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明細書 :カイコへのウイルスの感染率を高める飼料および該飼料を用いたウイルス接種方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3660981号 (P3660981)
公開番号 特開2003-111535 (P2003-111535A)
登録日 平成17年4月1日(2005.4.1)
発行日 平成17年6月15日(2005.6.15)
公開日 平成15年4月15日(2003.4.15)
発明の名称または考案の名称 カイコへのウイルスの感染率を高める飼料および該飼料を用いたウイルス接種方法
国際特許分類 A01K 67/04      
A23K  1/16      
A23K  1/18      
FI A01K 67/04 303P
A01K 67/04 304D
A23K 1/16 304B
A23K 1/18 101
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2001-308603 (P2001-308603)
出願日 平成13年10月4日(2001.10.4)
審査請求日 平成13年10月4日(2001.10.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】加藤 正雄
【氏名】久保村 安衛
【氏名】早坂 昭二
【氏名】古田 要二
【氏名】宮澤 光博
【氏名】新川 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100111741、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 夏夫
審査官 【審査官】吉田 佳代子
参考文献・文献 特開平11-155563(JP,A)
特開平11-221027(JP,A)
特開昭54-70981(JP,A)
Journal of Economic Entomology,1997年,Vol.90, No.2,P.416-420
調査した分野 A01K 67/04 303
A01K 67/04 304
A23K 1/16 304
A23K 1/18 101
BIOTECHABS(STN)
CA(STN)
CAPLUS(STN)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
粉体人工飼料をFluorescent Brightener 28を飼料中の最終濃度が0.2~0.4重量%となるように溶解させた蒸留水と混合し、攪拌磨砕し、耐熱性ポリ袋に入れて、オートクレーブで加熱することからなる組換えウイルスによるカイコの感染率を増加させる飼料の製造方法。
【請求項2】
粉体人工飼料をFluorescent Brightener 28を飼料中の最終濃度が0.3重量%となるように溶解させた蒸留水と混合し、攪拌磨砕し、耐熱性ポリ袋に入れて、オートクレーブで加熱する、請求項1記載の組換えウイルスによるカイコの感染率を増加させる飼料の製造方法。
【請求項3】
Fluorescent Brightener 28が、C40H44N12O10S2で表される化合物である請求項1または2に記載の組換えウイルスによるカイコの感染率を増加させる飼料の製造方法。
【請求項4】
オートクレーブによる加熱が、100~121℃、10~30分である請求項1から3のいずれか1項に記載の組換えウイルスによるカイコの感染率を増加させる飼料の製造方法。
【請求項5】
蚕座上で飼育している大量のカイコに組換えウイルスを同時に経口的に接種する方法であって、蚕座上で飼育している大量の5齢のカイコに請求項1記載の方法により製造した飼料を与え、20~24時間後に、組換えウイルス液を塗布した飼料をのせた網を蚕座にのせることにより組換えウイルス液塗布飼料を給餌することを含む、方法。
【請求項6】
さらに、組換えウイルスを食下した網上のカイコを網と共に普通飼料上にのせることを含む、請求項5記載の大量のカイコに組換えウイルスを同時に経口的に接種する方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カイコのウイルスに対する感染率を高める飼料の製造方法および該飼料を用いた効率的なウイルス接種方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、遺伝子組換え技術を利用して、カイコで有用タンパク質を生産する技術が実用化されている。 例えば、カイコ核多角体病ウイルスをベクターとして利用する方法がある(特開昭61-9288号、同62-208276号等)。これらの方法は、カイコ核多角体病ウイルスの有する多角体病遺伝子をインターフェロン等の他の有用物質をコードする遺伝子に置き換えて組換えウイルスを調製し、これを5齢カイコに接種して感染させ、4~8日後に組換え体ウイルスが増殖の過程でカイコ細胞中で産生し、体液中に分泌した有用物質を採取、分離、精製するというものである。
このようなカイコを利用した遺伝子組換えの技術は、宿主となるカイコが、従来用いられている大腸菌や酵母と比べて遺伝的に人間に近いものであるため、産生有用物質の活性や抗原性の点等から好ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のカイコを利用する遺伝子組換え有用物質産生方法には大きな問題があった。すなわち、従来法において組換えウイルスをカイコに接種しようとする場合、ウイルスをカイコ1頭毎に注射する方法と、5齢直後のカイコを5℃で24時間低温処理してウイルスを経口接種する方法が採られていた。しかし、前者の方法では一度に大量のカイコに組換えウイルスを接種することはできず、また、カイコ体内の各種臓器に傷をつけないように行う必要があるため熟練が必要で、手間もかかっていた。さらに、後者の方法では、カイコを低温室に移したり、低温室から出したりする必要があり、やはり手間がかかっており、大量のカイコへの組換えウイルスの接種には必ずしも適していなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、大量のカイコを労力を要しないで効率よく接種することができ、しかも作業者の人数を大幅に減少することができるカイコへのウイルスの感染率を高めることのできる飼料の製造方法および該飼料を用いたカイコに組換えウイルスを感染させる方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、カイコの人工飼料を蛍光増白剤の1種を含んだ水と混合して攪拌磨砕し、オートクレーブで加熱した飼料をカイコに摂食させ、次いでウイルスを混ぜた飼料を摂食させることにより手間をかけずに一度に大量のカイコにウイルスを感染させることができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 粉体人工飼料をチノパールUNPA-GXを飼料中の最終濃度が0.2~0.4重量%となるように溶解させた蒸留水と混合し、攪拌磨砕し、耐熱性ポリ袋に入れて、オートクレーブで加熱することからなる組換えウイルスによるカイコの感染率を増加させる飼料の製造方法。
(2) 粉体人工飼料をチノパールUNPA-GXを飼料中の最終濃度が0.3重量%となるように溶解させた蒸留水と混合し、攪拌磨砕し、耐熱性ポリ袋に入れて、オートクレーブで加熱する、(1)の組換えウイルスによるカイコの感染率を増加させる飼料の製造方法。
(3) オートクレーブによる加熱が、100~121℃、10~30分である(1)または(2)の組換えウイルスによるカイコの感染率を増加させる飼料の製造方法。
(4) 蚕座上で飼育している大量のカイコに組換えウイルスを同時に経口的に接種する方法であって、蚕座上で飼育している大量の5齢のカイコに(1)の方法により製造した飼料を与え、20~24時間後に、組換えウイルス液を塗布した飼料をのせた網を蚕座にのせることにより組換えウイルス液塗布飼料を給餌することを含む、方法。
(5) さらに、組換えウイルスを食下した網上のカイコを網と共に普通飼料上にのせることを含む、(4)の大量のカイコに組換えウイルスを同時に経口的に接種する方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
1.本発明に用いるカイコ、ウイルスおよびカイコ用人工飼料
本発明において用いられるカイコについては特に制限はなく、一般に普及している品種を用いることができ、例えば日137号×支146号、秋光×竜白、錦秋×鐘和、芙蓉×東海などの交雑品種が好適に用いられる。また、カイコは5齢のもの、特に5齢1日目のものが好ましい。
【0008】
本発明のウイルスのカイコへの感染率を高める飼料のベースとなる飼料としては、市販の人工飼料を用いることができ、例えばシルクメート(登録商標、日本農産工業社製)を用いることができる。人工飼料は、粉末のものが望ましいが、ペレット状の飼料を粉砕して用いてもよい。粉末状の人工飼料をチノパールUNPA-GXを飼料中の最終濃度が0.2~0.4重量%となるように含んだ蒸留水と混合し、十分に攪拌磨砕する。その後耐熱性ポリ袋に入れ、オートクレーブを用いて処理することにより本発明のチノパールを含有し、カイコへのウイルス感染率を高める人工飼料を得ることができる。ここで用いる耐熱性ポリ袋の素材は限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE、MDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)等が用いられる。
カイコに投与するウイルス量は、使用する組換えウイルスの種類、産生させるべき有用タンパク質の種類により変わるが、例えばカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)を用いる場合は、核多角体病蚕体液の遠心上清の0.1%液を飼料に塗布して、数時間食下させればよい。
【0009】
本発明において、用いられる組換えウイルスの例としては、カイコ核多角体病ウイルスDNA(BmNPV DNA)の多角体病蛋白構造遺伝子部分に、目的とする有用タンパク質を組み込んだものが挙げられる。組換えウイルスの調製は常法にしたがって行なうことができる。例えば、カイコ核多角体病ウイルスの多角体病タンパク質発現プロモーター(プラスミド)を調製し、このプロモーターの下流に目的とする有用タンパク質をコードする遺伝子を組み込み、トランスファーベクターを調製する。次いで、このトランスファーベクターと予めクローン化してあるカイコ核多角体病ウイルスとでカイコ樹立細胞をコ・トランスフェクトさせ、形質転換された組換えウイルスを同じくカイコ樹立細胞中で培養増殖し、その細胞を破壊して組換えウイルスを取得すれば良い。
【0010】
2.カイコへのウイルス接種および飼育方法
本発明のカイコへのウイルス接種および飼育方法によれば、効率的に一度に大量のカイコを飼育し、ウイルス接種を行うことができる。カイコの数は、必要に応じて増減することができるが、一度に数千頭から数万頭程度飼育することができる。
【0011】
大量のカイコを、蚕箔(蚕座)等に載せて温度および湿度を適度に調節して飼育し、蚕箔上のカイコに上述のチノパール含有人工飼料を給餌する。この際、人工飼料の量は蚕が20~24時間で完全に食下できる量、例えば5齢カイコ1,000頭当たり1,400gが望ましい。次いで、ウイルスを塗布した飼料をチノパール含有人工飼料を食下したカイコに給餌する。この際の飼料の量は、カイコが数時間、例えば6時間で食下できる量が望ましく、その量は例えば、5齢カイコ1,000頭当たり約600gである。給餌はカイコが通過可能な網の上に載せてカイコを飼育している蚕箔に網ごと載せるのが好ましい。このようにすることにより、カイコを移す手間が省け、またウイルス塗布飼料を食下したカイコが網の上に載っているので、大量のカイコを一度に網ごと移動させることができる。その後、ウイルス塗布飼料を食下したカイコを網ごと、数日分の飼料を載せた蚕箔上に載せて、飼育する。一定の飼育日数で安定した目的のタンパク質を得ることができる。例えば、組換えウイルスとしてカイコ角多角体病ウイルスを使用し、約25℃の一定の温度で飼育した場合、感染したカイコ幼虫は投与後5日目には核多角体病(膿病)特有の病徴を呈し、有用物質の産生が進行する。
【0012】
カイコ体中で産生された目的タンパク質の回収・分離は、カイコ体中に目的タンパクが最も多く蓄積される感染後4~6日目にカイコ体液を採取し、遠心分離、カラムクロマトグラフィー等の各種分離手段により有用タンパク質を取得、精製することによりできる。また、別の手段としては、カイコを摺りつぶし、SDS水溶液、尿素水溶液、アルカリ性水溶液等で抽出した後、常法処理によって有用タンパク質を分離、採取する方法が挙げられる。更に別の手段としては、摺りつぶしたカイコをリン酸バッファー等に懸濁させ、超音波処理したのち血球等の、そのタンパク質と特異的に結合する物質を加えて有用タンパク質を取得する方法を挙げることができる。
【0013】
【実施例】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
〔実施例1〕 カイコへのウイルスの感染率を高める飼料の製造
粉体の人工飼料(市販のシルクメート(登録商標)、日本農産工業社製)1000gと蛍光増白剤(市販のチノパールUNPA-GX(登録商標、Sigma社製)を飼料中の最終濃度が0.3重量%となるように含んだ蒸留水2700mlを混合し、攪拌磨砕し、耐熱性ポリ袋に入れ、さらにオートクレーブで20分間加熱した。加熱したチノパール含有人工飼料は4℃にて保存した。
【0014】
〔実施例2〕 カイコへのウイルス接種
1000頭の5齢1日目のカイコを蚕箔に載せ、実施例1のチノパール含有飼料一日分を蚕箔上に置きカイコに食下させた(図1a)。20~24時間後カイコが食下した後に、BmNPV液(核多角体病蚕体液を0.1%となるように蒸留水で希釈したもの)を洗浄瓶を用いて全面に塗布した普通飼料をカイコが通過可能な大きさの網目を有する網の上に置き、網ごと蚕箔上のカイコの上に載せた(図1b)。カイコがBmNPV塗布飼料を完全に食下した6時間後、カイコは蚕箔から網の上に移っており(図1c)、網ごと別の蚕箔上に置いた4日分の普通飼料の上に載せた(図1d)。飼料の乾燥とカイコの這い出しを防ぐために蓋をし、4日間放置した。5齢1000頭のカイコをBmNPV感染させるために用いた各飼料の量と食下に要した時間は、表1のとおりであった。
【0015】
【表1】
JP0003660981B2_000002t.gif
【0016】
4日経過後、各々のカイコから体液を採取し、BmNPV感染の有無を調べた。この際、チノパール含有飼料およびBmNPV塗布飼料の代わりに普通飼料を摂食させたカイコ群を対照群として同時に飼育した。表2に飼育結果を示す。
【0017】
【表2】
JP0003660981B2_000003t.gif*:カイコ20頭の体重
供試カイコ品種:日137号×支146号 5齢
BmNPV接種後の給餌回数:1回
表に示すように、試験区のカイコでは全数がBmNPVに感染していた。
【0018】
【発明の効果】
実施例に示すように、本発明のチノパールを含む人工飼料を、ウイルス感染前に給餌したカイコはウイルスに感染しやすくなっており、本発明の方法により、一度に大量のカイコに効率的にウイルスを感染させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チノパール含有飼料を用いて大量のカイコにウイルスを経口的に接種する方法を示す図である。
図面
【図1】
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