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明細書 :γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3038373号 (P3038373)
公開番号 特開平11-127781 (P1999-127781A)
登録日 平成12年3月3日(2000.3.3)
発行日 平成12年5月8日(2000.5.8)
公開日 平成11年5月18日(1999.5.18)
発明の名称または考案の名称 γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造法
国際特許分類 A23F  3/06      
A61K 31/195     
A61K 35/78      
A61P  9/12      
FI A23F 3/06 A
A61K 31/195
A61K 35/78
A61P 9/12
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願平09-311609 (P1997-311609)
出願日 平成9年10月29日(1997.10.29)
審査請求日 平成9年10月29日(1997.10.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591040719
【氏名又は名称】農林水産省 野菜・茶業試験場長
発明者または考案者 【氏名】澤井 祐典
【氏名】吉冨 均
【氏名】竹内 敦子
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
審査官 【審査官】新見 浩一
調査した分野 A23F 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
茶葉を嫌気処理したのち好気処理する操作を交互に繰り返した後、嫌気処理を行うことを特徴とするγ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造法。

【請求項2】
嫌気処理と好気処理を交互に1~12回繰り返す請求項1記載の方法。

【請求項3】
茶葉を容器に充填し、嫌気条件と好気条件を交互に切り替える操作を1~12回繰り返した後、最後に嫌気処理を行う請求項1記載の方法。

【請求項4】
茶葉を充填した容器を密封し、容器内を不活性ガスで置換して10分~12時間嫌気処理を行った後、該容器を開封して茶生葉を10分~3時間好気処理する操作を1~12回行った後、再び前記の嫌気処理を10分~12時間行う請求項1記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、茶葉の嫌気処理と好気処理を交互に繰り返して行った後、最後に嫌気処理を施すことにより、γ-アミノ酪酸(以下、GABAと略記することがある。)含量の高い茶を製造する方法に関するものである。この茶は、血圧上昇抑制作用などの生理活性を有している。

【02】

【従来の技術】日本国民の平均寿命の驚異的な伸長に伴い、高齢者の比率が高くなっている。その結果、いわゆる成人病患者は増加の一途をたどっている。とりわけ、高血圧性疾患に苦しんでいる患者が増えている。高血圧性疾患の予防、治療方法としては、薬物によるものが直接的、かつ有効な手段であるけれども、種々の副作用が起こる可能性も否めない。したがって、日常的な高血圧性疾患の予防は、食生活の改善による方が好ましい。食生活を改善する場合に、食塩摂取の制限がその基本となるが、近年は健康食品に対する関心が高まり、それに伴い血圧上昇抑制作用を有する、幾つかの食品が提唱され、これら食品の摂取が試みられている。

【03】
さらに、このような作用を有する食品の開発も種々検討されている。例えば、GABAは血圧降下作用を有していることが知られているが、このGABAを茶に蓄積させることによって、血圧降下作用を有する茶を得る方法が報告されている (津志田ら, 日本農芸化学会誌, 61, 817 (1987); Tsushida, T. and Murai,T., Agric. Biol. Chem., 51, 2865 (1987))。これは、摘採した茶生葉を一定時間嫌気的条件下におくことにより、GABA含量を高めるものである。GABA含量の高い緑茶は、既に市販されている。

【04】
GABAは、L-グルタミン酸脱炭酸酵素 (EC 4. 1. 1. 15; 以下、GDCと略記する。)によって、グルタミン酸(以下、Gluと略記する。)から脱炭酸されて生じる遊離アミノ酸である。上記の津志田らの方法においてGABA含量の高い茶が得られる理由は、嫌気処理された茶葉中のGluが、GDCにより脱炭酸されてGABAが生成するからであると考えられている。このGABA含量の高い緑茶の血圧上昇抑制効果は、高血圧自然発症ラットへの投与試験により確認されている(大森ほか,日本農芸化学会誌,61, 1449 (1987))。

【05】
従来法による一般的な嫌気的処理は、20℃で5~10時間程度である(袴田ら,茶業研究報告,68, 8 (1988)) 。茶葉を嫌気処理することにより、GABA含量の高い茶を得ることができる。しかしながら、茶に含まれているGABAの前駆体であるGlu量は限られていることから、茶葉の嫌気処理を行うと、GABA含量が最初に著しく増加するものの、一定時間経過後の増加率は低く、GABA含量のさらなる上昇を図るには限界があった(竹内ら,茶業研究報告,80,13 (1994); 竹内ら, 茶業研究報告, 80, 17 (1994))。しかも、嫌気処理を行うと、茶葉に特有の臭気が生じる。そのため、嫌気処理の条件を工夫したり、火入れ処理を行う等の品質改善法が提案されている。

【06】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、GABA含量を大幅に高めた茶葉を提供することを目的とする。前述の如く、単なる嫌気処理のみではGABA生成量に限界があるので、本発明者らは、これまで、GABA含量のより高い茶を効率的に生産する技術を確立するために種々の検討を行ってきた。その結果、嫌気処理と好気処理を組み合わせることによって、GABA生成量が大幅に高まることを見出し、本発明に到達した。

【07】

【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、茶葉を嫌気処理したのち好気処理する操作を交互に繰り返した後、嫌気処理を行うことを特徴とするγ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造法である。請求項2記載の発明は、嫌気処理と好気処理を交互に1~12回繰り返す請求項1記載の方法である。請求項3記載の発明は、茶葉を容器に充填し、嫌気条件と好気条件を交互に切り替える操作を1~12回繰り返した後、最後に嫌気処理を行う請求項1記載の方法である。請求項4記載の発明は、茶葉を充填した容器を密封し、容器内を不活性ガスで置換して10分~12時間嫌気処理を行った後、該容器を開封して茶生葉を10分~3時間好気処理する操作を1~12回行った後、再び前記の嫌気処理を10分~12時間行う請求項1記載の方法である。

【08】

【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の方法に用いる茶葉は、制限されず、茶の原料として通常用いる茶葉ならいずれも使用することができる。原料として用いる茶の種類や製法を適宜選択することによって、緑茶、紅茶、ウーロン茶など各種タイプの茶を製造することが可能である。緑茶を製造するための原料としては、例えばやぶきた、めいりょく、おくゆたか等の緑茶用品種を用いることが好ましい。また、紅茶やウーロン茶等を製造する場合は、例えばべにふじ、べにほまれ、べにふうき等の紅茶、半発酵茶用品種を用いることが好ましい。

【09】
茶葉の摘採時期も特に制限はなく、1番茶、2番茶、3番茶等のいずれも本発明の原料として使用できる。ただし、GABA含量のより高い製品を得るためには、1番茶を用いることが好ましい。しかし、3番茶等を原料とする場合でも、前記の嫌気処理に続いて好気処理を行う操作を複数回繰り返した後、嫌気処理を実施することによって、GABA含量を高めることができる。なお、本発明の方法によって紅茶やウーロン茶を製造する場合には、原料の茶葉についてあらかじめ萎凋処理を済ませておく必要があり、その後に上記した操作を実施する。

【10】
本発明の方法において嫌気処理とは、原料である茶葉を嫌気的条件の下に一定期間おくことを意味し、具体的には、茶葉を密封することなく容器に充填し、ポンプ等で吸引して真空に近い条件として嫌気処理したり、あるいは真空にする代わりに不活性ガスを送り込むことにより嫌気状態としたり、茶葉を入れた容器を密封し、容器内を窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで置換し、不活性ガス雰囲気下で所定時間経過させることを意味する。処理時間は10分~12時間、好ましくは1~6時間であり、1番茶を用いるときや嫌気処理と好気処理の交互繰り返しを頻繁に行うときは比較的短時間でよい。この処理によって、茶葉中のGluがGDCにより脱炭酸されてGABAが生成する。処理時間が下限未満であると、十分な効果が奏されず、上限を超える長時間の処理を行ってもそれに見合う効果が得られない。なお、処理温度については特に制限はなく、通常は10~30℃程度で行う。処理温度が低い場合は、処理時間を長くする必要がある。

【11】
好気処理は、茶葉を好気的状態におくことを意味し、具体的には、容器に充填した茶葉を前記の如く嫌気処理した後、空気を送り込んで好気的条件に切り替えたり、前述の嫌気処理の段階で不活性ガス雰囲気下に密封されていた容器を開放し、茶葉を外気にふれるようにすればよい。好気処理を行うことにより、GABAの一部がGluに戻る他、茶葉中のGABA以外の成分がGluに変換されるため、Gluの蓄積量が増える。通常、好気処理は10分~3時間程度行えばよい。好気処理時間が下限未満であると、Gluの蓄積量が十分でなく、その後に行う嫌気処理によるGABAの十分量の生成を期待できない。一方、上限を超える長時間の処理を行うと、嫌気処理で生成したGABAの減少量が増す上に、長時間の処理に見合う効果が得られず好ましくない。処理温度は、通常10~30℃である。

【12】
本発明では、上記の嫌気処理と好気処理を1組とする操作を交互に繰り返し実施する。通常、この操作を1~12回程度繰り返す。このようにして好気処理が終了した後、最後に再び嫌気処理を行う。このときの嫌気処理は、先に述べた条件と同様の条件で行えばよく、前記条件の範囲内であれば、処理時間や処理温度等は前回までの条件と同じである必要はない。

【13】
本発明の方法によれば、嫌気処理のみを行う従来法に比べて茶葉の香り等の低下は僅かであるが、所望により火入れ処理(中田ら, 茶業研究報告, 68, 40-42,1988)等の後処理を行って香り等の改善を図ることが可能である。火入れ処理は、茶葉の香りや外観等の変化の程度に応じて行えばよく、例えば前記の処理を行った茶葉を、熱風循環式の電気定温乾燥機を用い110~120℃で10~30分間程度加熱すればよい。

【14】

【実施例】以下、実施例により、本発明を詳しく説明する。
比較例1〔嫌気処理のみ〕
農林水産省野菜・茶業試験場(金谷)の圃場から摘採した「やぶきた」1番茶新芽を原料として、以下の処理を施した。1kg用茶袋(アルミラミネート製)を3つ用意し、採取した茶葉を1袋当たり50g入れ、袋内を窒素ガスで置換し封入して嫌気処理を施した。嫌気処理は25℃で3時間、6時間または9時間実施した。なお、嫌気処理を行わないもの(0時間)を対照として用意した。各処理後の試料は、電子レンジを用いて酵素失活、乾燥させ、窒素ガス封入して、これをアミノ酸分析に供試するまで冷蔵保存した。

【15】
各試料について、後藤らの方法(茶業研究報告,77, 29 (1993))に従い、第1表に示す各種の遊離アミノ酸量を測定した。測定方法の概略を述べると、オルトフタルアルデヒド(OPA)によりプレカラム誘導体化を行った後、逆相クロマトグラフィーにより分離、定量し、日立製のL-6000シリーズの機器を用いて分析した。各種遊離アミノ酸量の測定値を第1表に示す。表中のAsnはアスパラギン、Serはセリン、Glnはグルタミン、Argはアルギニン、Alaはアラニン、Theaはテアニンをそれぞれ表す。また、試料のうち嫌気処理を9時間行ったものについて、GABA、Glu、アラニン(以下、Alaと記載する。)およびアスパラギン酸(以下、Aspと記載する。)の量の経時的変化をそれぞれ図1、2、3、4に◆で示した。

【16】

【表1】
第 1 表
───────────────────────────────────
嫌気処理 アミノ酸含量 (mg/g)
(時間)──────────────────────────────
Asp Glu Asn Ser Gln Arg Ala Thea GABA
───────────────────────────────────
0 2.00 2.44 0.11 0.94 2.07 4.18 0.26 18.92 0.11
3 0.14 0.17 0.14 0.84 1.54 4.53 1.97 18.50 2.80
6 0.15 0.08 0.17 0.87 1.44 4.29 2.01 18.04 3.30
9 0.24 0.23 0.19 0.93 1.66 4.06 1.88 18.76 3.44
───────────────────────────────────

【17】
第1表から、嫌気処理を施した試料は、対照の試料と比較してGABAとAlaの含量が著しく増加し、GluとAspの含量は減少していることがわかる。また、図示したように、GABAとAlaの量は、嫌気処理後3時間で急激に増加するが、その後の変化は少ない(図1および図3)。また、GluとAspの量も、嫌気処理後3時間でほとんど0mg/gに等しい量まで低下し、その後はほとんど変化しない(図2および図4)。

【18】
しかし、Gluの減少量とGABAの生成量を比較すると、嫌気処理から9時間後のGluの減少量は2.21mg/g (0.015mmol/g)であるのに対し、GABAの増加量は3.33mg/g (0.032mmol/g)である。GDCにより、1mol のGluから同量のGABAが生成すると考えると、0.032mmol/gのGABAを生成させるには、Glu以外の前駆体が存在するか、または嫌気処理中に他の物質がGluに変化しているものと推定される。その他のアミノ酸では、Glnが嫌気処理中に減少していることから、GluがGlnに変化した後にGABAが生じる可能性は十分に考えられる。しかし、Gluがほぼ0mg/gに近いところまで減少するのに比べると、Glnの減少速度は緩やかである。このことから、嫌気条件下では処理開始後3時間程度で、GABA前駆体であるGluが消費し尽くされてしまうこと、またGlnのようにGABAに変化しうる物質が残っている可能性はあるが、それが代謝される能力は限界に達していると考えた。

【19】
実施例1〔嫌気処理→好気処理→嫌気処理〕
嫌気処理時間を3時間としたこと以外は、比較例1と同様の原料および条件で3つの試料について嫌気処理を行った。その後、袋を開けて茶葉を外気に曝し、それぞれ1,2,3時間の好気処理を行った。好気処理後、再び嫌気処理を3時間行った。嫌気処理は、比較例1と同様の条件で行った。

【20】
処理後の各試料について、比較例1と同様にして遊離アミノ酸量の測定を行った。結果を第2表に示す。また、各試料のGABA、Glu、AlaおよびAspの量の経時的変化をそれぞれ図1、2、3、4に示す。図中、■は嫌気処理3時間、好気処理1時間、嫌気処理3時間の結果を、▲は嫌気処理3時間、好気処理2時間、嫌気処理3時間の結果を、●は嫌気処理3時間、好気処理3時間、嫌気処理3時間の結果をそれぞれ示す。

【21】

【表2】
第 2 表
────────────────────────────────────
好気処理1) アミノ酸含量 (mg/g)
の時間 ──────────────────────────
(時間) Asp Glu Asn Ser Gln Arg Ala Thea GABA
────────────────────────────────────
1 〔嫌気処理2)前〕 0.77 3.25 0.23 0.93 1.85 4.14 0.69 17.16 2.56
2 〔嫌気処理2)前〕 1.22 3.54 0.23 1.10 1.52 4.93 0.53 16.66 2.42
3 〔嫌気処理2)前〕 1.31 3.46 0.23 1.05 2.15 4.17 0.39 18.95 2.01
1 〔嫌気処理2)後〕 0.21 0.14 0.25 0.89 1.42 4.65 1.23 17.05 5.41
2 〔嫌気処理2)後〕 0.36 0.14 0.26 0.99 1.84 4.62 1.22 18.15 5.16
3 〔嫌気処理2)後〕 0.27 0.16 0.24 1.02 1.57 4.54 1.30 17.90 4.92
────────────────────────────────────
1)好気処理:いずれの試料も、好気処理前に3時間の嫌気処理を行っている。
2)嫌気処理:好気処理後に行う嫌気処理(3時間)を指す。

【22】
第2表および図1~図4より、以下のことが明らかである。
(1)嫌気処理後に好気処理した茶葉のアミノ酸含量について嫌気処理により蓄積したGABAおよびAlaの含有量は、好気処理の処理時間に比例して減少している(図1および図3)。GABA量は、好気処理を1時間行った後で嫌気処理直後の含有量の9%、3時間後には28%が減少している。また、Ala量は、好気処理1時間後に嫌気処理後の含有量の65%、3時間後には80%が減少している。

【23】
一方、嫌気処理中に減少したGluおよびAspは、好気処理の時間に比例して増加している(図2および図4)。Gluは、好気処理1時間で嫌気処理前の1.3倍、3時間で1.4倍増加している。Aspも、好気処理中に嫌気処理前の0.4~0.7倍も増加を示している。好気処理後におけるGABAの減少量は、0.79mg/g (0.008mmol/g)であるのに対し、GABAの前駆体であるGluの増加量は3.30mg/g (0.022mmol/g)である。両者を比較すると、GABAの一部がGluに戻ることも考えられるが、Gluの増加量からみて、GABA以外の何らかの物質が好気処理中にGluに変換されるものと考えられる。

【24】
(2)嫌気処理後に好気処理した茶葉を再び嫌気処理した際のアミノ酸含量について好気処理により増加したGlu量は、再び嫌気処理を行うことにより、GABAに変化する。GABA量は、最初の嫌気処理後の含有量と比較すると、好気処理を1時間行った場合に1.9倍、3時間区行った場合に1.8倍に増加している。次に、本実施例の結果を比較例1の嫌気処理6時間後の試料のGABA含量と比較すると、好気処理1時間区では1.6倍、3時間区で1.5倍である。また、比較例1の嫌気処理9時間後の試料のGABA含量と比較すると、好気処理1時間区で1.6倍、3時間区で1.4倍である。なお、好気処理中に増加したGluとAspは、再度の嫌気処理によりほとんど消失した。これらのことから、好気処理によって大幅に増加したGluが、再度の嫌気処理によりGABAに変化したものと考えられる。

【25】
一方、好気処理によって減少したAlaは、再度の嫌気処理を行った後も最初の嫌気処理後の含量の6~7割程度までしか快復せず、GABAの増加率と比較して僅少である。GABAがこのAlaよりも高い増加量を得る理由の一つとして、好気処理中においてGABAの減少量がAlaのそれよりも僅かであることも考えられる。好気処理についての考察の部分ですでに述べたとおり、好気処理の時間に比例してGABA含量が漸減する。そのため、再度の嫌気処理後に得られる最終的なGABA生成量が最高となるのは、結果的に好気処理時間が短かった場合(1時間)であった。

【26】
上記した如く、本発明に従い3時間の嫌気処理を行い、1時間の好気処理を挟み、再び3時間の嫌気処理を行う合計7時間の処理で、従来の10時間近い嫌気処理のみを行う方法と比較して1.5倍強に及ぶGABA生成量を得ることができた。

【27】
実施例2〔嫌気処理と好気処理を複数回実施後、嫌気処理〕
農林水産省野菜・茶業試験場(金谷)の圃場から摘採した「やぶきた」3番茶新芽を原料として、以下の処理を施した。嫌気処理を3時間を行った後、好気処理を1時間行う操作を1組として3回実施したのち、最後に嫌気処理を3時間行った。なお、嫌気処理や好気処理の方法は比較例1と同じである。各試料のGABA量およびGlu量の経時的変化を図5および図6に■で示した。

【28】
比較例2〔嫌気処理のみ〕
嫌気処理のみを12時間行ったほかは、実施例2と同様に行った。各試料のGABA量およびGlu量の経時的変化を図5および図6に◆で示した。

【29】
図から明らかなように、3番茶を原料とする場合でも、好気処理と嫌気処理を複数回繰り返すことにより、Glu含量はその都度快復を示し、それに伴いGABA含量も増加することがわかる。本発明法によれば、GABA含量は嫌気処理のみの比較例2の試料の3倍程度まで増加する。

【30】
実施例3〔嫌気処理→好気処理→嫌気処理〕
農林水産省野菜・茶業試験場(金谷)の圃場から摘採した「やぶきた」3番茶新芽を原料として、以下の処理を施した。嫌気処理を6時間を行ったのち好気処理を1時間行った。続いて、再び嫌気処理を6時間行った。なお、嫌気処理や好気処理の方法は実施例1と同じである。各試料のGABA量およびGlu量の経時的変化を図5および図6に▲で示した。

【31】
図から明らかなように、3番茶を原料とする場合でも、嫌気処理-好気処理-嫌気処理の操作を実施することにより、嫌気処理のみを行った比較例2と比べて茶に含まれるGABAの量は明らかに増加することがわかる。

【32】
参考例
農林水産省野菜・茶業試験場(金谷)の圃場から摘採した4番茶(秋冬番茶)を原料として、以下の処理を施した。嫌気処理を30分間または1時間を行ったのち好気処理を3時間行った。また、対照として好気処理のみを3時間行った。各試料のGABA量およびGlu量の経時的変化をそれぞれ図7および図8に示した。図中の◆は好気処理のみを3時間、■は嫌気処理を30分間、好気処理を3時間、▲は嫌気処理を1時間、好気処理を3時間行ったときの結果を示す。この図から、嫌気処理時間が30分間でもGABA量の増加が認められることから、本発明に従って嫌気処理-好気処理-嫌気処理の操作を繰り返し実施することによって、GABA含量の高い茶を製造できることがわかる。

【33】

【発明の効果】本発明の方法によれば、茶葉中のGABA含量を格段に高めることができる。特に、2番茶、3番茶のような低級茶を原料として用いた場合、GABAの前駆体含量が少ないため、従来法ではGABAの高い製品を得ることができなかったが、本発明によれば、従来法よりもGABA含量を高めることができ、これら低級茶の付加価値の向上が期待できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
7