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明細書 :発芽玄米膨化物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4166011号 (P4166011)
公開番号 特開2003-180276 (P2003-180276A)
登録日 平成20年8月8日(2008.8.8)
発行日 平成20年10月15日(2008.10.15)
公開日 平成15年7月2日(2003.7.2)
発明の名称または考案の名称 発芽玄米膨化物及びその製造方法
国際特許分類 A23L   1/10        (2006.01)
A21D   2/38        (2006.01)
A21D  13/00        (2006.01)
A23L   1/176       (2006.01)
FI A23L 1/10 Z
A21D 2/38
A21D 13/00
A23L 1/176
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2001-381566 (P2001-381566)
出願日 平成13年12月14日(2001.12.14)
審判番号 不服 2005-002313(P2005-002313/J1)
審査請求日 平成13年12月19日(2001.12.19)
審判請求日 平成17年2月10日(2005.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】399008302
【氏名又は名称】大坪 研一
【識別番号】399008313
【氏名又は名称】岡留 博司
【識別番号】301056993
【氏名又は名称】奥西 智哉
【識別番号】301061078
【氏名又は名称】鈴木 啓太郎
発明者または考案者 【氏名】大坪 研一
【氏名】岡留 博司
【氏名】奥西 智哉
【氏名】鈴木 啓太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
参考文献・文献 特開2001-327258(JP,A)
特開2000-300196(JP,A)
特開2000-217520(JP,A)
特開平1-196266(JP,A)
特開平9-299048(JP,A)
特開平9-163941(JP,A)
調査した分野 A23L1/10-105
特許請求の範囲 【請求項1】
発芽玄米にビール酵母及び酒粕の中から選ばれた1種あるいは2種を添加したものを膨化したものであって、発芽処理により増強されたγ-アミノ酪酸含量が131.2~138.3mg/100gに保持され、タンパク質含量が10.3%以上であり、付着微生物が殺菌され、破断強度が低減され、かつデンプンの糊化度が95~99%である発芽玄米膨化物。
【請求項2】
玄米を25~50℃の温湯に96~120時間浸漬し、吸水させることによって発芽させた発芽玄米に、ビール酵母及び酒粕の中から選ばれた1種あるいは2種を添加したものを、エクストルーダーを用い、温度170~240℃、圧力6.0~10.0MPaの高温高圧条件下で加熱押し出し成形することを特徴とする請求項1に記載の発芽玄米膨化物の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発芽玄米膨化物及びその製造方法に関し、詳しくは発芽玄米にビール酵母及び酒粕の中から選ばれた1種あるいは2種を添加したものを膨化したものであって、発芽処理により増強されたγ-アミノ酪酸含量が131.2~138.3mg/100gに保持され、タンパク質含量が10.3%以上であり、付着微生物が殺菌され、破断強度が低減され、かつデンプンの糊化度が95~99%である発芽玄米膨化物並びに発芽玄米に高タンパク質素材及び/又は高食物繊維素材を添加したものを、高温高圧条件下で加熱押し出し成形することによって当該発芽玄米膨化物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
米麦等の穀類種子は、デンプンを主成分とし、貯蔵性に優れたカロリー源として多くの国で主食として利用されてきた。しかし、食品素材はカロリー源のみならず、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミン、食物繊維等の種々の栄養素の供給源としても重要である。そのため、穀類種子に様々な処理・加工を施して、食品素材としての価値を高めて利用することが行われてきた。
【0003】
例えば、籾や玄米を発芽させて各種酵素を活性化し、成分変化を起こさせた後に食品あるいはその加工原料もしくは飲料等として利用することが従来から行われており、大麦における麦芽としての利用やソルガムにおけるアミノ酸組成改良等の技術と並んで有益な穀類の加工技術である。
【0004】
また、小麦については、吸水させて発芽好適条件下におくと、グルタミン酸脱水素酵素の作用によってγ-アミノ酪酸(以下、gabaと略記することがある。)が増加することが報告されており(P.Linko ら、Cereal Chemistry, 36, 280-294,1959)、米の胚芽や粉末を吸水させた場合にも、同様にgabaが増加することが報告されている(T.Saikusa ら、J.Agricultural and Food Chemistry, 42, 1122-1125,1994)。
gabaは高血圧の予防や脳の血流促進等の生理活性が報告されている機能性成分であり、食品中のgaba含量を増加させることは有益な技術と考えられている。
【0005】
上記した背景のもとで、各種の発芽玄米の製造が行われている。中でも、「発芽玄米の謎」(大海 淳、二期出版、p.138-150 、1997)や特開2000-217520号公報に見られるように、玄米を温湯に浸漬して発芽促進を図る方法が採用されることが多い。
しかしながら、この場合には米の代謝活性化にとどまらず、混在する微生物の繁殖も促進され、発酵臭や異臭の生成、微生物による米成分の過剰な分解が起こり、食用や加工原料として不適当な状態となることがある。
【0006】
このような課題を解決する技術として、従来より、発芽処理後に加熱処理やエタノール処理を行う方法(特開2000-217520号公報)、オゾン水を利用する方法(特開平11-4661号公報)、紫外線を照射する方法(特開平10-215800号公報)等が報告されている。
しかしながら、紫外線照射では殺菌効果が不十分であり、エタノールやオゾン水を利用する場合は残存臭気の問題がある。また、加熱処理の場合は、耐熱性芽胞菌に対する殺菌についての問題が残されている。
【0007】
したがって、玄米の発芽処理において、gaba等の有用な機能性成分を増加させながら、混在する耐熱性芽胞菌等を含む微生物の増殖を抑制する技術の開発が求められている。
【0008】
さらに、玄米の主成分はデンプンであり、発芽によってアミノ酸組成の改善やgaba等の機能性成分の増加を図っても、タンパク質含量自体が増加するわけではなく5~10%のままであり、食物繊維やビタミンについても、玄米に含まれている量は高いとは言えない。
また、発芽玄米をそのままで食用や加工に供する場合には、幼芽、幼根、果種皮等が外観上あるいは食味上の問題を起こし、その用途が限定されていた。
したがって、発芽玄米の有用性を活かしながら、衛生面、成分上、外観・食味上の問題点を解消し、食品素材としての価値を高める技術の開発が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発芽玄米の有用性を活かしながら、上記の衛生面や成分、外観、食味等の問題点を解決し、食品素材としての価値を高めるための技術及び当該技術によって製造された発芽玄米加工食品を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、発芽玄米の有用な成分特性を維持・促進しながら混在微生物の殺菌を行い、同時に食品原料としての利用適性を高めるための技術開発に鋭意取り組んだ。
その結果、発芽玄米に特定の微生物菌体等の高タンパク質素材及び/又は高食物繊維素材を加えたものを、加熱押し出し成形することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち、請求項1記載の本発明は、発芽玄米にビール酵母及び酒粕の中から選ばれた1種あるいは2種を添加したものを膨化したものであって、発芽処理により増強されたγ-アミノ酪酸含量が131.2~138.3mg/100gに保持され、タンパク質含量が10.3%以上であり、付着微生物が殺菌され、破断強度が低減され、かつデンプンの糊化度が95~99%である発芽玄米膨化物である。
【0012】
請求項2記載の本発明は、玄米を25~50℃の温湯に96~120時間浸漬し、吸水させることによって発芽させた発芽玄米に、ビール酵母及び酒粕の中から選ばれた1種あるいは2種を添加したものを、エクストルーダーを用い、温度170~240℃、圧力6.0~10.0MPaの高温高圧条件下で加熱押し出し成形することを特徴とする請求項1に記載の発芽玄米膨化物の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明を詳細に説明する。
本発明における発芽玄米とは、玄米を温湯に浸漬し、充分吸水させることによって、胚芽部分が種皮を破って伸長を始めた段階のものを指す。伸長した幼芽は、通常長さが0.2mm程度から5cm程度である。幼芽が緑色の複数の葉となった苗は、発芽玄米に含まれない。また、玄米に代えて、籾を発芽させた後に、籾摺りを行って籾殻を除去したものを用いることができる。
【0014】
発芽玄米を調製するには、玄米等を25~50℃の温湯に浸漬し、吸水させると、96~120時間程度の浸漬で充分に発芽が進行する。得られた発芽玄米は、そのまま次の加熱成形処理に供することができるが、必要に応じて乾燥する。発芽玄米の乾燥処理は、例えば40℃で24時間の条件で行うのが良い。
【0015】
玄米あるいは籾の発芽を進行させる間に、糖質、水溶性タンパク質、ミネラル、ビタミンなどの可溶性成分が溶出し、同時に枯草菌、大腸菌等の一般細菌、ストレプトミセス属等の放線菌類、ペニシリウム属等の真菌類などの各種の微生物の増殖も進行する。例えば、特開2000-217520号公報の実施例に記載されているように、玄米を水に浸漬し、35℃で24時間保持して発芽させた場合の一般生菌数は1.9×10 個/gであり、このまま食用に供することは衛生上好ましくない。
【0016】
そこで、本発明においては、発芽玄米をエクストルーダーにより高温高圧状態で加熱押し出し成形することによって付着微生物を殺菌し、かかる問題の解決を図っている。その他、静水圧処理等の適用も可能である。
この処理は、加熱成形された膨化物のデンプンの糊化度が95~99%となるような条件、すなわち170~240℃の高温、かつ6.0~10.0MPaの高圧条件下で加熱成形することによって、一般細菌のみならず、バチルス属等の耐熱性芽胞菌の殺菌も行うことが可能である。
この加熱成形の条件について詳しく述べると、温度170~240℃、圧力6.0~10.0MPaの高温高圧条件下で加熱押し出し成形して発芽玄米を膨化させる。以下において、加熱押し出し成形し、膨化させた発芽玄米を膨化発芽玄米又は発芽玄米膨化物と称する。
また、エクストルーダーについては制限がなく、1軸エクストルーダー、2軸エクストルーダーのいずれも使用できるが、2軸エクストルーダーを用いることが好ましい。
【0017】
また、本発明では、発芽玄米に高タンパク質素材及び/又は高食物繊維素材を添加したものを加熱成形処理することにより、タンパク質、ビタミン、食物繊維等の含量が増加し、栄養性や機能性の一層優れた食品素材を製造することができる。
このとき用いることのできる高タンパク質素材や高食物繊維素材としては、ビール酵母、酒粕、及び小麦フスマが挙げられ、これらの中から1種あるいは2種以上を選択して用いることができる。
【0018】
上記のようにして発芽玄米に高タンパク質素材及び/又は高食物繊維素材を添加したものを加熱成形し、膨化させることによって、発芽処理により増強されたγ-アミノ酪酸含量はそのまま131.2~138.3mg/100gに保持され、タンパク質含量が10.3%以上であり、付着微生物が殺菌され、破断強度が低減され、かつデンプンの糊化度が95~99%である発芽玄米膨化物が得られる。この発芽玄米膨化物は、食味が良好で、しかも保存性に優れている。
【0019】
発芽玄米は、呈味性が増しているものの、果種皮、胚芽、幼芽、幼根等を有することから、食品素材としての外観を損ねている。しかし、本発明により加熱押し出し成形することによって得られる膨化発芽玄米は、外観が改善されており、食品素材としての価値が向上している。
しかも、この加熱成形処理によって、発芽玄米中に含まれているアミノ酸と糖類との間でメイラード反応が起こり、褐変と香気形成が行われる結果、食品素材としての価値を一層高めることができる。
【0020】
殺菌等の衛生面の向上は、上記のように高タンパク質素材や高食物繊維素材を発芽玄米に添加した場合は、加熱と同時に混合練り出し機能を有するエクストルーダー加工よって初めて可能となる。
【0021】
本発明の方法により得られる食品素材、すなわち発芽玄米膨化物は、そのまま食用あるいは加工原料として用いることができるが、成形後にハンマーミル、ピンミル、超遠心粉砕機等を用いて粉末化して利用することもできる。
本発明の発芽玄米膨化物の応用例としては、パン、パン粉、せんべい、スナック米菓、朝食用シリアル食品、ビーフンなどの麺類が代表的なものとして挙げられる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例
平成12年茨城県産コシヒカリ玄米2kgを、30℃の温水に72時間浸漬して発芽玄米とした。次に、この発芽玄米を3種類の乾燥条件、すなわち(A)温度15℃、相対湿度35%の条件で36時間乾燥、(B)40℃の温度で24時間乾燥、(C)100℃の温度で2時間乾燥した後に温度15℃、相対湿度35%の条件で12時間乾燥、にて乾燥した。
これら3種類の乾燥発芽玄米を、2軸エクストルーダー(TEX30FC-18、日本製鋼所製)により、温度170℃、圧力6.0MPaの条件で加熱押し出し成形し、膨化発芽玄米を得た。
【0023】
発芽前、発芽処理後、乾燥処理後並びに加熱押し出し成形後の各試料をミルサー(岩谷製)によって粉砕し、8%トリクロル酢酸によって抽出した遊離アミノ酸をアミノ酸分析計(日立自動アミノ酸分析計8500、日立製作所製)によって測定した。結果を第1表に示す。また、各試料の食味を、経験豊富な20名のパネラーによる試食試験により評価した。評価方法は「良好」、「可」、「不可」の3段階で行い、最も人数の多い評価(最頻値)を食味評価として採択して求め、併せて第1表に示した。
【0024】
【表1】
第1表 各試料中のgaba含量(mg/100g)
JP0004166011B2_000002t.gif
【0025】
表から明らかなように、発芽処理によって玄米中のgaba含量が顕著に増加するが、これを乾燥後、加熱成形処理し、膨化させたものも高いgaba含有量を保持していた。
また、食味については、加熱成形処理を行い膨化させたもののみが良好であり、サクサクとした食感と好ましい風味を有していた。
【0026】
参考例
平成12年茨城県産コシヒカリ玄米2.5kgを、精米機(ライスパルYP31-T、山本製作所製)により歩留り90%に精白して精米を得た。また、当該コシヒカリ玄米2kgを、30℃の温水に72時間浸漬して発芽玄米とした後、これを40℃で24時間乾燥し、乾燥発芽玄米を得た。なお、乾燥後の発芽玄米の水分含量は12.4%であった。
【0027】
これらの未発芽精米、未発芽玄米及び乾燥発芽玄米を、参考例1と同様に2軸エクストルーダー(TEX30FC-18、日本製鋼所製)により、温度170℃、圧力6.0MPaの条件で加熱押し出し成形し、膨化した試料を得た。
各試料の破断強度を、テンシプレッサー(TTP50BX II 、タケトモ電機製)を用いて測定した。なお、測定用試料は約5cmの長さに切って試料台に載せ、V字型プランンジャーを用いて破断強度を測定した。また、食味については参考例1と同様に判定した。結果を第2表に示す。
【0028】
【表2】
第2表 各加熱押し出し試料の破断強度と食味
JP0004166011B2_000003t.gif *水分含量は、膨化した試料の水分含量を示す。
【0029】
表から明らかなように、発芽玄米を乾燥し、加熱押し出し成形して得た膨化発芽玄米の破断強度は、未発芽玄米あるいは未発芽精米を加熱押し出し成形して得た比較製品に比べて明らかに小さいことが分かった。
また、膨化発芽玄米は、食味が良好、食感もサクサクとして良好であり、かつ好ましい風味を有していた。
【0030】
実施例1
平成12年茨城県産コシヒカリ玄米10kgを、30℃の温水に96時間浸漬して発芽玄米とした。この発芽玄米を温度40℃で24時間乾燥し、乾燥発芽玄米を得た。
次に、乾燥発芽玄米100重量部に対して、高タンパク質素材として乾燥ビール酵母を15重量部を加えたものを、参考例1と同様に2軸エクストルーダー(TEX30FC-18、日本製鋼所製)により、温度170℃、圧力6.0MPaの条件で加熱押し出し成形し、膨化発芽玄米を得た。
【0031】
加熱押し出し成形後の各試料のタンパク質含量をケルダール法で測定し、アミノ酸含量は試料を塩酸で加水分解した後にアミノ酸分析計(日立自動アミノ酸分析計8500、日立製作所製)を用いて測定した。また、ビタミンB1 含量はチオクローム法で測定し、食味については参考例1と同様に判定した。なお、測定したアミノ酸含量を基にしてアミノ酸スコアを算出した。結果を第3表に示す。総合評価は、食味が良好でgaba含量がよく保持され、かつgaba以外の栄養機能成分(タンパク質及びビタミンB)が強化されているもの(例えばビール酵母を添加したもの)を◎とし、膨化発芽玄米のみでgaba含量がよく保持されているものを○とした
【0032】
【表3】
第3表 各試料の成分特性と食味
JP0004166011B2_000004t.gif * gaba含量の単位はmg/100g
【0033】
表から明らかなように、発芽玄米のみを加熱押し出し成形した膨化発芽玄米及び発芽玄米に高タンパク質素材を添加して加熱押し出し成形した膨化発芽玄米は、いずれも食味が良好であり、サクサクとして良好な食感を有していた。
また、発芽玄米に高タンパク質素材を混合して加熱押し出しした製品は、タンパク質含量、ビタミンB1 含量の増加が認められた。さらに、gaba含量は高い値が保持されており、機能性食品としての利用性が格段に向上していることが明らかとなった。
【0034】
実施例2
平成12年茨城県産コシヒカリ玄米3kgを、実施例1と同様に処理して発芽玄米とした。この発芽玄米を40℃で24時間乾燥し、乾燥発芽玄米を得た。
次に、乾燥発芽玄米100重量部に対して、高食物繊維素材として乾燥酒粕を10重量部加え、1軸エクストルーダー(グレインパフマシン、斉藤精工社製)を用いて、初期温度240℃の条件で加熱押し出し成形した。
【0035】
加熱押し出し成形後の各試料について、実施例1と同様に、タンパク質含量、gaba含量及びビタミンB1 含量を測定し、食味についても同様に判定した。さらに、食物繊維含量は、AOAC法(Association of Official Agricultural Chemists )により測定した。結果を第4表に示す。
【0036】
【表4】
第4表 各試料の成分特性と食味
JP0004166011B2_000005t.gif * gaba含量の単位はmg/100g
【0037】
表から明らかなように、いずれの製品も食味は良好であり、食感はサクサクとしていた。また、発芽玄米に高食物繊維素材を混合して加熱押し出しして得たものは、タンパク質含量、食物繊維含量、ビタミンB1 含量の増加が認められ、gaba含量も高い値を保持しており、機能性食品としての利用性が格段に向上していることが明らかとなった。
【0038】
参考例3
平成12年茨城県産コシヒカリ玄米3kgを、実施例1と同様に処理して発芽玄米とした。この発芽玄米の一部を、オートクレーブ(平山製作所製)を用いて120℃、0.12MPa、30分間の条件で高温高圧処理を行った。
一方、これとは別に、同じ発芽玄米を40℃で24時間乾燥したものを2軸エクストルーダー(TEX30FC-18、日本製鋼所製)により、温度170℃、圧力6.0MPaの条件で加熱押し出し成形し、膨化発芽玄米を得た。
これらの試料について、デンプンの糊化度をβ-アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定し、一般細菌数を標準平板寒天培地を用いた段階希釈法によって測定した。また、食味については、参考例1と同様に判定した。結果を第5表を示す。
【0039】
【表5】
第5表 各試料の食味と測定値
JP0004166011B2_000006t.gif * 一般生菌数の単位は個/100g
【0040】
表から明らかなように、発芽玄米のオートクレーブ処理によっても一般細菌を殺菌することはできるが、エクストルーダー処理して得た膨化発芽玄米の場合と比べて、食味が劣っており、発芽玄米膨化物としては不適当である。
【0041】
参考例4
参考例1と同様にエクストルーダーで加熱押し出し成形をして膨化させた発芽玄米の粉末90gに市販強力粉210gを加え、さらに砂糖15g、食塩6g、牛乳90ml、卵15g、無塩バター15gを加えて混合した。これに、予めぬるま湯(35℃)100mlに砂糖1g、ドライイースト8gを加えて予備発酵させておいたイーストを加えて混合し、パン生地を調製した。
このパン生地を板に載せ、手で捏ね、コシが出てきたらひとまとめにし、丸めてボールに入れてラップで覆い、30℃で3倍容になるまで発酵させた。フィンガーテストをして充分に発酵したことを確認した後、丸めてボールに入れ、プラスティック袋で覆って30分間寝かした。この生地を球状に丸め、乾燥した布巾をかけて15分間、室温で寝かせた。次いで、この生地を延ばし、ショートニングを塗った食パン型枠に入れ、35℃で1時間発酵させた。その後、約200℃のオーブンで30分間焼成し、パン製品を調製した。
【0042】
調製したパン製品について、実施例1と同様にタンパク質含量とgaba含量を測定し、食味の評価及び総合評価についても同様に行った。硬さは、試作したパンを厚さ1.5cmにスライスし、内部を2×2cmにカットした試料3点の厚み方向の硬さを、テンシプレッサー(タケトモ電機製)によって測定した。なお、試料厚みに対する圧縮率は50%で測定した。また、外観は、パン製品を目視により観察して、膨化性が良好で、発酵で発生する炭酸ガスによる気泡が肌理細やかで均一なものを○とし、一部に不均一な気泡が見られるものの、膨化が良好なものを△とし、膨化が不良で気泡の小さいものを×と判定した。結果を第6表に示す。
なお、対照品として、上記組成において膨化発芽玄米を加えず市販強力粉300gを使用し、あるいは膨化発芽玄米の代わりに未発芽玄米又は発芽玄米をそれぞれ90g使用したこと以外は、上記と同様にして調製した3種類のパン製品についても同様に試験を行った。
【0043】
【表6】
第6表 パンの試験結果
JP0004166011B2_000007t.gif * 硬さの単位は×10 dyn
* * gaba含量の単位はmg/100g
【0044】
表から明らかなように、膨化発芽玄米を加えて調製したパンは、食味及び総合評価が良好であり、色調が濃厚で、甘味と香りに優れていた。さらに、硬さの程度も丁度良く、パンとしての食感も良好であった。また、機能性の期待されるgaba含量は100gあたり21.1mgと高値を示した。
一方、未発芽玄米、膨化処理をしていない発芽玄米及び小麦粉のみを用いて調製したパン製品は、タンパク質含量は多かったものの、その他の測定値や評価項目のいずれかにおいて劣っており、膨化発芽玄米を用いて調製したパン製品よりも総合的な評価は低いものであった。
【0045】
参考例5
参考例4と同様にして調製した4種類のパン製品を-20℃で18時間冷凍した後、ミキサー(松下電器製)によって粉砕してパン粉を調製した。
これらのパン粉を下味及び薄力粉と卵によって調製したバッタ-をつけた豚肉にまぶし、170℃のナタネ油中で約4分間揚げ、とんかつを調製した。油ちょう後のとんかつについて、色調と外観の見栄えについて目視により観察し、非常に良い場合を◎、良い場合を○、劣る場合を△と評価した。なお、食味と総合評価については、実施例1と同様に行った。結果を第7表に示す。
【0046】
【表7】
第7表 パン粉の試験結果
JP0004166011B2_000008t.gif
【0047】
表から明らかなように、膨化発芽玄米を用いて調製したパン粉は、食味と総合評価について高い評価を得ており、しかも他のパン粉と比較して、着色が最も早く、色調が良好であった。また、表には示していないが、油切れが良く、カラリとした食感を有していた。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、発芽処理により増強されたγ-アミノ酪酸含量が保持され、付着微生物が殺菌され、かつ外観や物理的性質の改善された発芽玄米膨化物とその製造方法が提供される。
本発明に係る発芽玄米膨化物は、従来の発芽玄米が抱えていた衛生面、成分、外観、食味等における問題点を解消し、かつ発芽玄米本来の有用性を活かしたものであり、食品素材としての価値が向上し、特に機能性が期待される。
【0049】
本発明の方法は、簡便に実施することができ、特にエクストルーダーを使用して加熱押し出し成形することによって、上記の優れた性質を有する発芽玄米膨化物を効率よく製造でき、実用性が高い方法である。
また、本発明に係る発芽玄米膨化物は、γ-アミノ酪酸の他にタンパク質含量やビタミンB含量、さらには食物繊維含量等が増強されており、栄養性や機能性の改善された食品素材として極めて有用である。
【0050】
さらに、本発明の実用的効果として、パン及びパン粉の例で示したように、栄養性や機能性の改善に加えて、新しい食品素材を提供できることが挙げられる。すなわち、発芽時の酵素分解によってアミノ酸や少糖類などの呈味性低分子が増加し、高温高圧加工時、製パン時あるいは油揚げ時などにメイラード反応による色調の向上や食品としての呈味性の向上が促進される。これにより、外観や食感の優れた製品につながる発芽玄米膨化物及びこれを利用した加工食品を提供できるものである。