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明細書 :pチャンネル電界効果トランジスタ及びそれを用いたセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3657591号 (P3657591)
公開番号 特開2004-294087 (P2004-294087A)
登録日 平成17年3月18日(2005.3.18)
発行日 平成17年6月8日(2005.6.8)
公開日 平成16年10月21日(2004.10.21)
発明の名称または考案の名称 pチャンネル電界効果トランジスタ及びそれを用いたセンサ
国際特許分類 G01N 27/414     
H01L 29/78      
FI G01N 27/30 301L
G01N 27/30 301P
H01L 29/78 301U
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2003-082986 (P2003-082986)
出願日 平成15年3月25日(2003.3.25)
審査請求日 平成15年4月3日(2003.4.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】川原田 洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 特開2004-109020(JP,A)
特開2002-286692(JP,A)
特開2001-272372(JP,A)
特開平8-240555(JP,A)
調査した分野 G01N 27/414
H01L 29/78
特許請求の範囲 【請求項1】
液体電解質をゲートとして使用し、水素終端、酸素終端及びアミノ終端が混合されたダイヤモンド表面をチャンネルとしたpチャンネル電界効果トランジスタ。
【請求項2】
請求項1記載のpチャンネル電界効果トランジスタを用いて、前記液体電解質のpHの上昇に対し、前記アミノ終端と酸素終端の混合表面で閾値電圧が正方向にシフトすることにより、pH感応性を有することを特徴とするセンサ。
【請求項3】
請求項2記載のセンサにおいて、前記pHの上昇が、2から12であることを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項2又は3記載のセンサにおいて、前記表面のアミノ終端にウレアーゼをグルタルアルデヒド(2価のアルデヒド)を介して固定し、尿素濃度の上昇によって、閾値電圧が正方向にシフトすることにより、尿素の感応性を示すようにしたことを特徴とするセンサ。
【請求項5】
請求項4記載のセンサにおいて、前記尿素濃度の上昇が、10-6Mから10-2Mであることを特徴とするセンサ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、pチャンネル電界効果トランジスタ及びそれを用いたセンサに係り、特に、化学センサ及びバイオセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本願発明者は、既に、液体電解質をゲートとして使用し、ダイヤモンドの水素終端表面をチャンネルとした電界効果トランジスタを提案している(下記特許文献1及び2参照)。
【0003】
ところで、ウレアーゼ(酵素)の触媒作用により、尿素が加水分解し、アンモニアを発生し、pHが上昇することは知られている。シリコン系イオン感応性FET(ISFET)では、ウレアーゼ(酵素)を保護膜兼感応膜であるシリコン窒化物上に固定し、pHの変化を検出する。この場合、ウレアーゼ(酵素)の固定密度及び固定強度が検出精度を左右する。また、ウレアーゼ(酵素)とISFETを分離する方法があるが、この場合には、検出感度が低下するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特許第3313696号公報(第2-4頁 図1)
【特許文献2】
特許第3390756号公報(第2-4頁 図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況に鑑みて、酵素をFETチャンネル表面(ダイヤモンド表面)に直接固定することにより、酵素の感応性を向上させることができるpチャンネル電界効果トランジスタ及びそれを用いたセンサを提供することを目的とする。
【0006】
特に、ウレアーゼをFETチャンネル表面(ダイヤモンド表面)に直接固定することにより、尿素濃度の感応性を向上させることができるpチャンネル電界効果トランジスタ及びそれを用いたセンサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕pチャンネル電界効果トランジスタにおいて、液体電解質をゲートとして使用し、水素終端、酸素終端及びアミノ終端が混合されたダイヤモンド表面をチャンネルとした。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載のpチャンネル電界効果トランジスタを用いて、前記液体電解質のpHの上昇に対し、前記アミノ終端と酸素終端の混合表面で閾値電圧が正方向にシフトすることにより、pH感応性を有することを特徴とする。
【0009】
〔3〕上記〔2〕記載のセンサにおいて、前記pHの上昇が、2から12であることを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔2〕又は〔3〕記載のセンサにおいて、前記表面のアミノ終端にウレアーゼをグルタルアルデヒド(2価のアルデヒド)を介して固定し、尿素濃度の上昇により、閾値電圧が正方向にシフトすることにより、尿素の感応性を示すようにしたことを特徴とする。
【0011】
〔5〕上記〔4〕記載のセンサにおいて、前記尿素濃度の上昇が、10-6Mから10-2Mであることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明にかかる電解質溶液ゲートダイヤモンドFETの斜視図、図2はその電解質溶液ゲートダイヤモンドFETの断面図である。
【0014】
この図において、1は多結晶CVDダイヤモンド基板、2はP型表面伝導層、3はソース電極(Au)、4はドレイン電極(Au)、5はソース電極(Au)3を覆うエポキシ樹脂、6はドレイン電極(Au)4を覆うエポキシ樹脂、7は電解質溶液、8はゲート電極(Ag/AgCl参照電極)である。
【0015】
この電解質溶液ゲートダイヤモンドバイオセンサは、従来のシリコン基板上にソース・ドレインを有するシリコンバイオセンサに比べると、安価な多結晶CVDダイヤモンド基板を用いるため低コスト化を図ることができる。
【0016】
また、シリコンバイオセンサでは、シリコン窒化物、シリコンダイオキサイドを通してシグナルが検出されるが、保護膜、感応膜がないダイヤモンドセンサではシグナルを直接検出することができる。そのため、ダイヤモンドセンサではノイズがないシグナルの検出ができる。
【0017】
また、本発明では、紫外線を用いて水素終端ダイヤモンド表面を改質した。
【0018】
すなわち、酸素を入れて紫外線を照射すると、オゾンにより水素終端表面が部分的に酸化され酸素終端になる。また、基板をアンモニア溶液に入れて紫外線を照射すると、水素終端ダイヤモンド表面が部分的にアミノ終端になる。酸素終端とアミノ終端は絶縁性なので、電解質溶液ゲートFETのコンダクタンスが少し下がるが、デバイス動作への影響は少ない。
【0019】
図3は本発明にかかるアミノ化された基板のXPS測定結果を示す図である。
【0020】
これはアンモニア溶液の中に基板を入れて紫外線を照射することにより、アミノ終端された基板のXPS測定結果であり、図3(a)は炭素、図3(b)は窒素、図3(c)は酸素を示している。これらの図において、窒素のピークと酸素のピークが見える。このことより、アンモニア溶液中で基板に紫外線を照射すると、水素終端ダイヤモンド表面が部分的にアミノ終端、酸素終端されることがわかる。なお、これらの図において、縦軸は光電子検出強度(任意単位)、横軸は結合エネルギーである。
【0021】
図4は本発明の実施例を示す電解質溶液ゲート酵素バイオセンサの模式図である。
【0022】
この図において、11は多結晶CVDダイヤモンド基板、12はP型表面伝導層(水素、酸素、アミノ基により終端された基板表面)、13はソース電極(Au)、14はドレイン電極(Au)、15はソース電極(Au)13を覆うエポキシ樹脂、16はドレイン電極(Au)14を覆うエポキシ樹脂、17は電解質溶液、18はゲート電極(Ag/AgCl参照電極)、19は酵素、20は基質である。
【0023】
上記した方法で水素、酸素、アミノ基により終端された多結晶ダイヤモンド基板11の表面チャンネル12上で、電解質溶液ゲートFETを作製した。
【0024】
図4に示したように、P型表面伝導層(水素終端表面の一部がアミノ終端、酸素終端された基板表面)12には酵素19を直接固定することができ、この酵素19に電解質溶液17中の基質20を結合させることができる。
【0025】
図5は本発明の実施例を示す部分的にアミノ終端、酸素終端された水素終端ダイヤモンド基板のpH感応性を示す図(その1)であり、図5(a)はゲート・ソース間電圧VGSが-0.7Vの場合のドレイン・ソース間電圧VDSに対するドレイン・ソース間電流IDSの特性図、図5(b)はドレイン・ソース間電圧VDSが-0.1Vの場合のゲート・ソース間電圧VGSに対するドレイン・ソース間電流IDSの特性図である。
【0026】
これらの場合、pH2-12の間でpH感応性を示した。
【0027】
図6は本発明の実施例を示す部分的にアミノ終端、酸素終端された水素終端ダイヤモンド基板のpH感応性を示す図(その2)であり、この図において、横軸はpHを、縦軸は閾値電圧〔V〕を示している。
【0028】
これらの図から、部分的にアミノ終端、酸素終端された水素終端ダイヤモンド基板は、pH感応性を有することが分かる。
【0029】
図7は本発明の実施例を示すウレアーゼがアミノ終端されたダイヤモンド表面に固定された溶液ゲート酵素バイオセンサの模式図、図8はそのアミノ終端されたダイヤモンド表面での作用を示す模式図である。
【0030】
これらの図において、21は多結晶CVDダイヤモンド基板、22は水素終端、酸素終端、アミノ終端が混在したダイヤモンド表面、23はソース電極(Au)、24はドレイン電極(Au)、25はソース電極(Au)23を覆うエポキシ樹脂、26はドレイン電極(Au)24を覆うエポキシ樹脂、27は尿素(ウレア)溶液、28はゲート電極、29は固定されたウレアーゼ、30はグルタルアルデヒド、31はアミノ基である。
【0031】
図8(a)に示すように、水素終端、酸素終端、アミノ終端が混在したダイヤモンド表面22上にグルタルアルデヒドOHC(CH2 3 CHO30を作用させて処理すると、図8(b)に示すように、水素終端、酸素終端、アミノ終端が混在したダイヤモンド表面22上のアミノ基31にグルタルアルデヒド30が固定される。そこへ、ウレアーゼ29を作用させると、図8(c)に示すように、グルタルアルデヒド30にウレアーゼ29のアミノ基31が結合する。つまり、水素終端、酸素終端、アミノ終端が混在したダイヤモンド表面22にウレアーゼ29を固定できる。
【0032】
図9は本発明の実施例を示すダイヤモンドウレアセンサのウレア濃度特性図(その1)であり、図9(a)はゲート・ソース間電圧VGSが-0.7Vの場合のドレイン・ソース間電圧VDSに対するドレイン・ソース間電流IDSの特性図、図9(b)はドレイン・ソース間電圧VDSが-0.1Vの場合のゲート・ソース間電圧VGSに対するドレイン・ソース間電流IDSの特性図である。
【0033】
図10は本発明の実施例を示すダイヤモンドウレアセンサのウレア濃度特性図(その2)であり、図10(a)は尿素の化学的作用(分解)の説明図、図10(b)は尿素のセンシング特性図であり、横軸に尿素濃度(M)、縦軸に閾値電圧Vth(V)を示している。
【0034】
図9に示したように、ウレアーゼが固定されているダイヤモンド電解質溶液ゲートFETでは、尿素濃度が増加するとドレイン電流は増加し、閾値電圧は正方向にシフトする。
【0035】
図10(a)に示すように、尿素は水の中でウレアーゼに分解される。その分解過程で、アルカリ性のアンモニア酸と酸性の炭酸が発生する。アルカリ性のアンモニア酸は酸性の炭酸より強いため、ダイヤモンド表面のpHが上がる。pHが増加すると、ダイヤモンド電解質溶液ゲートFETのドレイン電流も増加する。
【0036】
このように、本発明のダイヤモンドウレアセンサは、そのpH変化を検出する酵素センサである。図10(b)に示すように、閾値電圧のシフトは約30mV/decadeである。10-6Mから10-2Mまで尿素濃度を増加すると、閾値電圧は正方向に約0.1Vシフトし、30mV/decadeの尿素濃度感応性を示した。
【0037】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0038】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0039】
(A)酵素をFETチャンネル表面(ダイヤモンド表面)に直接固定することにより、酵素濃度の感応性を向上させることができる。
【0040】
(B)尿素濃度の簡便な測定は、健康医療で重要である。特に、腎機能の指標として臨床検査に使用される血中尿素の測定などに有用である。
【0041】
(C)食品検査、特に牛乳中の尿素検査の簡便化を図ることできる。
【0042】
(D)生化学分析における微量尿素(μM)の測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる電解質溶液ゲートダイヤモンドFETの斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示す電解質溶液ゲートダイヤモンドFETの断面図である。
【図3】本発明にかかるアミノ化された基板のXPS測定結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示す電解質溶液ゲート酵素バイオセンサの模式図である。
【図5】本発明の実施例を示す部分的にアミノ終端、酸素終端された水素終端ダイヤモンド基板のpH感応性を示す図(その1)である。
【図6】本発明の実施例を示す部分的にアミノ終端、酸素終端された水素終端ダイヤモンド基板のpH感応性を示す図(その2)である。
【図7】本発明の実施例を示すウレアーゼがアミノ終端されたダイヤモンド表面に固定された溶液ゲート酵素バイオセンサの模式図である。
【図8】本発明の実施例を示すウレアーゼがアミノ終端されたダイヤモンド表面での作用を示す模式図である。
【図9】本発明の実施例を示すダイヤモンドウレアセンサのウレア濃度特性図(その1)である。
【図10】本発明の実施例を示すダイヤモンドウレアセンサのウレア濃度特性図(その2)である。
【符号の説明】
1,11,21 多結晶CVDダイヤモンド基板
2,12 P型表面伝導層
3,13,23 ソース電極(Au)
4,14,24 ドレイン電極(Au)
5,15,25 ソース電極(Au)を覆うエポキシ樹脂
6,16,26 ドレイン電極(Au)を覆うエポキシ樹脂
7,17 電解質溶液
8,18,28 ゲート電極(Ag/AgCl参照電極)
19 酵素
20 基質
22 水素終端、酸素終端、アミノ終端が混在したダイヤモンド表面
27 尿素(ウレア)溶液
29 ウレアーゼ
30 グルタルアルデヒド
31 アミノ基
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9