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明細書 :甘酒様飲料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3557458号 (P3557458)
公開番号 特開2003-000209 (P2003-000209A)
登録日 平成16年5月28日(2004.5.28)
発行日 平成16年8月25日(2004.8.25)
公開日 平成15年1月7日(2003.1.7)
発明の名称または考案の名称 甘酒様飲料及びその製造方法
国際特許分類 A23L  2/38      
FI A23L 2/38 102
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2001-184600 (P2001-184600)
出願日 平成13年6月19日(2001.6.19)
審査請求日 平成13年6月19日(2001.6.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】小田 有二
【氏名】山内 宏昭
【氏名】一ノ瀬 靖則
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
【識別番号】100118898、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 立昌
審査官 【審査官】鈴木 恵理子
参考文献・文献 特開平09-163977(JP,A)
特開平01-289473(JP,A)
調査した分野 A23L 2/00~52
A23L 1/10~105
C12G 3/02
特許請求の範囲 【請求項1】
デンプン分解性乳酸菌及びpHが5.2~4.8の乳酸菌発酵液によって米飯中のデンプンを50~55℃の糖化温度及び16~32時間の糖化時間で糖化して製造されることを特徴とする甘酒様飲料。
【請求項2】
上記乳酸菌がデンプンから乳酸を生成するデンプン分解性を備えた菌株であることを特徴とする請求項1記載の甘酒様飲料。
【請求項3】
米飯中のデンプンを糖化するのにデンプン分解性乳酸菌及びpHが5.2~4.8の乳酸菌発酵液を使用することを特徴とする甘酒様飲料の製造方法。
【請求項4】
上記米飯中のデンプンを糖化するのに使用する乳酸菌がデンプンから乳酸を生成するデンプン分解性を備えた菌株であることを特徴とする請求項3記載の甘酒様飲料の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸菌及び乳酸菌発酵液によって米飯中のデンプンを糖化する甘酒様飲料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
甘酒は、名称は酒であるがアルコールを含まない飲料である。本来の製造方法は、米麹と米飯を混合して55~60℃で約8時間糖化させ、適宜希釈後、煮沸する。この過程において、米麹中のコウジカビが生産するα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼ等の作用によって、米中のデンプンがグルコースやマルトースにまで分解され、独特の甘さが生じる。甘酒の起源は古く、今日のように砂糖が甘味料として普及する以前の食生活においては重要な甘味食品であったが、最近の消費者の嗜好には必ずしも合致していない。甘酒についての最近の先行技術としては、特開平11-196830号に記載の物性改良、特開平09-294579号に記載の原料利用率の向上、特開平08-322527号に記載の製品の安定性、及び特開平11-141887号に記載の製造装置に関するものなどがあるが、いずれも従来通りのコウジカビの増殖した米麹を使用したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
甘酒の香味は砂糖のような単純なものではなく、独特の香りと味があり、甘さが口に残ることから、特に最近の若年層は敬遠する傾向が強い。より幅広い層の消費者に飲用されるようにするためには、米麹に由来する独特の香味を取り除く必要があるが、コウジカビの増殖した米麹を使用する限り不可能である。
本発明は、従来の甘酒とはまったく異なる、ほのかな甘さと爽やかな酸味を持った甘酒様飲料及びその製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するためには、米麹以外の原料でデンプンの糖化を進行させなければならない点に着目した。デンプンを糖化だけするのであれば市販のアミラーゼ製剤などを使えば可能であるが、それでは甘味だけしか生成せず、甘酒の特徴である微生物による香味を醸し出すことはできない。
そこで、本発明者らは、鋭意研究した結果、米麹の代わりにデンプン分解性乳酸菌及びその発酵液で米飯中のデンプンを糖化することにより、従来の甘酒の欠点が改善された高品質の甘酒様飲料を製造できることを発見し、本発明を完成させた。
【0005】
本発明でいう乳酸菌とは、デンプン分解性乳酸菌であれば、特に限定はしないものである。すなわち、自らが生産するα-アミラーゼとグルコアミラーゼ等によって菌体外のデンプンをグルコースにまで分解し、これを乳酸に変換する能力を備えた種としては、ラクトバチルス・アミロヴォルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・アミロフィルス(Lactobacillus amylophilus),ラクトバチルス・アミロリティクス(Lactobacillus amylolyticus),ラクトバチルス・マニホティヴォランス(Lactobacillus manihotivorans)などがあげられる。これ以外の種であっても、デンプン分解性の菌株であれば使用することができる。特に好ましくは、α-アミラーゼを多量に生産するラクトバチルス・アミロヴォルスである。
【0006】
本発明の発酵液とは、以下の実施例に示す本培養液中などで乳酸菌を増殖させたものである。本培養液の組成は、デンプンを適当量含有していれば特に限定はしない。甘酒用飲料製造に用いる発酵液のpHは5.5以下が好ましく、さらに好ましくは5.2~4.8になったものを用いるのが好ましい。甘酒用飲料製造のための糖化温度としては50~60℃が好ましく、さらに好ましくは50~55℃である。この範囲以下では、得られた甘酒用飲料の酸味が強くなり過ぎ、逆に高すぎると酸味が不足する傾向がある。糖化時間としては好ましくは12~48時間、さらに好ましくは16~32時間であり、この範囲以下であると糖化が不十分であり、長過ぎると香味が劣化する傾向がある。いずれにしろ、糖化温度、時間などの条件は使用する乳酸発酵液や米飯量などを勘案し、適当に決定すればよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を以下の実施例によって説明する。本発明はそれらの実施例によっては何ら限定されるものではない。
【0008】
【実施例1】
乳酸菌としてデンプン分解性菌株「ラクトバチルス・アミロヴォルス(Lactobacillus amylovorus)」及び非分解性菌株「ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)」の菌体をそれぞれ一白金耳かき取って種培養液(表1)10mlに接種した。37℃、24時間静置培養後、遠心分離にて菌体を集め、105℃、30分間高圧滅菌した2%スキムミルク溶液5mlに懸濁した。この菌体懸濁液0.5mlを本培養液(表2)100mlに添加し、37℃、24時間静置培養したものを発酵液とした。この発酵液に40gの炊いた米飯を添加し、55℃、24時間置いて糖化させて出来上がった甘酒様飲料のpH,乳酸量及び糖度について調べたところ、表3のようになった。試験例1は比較例1よりもpHが低下して乳酸が生成しており、糖濃度が高くなっていた。また、試験例1は液状だったのに対して、比較例1は半固形状であり、飲用に供することができなかった。これらの結果は、試験例1のデンプン分解性菌株が生産したアミラーゼの作用によって、米飯中のデンプンが分解されていることを示している。これより、本発明の乳酸菌発酵液を用いることによって、良好な甘酒様飲料を製造できることがわかる。
【0009】
【表1】
種培養液の組成
JP0003557458B2_000002t.gif*ポリオキシエチレンソルビタンモノオリエート
注)培養液のpHは6,5~7.0に合わせ、120℃、20分間高圧滅菌した。
【0010】
【表2】
本培養液の組成
JP0003557458B2_000003t.gif注)酵母エキスとスキムミルクを溶解して105℃、30分間高圧滅菌した。これを冷却後、あらかじめ150℃、1時間乾熱滅菌しておいた粉末のとうもろこしデンプンを添加して本培養液(pH6.8)として使用した。
【0011】
【表3】
使用した乳酸菌と発酵液の性状
JP0003557458B2_000004t.gif注)pHはpHメーター、乳酸量は高速液体クロマトグラフ、糖度は屈折糖度計
で測定した。
【0012】
【実施例2】
試験例1の発酵液に40gの炊いた米飯を添加し、37℃,45℃,55℃または65℃に置いて糖化させ、出来上がった甘酒様飲料中のpH、乳酸量、糖度を測定するとともに、5人のパネルによる官能評価を行ったところ、表4のようになった。試験例2及び試験例3では、乳酸菌が糖化したデンプンから乳酸をさらに生産し、pHを低下させたために試験例4よりも甘味に比べて酸味が強く、甘味と酸味のバランスが崩れていた。試験例5は試験例4よりも酸味が少なく、物足りない感じであった。比較例2の市販甘酒と比較して、試験例では55℃で糖化した試験例4の結果がもっとも良好であった。
【0013】
【表4】
糖化温度と官能評価
JP0003557458B2_000005t.gif
【0014】
【実施例3】
試験例1の発酵液に0,10,20,40または60gの炊いた米飯を入れ、55℃、24時間放置して糖化させ、この甘酒様飲料の糖度を測定するとともに、5人のパネルによる官能評価を行ったところ、表5のようになった。米飯を添加しない発酵液は、糖化の基質となるデンプンがないために甘味が生成されず、酸味しか感じられなかった。糖度は添加した米飯の量にともなって上昇したが、60gになると未溶解の米粒が増えるために口当たりが悪くなった。官能的には、40g添加したものがもっとも優れていた。
【0015】
【表5】
米飯量と官能評価
JP0003557458B2_000006t.gif
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の甘酒様飲料及びその製造方法によれば、請求項1~4の手段を有することにより、従来のものとはまったく異なる、ほのかな甘さと爽やかな酸味を持った甘酒様飲料とその製造方法を提供することができる。また、消費の低迷している米の需要拡大に多大な寄与が期待できる。