TOP > 国内特許検索 > 海藻漬け物床及びこれを使用した漬け物の製造法 > 明細書

明細書 :海藻漬け物床及びこれを使用した漬け物の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3435461号 (P3435461)
公開番号 特開2003-000142 (P2003-000142A)
登録日 平成15年6月6日(2003.6.6)
発行日 平成15年8月11日(2003.8.11)
公開日 平成15年1月7日(2003.1.7)
発明の名称または考案の名称 海藻漬け物床及びこれを使用した漬け物の製造法
国際特許分類 A23B  7/10      
FI A23B 7/10 B
A23B 7/10
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2001-190428 (P2001-190428)
出願日 平成13年6月22日(2001.6.22)
審査請求日 平成13年6月22日(2001.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501168814
【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
発明者または考案者 【氏名】内田 基晴
【氏名】村田 昌一
個別代理人の代理人 【識別番号】100090941、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清也 (外2名)
審査官 【審査官】内田 淳子
参考文献・文献 特開 平6-225721(JP,A)
特開 昭52-120157(JP,A)
特開 昭63-39542(JP,A)
特開 昭55-118342(JP,A)
特開2002-101826(JP,A)
調査した分野 A23B 7/10
特許請求の範囲 【請求項1】
海藻類をセルラーゼを含む糖質分解酵素により分解し、単細胞性の粒子に変換するとともに,乳酸菌及び酵母からなる微生物コンソーシアムにより発酵させることにより得られる海藻発酵産物からなる海藻漬け物床。

【請求項2】
海藻類が、ワカメまたはコンブ類である請求項1記載の海藻漬け物床。

【請求項3】
微生物コンソーシアムが、Lactobacillus属乳酸菌とDebaryomyces属、Candida 属およびSaccharomyces 属から選択される1種類以上の酵母とからなる請求項1または2記載の海藻漬け物床。

【請求項4】
微生物コンソーシアムが、Lactobacillus brevis NRIFS B5201株 (FERM BP-7301) とDebaryomyces hansenii NRIFS Y5201株 (FERM BP-7302) 、およびCandida zeylanoides NRIFS Y5206 株(FERM BP-7303)からなる請求項3記載の海藻漬け物床。

【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の海藻漬け物床を使用して漬け物を製造することを特徴とする漬け物の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、香りが良く、保水性に優れた漬け物を容易に製造することができる、海藻を原料とした漬け物床及びこれを使用した漬け物の製造法に関する。

【0002】

【従来の技術】漬物は、古来より日本人の食卓に欠かせない食材である。その漬物には、ヌカ漬け、粕漬け、奈良漬けなどいろいろな種類があるが、とりわけヌカ漬けは、庶民的で、かつては各家庭にそれぞれヌカ床があり、野菜の漬け物が身近に作られていた。しかし、ヌカ床の持つ独特の匂いが、若い女性に敬遠される傾向にあること、こまめに撹拌するなど床の管理に手間がかかること、水分調整を誤るとヌカ床が緩み、良い漬けものがつくれないなど経験を要する難しい要素があることなどから、現代の家庭では自宅で漬物をつくる習慣は徐々に失われつつある。一方、本発明者らは、海藻を酵素で分解して単細胞化し、さらに微生物によって発酵させることで微粒子状の海藻デトライタスを製造する技術を開発した。この海藻を単細胞化しながら発酵させる技術については、本発明者らが特願2000-300399号「海藻デトライタス発酵飼料の製造法」において独自に発明し、完成させたところであるが、この発明では、利用の目的を水産初期餌飼料としての利用に限定した発明であった。しかし、この発酵産物が微粒子状で滑らかな物性を有する点、フルーティーな芳香臭を有する点、保水性に優れる点、保存性に優れる点、乳酸発酵している点などに着目し、新たな食品としての可能性を追求し、鋭意努力をおこなった結果、前述のヌカ床の持つ問題点を克服するような特徴を有する海藻を原料とする漬け物床という全く新しい食品素材を発明するに至った。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】すなわち、本発明は、従来のヌカ漬けと比べても風味の点で遜色のない漬け物を製造することができ、低塩分でしかも反覆使用しても床の緩みもなく、その管理に気を使うことのない漬け物床を提供することを課題とする。さらに、本発明は、このような漬け物床を使用して従来のヌカ漬同様の風味を呈する漬け物を製造する方法を提供することを課題とする。

【0004】

【課題を解決するための手段】本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、次の手段よりなる海藻漬け物床及びそれを用いた漬け物の製造方法である。海藻類をセルラーゼを含む糖質分解酵素により分解し、単細胞性の粒子に変換するとともに、乳酸菌及び酵母からなる微生物コンソーシアムにより発酵させて得られる海藻発酵産物からなる海藻漬け物床。前記海藻発酵産物からなる海藻漬け物床を使用して漬け物を製造する方法。本発明における乳酸菌及び酵母からなる微生物コンソーシアムには、乳酸菌としてLactobacillus 属、Streptococcus属、Leuconostoc属、Pediococcus属、Tetragenococcus属、Bifidobacterium属などに属する乳酸菌か、また酵母にはDebaryomyces属、Candida 属およびSaccharomyces 属に属する酵母を用いることが望ましい。特にLactobacillus 属乳酸菌には、Lactobacillus brevis NRIFS B5201株 (FERM BP-7301) が、またDebaryomyces属酵母には、Debaryomyces hanseniiNRIFS Y5201株 (FERM BP-7302) が、Candida 属酵母には、Candida zeylanoides NRIFS Y5206株(FERM BP-7303)を用いることが望ましい。なお、微生物コンソーシアムとは、複数の微生物種の組み合わせという意味であり、微生物群あるいは複合系微生物とも呼ばれる。単独でなく複数の微生物を組み合わせて利用することにより、その場で安定な微生物相を形成したり、多様な機能を同時に発揮させることが可能になるので、生ごみの堆肥化や石油の分解処理などの際にも、微生物をコンソーシアムとして投入することが注目されつつある。

【0005】

【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に使用する海藻類としては、ワカメ、マコンブ、ヒジキなどの褐藻類、アマノリなどの紅藻類、アオサなどの緑藻類およびアマモなどの顕花植物が挙げられ、すべての海藻類から漬け物床を生成することができる。これらの海藻類は生あるいは乾燥粉末の形態で原料として用いることができる。上記海藻類の中でも、単細胞性の海藻粒子(以下SCDと称する)の生成効率、原料の大量調達の容易さ、経験的に優れた食品であることが知られている点などの観点から特にワカメ、コンブ類、ヒジキ、アマノリを用いるのが好ましい。

【0006】
本発明に使用する糖質分解酵素としては、分解後に発酵の基質として利用されうるグルコースが生成されている必要があるということからセルラーゼを必ず使用しなければならない。この他、海藻の単細胞化を促進するという観点および健康機能性が期待できるオリゴ糖等の有効栄養成分の生成を促すという観点からアルギン酸分解酵素、アガラーゼ、キシラナーゼ、微生物由来各種ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、あるいはアワビアセトンパウダーなど海藻に含有される多糖を分解しうる酵素群の中から一つ以上を選択してセルラーゼと併用して使用することができる。

【0007】
海藻を単細胞化する過程で使用する酵素の濃度は高い程、効率が良いが、コストの面から 3.0重量%以下 (なお、%は全て重量%を示す) の濃度で用いるのが現実的である。セルラーゼを単独使用する場合、SCD粒子(単細胞化された海藻粒子のことをいう。Single cell detritusの略)の生成数と微生物相を指標に判断すると1%以上の濃度で使用すれば、スタータ-を添加しなくても海藻の単細胞化と発酵をおこさせることが可能な場合もあるが、スターターを使用することにより 0.1~0.5 %程度の低濃度でのセルラ-ゼの使用でも、海藻の単細胞化を効率的に行い、かつ雑菌の成育を抑制し、発酵を確実におこさせることができるので、経済的に有利である。海藻漬け物床を製造するときの温度については、5~50℃の温度範囲で海藻が単細胞化する効率に大きな違いがないので厳密な温度管理を必要としない。従って、温調設備のない普通の家庭で、20~30℃の室温環境下で容易に漬け物床を作ることが可能である。

【0008】
海藻漬け物床を製造するときの海藻の濃度は、1~15%乾燥重量濃度でおこなうことができる。特に水分と固形分の分離がない、即ち床の緩みがなく均一な正常のものをつくるには5~10%濃度でつくると、ペースト状のものとなり漬け物を漬けるのに適したものが得られ最も好ましい。一般に、ヌカ床場合、水分含量は55%がよいとされている (新版・食品工業総合辞典:社会法人食品工業学会編、株式会社光琳発行、p.964,1993) が、野菜を多く漬け込むと野菜の水分がしみ出て来てしまいヌカ床がゆるんだり、塩分濃度が減少してしまったりして、それをもとの状態に直すために手間がかかる。一方、海藻の漬け物床は水分含量が90%前後であるにもかかわらず床の水分が分離してくることがほとんどなく、床の水分含量の管理にあまり気を使わないで、誰でも簡単においしい漬け物をつくることができる。これは、アルギン酸に代表される海藻由来の多糖類には高い保水力があるので、水分含量に対する許容範囲が広いためと考えられる。また、このように海藻から作られた漬け物床は、高い水分含量を有するため、流動性に富み、野菜を漬け込んだり、取り出したりすることがとても簡単であるとういう長所も有する。

【0009】
海藻漬け物床を製造するときの塩分濃度は、0~10%の範囲で選択することができるが、腐敗の危険を避けるということ及びできた漬け物の塩加減からいうと塩分濃度は 2.5~5%が最も好ましい。一般に、ヌカ床の場合は、塩分8%前後が最良とされている (新版・食品工業総合辞典:社会法人食品工業学会編、株式会社光琳発行、p.964,1993) が、海藻の漬け物床の場合は 2.5~5%の低塩分含量でもおいしい漬物をつくることができ、最近の健康志向にもマッチしている。

【0010】
本発明で使用する微生物は、栄養源として海藻だけが存在する系で成育できる微生物であるという前提条件のほか、グルコースを基質として乳酸発酵を起こすということと、かつ芳香性を付与するという2つの条件を満たす微生物の組み合わせを選んで使用できる。即ち乳酸発酵をおこすはたらきをする微生物としての乳酸菌と芳香性を生み出すはたらきをする微生物としての酵母を同時に添加すればよい。具体的には、前者の微生物としてLactobacillus属、Streptococcus属、Leuconostoc属、Pediococcus属、Tetragenococcus属から選択される1種類以上の乳酸菌が挙げられる。また、広い意味で乳酸菌とみなされるBifidobacterium属の細菌をもちいることができる。また後者の微生物としてDebaryomyces属、Candida 属およびSaccharomyces属から選択される1種類以上の酵母を選択して使用することができる。とりわけ海藻由来の雑菌を良く抑制することが実験的に確かめられている、本発明者らがアオサの発酵試料より分離した微生物コンソーシアムすなわちLactobacillus brevis NRIFS 5201株、Debaryomyces hanseniiNRIFS Y5201株およびCandida zeylanoides NRIFS Y5206 株の3種類を同時に添加することが有効である。

【0011】
この微生物コンソーシアムを分離した方法及び各微生物の分類学的性状の詳細については、特願 2000-300399号に記載しているとおりである。すなわち、本発明者らは、本発明者らの研究室においてセルラーゼ処理してSCD化したアオサをペットボトルで密封した条件下で1年5ヶ月間、2℃に放置した試料が、発酵臭を発する発酵状態になったことを見出した。この発酵したアオサ試料を新しいアオサ試料にセルラーゼとともに、1%程度の量として植え継ぐと、新たにアオサ試料を発酵状態に誘導できることが観察された。その後さらに約1年間にわたり詳細に、解析をすすめ、塩濃度5%、セルラーゼ濃度1%という条件下において発酵試料を1%接種し、20℃で1週間培養すれば、数ヶ月ごとの植え継ぎでも、海藻を発酵させるスターターとしての能力を保持したままで試料が維持できることがわかった。そこで、この発酵状態にあるアオサ試料より、アオサを発酵させる能力を有する微生物群を得ることとした。継体されたアオサ試料中の微生物相を直接計数法、寒天平板法により詳細に解析し、蛍光顕微鏡による直接計数法からの結果とも照らし合わした結果、この試料中には、1種類の乳酸菌、2種類の酵母、3種類の糸状菌が優占しており、植え継ぎ前後で安定的に菌相が維持されていることが判明した。

【0012】
これらのうち、糸状菌は一般に糖質分解酵素の活性が強く、発酵の基質となる糖の生成段階で有用であるが、本発明の場合には、市販の糖質分解酵素を利用しているので、特に糸状菌を使用する必要はないと判断し、乳酸菌1種類(すなわち、NRIFS B5201 株)と酵母2種類(すなわち、NRIFS Y5201株及び NRIFS Y5206株)の合計3種類を分離して発酵スターターとして利用した。これら3種類の微生物の混合体を、新たな海藻試料に対してセルラーゼとともに少量接種したところ、アオサのみならずワカメ、マコンブ等幅広い種類の海藻を発酵状態に誘導するためのスターターとして利用できることが判明した。なお、ここでいう発酵状態とは、海藻試料を、水溶液に懸濁した状態で、20℃下に1週間以上放置しても、腐敗臭が発生しないばかりでなく、フルーティーなエステル様の臭気が発生した状態に誘導されることを意味する。またこのとき試料の上清画分中に、乳酸もしくはエチルアルコールが生成されているという特徴を有する。

【0013】
ここで得られた微生物を Burgey's Manual of Saystematic Bacteriology (N.R. krieg and J.G. Holt, Wiliams & Wilkins 1984) 及び The Yeast 4th edition (Kurtzman, C.P.and Fell, J.W.,Elsevier Science B.V.,1998)に従い同定した結果、乳酸菌 NRIFS B 5201 株は表1のとおり Lactobacillus brevisであると、酵母 NRIFS Y5201株及び酵母 NRIFS Y5206株は、表2及び表3のとおり、Debaryomyces hansenii及びCandida zeylanoides である。

【0014】

【表1】
乳酸菌のNRIFS B 5201 株の性状
────────────────────────────
試験項目 試験結果
────────────────────────────
グラム染色 +
形 態 桿 菌
1.0× 1.5~2.0 μm
胞 子 -
運動性 -
O/F 試験 F
カタラーゼ -
オキシダーゼ -
集落の色調 クリーム色
グルコースからの乳酸産生(効率) +(50%)
グルコースからのエタノール産生 +
グルコースからのガス産生 +
乳酸発酵形式 ヘテロ型
生育温度
5℃ -
15℃ +
30℃ +
45℃ -
炭水化物からの酸産生
グルコース +
フラクトース +
ガラクトース +
D-キシロース +
L-キシロース -
マンノース -
グリセロール -
エリスリトール -
D-アラビノース -
L-アラビノース +
リボース +
アドニトール -
β- メチル-D- キシロース -
ソルボース -
ラムノース -
ズルシトール -
イノシトール -
マンニトール -
ソルビトール -
α- メチル-D- マンノース -
α- メチル-D- グルコース ±
N-アセチルグルコサミン ±
アミグダリン -
アルブチン -
エスクリン +
サリシン -
セロビオース -
ラクトース -
メリビオース -
シュークロース -
トレハロース -
イヌリン -
メレチトース -
ラフィノース -
スターチ -
グリコーゲン -
キシリトール -
ゲンチオビオース -
D-ツラノース -
D-リキソース -
D-タガトース -
D-フコース -
L-フコース -
D-アラビトール -
L-アラビトール -
グルコネート +
2-ケトグルコン酸 -
5-ケトグルコン酸 ±
GC含量(mol%) 45
16S rRNA遺伝子 (大腸菌の第41番-
第1507番位) の比較
Lavtobacillus brevis (Accession 99.9%
No.dbj D37785) との相同性
───────────────────────────────

【0015】

【表2】
酵母 NRIFS Y5201株の性状
─────────────────────────────
試験項目 試験結果 (Y 5201株)
─────────────────────────────
栄養細胞の形態 球形~卵形
増殖形式 多極出芽
偽菌糸 形成しない
子嚢胞子 形成する (麦芽培地、15℃、3週間)
球形、表面が滑らかでない
成育試験
35℃下 -
0.01%シクロヘキシミド存在下 -
酢酸の生成 -
ビタミン欠培地 -
糖類発酵性試験
D-グルコース 弱い
D-ガラクトース -
シュークロース 弱い
マルトース -
ラクトース -
ラフィノース -
炭素化合物資化性試験
D-グルコース +
D-ガラクトース +
L-ソルボース +
D-グルコサミン +
D-リボース -
D-キシロース +
L-アラビノース +
L-ラムノース +
シュークロース +
マルトース +
α、α- トレハロース +
メチルα-D- グルコシド +
セロビオース +
メリビオース -
ラクトース -
ラフィノース +
メレチトース +
グリセロール +
meso- エリスリトール +
D-ソルビトール +
D-マンニトール +
myo-イノシトール -
2-ケト-D- グルコン酸 +
D-グルコン酸 +
D-グルクロン酸 +
DL- 乳酸 +
窒素化合物資化性試験
硝酸塩 -
エチルアミン +
L-リジン +
ガダベリン +
D-グルコサミン -
18S rRNA遺伝子
(Saccharomyces cerevisiae
第22番-第1771番位) の塩基
配列の比較
Debaryomyces hansenii
(Accessien No.dbj AB013555)と 99.9%
の相同性
───────────────────────────

【0016】

【表3】
酵母 NRIFS Y5206株の性状
──────────────────────────────
試験項目 試験結果
──────────────────────────────
栄養細胞の形態 卵形~長楕円形
増殖形式 出 芽
偽菌糸 形成する
子嚢胞子 形成せず (麦芽および酢酸培地)
成育試験
35℃下 -
0.01%シクロヘキシミド存在下 +
酢酸の生成 -
糖類発酵性試験
D-グルコース -
D-ガラクトース -
シュークロース -
マルトース -
ラクトース -
ラフィノース -
炭素化合物資化性試験
D-グルコース +
D-ガラクトース -
L-ソルボース +
D-グルコサミン 弱い
D-リボース -
D-キシロース -
L-アラビノース -
L-ラムノース -
シュークロース -
マルトース -
α、α- トレハロース +
メチルα-D- グルコシド -
セロビオース -
メリビオース -
ラクトース -
ラフィノース -
メレテトース -
グリセロール +
meso- エリスリトール -
D-ソルビトール +
D-マンニトール +
myo-イノシトール -
2-ケト-D- グルコン酸 +
D-グルコン酸 -
D-グルクロン酸 -
DL- 乳酸 -
窒素化合物資化性試験
硝酸塩 -
エチルアミン +
L-リジン +
カダベリン +
D-グルコサミン -
18S rRNA遺伝子
(Saccharomyces cerevisiae
第22番-第1771番位) の塩基
配列の比較

Candida zeylanoides
(Accessien No.dbj AB013509)と 99.5%
の相同性
───────────────────────────

【0017】
これらの微生物は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現:産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所)にそれぞれ受託番号FERM BP-7301、FERM BP-7302、FERM BP-7303として寄託されている。

【0018】
使用する微生物の接種量としては、各菌体の培養菌体を濁度OD(660nm) =1の濃度で調製した細胞懸濁液を海藻懸濁液に対して1~0.1 %程度の重量割合で接種すればよいが、海藻発酵物の一部を1~10%相当の量として直接移植し、床種として利用するのが最も簡単である。海藻発酵微生物を添加する時期は、海藻をSCD 化した後でもよいが、糖質分解酵素を加える第一段階で同時に添加した方が、時間の節約になり望ましい。

【0019】
このようにして調製した海藻漬け物床で、漬け物をつくるには、従来のヌカ漬けと基本的に同じやり方で漬け物を作ればよい。即ち、室温下において、1日から2週間程度、野菜の種類により適当な期間、静置しておくだけである。ただしヌカ漬けの場合に必要なヌカ床の撹拌は、それほど頻繁におこなう必要がなく、また撹拌する場合でも、床が高い流動性を有するため、例えば容器ごとゆするだけで手を汚さないで簡単に達成される。

【0020】
以上のように本発明によれば、従来のヌカ床の欠点であった独特の臭気や床の緩みの問題が解消され、香りが良く保水性に優れ、管理の簡単な漬け物床を簡単に家庭でつくることができ、これを使用して漬け物をつくれば、香りがよく健康イメージのある新しい漬け物として多くの人に受け入れられることが期待される。

【0021】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】表4に示される紅藻類、褐藻類、緑藻類および顕花植物に属する各種の海藻の乾燥粉末(粒径1mm以下)0.5gを、0.1gのセルラーゼオノズカR-10および9ml のオートクレーブ処理して滅菌された3.5 %NaCl水溶液とともにフタつきの試験管にいれ、さらにスターターとして3菌株 (Lactobacillus brevis NRIFS B5201株、Debaryomyces hansenii NRIFS Y5201株およびCandida zeylanoides NRIFSY5206 株)からなる海藻発酵型の微生物コンソーシアムを接種した。接種の方法は、各菌株の培養菌体をOD660nm =1の濃度として生理的食塩水に懸濁したものを、それぞれ0.05mlづつ接種した。培養は、密栓した状態で、20℃下で、ゆっくり(5rpm)試験管を回転させながら、7日間おこない、培養後、微生物発酵により産生される乳酸およびエタノールの量を測定し、表4にまとめた。

【0022】

【表4】
JP0003435461B2_000002t.gif【0023】表4より一部の褐藻類では乳酸生成量が少ないものの、全ての海藻において乳酸もしくはエタノールの産生がみられた。なお、試料は、エステル様のフルーティーな香りを有していた。この結果より、本発明者が開発した上記の海藻発酵型の微生物コンソ-シアムをセルラーゼとともに添加することにより、全ての種類の海藻を乳酸発酵もしくはエタノール発酵させることが可能であることがわかる。

【0024】

【実施例2】市販のワカメ乾燥粉末(商品名、若みどり、理研ビタミン株式会社)10.0g を3.5%濃度の滅菌処理された食塩水 180mlに溶解し、セルラーゼ (オノズカR-10、ヤクルト本社)を1%添加した試料を、反応温度を5℃から50℃まで条件を変えて放置して海藻漬け物床を調製した。これらの試料について、直径が 5.8μm ~11.5μm の海藻粒子を単細胞性の粒子(SCD粒子)とみなし、漬け物床中に産生される単細胞性の海藻粒子の重量割合が増加していく様子を調べて図1に示した。

【0025】
図1より、海藻漬け物床の調製(反応)時間が24時間あるいは6日間では5℃から20℃の範囲で、温度が高い方がSCDの生成割合が高い傾向がみられるが、反応期間が14日間と長ければ、5℃から50℃の間でSCDの生成割合に差がなくなるということがわかる。この結果から海藻漬け物床の調製は、家庭に置いて室温下で簡便に調製可能であることがわかる。

【0026】

【実施例3】市販のワカメ乾燥粉末(実施例2と同じ製品)10.0g を 3.5%濃度の滅菌食塩水180ml に溶解し、0%から3%の範囲で異なる量のセルラーゼ(実施例2と同じ製品)を添加して20℃で反応させることにより、海藻漬け物床試料を調製した。調製開始時に微生物コンソーシアムを添加した場合(添加方法と分量は実施例1と同様)と、添加しなかった場合で、それぞれ海藻を発酵させるのに必要なセルラーゼの添加量を調べた。海藻漬物床が発酵したか、腐敗したかの判断は、12日間20℃で静置培養した時点で、官能的臭気および乳酸菌が優占する微生物相を形成したかどうかを指標としておこなった。乳酸菌が優占したことの確認は、BCP添加カウントアガール平板培地で試料中の微生物を計数する際、黄色に変色した乳酸菌と考えられるコロニーが優占しているかどうかで判断した。結果を表5に示した。

【0027】

【表5】
JP0003435461B2_000003t.gif【0028】表5より、微生物コンソーシアムを加えなかった場合には、セルラーゼ濃度が1%以上でないと確実に発酵をおこすことができないのに対し、微生物コンソーシアムを加えた場合には、セルラーゼ濃度が 0.1%でも発酵が可能であり、経済的であることがわかる。さらに発酵した両試料より分離した微生物を遺伝子レベルで調べた結果、微生物コンソーシアムを添加した方は、加えた3種類の微生物が優占していたが、コンソーシアムを添加しない方は、微生物の種類がまちまちであり、安全上、及び品質管理上問題があった。

【0029】

【実施例4】添加するセルラーゼ濃度を 0.1%、ワカメの濃度を10%として、それ以外の条件は、実施例3の場合と同様にして、ワカメを原料として海藻漬け物床を調製した。この漬け物床を 300mlずつ2本のボトル(500ml 容、ポリカーボネ-ト材質、ナルゲン社製)に入れ、一方に両端をカットした50g のキュウリ3本、もう一方にへたを落とした約 20gのコナス5個を漬けこんだ。ボトルのキャップを閉めた状態で室温で放置したところ、キュウリは2日後に、コナスは5日後に漬けあがった。これらの漬け物の品質を評価するため、水産食品の研究開発に従事する専門家10人(年齢20才から60才、男性5人・女性5人)をパネラーとして、実際にこれを食してもらい、市販のキュウリとコナスのヌカ漬けと比較して、風味(味と香り)・外観を含めた総合的な品質がどうかを聞いた。その結果を表6に示した。

【0030】

【表6】
JP0003435461B2_000004t.gif【0031】表6の結果より、ワカメでつくった漬け物床を使用することにより、市販のヌカ漬けと比べても風味の点で遜色のない漬け物が得られることがわかる。また同じ床を利用して3回ずつ漬け物をつくることを繰り返したが、床の緩みもなく床の管理に気を使うことなく簡単に繰り返しおいしい漬け物をつくることができた。
図面
【図1】
0