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明細書 :ウナギ孵化仔魚の飼育方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2909536号 (P2909536)
登録日 平成11年4月9日(1999.4.9)
発行日 平成11年6月23日(1999.6.23)
発明の名称または考案の名称 ウナギ孵化仔魚の飼育方法
国際特許分類 A23K  1/16      
A01K 61/00      
A23K  1/18      
FI A23K 1/16 304A
A01K 61/00
A23K 1/18
請求項の数または発明の数 4
全頁数 3
出願番号 特願平10-057874 (P1998-057874)
出願日 平成10年3月10日(1998.3.10)
審査請求日 平成10年3月10日(1998.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593059887
【氏名又は名称】農林水産省水産庁養殖研究所長
発明者または考案者 【氏名】田中 秀樹
【氏名】香川 浩彦
【氏名】太田 博巳
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 特開 平5-30923(JP,A)
調査した分野 A01K 61/00
A23K 1/00 - 1/18
要約 【課題】 ウナギ孵化仔魚を成長させる為の好適な餌を見出し、またその給餌手法及び飼育管理方法の開発を課題とする。
【解決手段】 飼育容器の底部において給餌できるように、沈降性餌料を用い、特に魚卵粉末、中でもサメ卵粉末が良いことを見出した。
特許請求の範囲 【請求項1】
サメ卵乾燥粉末を海水に懸濁させたもの給餌することを特徴とするウナギ孵化仔魚の飼育方法。

【請求項2】
サメ卵乾燥粉末が低温で乾燥されたものであることを特徴とする請求項1記載のウナギ孵化仔魚の飼育方法。

【請求項3】
サメ卵乾燥粉末を2.5倍量の海水に懸濁させたものを給餌することを特徴とする請求項1又は2記載のウナギ孵化仔魚の飼育方法。

【請求項4】
サイフォンを用いて仔魚を別容器に移すことを特徴とする請求項1記載のウナギ孵化仔魚の飼育方法。」
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】ウナギの孵化仔魚の飼育に適する餌料、給餌方法及び管理方法に関する。

【0002】

【従来の技術】ウナギ養殖用の種苗であるシラスウナギの採捕量は、ここ10年間は減少の一途を辿っている。そのため、種苗価格は異常な高騰を続けており、シラスウナギの人工種苗生産技術の開発が強く望まれている。しかしながら、人工孵化が可能になって以来既に20年以上が経過しているにもかかわらず、孵化仔魚の給餌飼育には成功していない。

【0003】
これまでに本発明者等は、ウナギの孵化仔魚は水温23℃で孵化後7日目頃には、摂餌可能な発生段階にいたり、ワムシ等の餌物質を摂餌し消化吸収する能力を持つことを明らかにした。しかし、これも飼育期間は最高18日間に止まり、卵黄吸収以後の仔魚の成長は確認できなかった。そこで、受精卵や孵化後餌を食べ始める頃までの、最適飼育環境の確立が求められていたところである。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】ウナギ孵化仔魚を成長させる為の好適な餌を見出し、またその給餌手法及び飼育管理方法の開発を課題とする。

【0005】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意努力した結果、飼育容器の底部において給餌できるように、沈降性餌料を用い、特に魚卵粉末、中でもサメ卵粉末が良いことを見出した。

【0006】
すなわち、本発明は、
(1)サメ卵乾燥粉末を海水に懸濁させたものを給餌することを特徴とするウナギ孵化仔魚の飼育方法、
(2)サメ卵乾燥粉末が低温で乾燥されたものであることを特徴とする(1)記載のウナギ孵化仔魚の飼育方
(3)サメ卵乾燥粉末を2.5倍量の海水に懸濁させたものを給餌することを特徴とする(1)又は(2)記載のウナギ孵化仔魚の飼育方法
(4)サイフォンを用いて仔魚を別容器に移すことを特徴とする(1)記載のウナギ孵化仔魚の飼育方法に関するものである。

【0007】
一般に、分離浮性卵から生まれる海産魚の仔魚は、視覚を頼りに目の前を漂う餌物質に飛びついて丸飲みにする個別摂餌を行うことが知られている。このような摂餌生態を持つ魚種においては、初期餌料としてワムシが用いられ、安定的な種苗生産が可能となっている。また、残餌や糞等で水槽底が汚れることの対策として、サイフォンなどによる底掃除が行われてきた。

【0008】
しかし、ウナギ孵化仔魚はこのような飼育方法では、持続的に十分量の餌がとれない為に成長が見られず、また、数十ルクス以上の照度条件下では、水槽の底に仔魚が濃密に集まるため、底掃除が困難となり、残餌や糞等による環境の悪化のために、長期間の飼育は不可能であった。

【0009】
そこで仔魚が水槽の底に密集する性質を利用して、給餌は水槽の底で行うこととし、この給餌法に適する餌を沈降性の飼料を中心に検索した。すなわち、以下の飼料について比較検討してみた。
生物飼料:ワムシ、冷凍ワムシ、天然プランクトン、オタマボヤ
市販飼餌料:海産魚用初期餌料、甲殻類用初期餌料、シラス餌付け用ペースト状飼料
栄養強化飼料:魚卵粉末、濃縮ナンノクロロプシス、DHA強化ユーグレナ
その他:イカ、エビ、クラゲ、エイのヒレ、イガイの生殖巣、鶏卵(卵黄)、ウナギ卵、マダイ卵、ゼラチン
これらの中では、大部分の餌は殆ど摂餌されず、仔魚はすぐに死滅したが、魚卵粉末については効果が認められ、中でもサメ卵低温乾燥粉末が最も効果的であった。

【0010】
また、底掃除に代わる方法として種々検討した結果、仔魚を新たに用意した清潔な水槽に移すことが簡便であり、その方法として図1に示すようなサイフォンを利用することが最も有効であることを見出した。この方法は、ウナギ孵化仔魚が軽量であり、しかも夜間消灯後は水槽底部から離れる性癖を利用したもので、水槽底部の残餌、糞、死体、衰弱個体を吸い上げることなく、元気な仔魚だけを別の容器に移すことを可能とした。

【0011】

【発明の実施の形態】
【実施例】摂餌可能と考えられる発育段階まで飼育したウナギ孵化仔魚を、5lアクリルボウル水槽に収容した。サメ卵低温乾燥粉末(商品名;アクアラン)を2.5倍量の海水に懸濁させ、それを駒込ピペットを用いて水槽底に静かに注入して与えたときに、最も活発な摂餌が見られた。給餌は1日4回行い、給餌後2時間止水とし、それ以外の時間は毎分0.3lの23℃に調温した濾過海水を注水した。また、毎日、夜間サイフォンを用いて仔魚を清潔な水槽へ移した。

【0012】
この飼育方法により、孵化後9日目に分槽して給餌を開始した飼育例では、13日目に無給餌区が全滅したのに対して、給餌区は79%が生存し、これまでの最長生存記録の18日目でも56%が生き残った。(図3)無給餌区は平均7mmに達しなかったが、給餌区では11日目:7.05mm、18日目:8.12mm、24日目:8.67mmまで成長した(図2)。

【0013】

【比較例1】1000lパンライト水槽に約10000尾の孵化仔魚を収容し、19~22.5℃で飼育した。眼が黒くなった孵化後7日目からワムシを給餌し、8日目には、ワムシに加え海産魚用初期餌料も与えた。この日、底掃除の排水に混入してきた仔魚、約100尾を集め、200mlビーカーに収容し、高密度(約50個/ml)にワムシを添加し、23℃の恒温機内で飼育を継続した。毎日、濾過海水を満たした新たに用意した清潔なビーカーに生き残っている仔魚を移して給餌を続けたところ、孵化後13日目以降ワムシを1~数個食べている仔魚が見られたが、成長は確認できなかった。孵化後17日目、最後の1尾が生き残っていたが、やせ細り体は、湾曲して衰弱が進んでいた。この仔魚は18日目になって死亡した。

【0014】

【比較例2】500lパンライト水槽に約5000尾の孵化後1日目の仔魚を収容し、19.1~22.2℃で飼育した。眼が黒くなった孵化後8日目からワムシを給餌し、12日目以降にはワムシに加えDHA強化ユーグレナも与えた。孵化後13日目には水槽の表層及び中層には仔魚は見られなくなったが、底掃除の排水には少数の生きた仔魚が混入してきた。孵化後15日目に得られた仔魚19尾のうち約半数はワムシを食べていた。17日目まで生きた仔魚が確認できたが成長は見られず、19日目には新鮮な死体も発見できず、全滅が確認された。

【0015】

【比較例3】1000lパンライト水槽で孵化後7日間、21.8~23.0℃で飼育した仔魚を、8日目にアクリルボウル水槽5個に各50尾程度ずつ分槽した。水温20.6~22.8℃で、一日3~5回ワムシを給餌して飼育したところ、孵化後10~13日目には体をくねらせて餌に飛びつくような行動が見られたが、15日目には残り数尾となり、16日目には全滅した。

【0016】

【発明の効果】本飼育法によって、ウナギ孵化仔魚は生存期間が大幅に延長し、明らかに成長したことが確認され、ウナギ人工種苗生産のための初期の給餌飼育が可能となった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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