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明細書 :弱毒鶏貧血ウイルス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3198304号 (P3198304)
公開番号 特開2001-017178 (P2001-017178A)
登録日 平成13年6月15日(2001.6.15)
発行日 平成13年8月13日(2001.8.13)
公開日 平成13年1月23日(2001.1.23)
発明の名称または考案の名称 弱毒鶏貧血ウイルス
国際特許分類 C12N 15/09      
A61K 39/12      
A61P 31/12      
A61P 31/20      
C12N  7/00      
FI C12N 15/00 ZNAA
A61K 39/12
A61P 31/12
A61P 31/20
C12N 7/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願平11-190282 (P1999-190282)
出願日 平成11年7月5日(1999.7.5)
審査請求日 平成11年7月5日(1999.7.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591111248
【氏名又は名称】農林水産省家畜衛生試験場長
発明者または考案者 【氏名】山口 成夫
【氏名】今田 忠男
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】本間 夏子
参考文献・文献 鶏病研究会報,Vol.32,No.2(1996)p.90-97
調査した分野 C12N 15/00 - 15/90
C12N 7/00 - 7/08
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)または(b)のDNAを有する弱毒鶏貧血ウイルス。
(a) 配列番号2のアミノ酸配列をコードするDNA、
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAであって、配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸がヒスチジンであるアミノ酸配列をコードし、かつ病原性に関与しているDNA。

【請求項2】
以下の工程(a)~(c):
(a) 強毒鶏貧血ウイルスのゲノムDNAをクローニングする工程、
(b) 配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸をコードするゲノムDNA上の領域を、グルタミンをコードする配列から、ヒスチジンをコードする配列に改変する工程、
(c) 改変したゲノムDNAを細胞に導入する工程、
よりなる、請求項1記載の弱毒鶏貧血ウイルスの作出方法。

【請求項3】
請求項1記載の弱毒鶏貧血ウイルスを有効成分として含有するワクチン。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、鶏貧血ウイルス(chicken anemia virus:CAV)の病原性関連遺伝子部位を改変することにより作出した弱毒鶏貧血ウイルス、その作出方法、および該病原性関連遺伝子部位を含む塩基配列を病原性マーカーとして使用する鶏貧血ウイルスの病原性判定方法、ならびに弱毒クローンのDNAまたは弱毒鶏貧血ウイルスを有効成分として含有するワクチンに関する。

【02】

【従来の技術】鶏貧血ウイルスは鶏の若齢雛に対してのみ貧血、死亡、発育不良等の病原性を示すDNAウイルス(ゲノムDNAの完全長は約2.3kbである)であり、1979年に湯浅ら(Yuasa ら、1979 Avian Dis. 23 366-385)によって世界で初めてその存在が確認され、その後現在までにアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアおよびアジアの各国においてもその存在が確認されている。

【03】
従来、鶏貧血ウイルスによる疾病を予防する方法としては、種鶏に生ワクチンを接種する方法がとられてきた。ところが、これらの生ワクチンは若齢雛に対して十分に弱毒性であるとはいえない。このため、ワクチン接種により却って若齢雛が鶏貧血ウイルスに感染して発病し、養鶏場の汚染を招く場合がある。そこで、若齢雛に対しても病原性をもたない弱毒鶏貧血ウイルス株が望まれている。

【04】
しかしながら、鶏貧血ウイルスは in vitro では浮遊培養細胞でのみ増殖させることが可能であり、プラック法等を用いての均一な遺伝子構造を有するウイルス液を作製することが困難であるため、現在までに明らかな弱毒ウイルス株は分離されていない。また、培養細胞中で高継代(173代)することにより弱毒化したとの報告はある(Toodら、1995 Avian Pathol. 24 171-187)が、弱毒化に関連した遺伝子部位は特定されていない(Toodら、1997 J. Virol. 71 8326-8367)。

【05】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、鶏貧血ウイルスの病原性に関連する遺伝子部位を特定することによりその遺伝子構造を有する弱毒鶏貧血ウイルスを作出し、さらにこの病原性関連遺伝子部位の構造を利用して鶏貧血ウイルスの病原性を判定する技術を提供することを目的とする。また本発明は、本発明の弱毒鶏貧血ウイルスを有効成分として含有するワクチンを提供する。

【06】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、鶏貧血ウイルスの完全長ゲノムDNAを挿入した感染性クローンを作製し、感染性クローンの遺伝子構造と該クローン由来ウイルスの病原性とを比較することにより、病原性関連遺伝子を特定するに至った。本発明はこの知見に基づいて完成されたものである。

【07】
すなわち、本発明は、以下の(a)または(b)のDNAを有する弱毒鶏貧血ウイルスである。
(a) 配列番号2のアミノ酸配列をコードするDNA、(b) 配列番号2のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAであって、配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸がヒスチジンであるアミノ酸配列をコードするDNA。

【08】
また、本発明は、以下の工程(a)~(c):
(a) 強毒鶏貧血ウイルスのゲノムDNAをクローニングする工程、(b) 配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸をコードするゲノムDNA上の領域を、グルタミンをコードする配列から、ヒスチジンをコードする配列に改変する工程、(c) 改変したゲノムDNAを細胞に導入する工程、よりなる、弱毒鶏貧血ウイルスの作出方法である。

【09】
さらに本発明は、以下の工程(a)~(c):
(a) 判定対象とする鶏貧血ウイルスのゲノムDNAをクローニングする工程、(b) 配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸をコードするゲノムDNA上の領域の塩基配列を決定する工程、(c) 決定した塩基配列から、判定対象とするウイルスが弱毒性か強毒性かを判定する工程、よりなる、鶏貧血ウイルスの病原性判定方法である。

【10】
また、本発明は、鶏貧血ウイルスの病原性関連遺伝子部位にハイブリダイズするプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」という)によって増幅されるDNA断片の有無により、判定対象とするウイルスが弱毒性か強毒性かを判定する、鶏貧血ウイルスの病原性判定方法である。

【11】
さらに本発明は、弱毒クローンのDNAまたは弱毒鶏貧血ウイルスを有効成分として含有するワクチンである。

【12】

【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。本明細書中の、「アミノ酸の欠失、置換もしくは付加」は、出願前周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質は、Molecular Cloning, A laboratory manual,第二版〔Sambrook,Fritsch,Maniatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988〕、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad.Sci., USA, 79,6409(1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci USA,82, 488 (1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。

【13】
本発明の弱毒鶏貧血ウイルスは、天然に存在するものであっても、遺伝子組換え技術等により人為的に弱毒化したものであってもよい。

【14】
本発明の弱毒鶏貧血ウイルスは、例えば、以下の工程(a)~(c):
(a) 強毒鶏貧血ウイルスのゲノムDNAをクローニングする工程、(b) 配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸をコードするゲノムDNA上の領域を、グルタミンをコードする配列から、ヒスチジンをコードする配列に改変する工程、(c) 改変したゲノムDNAを細胞に導入する工程、を経て作出することができる。

【15】
以下に各行程を説明する。
工程(a):鶏貧血ウイルスゲノムDNAのクローニン
鶏貧血ウイルス感染MSB1細胞から公知の方法(Hirtら., J. Mol. Biol., 36,365-369, 1967)によりウイルスゲノムDNAを抽出し、該DNAを、公知の方法、例えば、ユニークな制限酵素で切断したDNA断片をクローニングする方法、あるいは市販のキットを使用してベクターに組み込み、得られたクローニングベクターを宿主細胞に導入することにより、鶏貧血ウイルスDNAクローンを含むライブラリーを得る。

【16】
上記において、ゲノムDNAを切断する制限酵素としては、限定するものではないが、例えばPstI、XbaI、BamHI、SacI、SacII、EcoRI等をあげることができる。

【17】
上記において、宿主細胞として、Escherichia属に属する微生物、例えば大腸菌(Escherichia coli)をあげることができる。

【18】
上記宿主細胞を形質転換するためのクローニングベクターとしては、宿主細胞中で自律複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる、具体的には、pUC(TOYOBO)、pBluescript(TOYOBO)、pGEM(Promega)、M13(TOYOBO)、pBR322(TOYOBO)等をあげることができる。

【19】
鶏貧血ウイルス遺伝子が挿入されたクローンの選択は、例えば市販のDNA標識及び検出キット(Boehringer Mannheim社)を用いたコロニーハイブリダイゼーション法で検出できる。該方法によって検出されたコロニーを培養し、プラスミドを精製した後、鶏貧血ウイルスの完全長ゲノムDNAである約2.3kbのフラグメントが挿入されていることを電気泳動で確認することにより、鶏貧血ウイルス遺伝子が挿入されたクローンが得られる。

【20】
工程(b):病原性関連遺伝子部位の改変
上記の工程(a)でクローニングされた強毒性DNAの病原性関連遺伝子部位(配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸をコードする部位)を、部位特異的変異誘発法(Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82,488-492, 1985)によりグルタミンをコードする配列からヒスチジンをコードする配列に改変することにより、弱毒鶏貧血ウイルス生成用の感染性クローンを作製する。あるいは、上記工程(a)でクローニングされた強毒性DNAの病原性関連遺伝子部位を含むDNA断片を、例えば、XbaI及びNcoIの制限酵素で切り出し、弱毒性クローンの相当するDNA断片と置換することにより、弱毒鶏貧血ウイルス生成用の感染性クローンを作製することもできる。

【21】
工程(c):ゲノムDNAの細胞への導入
上記で改変したゲノムDNAをクローニングに用いた制限酵素で切断し、自己連結させることにより環状DNAを作製する。作製した環状DNAを、市販のDNAの細胞導入キット(例えばAmersham Pharmacia Biotech社, CellPhect Transfection Kit)を用いてMSB1細胞に導入することにより、弱毒鶏貧血ウイルスを作出する。

【22】
また、上記のようにして改変した病原性関連遺伝子部位を利用して、鶏貧血ウイルスの病原性を判定することができる。鶏貧血ウイルスの病原性の判定は、例えば、以下の工程(a)~(c):
(a) 判定対象とする鶏貧血ウイルスのゲノムDNAをクローニングする工程、(b) 配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸をコードするゲノムDNA上の領域の塩基配列を決定する工程、(c) 決定した塩基配列から、判定対象とするウイルスが弱毒性か強毒性かを判定する工程、により実施することができる。

【23】
以下に各工程を説明する。
工程(a):鶏貧血ウイルスのゲノムDNAのクローニング
上記工程(a)と同様にして、病原性が未知である鶏貧血ウイルスのゲノムDNAをクローニングする。

【24】
工程(b):鶏貧血ウイルスの病原性関連遺伝子部位の塩基配列の決定
工程(a)で得られた鶏貧血ウイルスのゲノムDNAクローンの病原性関連遺伝子部位について、公知の方法、例えばSanger法により、合成プライマー(5'-GACCATCACCGACAGCTACATG-3':配列番号3)を用いて塩基配列を決定する。

【25】
工程(c):鶏貧血ウイルスの病原性の判
工程(b)で決定した配列がヒスチジンをコードしていれば、対象とした鶏貧血ウイルスは弱毒ウイルスであると判定され、前記配列がグルタミンをコードしていれば強毒ウイルスであると判定される。

【26】
また、鶏貧血ウイルスの病原性関連遺伝子部位にハイブリダイズするプライマーを用いたPCRによって増幅されるDNA断片の有無を調べることにより、鶏貧血ウイルスの病原性を判定することもできる。

【27】
鶏貧血ウイルスの病原性関連遺伝子部位を含むDNA断片を増幅することのできるプライマーとしては、配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列の一部と対応し、かつ配列番号2のアミノ酸番号394に相当するアミノ酸をコードする塩基配列を含むDNA断片を増幅することのできるオリゴヌクレオチドであればよく、制限するものではないが、アンチセンスプライマーとしては、例えば、5'-TGTAGCTGTGCCGAACTTGTAG- 3'(配列番号4)を挙げることができる。

【28】
PCRの反応条件は、通常の反応と同様のもので良いが、例えば、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間からなる反応工程を1サイクルとして15サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件をあげることができる。

【29】
また、本発明の弱毒クローンのDNAまたは弱毒鶏貧血ウイルスは、鶏貧血ウイルス感染症に対するワクチンとして用いることができる。本発明の弱毒クローンのDNAを使用する場合には、鶏1羽あたり、例えば約200 ngの該DNAを直接筋肉内に注射することにより接種する。本発明の弱毒鶏貧血ウイルスを使用する場合には、鶏1羽あたり、例えば、103.0 ~106.0 TCID50の該ウイルスを筋肉内に注射することにより接種する。鶏貧血ウイルスの完全長ゲノムDNAをタンデムに連結したクローンを細胞にトランスフェクトして感染性ウイルスを回収する技術は公知である(Todd,Dら、Arch.Virol.141,1523-1534,1996)。しかし、クローンDNAを直接鶏に接種した場合にも感染性ウイルスができ、鶏がウイルスに感染することは報告されていない。

【30】

【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕鶏貧血ウイルスの病原性に関連する遺伝子部位の改変
鶏貧血ウイルスゲノムDNAのクローニング
公知の方法(Yuasa., Nat. Inst.Anim. Health Q., 23, 13-20, 1983)用いて、鶏貧血ウイルス野外分離株(AH9410)(高木ら、1996、鶏病研報、32 90-96)をMSB1細胞に感染させて増殖させた。感染MSB1細胞から、鶏貧血ウイルスゲノムDNAを制限酵素PstIで切断して線状化する。 線状化したDNAを、Ligation Pack(ニッポンジーン)を使用してクローニングベクター(pBluescript)に連結した後、大腸菌(DH5α)に導入することにより、鶏貧血ウイルスDNAクローンを含むライブラリーを得た。得られたライブラリーから、Dig-Labeling and Detection Kit(Boehringer Mannheim社)を使用してコロニーハイブリダイゼーション法により、鶏貧血ウイルスDNAが挿入されたクローンを選択した。

【31】
感染性クローン由来ウイルスの病原性試験
挿入クローンDNAを制限酵素PstIで切断し、ライゲーションして自己連結させることにより、環状DNAを作製した。さらに、該環状DNAを市販の細胞導入キット(Amersham Pharmacia Biotech社, CellPhect Transfection Kit)を用いて再びMSB1細胞に導入することにより、感染性クローン由来ウイルスを作出した。得られた6株の感染性クローン由来ウイルス(#140、#363、#364、#368、#369、#370)各106.2TCID50/雛を1日齢の改変病原体不在(SPF)鶏雛に筋肉内注射して接種し、その後21日間にわたり、赤血球容積率(%)および死亡率(%)(死亡数(羽)/試験数(羽))を測定して病原性を判定したところ、3株(#364、#368、#370)が強毒で、3株(#140、#363、#369)が弱毒であった。結果を下記表1に示す。

【32】

【表1】
JP0003198304B2_000002t.gif【0033】感染性クローン全塩基配列の遺伝子構造解析による、鶏貧血ウイルスの病原性に関連する遺伝子部位の推定
6株の感染性クローンDNA全領域について、ABI社のDye terminator CycleSequencing Kit を用いたSanger法により塩基配列を決定し、相互に比較したところ、VP1タンパク質コード領域の3個所のみにおいて変異が検出された(各塩基配列がコードするアミノ酸配列を併せて図1に示す)。それらの変異部位を含むコドンがコードする3個のアミノ酸(VP1-141、VP1-394、 VP1-444:表1中に併せて示す)のうち、VP1タンパク質の394番目のアミノ酸変異(VP1-394)が病原性の型に一致しており、このアミノ酸が病原性に関連していることが推定された。

【34】
病原性関連遺伝子部位の改変
次に、VP1タンパク質の394番目のアミノ酸変異が病原性に関連しているかどうかを証明する目的で、この部位のアミノ酸をコードする塩基のみが異なる以外は同一の塩基配列を有する2組のクローンを作製し、その病原性を比較した。
(i) VP1タンパク質の394番目のアミノ酸のみが異なる2組のクローンの作製
弱毒性(#140)または強毒性(#364)であることが判明している感染性クローンのVP1タンパク質コード遺伝子中、1330番目の塩基を部位特異的突然変異誘発法によりシトシンからグアニン、グアニンからシトシンにそれぞれ変異させ、これによりVP1タンパク質の394番目のアミノ酸をヒスチジン(H)からグルタミン(Q)またはグルタミンからヒスチジンに変異させた感染性クローン(#531および#545)を作製した。Sanger法を用いてこの2つのクローンの全塩基配列を決定したところ、#140および#364クローンのゲノムは2,298塩基長であった(データは示さず)。また、#531および#545は設計通りにVP1タンパク質コード遺伝子1330番目の塩基シトシンがグアニン、およびグアニンがシトシンにそれぞれ変異したことが確認され、VP1タンパク質の394番目のアミノ酸がヒスチジンからグルタミンまたはグルタミンからヒスチジンに変異したと考えられる。

【35】
(ii)病原性試験
上記クローン#140、#364、#531および#545由来のウイルスについて病原性を試験した。両感染性クローンを市販の細胞導入キット(Amersham Pharmacia Biotech社,CellPhect Transfection Kit)を用いてMSB1細胞に導入し、感染性クローン由来ウイルスを作出した。MSB1細胞でさらに1回継代した培養液を接種用ウイルス液とした。各接種用ウイルス液の感染価をMSB1細胞で測定したところ、4株の感染性クローン由来ウイルスのMSB1細胞における増殖性および細胞変性効果の形態は親株と同様であり、感染価はそれぞれ106.2~107.2TCID50/0.1mlに達した。感染性クローン由来のウイルスを1日齢のSPF雛9~10羽に1羽あたり106.2TCID50(0.1ml)ずつ筋肉内注射して接種した。対照群10羽にはウイルスを含まない培養液を0.1ml接種し、病原性試験を行った。体重測定は接種後0、14、21日目に、赤血球容積率(%)は接種後14および21日目に測定した。また、死亡数は接種後21日にわたって観察した。

【36】
(iii)結果
変異導入クローン#531由来ウイルス接種群は、親株である#140由来のウイルス接種群と比較して、平均赤血球容積率(%)が8%低下、平均体重が有意に低下、および死亡率(%)が10%から90%へと有意に上昇し、明らかに強毒化した。一方、変異導入クローン#545由来ウイルス接種群は、親株である#364由来のウイルス接種群と比較して、平均赤血球容積率(%)および平均体重が有意に上昇して対照群と近似値を示し、死亡率(%)が67%から0%へと減少し、、明らかに弱毒化した。結果を下記表2に示す。

【37】

【表2】
JP0003198304B2_000003t.gif【0038】以上の結果から、鶏貧血ウイルスVP1タンパク質の394番目のアミノ酸変異は病原性に関連し、ヒスチジンからグルタミンに変異することで強毒化し、グルタミンからヒスチジンに変異することで弱毒化することが明らかとなった。

【39】
現在DNAデータベース(GenBank, EMBL)に登録されている全て(10株)の鶏貧血ウイルスでは、VPIタンパク質の394番目のアミノ酸は全てグルタミンであり、また、この部位を特徴とする塩基配列を病原性マーカーとして使用した例はない。また、遺伝子組換え技術により、短期間でかつ確実に弱毒鶏貧血ウイルスを作出する技術は知られていない。

【40】

【発明の効果】本発明の弱毒鶏貧血ウイルスを作出および判定するための方法を提供する。これらの方法は、鶏貧血ウイルス感染症の予防等に有用である。

【41】

【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> Nobuyuki Terakado, Director of National Institute of Animal Health
, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries.
<120> Attenuated Chicken Anemia Virus
<130> P99-0241
<160> 4
<170> PatentIn Ver. 2.0
<210> 1
<211> 2298
<212> DNA
<213> Chicken Anemia Virus
<220>
<221> CDS
<222> (832)..(2178)
<400> 1
gcattccgag tggttactat tccatcacca ttctagcctg tacacagaaa gtcaagatgg 60
acgaatcgct cgacttcgct cgcgattcgt cgaaggcggg gggccggagg ccccccggtg 120
gcccccctcc aacgagtgga gcatgtacag gggggtacgt catccgtaca ggggggtacg 180
tcacaaagag gcgttcctgt acaggggggt acgtcacgcg tacagggggg tacgtcacag 240
ccaatcagaa gctgccacgt tgcgaaagtg acgtttcgaa agtgggcggc gcaagcctct 300
ctatatattg agcgcacata ccggtcggca gtaggtatac gcaaggcggt ccgggtggat 360
gcacgggaac ggcggacaac cggccgctgg gggcagtgaa tcggcgctta gccgagaggg 420
gcaacctggg cccagcggag ccgcgcaggg gcaagtaatt tcaaatgaac gctctccaag 480
aagatactcc acccggacca tcaacggtgt tcaggccacc aacaagttca cggccgttgg 540
aaacccctca ctgcagagag atccggattg gtatcgctgg aattacaatc actctatcgc 600
tgtgtggctg cgcgaatgct cgcgctccca cgctaagatc tgcaactgcg gacaattcag 660
aaagcactgg tttcaagaat gtgccggact tgaggaccga tcaacccaag cctccctcga 720
agaagcgatc ctgcgacccc tccgagtaca gggtaagcga gctaaaagaa agcttgatta 780
ccactactcc cagccgaccc cgaaccgcaa gaaggtgtat aagactgtaa g atg gca 837
Met Ala
1
aga cga gct cgc aga ccg aga ggc cga ttt tac gcc ttc aga aga gga 885
Arg Arg Ala Arg Arg Pro Arg Gly Arg Phe Tyr Ala Phe Arg Arg Gly
5 10 15
cgg tgg cac cac ctc aag cga ctt cga cga aga tat aaa ttt cga cat 933
Arg Trp His His Leu Lys Arg Leu Arg Arg Arg Tyr Lys Phe Arg His
20 25 30
cgg agg aga cag cgg tat cgt aga cga gct ttt agg aag gcc ttt cac 981
Arg Arg Arg Gln Arg Tyr Arg Arg Arg Ala Phe Arg Lys Ala Phe His
35 40 45 50
aac ccc cgc ccc ggt acg tat agt gtg agg ctg ccg aac ccc caa tct 1029
Asn Pro Arg Pro Gly Thr Tyr Ser Val Arg Leu Pro Asn Pro Gln Ser
55 60 65
act atg act atc cgc ttc caa gga gtc atc ttt ctc aca gaa gga ctc 1077
Thr Met Thr Ile Arg Phe Gln Gly Val Ile Phe Leu Thr Glu Gly Leu
70 75 80
att ctg cct aaa aac agc aca gcg ggg ggc tat gca gac cac atg tac 1125
Ile Leu Pro Lys Asn Ser Thr Ala Gly Gly Tyr Ala Asp His Met Tyr
85 90 95
ggg gcg aga gtc gcc aag atc tct gta aac ctg aag gag ttc ctg cta 1173
Gly Ala Arg Val Ala Lys Ile Ser Val Asn Leu Lys Glu Phe Leu Leu
100 105 110
gcg tca atg aac cta aca tac gtg agc aaa ctc gga ggc ccc atc gcc 1221
Ala Ser Met Asn Leu Thr Tyr Val Ser Lys Leu Gly Gly Pro Ile Ala
115 120 125 130
ggt gag ttg att gcg gac ggg tct aaa gca gaa gcc gcg gag aac tgg 1269
Gly Glu Leu Ile Ala Asp Gly Ser Lys Ala Glu Ala Ala Glu Asn Trp
135 140 145
cct aat tgc tgg ctg ccg cta gat aat aac gtg ccc tcc gcg aca cca 1317
Pro Asn Cys Trp Leu Pro Leu Asp Asn Asn Val Pro Ser Ala Thr Pro
150 155 160
tcg gca tgg tgg aga tgg gcc tta atg atg atg cag ccc acg gac tct 1365
Ser Ala Trp Trp Arg Trp Ala Leu Met Met Met Gln Pro Thr Asp Ser
165 170 175
tgc cgg ttc ttt aat cac cct aag caa atg acc ctg caa gac atg ggt 1413
Cys Arg Phe Phe Asn His Pro Lys Gln Met Thr Leu Gln Asp Met Gly
180 185 190
cgc atg ttt ggg ggc tgg cac ctg ttc cga cac att gaa acc cgc ttt 1461
Arg Met Phe Gly Gly Trp His Leu Phe Arg His Ile Glu Thr Arg Phe
195 200 205 210
cag ctc ctt gcc act aag aat gag gga tcc ttc agc ccc gtg gcg agt 1509
Gln Leu Leu Ala Thr Lys Asn Glu Gly Ser Phe Ser Pro Val Ala Ser
215 220 225
ctt ctc tcc cag gga gag tac ctc acg cgt cgg gac gat gtt aag tac 1557
Leu Leu Ser Gln Gly Glu Tyr Leu Thr Arg Arg Asp Asp Val Lys Tyr
230 235 240
agc agc gat cac cag aac cgg tgg cga aaa ggc gaa caa ccg atg acg 1605
Ser Ser Asp His Gln Asn Arg Trp Arg Lys Gly Glu Gln Pro Met Thr
245 250 255
ggg ggt att gct tat gcg acc ggg aaa atg aga ccc gac gag caa cag 1653
Gly Gly Ile Ala Tyr Ala Thr Gly Lys Met Arg Pro Asp Glu Gln Gln
260 265 270
tac cct gct atg ccc cca gac ccc ccg ata atc acc agt act aca gcg 1701
Tyr Pro Ala Met Pro Pro Asp Pro Pro Ile Ile Thr Ser Thr Thr Ala
275 280 285 290
caa ggc acg caa gtc cgc tgc atg aat agc acg caa gct tgg tgg tca 1749
Gln Gly Thr Gln Val Arg Cys Met Asn Ser Thr Gln Ala Trp Trp Ser
295 300 305
tgg gac aca tat atg agc ttt gca aca ctc aca gca ctc ggt gca caa 1797
Trp Asp Thr Tyr Met Ser Phe Ala Thr Leu Thr Ala Leu Gly Ala Gln
310 315 320
tgg tct ttt cct cca ggg caa cgt tca gtt tct aga cgg tcc ttc aac 1845
Trp Ser Phe Pro Pro Gly Gln Arg Ser Val Ser Arg Arg Ser Phe Asn
325 330 335
cac cat aag gcg aga gga gcc ggg gac ccc aaa ggc cag aga tgg cac 1893
His His Lys Ala Arg Gly Ala Gly Asp Pro Lys Gly Gln Arg Trp His
340 345 350
acg ctg gtg ccg ctc ggc acg gag acc atc acc gac agc tac atg gga 1941
Thr Leu Val Pro Leu Gly Thr Glu Thr Ile Thr Asp Ser Tyr Met Gly
355 360 365 370
gca ccc gca tca gag ata gac acg aat ttc ttt acg ctt tac gta gcg 1989
Ala Pro Ala Ser Glu Ile Asp Thr Asn Phe Phe Thr Leu Tyr Val Ala
375 380 385
caa ggc aca aat aag tcg cag cac tac aag ttc ggc aca gct aca tac 2037
Gln Gly Thr Asn Lys Ser Gln His Tyr Lys Phe Gly Thr Ala Thr Tyr
390 395 400
gcg ctg aag gag ccg gta atg aag agc gat tca tgg gca gtg gta cgc 2085
Ala Leu Lys Glu Pro Val Met Lys Ser Asp Ser Trp Ala Val Val Arg
405 410 415
gtc cag tcg gtc tgg caa ctg ggt aac agg caa agg cct tac cca tgg 2133
Val Gln Ser Val Trp Gln Leu Gly Asn Arg Gln Arg Pro Tyr Pro Trp
420 425 430
gac gtc aac tgg gcc aac agc acc atg tac tgg ggg tcg cag ccc 2178
Asp Val Asn Trp Ala Asn Ser Thr Met Tyr Trp Gly Ser Gln Pro
435 440 445
tgaaaagggg ggggggctaa agcccccccc ccttgaaccc ccccctgggg gggattcccc 2238
cccagacccc ccctttatat agcactcaat aaacgcagca aatggcttta tcgcacaatc 2298
<210> 2
<211> 449
<212> PRT
<213> Chicken Anemia Virus
<400> 2
Met Ala Arg Arg Ala Arg Arg Pro Arg Gly Arg Phe Tyr Ala Phe Arg
1 5 10 15
Arg Gly Arg Trp His His Leu Lys Arg Leu Arg Arg Arg Tyr Lys Phe
20 25 30
Arg His Arg Arg Arg Gln Arg Tyr Arg Arg Arg Ala Phe Arg Lys Ala
35 40 45
Phe His Asn Pro Arg Pro Gly Thr Tyr Ser Val Arg Leu Pro Asn Pro
50 55 60
Gln Ser Thr Met Thr Ile Arg Phe Gln Gly Val Ile Phe Leu Thr Glu
65 70 75 80
Gly Leu Ile Leu Pro Lys Asn Ser Thr Ala Gly Gly Tyr Ala Asp His
85 90 95
Met Tyr Gly Ala Arg Val Ala Lys Ile Ser Val Asn Leu Lys Glu Phe
100 105 110
Leu Leu Ala Ser Met Asn Leu Thr Tyr Val Ser Lys Leu Gly Gly Pro
115 120 125
Ile Ala Gly Glu Leu Ile Ala Asp Gly Ser Lys Ala Glu Ala Ala Glu
130 135 140
Asn Trp Pro Asn Cys Trp Leu Pro Leu Asp Asn Asn Val Pro Ser Ala
145 150 155 160
Thr Pro Ser Ala Trp Trp Arg Trp Ala Leu Met Met Met Gln Pro Thr
165 170 175
Asp Ser Cys Arg Phe Phe Asn His Pro Lys Gln Met Thr Leu Gln Asp
180 185 190
Met Gly Arg Met Phe Gly Gly Trp His Leu Phe Arg His Ile Glu Thr
195 200 205
Arg Phe Gln Leu Leu Ala Thr Lys Asn Glu Gly Ser Phe Ser Pro Val
210 215 220
Ala Ser Leu Leu Ser Gln Gly Glu Tyr Leu Thr Arg Arg Asp Asp Val
225 230 235 240
Lys Tyr Ser Ser Asp His Gln Asn Arg Trp Arg Lys Gly Glu Gln Pro
245 250 255
Met Thr Gly Gly Ile Ala Tyr Ala Thr Gly Lys Met Arg Pro Asp Glu
260 265 270
Gln Gln Tyr Pro Ala Met Pro Pro Asp Pro Pro Ile Ile Thr Ser Thr
275 280 285
Thr Ala Gln Gly Thr Gln Val Arg Cys Met Asn Ser Thr Gln Ala Trp
290 295 300
Trp Ser Trp Asp Thr Tyr Met Ser Phe Ala Thr Leu Thr Ala Leu Gly
305 310 315 320
Ala Gln Trp Ser Phe Pro Pro Gly Gln Arg Ser Val Ser Arg Arg Ser
325 330 335
Phe Asn His His Lys Ala Arg Gly Ala Gly Asp Pro Lys Gly Gln Arg
340 345 350
Trp His Thr Leu Val Pro Leu Gly Thr Glu Thr Ile Thr Asp Ser Tyr
355 360 365
Met Gly Ala Pro Ala Ser Glu Ile Asp Thr Asn Phe Phe Thr Leu Tyr
370 375 380
Val Ala Gln Gly Thr Asn Lys Ser Gln His Tyr Lys Phe Gly Thr Ala
385 390 395 400
Thr Tyr Ala Leu Lys Glu Pro Val Met Lys Ser Asp Ser Trp Ala Val
405 410 415
Val Arg Val Gln Ser Val Trp Gln Leu Gly Asn Arg Gln Arg Pro Tyr
420 425 430
Pro Trp Asp Val Asn Trp Ala Asn Ser Thr Met Tyr Trp Gly Ser Gln
435 440 445
Pro
<210> 3
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer designed for sequencing Chicken Anemia Virus genomic DNA cl
one.
<400> 3
gaccatcacc gacagctaca tg 22
<210> 4
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Antisense primer designed for amplifying the DNA fragment cotainin
g pathogenicity-associated gene of Chicken Anemia Virus.
<400> 4
tgtagctgtg ccgaacttgt ag 22

【42】

【配列表フリーテキスト】
配列番号3:鶏貧血ウイルスのゲノムDNAクローンの配列を決定するために設計したプライマー。
配列番号4:鶏貧血ウイルスの病原性関連遺伝子部位を含むDNA断片を増幅するためのアンチセンスプライマー。
図面
【図1】
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