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明細書 :冷水病の予防・治療剤及び予防・治療方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3002709号 (P3002709)
登録日 平成11年11月19日(1999.11.19)
発行日 平成12年1月24日(2000.1.24)
発明の名称または考案の名称 冷水病の予防・治療剤及び予防・治療方法
国際特許分類 A61K 45/00      
A01N 43/80      
A61P 15/00      
A61K 31/18      
FI A61K 45/00
A01N 43/80
A61K 31/00
A61K 31/18
請求項の数または発明の数 6
全頁数 5
出願番号 特願平10-367864 (P1998-367864)
出願日 平成10年12月24日(1998.12.24)
審査請求日 平成10年12月24日(1998.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593059887
【氏名又は名称】農林水産省水産庁養殖研究所長
【識別番号】598177463
【氏名又は名称】▲瀬▼川 勲
発明者または考案者 【氏名】▲瀬▼川 勲
【氏名】池田 和夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】森井 隆信
参考文献・文献 特開 昭49-18670(JP,A)
調査した分野 A61K 45/00
A01N 43/80
A61K 31/18
要約 【課題】 魚類、特にアユまたはサケの冷水病の原因菌であるフレキシバクターサイクロフィラを殺菌することにより、冷水病を予防あるいは治療する方法及び予防・治療剤の開発を課題とする。
【解決手段】 サルファ剤、特にスルフィソゾールに塩化ナトリウムを添加したものを用いることで解決できる。
特許請求の範囲 【請求項1】
サルファ剤と塩化ナトリウムとからなる魚類冷水病予防・治療剤。

【請求項2】
サルファ剤がスルフィソゾール又はその塩であることを特徴とする請求項1記載の魚類冷水病予防・治療剤。

【請求項3】
魚類がアユ又はサケであることを特徴とする請求項1又は2記載の予防・治療剤。

【請求項4】
サルファ剤と塩化ナトリウムとからなる魚類冷水病治療剤を魚類の生息する水中に添加することを特徴とする魚類冷水病治療方法。

【請求項5】
サルファ剤がスルフィソゾール又はその塩であることを特徴とする請求項4記載の魚類冷水病予防・治療方法。

【請求項6】
魚類がアユ又はサケであることを特徴とする請求項4又は5記載の予防・治療方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】魚類、特にアユの冷水病の原因菌であるフレキシバクターサイクロフィラ(Flexibacter psychrophilus)を殺菌することにより、冷水病を予防・治療することに関する。

【0002】

【従来の技術】近年、アユ養殖およぴアユ放流事業においてフレキシバクターサイクロフィラを原因菌とする、冷水病が猛威を振るっている。種苗出荷で大きなシェアを占めている琵琶湖産アユはその多くがフレキシバクターサイクロフィラ保菌魚である可能性が高い.しかし、現在認可されている水産用医薬品は、常用量においてフレキシバクターサイクロフィラの増殖抑制効果は認められるものの、殺菌効果が認められる薬剤は無い.それゆえ、アユ養殖池において、アユを同居させたまま、飼育水からフレキシバクターサイクロフィラを化学的に殺菌除去する手法は存在しなかった.冷水病を駆逐するためには、飼育水を病原体フリーにすることが必要であるが、そのためには、殺菌効果が認められる薬剤の開発が必要となっている。また、水温を20℃以上にあげて飼育したり、発眼卵をヨード剤によって消毒したり、発眼卵の収容前の孵化槽や器材の消毒を徹底する等の方法により予防してきた。しかしながら、いずれも殺菌効果が充分でなく、冷水病を完全に予防あるいは治療することが不可能であった。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、魚類、特にアユまたはサケの冷水病の原因菌であるフレキシバクターサイクロフィラを殺菌することにより、冷水病を予防あるいは治療する方法及び予防・治療剤の開発を課題とする。

【0004】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意努力した結果、サルファ剤、特にスルフィソゾールに塩化ナトリウムを添加することで解決できることを見出した。すなわち、本発明は(1)サルファ剤と塩化ナトリウムとからなる魚類冷水病予防・治療剤、(2)サルファ剤がスルフィソゾール又はその塩であることを特徴とする(1)記載の魚類冷水病予防・治療剤、

【0005】
(3)魚類がアユ又はサケであることを特徴とする(1)又は(2)記載の予防・治療剤、(4)サルファ剤と塩化ナトリウムとからなる魚類冷水病治療剤を魚類の生息する水中に添加することを特徴とする魚類冷水病予防・治療方法、(5)サルファ剤がスルフィソゾールであることを特徴とする(4)記載の魚類冷水病予防・治療方法、(6)魚類がアユ又はサケであることを特徴とする(4)又は(5)記載の予防・治療方法に関する。

【0006】
冷水病とは、種苗アユでは体表の白濁、脂鰭付近から尾柄にかけてびらん、潰瘍、出血が見られる症状をいう。また、ギンザケ、ニジマス、ベニザケ等は、仔魚では卵黄嚢が破れるし、稚魚では背鰭や脂鰭の後部の皮膚の変色、尾柄部の脱鱗・びらん、尾鰭の欠損等の症状が見られる。

【0007】
なお、本発明においてサケは、ギンザケ、ニジマス、ベニザケ及びマスノスケ等を含む。また、サルファ剤の作用機序からサルファ剤全体が有効であるといえるが、耐性菌の出現が少ないスルフィソゾールが特に好ましい。スルフィソゾール(Sulfisozole)とは、3-スルファニルアミドイソキサゾール(3-Sulfanilamidoisoxazole)の一般名であり、下記の構造式を有する。

【0008】

【化1】
JP0003002709B1_000002t.gif【0009】
【発明の実施の形態】

【0010】

【実施例1】従来アユ等の水産物に用いられていた薬剤、フロルフェニコール、ニフルスチレン酸ナトリウム及びスルフィソゾールを液体培地に加え、次の実験条件で菌の増殖を観察した。

【0011】
実験条件
増殖培地:10倍希釈BHI培地
供試菌:滋賀県琵琶湖アユ由来のフレキシバクターサイクロフィラ(Flexibacter psychrophilus)の野生種
培養法:15℃で静置(1日1回攪拌)
増殖確認手法:吸光光度計を用いて培養液の吸光度の増加により判定(測定波長660nm)

【0012】
実験手順:(1)増殖培地に供試菌を加え充分に増殖(吸光度で0.2以上、約1×108cell/ml)させた後、この菌液を、新たな増殖培地に0.1ml加え培養した(試験管数3)。
(2)培養2日後、抗菌剤、もしくはNaClを溶かした10倍希釈BHI培地を適量加え、その後5日間培養し、その間、培地吸 光度の変化を毎日測定した(添加培養)。吸光度は培養試験管3本の平均を示した。

【0013】
(3)また、この抗菌剤、もしくはNaClが加えられた培地から毎日適量を取り出し、新たな増殖培地に加え、培地内の菌の増殖 を観察した(戻し培養)。戻し培養における増殖までの日数は、測定日の吸光度が戻し培養直後の吸光度から、0.006以上上回った当該日を増殖までの日数とし、3本の培養試験管の平均を示した。
その結果、フロルフェニコール及びスルフィソゾールには菌の増殖抑制効果は見られたが、殺菌効果はなかった(表1)。

【0014】

【表1】
JP0003002709B1_000003t.gif【0015】
【実施例2】アユであっても、海産のアユ稚苗は冷水病にかかりにくいといわれているので、塩化ナトリウムが何らかの影響を与えているのではないかとの観点から、フレキシバクターサイクロフィラ(Flexibacter psychrophilus)の増殖における塩化ナトリウムの阻害効果を検討した。

【0016】
その結果は、表2及び表3に示されているが、15℃において液体培地が1%以上の塩化ナトリウム濃度の場合、フレキシバクターサイクロフィラ(Flexibacter psychrophilus)の殺菌効果が認められ、2%であれば、塩化ナトリウム添加後5日目には試験管からフレキシバクターサイクロフィラ(Flexibacter psychrophilus)が除菌された。

【0017】

【表2】(添加培養)
JP0003002709B1_000004t.gif【0018】
【表3】(戻し培養:添加培養液より0.1ml取り出し5mlに希釈した)
JP0003002709B1_000005t.gif【0019】
【実施例3】そこで、フレキシバクターサイクロフィラ(Flexibacter psychrophilus)の増殖抑制効果の一番高かったスルフィソゾールについて、塩化ナトリウムとの併用効果を検討してみることとした。実施例2の結果を踏まえて、スルフィソゾールを少なくして、塩化ナトリウムを多く添加する場合と、スルフィソゾールを多くして、塩化ナトリウムを少なく添加する場合とについて、実施例1と同様の条件で実験を行った。スルフィソゾールを少なくして、塩化ナトリウムを多く添加する場合の結果を表4及び表5に示す。

【0020】

【表4】(添加培養)
JP0003002709B1_000006t.gif【0021】
【表5】(戻し培養:添加培養液より0.1ml取り出し5mlに希釈した)
JP0003002709B1_000007t.gif【0022】表5からスルフィソゾール5ppmに1.05%の塩化ナトリウムを加えた場合、添加後5日目には試験管からフレキシパクターサイクロフィラが除菌されたことがわかる。表4、表5から見ると、スルフィソゾールが5ppmあるいは10ppmの場合、塩化ナトリウムは1.05%であっても、2.05%であってもcontrolに比べ、菌の増殖は大幅に抑制することができたが、両者の間にはたいした差が現れなかった。すなわち、スルフィソゾールが5ppmあるいは10ppmの場合は、塩化ナトリウムは1.05%から顕著な効果を発揮する。

【0023】

【実施例4】次に、スルフィソゾールを多くして、塩化ナトリウムを少なく添加する場合の結果を表6及び表7に示す。

【0024】

【表6】(添加培養)
JP0003002709B1_000008t.gif【0025】
【表7】(戻し培養:添加培養液より0.01ml取り出し5mlに希釈した)
JP0003002709B1_000009t.gif【0026】表7からスルフィソゾール400ppm、塩化ナトリウム0.55%となるように各々の薬剤を培地に加えると、各々単独では添加5日後でも除菌されないが、同時に併用添加することで、添加2日目には試験管からフレキシバクターサイクロフィラが除菌されたことがわかる。

【0027】
表6及び表7の結果から見ると、スルフィソゾールと塩化ナトリウムを併用した場合、controlあるいは塩化ナトリウムのみに比して、顕著な効果が見られる。しかし、スルフィソゾール400ppmと塩化ナトリウムを0.55%及び1.05%とを併用した場合、塩化ナトリウム0.55%と1.05%との間には大きな差がないことがわかる。

【0028】
すなわち、スルフィソゾール400ppmを用いた場合は、塩化ナトリウムは0.55%から顕著な効果をあらわす。表4、5、6及び7の結果を総合すると、冷水病の原因菌であるフレキシバクターサイクロフィラを効果的に殺菌するためには、スルフィソゾールと塩化ナトリウムを併用することが好ましい。

【0029】

【発明の効果】本発明により、魚類、特にアユまたはサケの冷水病の原因菌であるフレキシバクターサイクロフィラを効果的に殺菌することができ、冷水病を予防あるいは治療することを可能ならしめた。