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明細書 :遷移金属炭化物からなる電極触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4463490号 (P4463490)
公開番号 特開2004-303664 (P2004-303664A)
登録日 平成22年2月26日(2010.2.26)
発行日 平成22年5月19日(2010.5.19)
公開日 平成16年10月28日(2004.10.28)
発明の名称または考案の名称 遷移金属炭化物からなる電極触媒
国際特許分類 H01M   4/90        (2006.01)
B01J  27/22        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
FI H01M 4/90 X
B01J 27/22 M
C25B 11/06 A
H01M 4/88 K
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2003-097408 (P2003-097408)
出願日 平成15年3月31日(2003.3.31)
審査請求日 平成18年2月22日(2006.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】太田 健一郎
【氏名】神谷 信行
【氏名】光島 重徳
【氏名】石原 顕光
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】小川 進
参考文献・文献 特開昭63-091959(JP,A)
特開昭58-140975(JP,A)
D.R.McIntyre,A.Vossen,J.R.Wilde,G.T.Burstein,“Electrocatalytic properties of a nickel-tantalum-carbon alloy in an acidic electrolyte”,Journal of Power Sources,2002年 6月 1日,Vol.108,p.1-7
調査した分野 H01M 4/90
B01J 27/22
C25B 11/06
H01M 4/88
特許請求の範囲 【請求項1】
遷移金属炭化物に該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属を添加した遷移金属炭化物からなる電極触媒であって、該少なくとも1種の単体金属は酸性電解液中で該遷移金属よりも優先的に酸化されて、遷移金属炭化物の触媒活性を阻害しない程度の厚さの酸化皮膜を形成する金属であり、可逆水素電極電位に対して0.4V以上の電位で使用されることを特徴とする遷移金属炭化物からなる電極触媒。
【請求項2】
電子伝導性粉末である触媒担体上に微粒子として分散させたことを特徴とする請求項1記載の遷移金属炭化物からなる電極触媒。
【請求項3】
酸性電解質を用いる燃料電池用電極触媒として用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の遷移金属炭化物からなる電極触媒。
【請求項4】
遷移金属炭化物からなる電極触媒をスパッタ法にて製造する際に、ターゲットとして遷移金属炭化物と、該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属を用い、該遷移金属炭化物と該単体金属を同時スパッタすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の遷移金属炭化物からなる電極触媒の製造方法。
【請求項5】
遷移金属炭化物からなる電極触媒を溶液からの還元析出法で製造する際に、該溶液に遷移金属炭化物の原材料と、該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属原料を仕込んで遷移金属炭化物と該単体金属を同時析出させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の遷移金属炭化物からなる電極触媒の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水電解、有機電解、燃料電池用などの電気化学システム用の電極触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
貴金属、特に、白金は高い電位で安定であり、各種の反応に対して触媒能が高いため、各種電気化学システムの電極触媒として用いられている。しかしながら、白金の価格が高いことや資源量が限られていること、燃料電池用の電極触媒としては更に高活性の電極触媒が要求されることから、白金触媒の代替材料が望まれている。
【0003】
遷移金属炭化物は白金とその電子構造が類似しているものがあり、白金触媒の代替材料として注目されてきた(例えば、非特許文献1,2、特許文献1)。その高い電気伝導性も電極触媒としての利点であり、電極触媒としての利用が試みられている。
【0004】
【非特許文献1】
R. J.Colton etal.,Chem.Phys.Lett., 34-2,337(1975)
【非特許文献2】
L.H. Bennett et al., Science, 184, 563 (1974)
【特許文献1】
特公昭63-10084号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、酸性電解質中で0.4V以上の電極電位が高い状態では、遷移金属炭化物は活性溶解し、安定に存在することができないことが報告されており(米山宏ら、電気化学、41,719(1973))、電極触媒としての適用範囲は電極電位が低い場合に限定されており、遷移金属炭化物の触媒能を維持して耐食性を向上する必要があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、遷移金属炭化物に該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属を添加し、その添加金属の種類と添加量のバランスをとることによって酸性電解液中で使用される遷移金属炭化物からなる電極触媒の耐食性の著しい向上を図ることができることを見出し、これにより、可逆水素電極電位に対して0.4V以上の電位で使用しても溶解しない耐食性を有する遷移金属炭化物からなる電極触媒が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)遷移金属炭化物に該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属を添加した遷移金属炭化物からなる電極触媒であって、該少なくとも1種の単体金属は酸性電解液中で該遷移金属よりも優先的に酸化されて、遷移金属炭化物の触媒活性を阻害しない程度の厚さの酸化皮膜を形成する金属であり、可逆水素電極電位に対して0.4V以上の電位で使用されることを特徴とする遷移金属炭化物からなる電極触媒、である。
【0008】
また、本発明は、(2)電子伝導性粉末である触媒担体上に微粒子として分散させたことを特徴とする上記(1)の遷移金属炭化物からなる電極触媒、である。
【0009】
また、本発明は、(3)酸性電解質を用いる燃料電池用電極触媒として用いられることを特徴とする上記(1)又は(2)の遷移金属炭化物からなる電極触媒、である。
【0010】
また、本発明は、(4)遷移金属炭化物からなる電極触媒をスパッタ法にて製造する際に、ターゲットとして遷移金属炭化物と、該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属を用い、該遷移金属炭化物と該単体金属を同時スパッタすることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかの遷移金属炭化物からなる電極触媒の製造方法、である。
【0011】
また、本発明は、(5)遷移金属炭化物からなる電極触媒を溶液からの還元析出法で製造する際に、該溶液に遷移金属炭化物の原材料と、該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属原料を仕込んで遷移金属炭化物と該単体金属を同時析出させることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかの遷移金属炭化物からなる電極触媒の製造方法、である。
【0012】
【作用】
本発明の遷移金属炭化物からなる電極触媒は、電極作成時は空気中でわずかに酸化されている程度であり、表面に耐食性の高い酸化皮膜はできていないが、酸性電解質中で、高い電位にした場合に、電極最表面の遷移金属炭化物が速やかに溶解し、遷移金属炭化物からなる電極触媒に添加した単体金属がいわゆる弁金属として作用する薄い酸化皮膜を電極表面に形成し、遷移金属炭化物の更なる溶解から保護すると考えられる。よって、可逆水素電極電位に対して0.4V以上1.5V程度までの電位で使用しても十分な耐食性がもたらされる。
【0013】
弁金属は電極電位が高い状態で、遷移金属炭化物の粒子や膜の表面に遷移金属炭化物の腐食性溶液に対して安定な酸化物皮膜を形成する性質を持っている。したがって、腐食性溶液によって活性溶解する遷移金属炭化物に弁金属を酸化物皮膜形成元素として適量添加することにより、電極触媒の耐食性を著しく向上させることができる。
【0014】
さらに、遷移金属炭化物への弁金属の添加量を制御することにより、遷移金属炭化物電極の反応活性点の減少を抑えることができる。弁金属の酸化皮膜が薄いと活性点が溶解してしまい触媒能がなくなる。逆に、酸化皮膜が厚いと活性点を覆ってしまい、単なる弁金属の酸化物電極となってしまい、触媒能がなくなる。言い換えると、活性点が溶解しないように薄く被覆させるが、完全に覆ってしまうほど厚くないように制御する必要がある。酸化皮膜を厚く被覆すると反応活性点は減少してしまう。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、遷移金属炭化物は、その遷移金属がタングステン、モリブデン、ニッケル、銅、コバルト、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、マンガン、鉄、のうちの1種類以上の遷移金属、例えば、WC,WC,NiC,CuC,CoC,VC,MnC,ZrC,NbC,CrC,MoCなどやW0.3Co0.20.5などである。
【0016】
酸性電解液中で該遷移金属よりも優先的に酸化されて、遷移金属炭化物の触媒活性を阻害しない程度の厚さの酸化皮膜を形成する金属(以下、弁金属という)としては、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。
【0017】
遷移金属炭化物に該遷移金属と異なる単体金属、すなわち弁金属を添加する方法としては、例えば、ターゲットとして遷移金属炭化物と該遷移金属と異なる少なくとも1種の単体金属を用い、基板上に遷移金属炭化物と同時に弁金属をスパッタして薄膜を形成してもよいし、溶液から遷移金属炭化物微粒子を生成する際に遷移金属炭化物の原材料に遷移金属炭化物の該遷移金属と異なる弁金属原料を仕込んで遷移金属炭化物と該弁金属を同時析出させてもよい。要するに、遷移金属炭化物に原子レベルで弁金属が混合されていればよい。
【0018】
形成される弁金属の酸化物皮膜の厚さが薄すぎると耐食性が得られず、厚すぎると弁金属の単なる酸化物電極になってしまい、遷移金属炭化物の触媒能が発現しなくなる。したがって、弁金属の酸化物皮膜の形成方法、遷移金属炭化物、弁金属の種類などに応じて形成する膜厚みを適切な範囲に調整すべく、弁金属の種類と添加量のバランスをとる必要がある。例えば、タングステン炭化物に弁金属としてタンタルを添加する場合には、原子比率でW:Ta=3:1程度が望ましい。
【0019】
触媒担体としてカーボンブラックなどの炭素を用いて燃料電池へ使用する場合は、弁金属を添加した遷移金属炭化物微粒子として炭素に高分散させることにより、触媒量を減少させることができる。
【0020】
【実施例】
実施例1
遷移金属としてタングステンを用いた炭化タングステンからなる炭化物電極触媒をスパッタ法にて、直径5mmのグラッシーカーボン上に製作した。スパッタ時のヘリウム圧は1x10-5 Pa以下とした。弁金属としてタンタルを用いた。スパッタターゲットとして炭化タングステンを用い、ターゲット上に金属タンタル片を乗せてスパッタすることにより、炭化タングステンへのタンタル添加量を制御した。水晶振動式膜厚計を用いて、スパッタ量を計測し、厚さがおよそ1μmのタンタル添加炭化タングステン電極を作製した。タングステンとタンタルの組成比は、EPMAにより同定した。
【0021】
比較例1
実施例1と同様に、遷移金属としてタングステンを用いた炭化タングステンからなる炭化物電極触媒をスパッタ法にて、グラッシーカーボン上に製作した。タンタルは添加しなかった。
【0022】
このようにして作製した実施例1及び比較例1の電極の触媒能を酸素還元反応に対して評価した。作製した電極を、固体酸性電解質膜上、30℃、窒素雰囲気及び酸素雰囲気において高電位に設定した。このときタンタルの酸化物皮膜が生成する。その後、5mV/sの電位走査速度で分極し、電流-電位曲線で評価した。
【0023】
図1に、比較例1の炭化タングステン及び実施例1のタンタル添加炭化タングステンの窒素雰囲気における電流-電位曲線を比較した。比較例1の炭化タングステン電極の自然電位は0.45Vと低く、それ以上の電位ではアノード電流が観察され、活性溶解することを示している。それに対して、実施例1のタンタル添加炭化タングステンの自然電位は0.85V付近まで上昇し、それ以下の電位では酸化電流が観察されないことから、耐食性が向上したことがわかる。
【0024】
図2に、タンタル添加炭化タングステン電極の酸素還元反応の触媒能を評価した。酸素雰囲気において、窒素雰囲気と比較して、大きな還元電流が観察され、これは酸素還元反応に対して触媒活性があることを示している。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明は、これまでに得られていない、高い電極電位において高い耐食性を持ち、かつ触媒能を有する遷移金属炭化物からなる電極触媒を実現したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、比較例1及び実施例1の電極触媒の窒素雰囲気における電流-電位曲線を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1の電極触媒の酸素還元反応における触媒能を評価したグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
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