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明細書 :ブタ体外生産胚の体外培養用培養液及び該培養液を用いたブタ体外生産胚の体外培養方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3639898号 (P3639898)
公開番号 特開2003-093054 (P2003-093054A)
登録日 平成17年1月28日(2005.1.28)
発行日 平成17年4月20日(2005.4.20)
公開日 平成15年4月2日(2003.4.2)
発明の名称または考案の名称 ブタ体外生産胚の体外培養用培養液及び該培養液を用いたブタ体外生産胚の体外培養方法
国際特許分類 C12N  5/06      
A01K 67/02      
FI C12N 5/00 E
A01K 67/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2001-292814 (P2001-292814)
出願日 平成13年9月26日(2001.9.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年8月25日 日本繁殖生物学会発行の「第94回日本繁殖生物学会講演要旨」に発表
審査請求日 平成13年9月26日(2001.9.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】菊地 和弘
【氏名】金子 浩之
【氏名】野口 純子
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】▲高▼ 美葉子
参考文献・文献 特開2000-253871(JP,A)
Reproduction Nutrition Development(1996),Vol.36,No.3,p.241-251
MOL.REPROD.DEVELOPMENT(2001),Vol.58,No.3,p.269-275
調査した分野 C12N 5/00
A01K 67/02
BIOSIS/WPI(DIALOG)
JSTPlus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
グルコースを含まず、乳酸及びピルビン酸を含有し、乳酸としては乳酸ナトリウムのみを含有することを特徴とするブタ体外生産胚の体外培養用培養液。
【請求項2】
培養液が、NCSU37培地からグルコースを除外したものを基本とし、グルコースの代わりに0.40~1.5μL/mL(60%溶液)の乳酸及び0.009~0.036mg/mLのピルビン酸を含むものである請求項1記載のブタ体外生産胚の体外培養用培養液。
【請求項3】
乳酸及びピルビン酸を含有する基本培養液に卵管上皮細胞を分散させた状態で含有させて2日間培養後、遠心分離して得た上清に基本培養液を等量加えることにより卵管上皮細胞による条件付けをしたことを特徴とする請求項1又は2記載の体外培養用培養液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の培養液を用いて、ブタ体外生産胚を受精後0-2日間培養し、その後グルコースを含有し、乳酸及びピルビン酸を含まない培養液で培養することを特徴とするブタ体外生産胚の体外培養方法。
【請求項5】
グルコースを含有し、乳酸及びピルビン酸を含まない培養液が、グルコースを含有し、乳酸及びピルビン酸を含まないNCSU37培地である請求項4記載のブタ体外生産胚の体外培養方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブタ体外生産胚の体外培養用培養液及び当該培養液を用いたブタ体外生産胚の培養方法に関し、詳しくはブタ体外生産胚の体外培養において、得られる胚盤胞の品質を向上させることができ、かつ移植後の胎仔や産仔への発生率も高めることができるブタ体外生産胚の体外培養用培養液及び当該培養液を用いたブタ体外生産胚の体外培養方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、哺乳動物において、優良種の育種及び増殖のために体外成熟・体外受精卵(体外生産胚)が用いられるようになった。また、形質転換動物或いはクローン動物の生産においても、体外生産胚の作製技術が利用されている。
ブタにおいては、体外生産胚の作製は可能であるが[Theriogenology, 31巻, 1201-1207 頁, 1989年]、得られた胚盤胞の品質は総細胞数で約35個と、体内由来の同時期の胚盤胞(細胞数60~165個程度)に比べて極端に少ない。
【0003】
最近になって、胚盤胞を受胚雌豚に移植して子ブタを生産することに成功しているが[Theriogenology, 53巻, 361 頁, 2000年]、その産仔数は1-2頭であり、効率的ではない。この技術が進展しない理由として、体外生産胚を体外で培養する技術が未熟なためと推測できる。
本発明者らによる先の報告[Biology of Reproduction, 60 巻, 336-340 頁, 1999年]では、体外生産胚を体外で僅か1日乃至2日でも培養すると、移植後の胎仔や産仔への発生率が悪くなることが確認されている。
【0004】
ブタの体外生産胚の培養には、NCSU培養液[Journal of Reproduction and Fertility Supplement, 48巻, 61-73 頁, 1993年]が広く利用されている。この培養液にはエネルギー源としてグルコースが含まれている。グルコースは優秀なエネルギー源であるが、その代謝産物は過酸化物として培養細胞に悪影響を与える可能性が懸念されている。特に胚では、遺伝子発現や細胞周期の進行に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
これらの状況から、ブタ体外生産胚の体外培養技術の改良が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ブタ体外生産胚の体外培養において、得られる胚盤胞の品質を高めることができ、かつ移植後の胎仔や産仔への発生率も高めることができるブタ体外生産胚用の体外培養液を提供することにある。
また、本発明の目的は、当該培養液を用いてブタ体外生産胚を体外培養することにより、高品質の胚盤胞まで発生させることが可能となり、しかも移植後に胎仔や産仔まで発生させることが可能となるブタ体外生産胚の体外培養方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明者らは検討を重ね、受精後初期の2日間の培養方法に改良を加えることとした。
初期の2日間という設定については、上記のように移植後の発生率に及ぼす影響に関する理由のほか、ブタの場合、この2日間は胚固有の遺伝子が発現するための準備期間であり、4細胞で発生停止が見られる時期に等しいとされるためである。すなわち、この時期の培養方法を適切化することで、その後の発生が十分に進展することを期待した。
そこで、従来のNCSU培養液におけるグルコースに代わるエネルギー源として、ピルビン酸並びに乳酸を利用することにした。その結果、これらを含有する培養液を用いることにより、ブタ体外生産胚の体外培養において、胚盤胞の品質を向上させる可能性があることを見出した。
【0007】
また、受精後の胚は、生体内において初期の2日間、すなわち4細胞期までは卵管内に存在するため、体外培養では卵管内の環境を模倣した培養方法の開発を試みた。そのために、本発明者らは卵管上皮に着目した。卵管上皮からは、細胞の増殖に関与する種々の因子が分泌されるほか、細胞そのものの作用で培養液中のイオンを調節する。したがって、卵管上皮細胞を培養液に分散させた状態で含有する、いわゆる卵管上皮細胞の条件付け培養液は、体外において卵管内環境を模倣し、初期発生を支持する可能性が高いものと考えられる。
最後に、改良した体外培養液により得られた胚盤胞を受胚雌豚に移植することにより、胚の発生能及び移植効率が著しく向上していることを確認した。
本発明はこれら知見に基づいて完成されたのである。
【0008】
すなわち、請求項1に係る本発明は、グルコースを含まず、乳酸及びピルビン酸を含有し、乳酸としては乳酸ナトリウムのみを含有することを特徴とするブタ体外生産胚の体外培養用培養液である。
請求項2に係る本発明は、培養液が、NCSU37培地からグルコースを除外したものを基本とし、グルコースの代わりに0.40~1.5μL/mL(60%溶液)の乳酸及び0.009~0.036mg/mLのピルビン酸を含むものである請求項1記載のブタ体外生産胚の体外培養用培養液である。
請求項3に係る本発明は、乳酸及びピルビン酸を含有する基本培養液に卵管上皮細胞を分散させた状態で含有させて2日間培養後、遠心分離して得た上清に基本培養液を等量加えることにより卵管上皮細胞による条件付けをしたことを特徴とする請求項1又は2記載の体外培養用培養液である。
請求項4に係る本発明は、請求項1~3のいずれかに記載の培養液を用いて、ブタ体外生産胚を受精後0-2日間培養し、その後グルコースを含有し、乳酸及びピルビン酸を含まない培養液で培養することを特徴とするブタ体外生産胚の体外培養方法である。
請求項5に係る本発明は、グルコースを含有し、乳酸及びピルビン酸を含まない培養液が、グルコースを含有し、乳酸及びピルビン酸を含まないNCSU37培地である請求項4記載のブタ体外生産胚の体外培養方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、請求項1に係る本発明の体外培養用培養液について説明する。
この培養液は、前記NCSU培養液、例えばNCSU37からグルコースを除外したものを基本とし、グルコースの代わりに乳酸及びピルビン酸を添加したことを特徴とするものである。
NCSU培養液並びにその他のブタ胚用培養液については、前記文献[Journal of Reproduction and Fertility Supplement, 48巻, 61-73 頁, 1993年]に開示されている。一般的なブタ胚の培養には、NCSU23とNCSU37が使用され、特にブタの体外生産胚の培養には、これらの培養液やM-199培養液、SOF培養液等が用いられる。
なお、NCSU37で用いられているソルビトールの代わりにスクロースを使用したり、NCSU23で用いられているタウリンとハイポタウリンを使用することが可能である。
【0010】
乳酸としては、乳酸のナトリウム塩を用いる。
培養液中における乳酸の含有量は、60%溶液で好ましくは0.40~1.5μL/mL程度である。
【0011】
また、ピルビン酸としては、ピルビン酸の塩、特にナトリウム塩が好ましい。
培養液中におけるピルビン酸の含有量は、0.009~0.036mg/mL、より好ましくは0.010~0.025mg/mL程度である。
【0012】
本発明に係る体外培養用培養液においては、請求項に記載したように、卵管上皮細胞による条件付けをしたものが好適に使用される。具体的には、卵管上皮細胞を上記培養液に分散させた状態で含有するもので、卵管上皮細胞による条件付け培養液(conditioned medium) と呼称されるものである。
卵管上皮からは、細胞の増殖に関与する種々の因子が分泌されるほか、細胞そのものの作用で培養液中のイオンを調節する。したがって、いわゆる卵管上皮細胞による条件付け培養液とすることにより、卵管内環境を模倣し、初期発生を支持することができる。
【0013】
卵管上皮細胞としては、各種の生体組織から採取したものを用いることができる。特に、培養対象となる胚と同種のブタから得られたものを用いることが好ましい。
卵管上皮細胞による条件付け培養液の調製は、例えば日本繁殖生物学会講演要旨,68頁,2000年に記載された方法で行うことができる。すなわち、乳酸及びピルビン酸を含有する基本培養液に、卵管上皮細胞を1-10×106 /mL添加し、これを2日間培養した後、必要に応じて遠心分離を行って得られる上清に、基本培養液を等量程度加えることにより得ることができる。なお、基本培養液としてはNCSU37やこの培養液中のグルコースをピルビン酸と乳酸に代えたもの等が適当である。
【0014】
また、担体蛋白質等としては、血清アルブミン、血清などの他、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどを、還元物質としては、2-メルカプトエタノール(β-メルカプトエタノール)、ジチオスレイトール、還元型グルタチオンなどを例示することができる。
さらに、本発明の培養液には、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシンなどの抗生物質、アンホテシンB、ナイスタチンなどの抗真菌剤等を適宜添加してもよい。
本発明の体外培養用培養液は、必要に応じてタイロード液、クレブス・リンゲル重炭酸塩液、アール液、ハンクス液、ダルベッコ-リン酸緩衝液又はこれらの修正液などの公知の平衡塩類溶液や、199培養液、MEM培養液、ウエイマス培養液、ハム培養液、ブリンスター(BMOC)培養液、m-タイロード培養液、BWW培養液、ウィッテン(Whitten)培養液、TYH培養液、m-KRB培養液、CZB培養液、TLH培養液、SOF培養液、BECM培養液などの公知の培養液類([Journal of Reproduction and Fertility Supplement, 48巻, 61-73 頁, 1993年参照]又はこれらの修正培養液と混合して使用することもできる。
【0015】
前記したように、本発明に用いる体外培養用培養液の基本組成としては、NCSU培養液からグルコースを除いた培養液が好ましい。NCSU培養液としては、NCSU37培養液[Journal of Reproduction and Fertility Supplement, 48巻, 61-73 頁, 1993年]、NCSU23培養液[Petters. R. M., Reed M. L., Theriogenology, 1991; 35, 253 (Abstract)]等があるが、特にNCSU37培養液が好ましい。
【0016】
本発明の体外培養用培養液の製品形態は通常液体であるが、必要に応じて適宜固体もしくは半固体としてもよい。
【0017】
本発明の体外培養用培養液を用いて培養するブタ体外生産胚とは、ブタの卵巣から採取した卵子を、定法に従い体外成熟・体外受精させて得られる胚(受精卵)である。
体外成熟は、通常NCSU培養液[Journal of Reproduction and Fertility supplement, 48巻, 61-73 頁, 1993年]で行われるが、この培養液に限定されるものではなく、199培養液、ウエィマウス培養液、MEM培養液なども使用できる。
体外受精は、定法に準じて行うことができ、例えば適当な方法で凍結融解させた精巣上体精子で胚を体外受精させることにより行われる。
【0018】
本発明の体外培養用培養液は、ブタ体外生産胚の体外培養に好適に用いることができ、当該体外培養用培養液を用いて、ブタ体外生産胚の体外培養を行う発明が、請求項3に係る体外培養方法である。
ブタ体外生産胚は、前記したように、ブタの卵巣から採取した卵子を、定法に従い体外成熟・体外受精させて得られる胚(受精卵)である。
【0019】
本発明に係る体外培養方法は、ブタ体外生産胚を受精後0-2日間培養し、その後グルコース含有培養液で培養することを特徴とする方法である。
この体外培養は、ブタ体外生産胚を0-2日間、すなわち4細胞期まで行うことが必要であり、その後の発生を十分に進展させるためには、この期間の培養を適切に行うことが重要である。
この期間の培養条件としては、胚の損傷を防ぐ観点から、通常、37-40℃(38.5℃程度)の温度で、1-20%酸素・5%二酸化炭素・75-94%窒素(例えば、5%酸素・5%二酸化炭素・90%窒素)条件下で行うことが好ましい。
【0020】
次に、グルコース含有培養液での培養について説明すると、培養液としては前記したNCSU培養液、例えばNCSU37培養液などが好ましい。グルコース含有培養液での培養は、受精後2-8日間、通常は2-6日間実施する。その他の培養条件は、前記受精後0-2日間の培養条件と同じである。
上記のようにして2種類の培養液を組み合わせて培養した後の発生状況に関しては、例えば培養終了後にすべての胚又は卵子を固定・染色して胚盤胞発生率や総細胞数などを測定することにより調べることができる。
請求項3に記載の体外培養方法によれば、総細胞数が多く、しかも優れた品質の胚盤胞を得ることができる。この胚盤胞を受胚雌豚に移植することによって、その後の胎仔や産仔への発生率は非常に高いものとなる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
体外培養液(NCSU37液)をベースとした培養液を用いて、ブタ体外生産胚を体外培養し、体外生産胚の発生を比較した。
まず、第1表に示すように、公知のNCSU37液からグルコースを除外し、代わりにピルビン酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムを添加した液(以下、NCSU37-PyrLac という。)と、グルコースを含む公知のNCSU37液(以下、NCSU37-Gluという。)とを調製し、これらを体外培養液として用いた。
【0022】
【表1】
第1表(体外培養液組成)
JP0003639898B2_000002t.gif
【0023】
ブタ未成熟卵子を公知の体外成熟培養液(10%卵胞液加NCSU37液)で培養後、定法に従い凍結融解後の精巣上体精子で体外受精させた。受精後、6日間体外培養を行った。
培養は、前期2日間(受精後0-2日間)と後期4日間(受精後2-6日間)とに分けて行い、前期及び後期用の培養液として、第2表に示したように、NCSU37-PyrLac とNCSU37-Gluを組み合わせて実験を行った。培養は、前期、後期共に38.5℃、5%酸素・5%二酸化炭素、90%窒素の条件で行った。
培養開始後6日目にすべての胚又は卵子を固定・染色し、発生能を調べた。培養液の組み合わせ及び胚盤胞発生率並びに胚盤胞の総細胞数を第2表に示す。なお、発生率(%)及び細胞数(個)は平均±標準誤差で示した。
【0024】
【表2】
第2表[体外培養液の組み合わせがブタ体外生産胚の発生に及ぼす効果]
JP0003639898B2_000003t.gifbc …異符号間で有意差あり(p<0.05)
【0025】
第2表から、受精後0-2日の培養液としてNCSU37-PyrLac を用いた場合は、NCSU37-Gluを用いた場合と比較して、胚盤胞発生率が高いことが明らかである。特に、受精後0-2日を NCSU37-PyrLacで培養し、受精後2-6日をNCSU37-Gluで培養した場合、他の培養液の組合せの場合に比べて胚盤胞発生率が高い傾向を示し、総細胞数も有意に高いことが明らかである。
このことから、体外培養前期2日間(受精後0-2日間)に用いる培養液として、乳酸及びピルビン酸を含有する本発明の培養液を用いると、生産胚の総細胞数が多く、しかも品質の良い胚盤胞が高効率で得られることが分かる。
【0026】
実施例2
体外培養液として、卵管上皮細胞による条件付け培養液(以下、CMという。)を用いて、ブタ体外生産胚を体外培養し、胚盤胞の発生を比較した。
CMの調製法は、先の報告[日本繁殖学会講演要旨,68頁,2000]に準ずる。すなわち、基本培養液はNCSU37-PyrLac とし、これに卵管上皮細胞を等量添加して培養を行い、培養開始後2日目に遠心分離を行って得た上清をCMとした。
胚の体外培養時にCMに新鮮なNCSU37-PyrLac を等量加え、体外培養液とした(以下、NCSU37-PyrLac/CMという。)。
実施例1と同様に、体外成熟並びに体外受精を行い、受精後2日間をNCSU37-PyrLac 又はNCSU37-PyrLac/CMで体外培養し、続く4日間はNCSU37-Gluで体外培養を行った。
培養開始後6日目ですべての胚又は卵子を固定・染色し、発生能を調べた。培養液の組み合わせ及び胚盤胞発生率並びに胚盤胞の総細胞数を第3表に示す。
【0027】
【表3】
第3表[体外培養液の組み合わせがブタ体外生産胚の発生に及ぼす効果]
JP0003639898B2_000004t.gifbc …異符号間で有意差あり(p<0.05)
【0028】
第3表から、受精後0-2日をNCSU37-PyrLac/CMで、受精後2-6日をNCSU37-Gluで培養した場合、受精後0-2日をNCSU37-PyrLac で、受精後2-6日をNCSU37-Gluで培養した場合(すなわち、条件付け培養液を使用しなかった場合)と比較して、胚盤胞発生率は若干高く、胚盤胞の総細胞数は有意に高いことが分かる。
このことから、体外培養前期2日間(受精後0-2日間)に用いる培養液として、本発明の卵管上皮細胞による条件付け培養液を使用すると、生産胚の総細胞数が多く、かつ品質の良い胚盤胞が高効率で得られることが分かる。
【0029】
実施例3
体外培養液として、前期2日間(受精後0-2日間)はNCSU37-PyrLac/CMを、続く後期の3又は4日間はNCSU37-Gluを使用した。
受精後5日及び6日目で、実体顕微鏡下で発生が進んでいる胚盤胞(拡張期胚盤胞並びに拡張胚盤胞)を選抜した。
胚の発生率並びにそれらの総細胞数の測定結果をを第4表に示す(なお、細胞数については固定・染色後に調べた。)。発生率(%)並びに細胞数(個)は、平均±標準誤差で示す。
【0030】
【表4】
第4表[体外培養液により培養したブタ体外生産胚の発生ステージ]
JP0003639898B2_000005t.gif
【0031】
第4表から、培養開始後5日目及び6日目において、実体顕微鏡下で選別可能な生存胚盤胞(拡張期胚盤胞並びに拡張胚盤胞)が選抜できた。細胞数から、それらは十分発生が進行しているものと思われた。
このことから、本発明の体外培養液でブタ体外生産胚を体外培養して得られる胚盤胞は、受精後5-6日目で十分に発生を進展させることができることが明らかとなった。
【0032】
実施例4
実施例3で得られた培養5日目の拡張期胚盤胞を1頭の受胚雌豚に、培養6日目の拡張胚盤胞を2頭の受胚雌豚に移植したところ、すべて妊娠し、前者から8頭、後者から合計11頭の生存産仔が得られた。なお、1頭あたりの胚の移植個数は50個である。
このことから、本発明の体外培養液で胚盤胞まで体外培養されたブタ体外生産胚を移植すると、移植後の発生率の悪化は全く見られず、胎仔や産仔まで発生が進展することが明らかである。
【0033】
【発明の効果】
本発明の体外培養用培養液によれば、ブタ体外生産胚の体外培養において得られる胚盤胞の品質を高めることができ、かつ移植後の胎仔や産仔への発生率も高めることができる。
また、本発明の体外培養方法によれば、上記の培養液を用いてブタ体外生産胚を体外培養することにより、高品質の胚盤胞まで発生させることが可能となり、しかも移植後に胎仔や産仔まで発生させることが可能となる。
従って、本発明により提供される培養系により体外で生産した胚盤胞は、移植により仔ブタまで発生させることが可能であることが明らかとなった。
本発明は、形質転換やクローン作出などのブタにおける生殖工学に応用可能な基礎技術であると考えられる。