とその足場(培養担体)から組織を再構築する組織工学の基盤技術は、ここ10年間で欧米を中心に著しく進歩して、比較的単純な構造の臓器では、基本的な再構築方法が確立された[ Ferber, D., Science 284, 422-425, (1999)]。
【0006】
これまでに、細胞や細胞外マトリックス構成成分を三次元的に組み立てて組織を構築するために、数多くの素材から様々な形状の支持体が開発されてきた。
本発明の発明者らは、支持体として綿製ガーゼなどのメッシュ体を利用した組織工学の基盤技術をすでに確立している(特開平7-298876号公報、特許第3081130号公報)。
【0007】
さらに、本発明者らは、臓器に対して連続的三段階灌流を施すことで、大多数の当該臓器構成細胞を分離することなく、臓器を培養バージョンに改変して器官様構造体(オルガノイド)を再構築する新しい器官工学の方法を既に確立している(特開平11-164684号公報)。
また、子宮内膜の再構築技術に関しては、ヒトの子宮内膜上皮細胞と間質細胞とをコラーゲンゲル内に共培養すると、上皮細胞は子宮腺様構造を再構築することが報告されている[ Akoum, A. ら、J. Reprod. Med., 41, 555-561, (1996)]。
【0008】
さらに、家兎では、再構成基底膜であるマトリゲル上に子宮内膜上皮細胞を培養した後、その上に着床直前の胞胚を置いて共培養した報告があり、共培養後48時間目にトロホブラスト(栄養膜細胞)と上皮細胞の細胞融合が起こるとの記載はある[富永敏朗,日本産婦人科学会雑誌,48,591-603,(1996)]が、胞胚由来の細胞が発育して原腸胚や神経胚の形成が起こるような初期胚様構造を有した三次元の構築体を形成したというような記載はない。
つまり、動物の受精卵を培養して、三次元的な発育を誘導するような培養担体もしくは共培養担体の報告は未だない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、培養系において動物の受精卵の挙動を容易に観察することができ、かつ、受精卵の接着及び三次元的な発育を初めて可能にした、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体を提供することにある。
また、本発明の目的は、当該共培養担体を用いて動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵を培養することにより、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵を三次元的に発育させることが可能となり、生体内で着床した受精卵の初期発生胚子との相違点の解明、催奇形性物質の評価、もしくは受精卵より初期発生した胚子の移植等が可能となる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、培養系において動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の挙動を容易に観察することができ、かつ、受精卵の接着及び三次元的な発育を可能にする動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体並びに培養方法を開発すべく、鋭意検討を重ねた結果、培養担体に予め細胞を組込んだ形の細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体が、受精卵の接着及び三次元的発育を可能とすることを見出し、この知見に基いて本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、請求項1に係る本発明は、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵と共培養して受精卵の接着及び三次元的発育を誘導するための細胞組込型三次元組織再構築体からなる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体であって、前記細胞組込型三次元組織再構築体が、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵由来の三次元の組織を発育するための足場となるものであり、動物(但し、ヒトを除く。)由来の細胞、組織又は器官のいずれかより再構築され、少なくとも一種類以上の細胞を1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分と共に培養することにより得られる、少なくとも一種類以上の細胞と1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分とを含有するものである、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、前記細胞組込型三次元組織再構築体が、さらに1又はそれ以上のメッシュ体と共に培養することにより得られる、さらに1又はそれ以上のメッシュ体を含有するものである、請求項1記載の共培養担体を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、細胞組込型三次元組織再構築体に組込まれている細胞が、受精卵と同種又は異種の動物(但し、ヒトを除く。)由来の細胞であることを特徴とする請求項1又は2記載の共培養担体を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、細胞組込型三次元組織再構築体に組込まれている細胞が、子宮内膜由来の細胞であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の共培養担体を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、細胞組込型三次元組織再構築体に組込まれている細胞が、予めマイトマイシンCで処理されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の共培養担体を提供するものである。
請求項6に係る本発明は、細胞外マトリックス構成成分が、ゲル化していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の共培養担体を提供するものである
請求項7に係る本発明は、細胞外マトリックス構成成分が、コラーゲンゲルである請求項6記載の共培養担体を提供するものである。
請求項8に係る本発明は、メッシュ体が、天然又は合成の糸及び/又はその織成体からなることを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の共培養担体を提供するものである。
請求項9に係る本発明は、メッシュ体が、生体吸収性であることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の共培養担体を提供するものである。
請求項10に係る本発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の共培養担体を培養容器に装入して動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵を培養することを特徴とする、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、請求項1に係る本発明の動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体について説明する。
請求項1に係る本発明の動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体は、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵と共培養して受精卵の接着及び三次元的発育を誘導するための細胞組込型三次元組織再構築体からなる動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の共培養担体であって、前記細胞組込型三次元組織再構築体が、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵由来の三次元の組織を発育するための足場となるものであり、動物(但し、ヒトを除く。)由来の細胞、組織又は器官のいずれかより再構築され、少なくとも一種類以上の細胞を1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分と共に培養することにより得られる、少なくとも一種類以上の細胞と1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分とを含有しているものである。
【0013】
請求項1に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体が対象とする動物の受精卵は、哺乳動物由来の受精卵であってもよいし、或いはそれ以外の動物由来の受精卵であってもよい。但し、動物としてはヒトを除く。
哺乳動物としては、例えばサル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ヒヒ、ブタ、イヌ、モルモット、ラット、マウス等が挙げられる。
【0014】
また、培養に用いる受精卵は、接合子、卵割、桑実胚、胞胚のいずれの段階のものでもよいが、着床のモデルとしては、胞胚の段階まで発育したものが好ましい。
さらに、請求項1に係る本発明の培養系では、受精卵以外のライフサイクルにある卵子、つまり卵胞内卵子や排卵卵子など、もしくは、受精途上卵子などの受精に至るまでの卵細胞を用いてもよい。
【0015】
請求項1に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体は、上述の動物の受精卵と共培養して受精卵の接着及び三次元的発育を誘導するための担体である。
すなわち、請求項1に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体は、受精卵の接着に適しているほか、従来のように受精卵(抱胚)を培養して、二次元的に単層細胞を増殖させるのみではなく、受精卵由来の三次元の構築体を作製することができる。
このような特質は、請求項1に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体が以下の構成をとることに基づく。
【0016】
請求項1に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体は、細胞組込型三次元組織再構築体からなる。
ここで細胞組込型三次元組織再構築体とは、受精卵由来の三次元の組織を発育するための足場となるものをいう。
【0017】
この細胞組込型三次元組織再構築体に組込まれている細胞は、請求項3に記載されているように、受精卵と同種又は異種の動物由来の細胞である。
また、この細胞は、初代培養細胞であっても、株化細胞であっても、又はそれらに外来性遺伝子を導入した細胞であってもよく、さらに、この細胞は1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0018】
特に、受精卵の子宮内膜への着床モデルとして細胞組込型三次元組織再構築体を作製する場合は、この細胞組込型三次元組織再構築体に組込む細胞としては、請求項4に記載したように、子宮内膜由来の細胞が好ましく、特に子宮内膜上皮細胞と子宮内膜間質細胞が好ましい。
同様に、培養する卵子のライフサイクルの生体内環境を反映するように、三次元組織再構築体に組込む細胞として、卵巣由来細胞もしくは卵管由来細胞などを用いてもよい。
【0019】
また、請求項5に記載したように、組込まれる細胞を、予めマイトマイシンCで処理しておくと、組込まれる細胞の分裂能を失わせることができ、受精卵の三次元的な発育をより促進しうる三次元組織再構築体を得ることができることがある。
【0020】
このような細胞組込型三次元組織再構築体は、動物(但し、ヒトを除く。)由来の細胞、組織又は器官のいずれかより再構築され、少なくとも一種類以上の細胞を含有するものである。
すなわち、例えば、上記した如き細胞を培養液により培養することによって得ることができる。
培養液は、細胞を培養する能力を有するものであれば特に制限はないが、例えばダルベッコ改変イーグル(DME)/F12培地(10% 非動化牛胎児血清、10mM HEPES、100単位/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)等が好ましく用いられる。
【0021】
請求項1に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体における細胞組込型三次元組織再構築体は、少なくとも一種類以上の細胞と1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分とを含有しており、請求項2に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体における細胞組込型三次元組織再構築体は、さらにさらに1又はそれ以上のメッシュ体を含有している。これらを含有することによって、培養液の通液性が向上するので、組込まれた細胞を効率よく培養できると共に、組込まれた細胞に張力が与えられるので、受精卵の三次元的な発育をより生体に近い状態で進めることができる。
【0022】
ここで細胞外マトリックス構成成分とは、生体内において細胞を支持し接着する働きをする細胞外マトリックスの構成成分をいい、具体的には例えばコラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン等を挙げることができる。
この細胞外マトリックス構成成分は、細胞組込型三次元組織再構築体に組込む細胞と同種の動物(但し、ヒトを除く。)由来の成分であってもよいし、或いは異種の動物(但し、ヒトを除く。)由来の成分であってもよい。
【0023】
また、この細胞外マトリックス構成成分は、請求項6に記載するように、ゲル化したものであることが好ましい。
例えば、細胞外マトリックス構成成分のゲルとしては、コラーゲンゲルやマトリゲルなどを用いることができる。
【0024】
次に、メッシュ体とは、三次元培養のための空間形状が形成できる程度の開口部を有する繊維状体であり、請求項8に記載するように、天然又は合成の糸及び/又はその織成体からなるものなどが挙げられる。
このメッシュ体としては、例えば、綿、絹等の天然の糸、もしくはナイロン、アクリル、ポリエステル等の合成の糸からなるメッシュ体や、これらの糸の織成体からなるメッシュ体などがある。糸の太さの目安は、径が10~100μm程度であり、複数種の糸を適宜組み合わせて用いることができる。
このメッシュ体として、より具体的には、滅菌ガーゼ タイプIII(ケーパイン、川本繃帯材料(株)製)のような綿ガーゼが挙げられる。
【0025】
メッシュ体の物理的形状については、三次元培養のための空間形状が形成できるようになっていれば特に限定されないので、対象とする細胞やその培養条件等を考慮して適宜選択することができる。
具体的には、メッシュ体の開口部の大きさは10~1000μm、好ましくは20~400μmの範囲である。
また、吸水性の点においては、合成糸及び/又はその織成体よりも、天然糸及び/又はその織成体のほうが大きい。この点を考慮して、組込ませる細胞の特性に見合ったものを選択すべきである。
本発明においては、メッシュ体1枚のみを用いることもできるが、部分的に開口部の大きさ等の物理的形状や性質を変えたメッシュ体を用いることもできるし、開口部の大きさ等の物理的形状や性質の異なる二枚以上のメッシュ体を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0026】
さらに、請求項9に記載するように、メッシュ体は、生体吸収性であるものが好ましい。生体吸収性とは、生体において吸収され消失する性質をいう。生体内で培養担体を吸収させることができるので、移植用等として極めて有用である。
【0027】
請求項1に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体における細胞組込型三次元組織再構築体は、少なくとも一種類以上の細胞と1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分とを含有しており、請求項2に係る本発明の動物の受精卵の共培養担体における細胞組込型三次元組織再構築体は、さらにさらに1又はそれ以上のメッシュ体を含有している。
ここでメッシュ体を含有しない場合には、細胞が組込まれ、受精卵の接着と三次元的発育が可能となるものの、細胞組込型三次元組織再構築体が経時的に収縮凝集しまうため(図1参照)、受精卵の挙動を位相差顕微鏡で観察することが困難となるおそれがある。
これに対して、メッシュ体を含有することにより、細胞組込型三次元組織再構築体の収縮が阻害されて、位相差顕微鏡で受精卵の挙動を良好に観察できるので、好ましい。
【0028】
細胞組込型三次元組織再構築体のサイズと形状は、受精卵の接着及び三次元的な発育を支持することができ、かつ、培養下の受精卵の挙動が位相差顕微鏡などで容易に観察することができればよいので、直径35mmの培養皿に挿入する程度のものであれば、いかなるサイズや形状であってもよい。
【0029】
このような細胞組込型三次元組織再構築体は、前記したように、請求項1に記載した如く、動物(但し、ヒトを除く。)由来の細胞、組織又は器官のいずれかより再構築され、少なくとも一種類以上の細胞と1又はそれ以上の細胞外マトリックス構成成分とを含有するものであって、例えば、少なくとも上記した如き細胞を培養液により培養することによって得ることができる。
細胞組込型三次元組織再構築体の具体的な作製方法としては、例えば温度感受性ポリマー含有培養基質を用いる多細胞性球状凝集塊(スフェロイド)の培養法や細胞外マトリックス構成成分のゲルを用いた培養法、メッシュ体を利用した培養法(特開平7-298876号公報、特許第3081130号公報)、連続的三段階灌流による器官工学的方法(特開平11-164684号公報)等が挙げられる。
【0030】
請求項1に係る本発明のような細胞外マトリックス構成成分を含有する細胞組込型三次元組織再構築体を作製する場合、及び請求項2に係る本発明のような細胞外マトリックス構成成分と1又はそれ以上のメッシュ体を含有する細胞組込型三次元組織再構築体を作製する場合には、上記方法のうち、細胞外マトリックス構成成分のゲルを用いた培養法、メッシュ体を用いた培養法などを利用することができる。
【0031】
例えば、細胞外マトリックス構成成分のゲルを用いた培養法によれば、組込むべき細胞を培養液に懸濁し、ゾル状態の細胞外マトリックス構成成分と混和した後に、この細胞懸濁液を培養皿に播種して培養することで細胞をゲル内に包埋する。細胞が包埋されたゲルを培養皿から離脱させて浮遊培養することにより、細胞組込型三次元組織再構築体を得ることができる。
【0032】
メッシュ体を用いた培養法(特開平7-298876号公報等)によれば、組込むべき細胞を培養液に懸濁し、この細胞懸濁液を、ゾル状態の細胞外マトリックス構成成分と混和した後に、メッシュ体を入れておいた培養皿に播種して培養することで、細胞及びメッシュ体をゲル内に包埋する。このようにして得られるガーゼと共に細胞が包埋されたコラーゲンゲルを、培養皿から離脱させて浮遊培養することにより、細胞組込型三次元組織再構築体を得ることができる。
【0033】
以上述べたような細胞組込型三次元組織再構築体からなる、請求項1~9に係る本発明の共培養担体は、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養に用いることができる。
このような細胞組込型三次元組織再構築体からなる、請求項1~9のいずれかに記載の共培養担体を用いて、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵を培養するのが、請求項10に係る本発明である。
請求項10に係る本発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の共培養担体を培養容器に装入して動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵を培養することを特徴とする、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の培養方法である。
【0034】
すなわち、請求項1~9のいずれかに記載の共培養担体を培養容器に装入し、受精卵を共培養担体の上に置いて、培養液を受精卵及び共培養担体(細胞組込型三次元組織再構築体)に組込まれている細胞に供給しながら培養する。
この培養液としては、細胞組込型三次元組織再構築体を得る際に用いることができるものを使用してもよい。そのような培養液を、1~3日おきに交換する。培養温度は、37.0~39.0℃、培養期間は、1~60日間程度とする。
【0035】
請求項10に係る本発明の培養方法で受精卵を培養すると、培養途中の受精卵の挙動を位相差顕微鏡等で観察することができる(図6-10参照)と共に、受精卵周囲に受精卵由来の細胞が移行し、最終的に受精卵の三次元的な発育が可能となる(図11-14参照)。
【0036】
【実施例】
作製例1(細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体の作製)
ウシ子宮より初代培養した後に数回継代した子宮内膜上皮細胞(以下、上皮細胞という。)と、子宮内膜間質細胞(以下、間質細胞という。)を、それぞれ終濃度が8.8×105/mLと6.8×105/mLとなるように、培養液(10%非動化牛胎児血清、10mM HEPES、100単位/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン含有のDME/F12培地)に懸濁した。
氷上で、この細胞懸濁液と0.5%I型コラーゲン水溶液(CELLGEN I-AC、(株)高研製)とを等量混合した後、直径35mmのポリスチレン製の疎水性培養皿( Falcon #351008)に2.0mLずつ播種して、5%CO2/95%空気存在下の37℃の保湿インキュベータ内で1時間培養して、コラーゲンを完全にゲル化した。
【0037】
この終濃度0.25%コラーゲンゲルの上に、2.0mLの培養液を添加して、さらに1時間培養後に、細胞が包埋されたコラーゲンゲルを培養皿から離脱させて浮遊培養した。その後、培養液は1日おきに交換して7日間培養した。
【0038】
その結果、ゲルは徐々に収縮凝集して、ゲルの直径が培養2日目には22mm、5日目には11mm、7日目には9mmとなった(図1参照)。図1は、培養5日目のガーゼ含有(図の右側)及びガーゼ非含有(図の左側)の細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体の実体写真像図である。
培養5日目のガーゼ非含有ゲルの位相差顕微鏡像図を図2に示す。図2上の10mmは、実際の140μmに相当する。
このゲル収縮のため、図2から明らかなように、培養5日目には、ゲル内の細胞形態を位相差顕微鏡で観察することは困難であった。
【0039】
そこで、培養7日目のゲルをホルマリンで固定して、定法に従いパラフィン切片を作製し、ゲル内部の形態をヘマトキシリン・エオシン染色で観察した。
培養7日目におけるヘマトキシリン・エオシン染色後の切片の様子を図3に示す。図3上の10mmは、実際の35μmに相当する。また、図3と同じ培養7日目におけるヘマトキシリン・エオシン染色後の切片を低倍率で観察したものを図4に示す。図4上の10mmは、実際の70μmに相当する。
【0040】
図3、図4によれば、上皮細胞は、ゲル表面では単層の立方上皮の形態を形成する一方、ゲル内では子宮腺様構造を形成していることが明らかであり、ゲル内に細胞が組込まれていることが確認できた。
このことから、作製例1によれば、細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体を得ることができたことが実証され、ここに受精卵を培養することにより受精卵の子宮内膜への着床モデルとなりうる、細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体が作製されたものと推測される。
【0041】
作製例2(ガーゼを含有する細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体の作製)
直径34mmの円形に切り取った滅菌ガーゼタイプIII(ケーパイン、川本繃帯材料(株)製)を挿入したこと以外は作製例1で用いたのと同様の培養皿( Falcon #351008)に、作製例1と同様に調製した細胞懸濁液を、氷上で、0.5%I型コラーゲン水溶液(CELLGEN I-AC、(株)高研製)と等量混合した後、2.0mLずつ播種して、5%CO2/95%空気存在下の37℃の保湿インキュベータ内で1時間培養して、コラーゲンを完全にゲル化した。
【0042】
この終濃度0.25%コラーゲンゲルの上に2.0mLの培養液を添加して、さらに1時間培養した後に、ガーゼと細胞が包埋されたコラーゲンゲルを培養皿から離脱させて浮遊培養した。その後、培養液は1日おきに交換して7日間培養した。
【0043】
その結果、ゲルの直径は、2日目で32mm、5日目で29mm、7日目でも28mmであり、ガーゼを含有する本作製例2の共培養担体は、作製例1で見られるようなゲルの収縮がなかった。このような現象は、ガーゼによりゲルの収縮が阻害されたためと認められる(図1参照)。
培養7日目のコラーゲンゲルの位相差顕微鏡像図を図5に示す。図5上の10mmは、実際の140μmに相当する。
図5に示される如く、培養7日目でもガーゼによりゲル収縮が阻害されるため、ゲル内の細胞形態は位相差顕微鏡で良好に観察することができた。
【0044】
また、図5によれば、作製例1の場合と同様に、上皮細胞は、ゲル表面では単層の立方上皮の形態を形成する一方、ゲル内では子宮腺様構造を形成していることが推測される。
このことから、本作製例2によれば、受精卵の子宮内膜への着床モデルとなりうる、細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体が作製されたことが明らかである。
【0045】
実施例1(ガーゼを含有する共培養担体上での受精卵の培養)
作製例2で作成した培養7日目のガーゼを含有する細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体の上で、ウシの体外受精後7日目の受精卵(胞胚)を共培養した。培養液は1日おきに交換して12日間共培養した。
【0046】
その受精卵の挙動を、位相差顕微鏡で観察し続けた。図6-9は、それぞれ、ガーゼを含有する共培養担体上で受精卵を共培養後1,2,6,12日目の位相差顕微鏡像図を示す。各図上の10mmは、実際の140μmに相当する。また、図9と同じく培養担体上で受精卵を共培養後12日目の位相差顕微鏡像図(高倍率)を図10に示す。図10上の10mmは、実際の70μmに相当する。
【0047】
その結果、受精卵の共培養後1,2日目は、受精卵が共培養担体とがまだ接着していないが(図6,7参照)、受精卵の共培養後6日目には受精卵の共培養担体への接着が確認でき(図8参照)、また、共培養後12日目には受精卵周囲に受精卵由来と考えられる細胞の移行像が確認できた(図9,10参照)。
【0048】
そこで、共培養後12日目の受精卵が接着している共培養担体をホルマリンで固定して、定法に従い光顕用樹脂切片を作製し、共培養担体内部の形態を、ヘマトキシリン・エオシン染色で観察した。
受精卵を12日間共培養した共培養担体のヘマトキシリン・エオシン染色切片の光学顕微鏡像図を図11,図12に示す。図11,図12上の10mmは、それぞれ実際の35μm,70μmに相当する。
また、共培養担体の別の部位についての同様の光学顕微鏡像図を図13,図14に示す。図13,図14上の10mmは、それぞれ実際の35μm,70μmに相当する。
【0049】
図11—14によれば、受精卵を培養することにより、単に二次元的に単層細胞が増殖するのみではなく、受精卵が発育したと考えられる三次元構築体の形成が確認できた。
以上より、本発明の共培養担体上で受精卵を培養すると、受精卵の挙動が位相差顕微鏡により容易に観察できると共に、受精卵の接着及び三次元的な発育が可能であることが実証された。
【0050】
もちろん、この発明は、以上の例によって何ら限定されるものではない。培養対象となる卵子のライフサイクル状況、培養液組成、培養条件はもとより、細胞組込型三次元組織再構築体の作製に用いる細胞や、細胞外マトリックス構成成分及び/又はメッシュ体の種類などについても、様々な態様が可能であることは、多言を要しない。
【0051】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明によれば、細胞組込型三次元組織再構築体からなる受精卵の共培養担体が提供され、その結果、培養系において動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵の挙動を容易に観察することができ、かつ、受精卵の接着及び三次元的な発育が初めて可能となる。
また、前記共培養担体を用いる、請求項10に係る本発明の培養方法によれば、動物(但し、ヒトを除く。)の受精卵を三次元的に発育させることが可能となり、生体内で着床した受精卵の初期発生胚子との相違点の解明、催奇形性物質の評価、もしくは受精卵より初期発生した胚子の移植等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】培養5日目のガーゼ含有及びガーゼ非含有の細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体の実体写真像図である。
【図2】培養5日目のガーゼ非含有の細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体の位相差顕微鏡像図である。
【図3】培養7日目のガーゼ非含有の細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体のヘマトキシリン・エオシン染色切片の光学顕微鏡像図である。
【図4】培養7日目のガーゼ非含有の細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体のヘマトキシリン・エオシン染色切片の光学顕微鏡像図(低倍率)である。
【図5】培養7日目のガーゼ含有の細胞組込型三次元組織再構築体からなる共培養担体の位相差顕微鏡像図である。
【図6】ガーゼ含有の共培養担体上で受精卵を共培養後1日目の位相差顕微鏡像図を示す。
【図7】ガーゼ含有の共培養担体上で受精卵を共培養後2日目の位相差顕微鏡像図を示す。
【図8】ガーゼ含有の共培養担体上で受精卵を共培養後6日目の位相差顕微鏡像図を示す。
【図9】ガーゼ含有の共培養担体上で受精卵を共培養後12日目の位相差顕微鏡像図を示す。
【図10】ガーゼ含有の共培養担体上で受精卵を共培養後12日目の位相差顕微鏡像図(高倍率)を示す。
【図11】受精卵を12日間共培養した共培養担体のヘマトキシリン・エオシン染色切片の光学顕微鏡像図(高倍率)である。
【図12】受精卵を12日間共培養した共培養担体のヘマトキシリン・エオシン染色切片の光学顕微鏡像図(低倍率)である。
【図13】受精卵を12日間共培養した共培養担体の別の部位についてのヘマトキシリン・エオシン染色切片の光学顕微鏡像図(高倍率)である。
【図14】受精卵を12日間共培養した共培養担体の別の部位についてのヘマトキシリン・エオシン染色切片の光学顕微鏡像図(低倍率)である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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