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明細書 :上肢手指リハビリテーションシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4002974号 (P4002974)
公開番号 特開2004-267254 (P2004-267254A)
登録日 平成19年8月31日(2007.8.31)
発行日 平成19年11月7日(2007.11.7)
公開日 平成16年9月30日(2004.9.30)
発明の名称または考案の名称 上肢手指リハビリテーションシステム
国際特許分類 A61H   1/02        (2006.01)
A63B  23/16        (2006.01)
FI A61H 1/02 K
A63B 23/16
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2003-058396 (P2003-058396)
出願日 平成15年3月5日(2003.3.5)
審査請求日 平成15年3月13日(2003.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】川▲崎▼ 晴久
【氏名】伊藤 聡
【氏名】廣渡 洋史
【氏名】林 浩之
【氏名】木村 宏樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100098224、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 勘次
審査官 【審査官】瀬戸 康平
参考文献・文献 特開平11-164860(JP,A)
米国特許第5683351(US,A)
特開平7-323048(JP,A)
特開平10-155847(JP,A)
特開平11-89897(JP,A)
特開平11-253504(JP,A)
特開2002-127058(JP,A)
特開2002-345861(JP,A)
調査した分野 A61H 1/02
A63B 23/00
A61F 2/50
特許請求の範囲 【請求項1】
正常な運動機能を有する健側上肢手指の五本の指に各々独立して装着され、患者の意志に基づいて能動的に動かされる前記健側上肢手指の運動を検出可能な運動検出装置と、
運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指の五本の指に各々独立して装着され、前記患側上肢手指を他動的に運動させる回復訓練装置と、
前記運動検出装置及び前記回復訓練装置に接続され、前記健側上肢手指の運動に対応させて前記回復訓練装置による前記患側上肢手指の運動を制御する制御装置とを具備し、
前記運動検出装置は、
前記健側上肢手指の関節の関節角度を予め設定した単位時間毎に検知する角度検知手段と、
前記角度検知手段によって検知された前記関節角度を角度データとして、前記制御装置に送出する角度データ送出手段とをさらに有し、
前記制御装置は、
前記運動検出装置から送出された前記角度データを受付ける角度データ受付手段と、
受付けた前記角度データに基づいて前記患側上肢手指を他動的に運動させるための制御データを生成する制御データ生成手段と、
生成された前記制御データを前記回復訓練装置に対して送出する制御データ送出手段とをさらに有し、
前記回復訓練装置は、
前記制御装置から送出された前記制御データを受付ける制御データ受付手段と、
前記回復訓練装置の装着された前記患側上肢手指を前記健側上肢手指の能動的な動きに合わせて左右対称になるように他動的に運動させ、運動機能の回復訓練を行う訓練手段と、
前記訓練手段にしたがって前記患側上肢手指を他動的に運動させることによって生じる力を検出する力検出手段と、
検出された前記力に係る力覚データを前記制御装置に送出する力覚データ送出手段と
を具備し、
前記制御装置は、
前記回復訓練装置から送出された前記力覚データを受付ける力覚データ受付手段と、
受付けた前記力覚データに基づいて、前記患側上肢手指の患側関節角度の可動範囲を規制する可動規制手段とをさらに有し、
前記制御データ及び前記訓練手段に基づいて、単位時間毎に検知された前記健側上肢手指の前記関節角度に対応させて前記患者が動かす関節及び動作速度を意識しながら前記患側上肢手指の五本の指の第一関節、第二関節、及び第三関節の患側関節角度を左右対称にそれぞれ独立して変位させることを特徴とする上肢手指リハビリテーションシステム。
【請求項2】
前記回復訓練装置は、
前記患側上肢手指の前記患側関節角度を検知する患側角度検知手段と、
検知された前記患側関節角度を患側角度データとして前記制御装置に送出する患側角度データ送出手段とをさらに備え、
前記制御装置は、
前記回復訓練装置から送出された前記患側角度データを受付ける患側角度データ受付手段と、
受付けた前記患側角度データ及び前記運動検出装置から送出された前記角度データを比較し、前記健側上肢手指の前記関節角度に対する前記患側関節角度の誤差を把握し、前記誤差を解消し、前記健側上肢手指及び前記患側上肢手指を左右対称とするための角度補正データを生成する角度補正データ生成手段と、
前記角度補正データに基づいて、生成された前記制御データを補正する補正手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の上肢手指リハビリテーションシステム。
【請求項3】
前記回復訓練装置は、
前記患側上肢手指を支持する支持本体と、
前記指の第一関節及び第二関節の間に装着される第一装着部と、
前記指の前記第二関節及び第三関節の間に装着される第二装着部と、
前記第一装着部及び前記第二装着部と互いに回動自在に連結され、略中央に設けられた第一曲折部によって曲折自在に形成される第一リンクアーム部と、
前記第一リンクアーム部の一端と接続し、前記第一リンクアーム部及び前記第一装着部を介して前記指の前記第二関節を可動させる第一可動モータと、
前記第二装着部及び前記支持本体と互いに回動自在に連結され、略中央に設けられた第二曲折部によって曲折自在に形成される第二リンクアーム部と、
前記第二リンクアーム部の一端と接続し、前記第二リンクアーム部及び前記第二装着部を介して前記指の前記第三関節を可動させる第二可動モータと
を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の上肢手指リハビリテーションシステム。
【請求項4】
前記回復訓練装置は、
前記第二リンクアーム部の一端と接続され、前記第二リンクアーム部を左右方向に揺動可能な揺動連結部と、
前記揺動連結部を介して連結された前記第二リンクアーム部を左右方向に揺動させる第三可動モータと
をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の上肢手指リハビリテーションシステム。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上肢手指リハビリテーションシステムに関するものであり、特に、正常な運動機能を有する健側の上肢手指の動きに対応させて、運動機能の回復訓練を要する患側の上肢手指を他動的に運動させ、リハビリテーションを行うことが可能な上肢手指リハビリテーションシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、三大成人病の一つとして数えられる脳卒中などの脳外科系疾患や、災害や交通事故などの人体に対して激しい衝撃が加わったことによる脊髄損傷などにより、身体(主に手足)の少なくとも一部の運動機能が著しく低下し、若しくは麻痺などによって損なわれることがある。
【0003】
この場合、特に脳卒中などの脳外科系疾患の場合、全身の運動機能の全てが損なわれることはなく、いずれか一方の半身(左半身若しくは右半身)の運動機能が損なわれることが一般的である。なお、正常な運動機能を有する半身側を「健側(健常側)」、一方、運動機能が低下し、機能回復訓練等が必要な半身側を「患側」と呼称することが、医療関係者の間に一般的に定義されており、本明細書中においても係る定義に基づいて以下の説明を行うものとする。
【0004】
一般に、いずれか一方の半身の運動機能が低下した患者は、身体の運動機能の回復を行うために、種々のリハビリテーション等の機能回復訓練を行うことがある。このとき、リハビリテーションはリハビリテーション専門医或いは理学療法士などの専門的技術を有する医療スタッフの在籍する医療施設で行われることが多い。そして、係る医療スタッフによって各患者の運動機能の回復状況に応じて適切にプランニングされたリハビリテーションプログラム(メニュー)に則って、上述のリハビリテーションが行われている。
【0005】
以上の従来技術は、当業者において当然として行われているものであり、出願人は、この従来技術が記載された文献等を本願出願時において特に知見していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したように、患者はリハビリテーションを受けるために、医療スタッフのいる専用の医療施設まで通院する必要があった。ところが、リハビリテーションを行うために患者が医療施設まで毎日通院することは、時間的及び経済的な側面から制約されることが多く、医療施設に継続して通うことは困難となることがあり、運動機能の回復が当初の見込みに対して遅延するなどの問題を生じていた。
【0007】
一方、医療施設においても、患者の数に応じて多くの医療スタッフを備える必要があり、人件費等の問題から充分な人数の医療スタッフを揃えることができず、一人の医療スタッフが患者一人当たりに対応することができる指導時間が限られてしまうことがあった。その結果、適切なリハビリテーションの指導が受けられないこととがあり、前述と同様に運動機能の回復が遅れることがあった。
【0008】
また、現在においては、リハビリテーションをより簡便に行うために、種々の機器(CPM機器など)が多く開発されており、特に、肩、肘、手首、及び指などの上肢・手指の機能回復を目的としたものが多かった。ところが、これらの従来の機器は、運動機能が低下し、動かなくなった関節に屈曲及び伸展の運動を強制的に繰返えさせるものに過ぎなかった。また、手指の機能回復を目的とする機器は、五本(若しくは親指を除く四本)の指を、一度にまとめて屈曲・伸展運動させるものが多く、個々の指に対して独立した運動を行わせることはできなかった。
【0009】
ここで、人間の手指は、人体を構成する部位の中で、特に複雑でかつ精細な動きをすることができる箇所であり、上述のような屈曲及び伸展を単純に繰返すような運動を行わせるだけでは、ある程度運動機能が回復した段階では、それ以上の訓練効果が望めないことがあった。その結果、本来の手指が備える複雑でかつ細やかな運動機能を回復させるための訓練機器が望まれていた。
【0010】
さらに、上述の従来の機器は、上肢や手指の可動する関節を予め設定した可動範囲で他動的に運動させるようプログラムされたものが多かった。その結果、患者の運動機能の回復状況によっては、回復訓練を行う関節の可動範囲よりも、前述の機器による可動範囲の方が広く設定されていることがあった。そのため、機器を用いた回復訓練によって関節に強い力や負荷がかかり、かえって機能回復の効果を損なう結果がもたらされるケースもあった。
【0011】
加えて、一般にリハビリテーションは、機能低下した関節等を単純に他動的に運動させるだけでは十分な効果を得ることができず、患者自身が積極的(能動的)に患側の上肢及び手指を動かそうとする意志等を伴うことによって、機能回復が速やかに進むことが知られている。ところが、上述した機器には、係る点を考慮して開発されたものが皆無であった。
【0012】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、正常に機能する健側上肢手指を患者の意志によって能動的に動かし、健側上肢手指の動きに左右対称に対応させて運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指を運動させ、リハビリテーションを行うことが可能な上肢手指リハビリテーションシステムの提供を課題するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる上肢手指リハビリテーションシステムは、「正常な運動機能を有する健側上肢手指の五本の指に各々独立して装着され、患者の意志に基づいて能動的に動かされる前記健側上肢手指の運動を検出可能な運動検出装置と、運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指の五本の指に各々独立して装着され、前記患側上肢手指を他動的に運動させる回復訓練装置と、前記運動検出装置及び前記回復訓練装置に接続され、前記健側上肢手指の運動に対応させて前記回復訓練装置による前記患側上肢手指の運動を制御する制御装置とを具備し、前記運動検出装置は、前記健側上肢手指の関節の関節角度を予め設定した単位時間毎に検知する角度検知手段と、前記角度検知手段によって検知された前記関節角度を角度データとして、前記制御装置に送出する角度データ送出手段とをさらに有し、前記制御装置は、前記運動検出装置から送出された前記角度データを受付ける角度データ受付手段と、受付けた前記角度データに基づいて前記患側上肢手指を他動的に運動させるための制御データを生成する制御データ生成手段と、生成された前記制御データを前記回復訓練装置に対して送出する制御データ送出手段とをさらに有し、前記回復訓練装置は、前記制御装置から送出された前記制御データを受付ける制御データ受付手段と、前記回復訓練装置の装着された前記患側上肢手指を前記健側上肢手指の能動的な動きに合わせて左右対称になるように他動的に運動させ、運動機能の回復訓練を行う訓練手段と、前記訓練手段にしたがって前記患側上肢手指を他動的に運動させることによって生じる力を検出する力検出手段と、検出された前記力に係る力覚データを前記制御装置に送出する力覚データ送出手段とを具備し、前記制御装置は、前記回復訓練装置から送出された前記力覚データを受付ける力覚データ受付手段と、受付けた前記力覚データに基づいて、前記患側上肢手指の患側関節角度の可動範囲を規制する可動規制手段とをさらに有し、前記制御データ及び前記訓練手段に基づいて、単位時間毎に検知された前記健側上肢手指の前記関節角度に対応させて前記患者が動かす関節及び動作速度を意識しながら前記患側上肢手指の五本の指の第一関節、第二関節、及び第三関節の患側関節角度を左右対称にそれぞれ独立して変位させる」ものとして主に構成されている。
【0014】
ここで、本発明の上肢手指リハビリテーションシステム(以下、単に「上肢手指リハビリシステム」と称す)は、患者の意志に基づいて能動的に動かされる健側上肢手指の動きに対応して、運動機能の回復訓練を要する患側上肢手段を他動的に運動させるものであり、健側上肢手指に装着可能な運動検出装置と、患側上肢手指に装着される回復訓練装置と、運動検出装置及び回復訓練装置と接続された制御装置とから主に構成されている。
【0015】
また、患側上肢手指とは、例えば、脳卒中などの後遺症として左半身若しくは右半身のいずれか一方が麻痺やしびれ、或いは一時的な運動機能の低下を生じた場合において、”運動機能等の低下した半身側の肩から指の先までの部分を総称して示すもの”であり、一方、健側上肢手指とは、”正常な運動機能を有する半身側の肩から指先までを総称して示すもの”と本明細書中において定義する。ここで、健側及び患側のいずれの上肢手指においても、肩関節、肘関節、手首関節、及び手指関節等の複数の関節に従って可動することが可能である。
【0016】
さらに、健側上肢手指に装着される運動検出装置の具体的な例について説明すると、運動検出装置は、上述した各関節(肩関節、指の第一関節等)などの可動(回動)可能な上肢手指のそれぞれの関節角度を検知可能なものである。このとき、関節角度を検知する頻度及びタイミングは、特に限定されないが、例えば、所定の単位時間毎(例えば、0.1s間隔など)に関節角度を検知することにより、関節角度の変位角量や変位速度などが算出され、健側上肢手指の連続的な動きを把握することが可能となる。
【0017】
一方、回復訓練装置は、患側上肢手指を他動的に運動させることが可能なものであり、具体的な構成として、例えば、複数のアームをジョイント(連結部)を利用して連結し、組合わされたリンク機構によって形成され、各々の関節を他動的に動かすための可動力を供給する複数の関節可動用の可動モータなどを備えるものから構成される。また、制御装置は、運動検出装置から送出された角度データに基づいて回復訓練装置の装着された患側上肢手指を他動的に運動させるための制御を行う制御データを生成可能なものであり、市販のパーソナルコンピュータなどの情報処理機器を利用し、上述の作用を奏させるように情報処理機器を機能させるプログラム(ソフトウェア)を実行させることにより、運動検出装置に対応して患側上肢手指を動かす制御が行えるようになる。
【0018】
上記に示した構成により、例えば、右半身側の健側上肢手指の小指を患者の意志によって能動的に動かすことにより、この動きに対応して健側上肢手指の小指の第一関節、第二関節、及び第三関節の関節角度がそれぞれ変化する。そして、この関節角度の変位がフレキシブル関節センサなど周知のセンサ技術を利用して検知される。これにより、患者の意志に基づく能動的な健側上肢手指の運動が、検出信号を電気的に変換することにより角度データとされ、運動検出装置と接続した制御装置に対して送出される。
【0019】
制御装置は、運動検出装置から送出されたこの角度データを受付け、角度データに基づいて回復訓練装置を制御するための指令値に相当する制御データを生成し、生成された制御データを回復訓練装置に対して送出する。このとき、回復訓練装置は、制御データから送付された制御データを受付け、制御データに従って訓練手段に含まれる関節可動用の可動モータを作動させ、健側上肢手指の関節角度に左右対称となるように対応させて患側上肢手指の各関節の患側関節角度を変位させる。これにより、訓練手段にしたがって患側上肢手指を他動的(換言すれば、強制的)に運動させることが可能となる。
【0020】
以上のように、本発明の上肢手指リハビリシステムによれば、健側上肢手指の能動的な動きに対応させて、患側上肢手指を動かすことが可能となる。これにより、患者は自らの運動機能の回復状況に合わせて、動かす関節及び動作速度を意識しながら決定し、運動機能の回復訓練を行うことが可能となる。すなわち、従来の機器のように、単純に各関節を他動的に屈曲及び伸展させるものでなく、患者の意志を伴ったリハビリテーションを行うことが可能となる。その結果、リハビリテーションによる機能回復効果がより高いものとなる。加えて、各関節の可動範囲が健側上肢手指の動きによって決定されるため、患側上肢手指に無理な負担がかかることがない。そのため、患側上肢手指の運動機能を逆に阻害するような運動が行われる可能性がほとんどなく、安全な状態で運動機能の回復に係るリハビリテーションを行える。
【0021】
また、本発明の上肢手指リハビリシステムは、患側上肢手指の各関節を独立して動かすことも可能となる。すなわち、従来の「CPM機器」は、前述したように手指の指をまとめて屈曲等の運動をさせるものがほとんどであり、独立して五本の指を動かすことができなかった。ところが、運動機能の回復がある程度まで進行すると、上述の全ての指をまとめて動かす動作によっては、それ以上の機能回復があまり見込まれないことがある。そこで、本発明の上肢手指リハビリシステムにおける回復訓練装置を利用し、健側上肢手指の各関節の動き、換言すれば、各指のそれぞれの動きを独立して動かすことにより、各指の動きをより複雑なものとすることが可能となる。その結果、患側上肢手指の運動機能の回復がより速やかとなり、回復に要する時間の短縮が期待され、日常生活等の各場面においてそれぞれ対応することができるようになるまで運動機能を回復させられる。ここで、患側上肢手指の関節の可動範囲が、機能低下によって健側上肢手指の関節の可動範囲よりも小さい場合、健側上肢手指と同じ可動範囲で患側上肢手指を動かそうとすると、患側上肢手指の関節を無理に動かすこととなり、過剰な負荷が生じることがある。その結果、関節の機能をかえって損なうことにもなる。そこで、患側上肢手指の動きに伴って発生する力を力覚センサなどの力検出手段によって検出し、力覚データとして制御装置に送出することを行う。そして、制御装置は受付けた力覚データに基づいて、患側上肢手指の関節の可動範囲を規制し、上述した無理な負荷が関節に加わらないようにするための制御データの補正が行われる。これにより、患側上肢手指の運動機能の回復訓練をより安全のものとすることができる。
【0022】
本発明の上肢手指リハビリテーションシステムは、上記の構成に加え、「前記回復訓練装置は、前記患側上肢手指の前記患側関節角度を検知する患側角度検知手段と、検知された前記患側関節角度を患側角度データとして前記制御装置に送出する患側角度データ送出手段とをさらに備え、前記制御装置は、前記回復訓練装置から送出された前記患側角度データを受付ける患側角度データ受付手段と、受付けた前記患側角度データ及び前記運動検出装置から送出された前記角度データを比較し、前記健側上肢手指の前記関節角度に対する前記患側関節角度の誤差を把握し、前記誤差を解消し、前記健側上肢手指及び前記患側上肢手指を左右対称とするための角度補正データを生成する角度補正データ生成手段と、前記角度補正データに基づいて、生成された前記制御データを補正する補正手段と」をさらに有する構成であっても構わない。
【0023】
上記構成により、健側上肢手指の動きに対応して運動する患側上肢手指の各関節の患側関節角度が回復訓練装置によって検知される。ここで、制御装置によって生成される制御データは、健側上肢手指の関節角度と患側上肢手指の患側関節角度を略一致させようとするためのものである。しかしながら、各可動モータの作動タイミング、制御装置における処理時間、及び健側上肢手指の急激な動作などの種々の要因によって、関節角度(健側)と患側関節角度とは必ずしもリアルタイムで完全に一致するものではない。そこで、本発明の構成に示すように、患側上肢手指の患側関節角度を検知し、健側上肢手指の関節角度との誤差(ずれ)を把握し、患側関節角度の患側角度データ(実測値に相当)を角度データ(目標値に相当)に近づけるような角度補正データを生成し、制御データを補正する、換言すればフィードバック機能を持たせることが行われる。これにより、健側上肢手指及び患側上肢手指の各関節角度をほぼ左右対称にさせることができる。なお、上述の角度補正データの生成は、把握された誤差を微積分処理することによって求めることができる。
【0024】
本発明の上肢手指リハビリシステムは、上記の構成に加え、「前記回復訓練装置は、前記患側上肢手指の運動によって生じる力を検出する力検出手段と、検出された前記力に係る力覚データを前記制御装置に送出する力覚データ送出手段とをさらに有し、前記制御装置は、送出された前記力覚データを受付ける力覚データ受付手段と、受付けた前記力覚データに基づいて、前記患側上肢手指の前記患側関節角度の可動範囲を規制する可動規制手段と」をさらに有するものであってもよい。
【0027】
本発明の上肢手指リハビリシステムは、「前記回復訓練装置は、前記患側上肢手指の患側手指の少なくともいずれか一つの指に装着可能に形成され、前記患側上肢手指を支持する支持本体と、前記指の第一関節及び第二関節の間に装着される第一装着部と、前記指の前記第二関節及び第三関節の間に装着される第二装着部と、前記第一装着部及び前記第二装着部と互いに回動自在に連結され、略中央に設けられた第一曲折部によって曲折自在に形成される第一リンクアーム部と、前記第一リンクアーム部の一端と接続し、前記第一リンクアーム部及び前記第一装着部を介して前記指の前記第二関節を可動させる第一可動モータと、前記第二装着部及び前記支持本体と互いに回動自在に連結され、略中央に設けられた第二曲折部によって曲折自在に形成される第二リンクアーム部と、前記第二リンクアーム部の一端と接続し、前記第二リンクアーム部及び前記第二装着部を介して前記指の前記第三関節を可動させる第二可動モータと」を具備している。
【0028】
ここで、第一リンクアーム部及び第二リンクアーム部は、前述したように複数のアームをジョイントで連結し、ジョイントを回動軸としてアームを回動可能に形成したものであり、患側上肢手指の各関節の可動範囲に合わせて回動させることにより、患側上肢手指の指の部分を他動的に運動させることができる。これにより、各装着部を介して装着された指の第二関節及び第三関節を、可動モータの可動力を利用して他動的に可動させ、患側上肢手指の運動機能の回復訓練が行える。その結果、上述した本発明の上肢手指リハビリテーションシステムにおける優れた作用を奏することとなる。
【0029】
本発明の上肢手指リハビリシステムは、上記構成に加え、「前記回復訓練装置は、前記第二リンクアーム部の一端と接続され、前記第二リンクアーム部を左右方向に揺動可能な揺動連結部と、前記揺動連結部を介して連結された前記第二リンクアーム部を左右方向に揺動させる第三可動モータと」をさらに具備するものであってもよい。
【0030】
したがって、本発明の上肢手指リハビリシステムによれば、第三可動モータを利用して、第二リンクアーム部を左右方向に揺動可能な揺動連結部を有している。ここで、実際の手指の第三関節は、手を握ったり、伸ばしたりする動作に加え、指と指との間を互いに左右方向に拡げる動作を行うことがある。そこで、本発明の上肢手指リハビリシステムによれば、上述した揺動連結部及び第三可動モータを含んだ構成を採用することにより、患側上肢手指の関節を屈曲及び展開させる運動に加え、指と指との間を開く動作を行わせることが可能となり、より複雑な動きを患側上肢手指に行わせられるようになる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の上肢手指リハビリシステム1を具現化した一実施形態について、図1乃至図9に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の上肢手指リハビリシステム1の概略構成を示す説明図であり、図2は上肢手指リハビリシステム1における運動検出装置2、制御装置3、及び回復訓練装置4のそれぞれの機能的構成を示すブロック図であり、図3は上肢手指リハビリシステム1の指訓練部28の構成を示す斜視図であり、図4乃至図6は指訓練部28の構成及び変位の態様を示す側面図であり、図7は指訓練部28における各関節の可動を模式的に説明する模式図であり、図8及び図9は上肢手指リハビリシステム1における運動検出装置2、制御装置3、及び回復訓練装置4における処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態の上肢手指リハビリシステム1は、患者CKの正常な運動機能を有する肩から指先までの健側上肢手指6を被覆するように装着され、患者CKの意志に基づいて能動的に動かされる健側上肢手指6の動きを検出可能な運動検出装置2と、運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指5に装着され、患側上肢手指5を他動的に運動させる回復訓練装置4と、運動検出装置2及び回復訓練装置4と電気的に接続され、健側上肢手指6の動きに対応させて、患側上肢手指5の動きを制御する制御装置3とを有している。ここで、図1は本発明の上肢手指リハビリシステム1の概略構成の一例を示したものであり、各構成要素(運動検出装置2、制御装置3、回復訓練装置4)の形状及び構造等を特に限定するものではない。また、図1に示すように、本実施形態の上肢手指リハビリシステム1を適用し、電子楽器Eの鍵盤Kを健側上肢手指6及び患側上肢手指5によってそれぞれ押す(叩く)動作を行わせ、患側上肢手指5の動きに目的若しくは目標を持たせるようにして、運動機能の回復を行わせるものであってもよい。
【0033】
さらに、図2に基づいて、運動検出装置2、制御装置3、及び回復訓練装置4のそれぞれの機能的構成について説明すると、運動検出装置2は、装着された健側上肢手指6の肩、肘、手首、及び指などの可動する各々の関節の関節角度を検知する角度検知センサ7を含んで構成される角度検知手段8と、角度検知手段8によって検知された関節角度を信号変換処理し、角度データ9として制御装置3に対して送出する角度データ送出手段10とを有して主に構成されている。
【0034】
ここで、運動検出装置2は、例えば、健側上肢手指6の肩から先の部位を被覆することができるような略グローブ形状のもので構成されたものが利用可能である。そして、健側上肢手指6の関節角度を角度検知センサ7によって検知することにより、健側上肢手指6の動きを認識することができる。なお、角度検知センサ7を含む角度検知手段8は、健側上肢手指6の各関節の関節角度を予め設定した単位時間毎(例えば、0.1s間隔など)に検知するものであり、角度データ送出手段10は、検知した結果を逐次、制御装置3に対して角度データ9として送出するものである。これにより、単位時間当たりの関節角度の変位量及び変位方向を認識することが可能となり、健側上肢手指6の連続的な動きを運動検出装置2は捉えることができる。
【0035】
また、制御装置3は、その機能的構成として、運動検出装置2から送出された角度データ9を受付ける角度データ受付手段11と、受付けた角度データ9に基づいて患側上肢手指5を運動させるための制御データ12を生成する制御データ生成手段13と、生成された制御データ12を回復訓練装置4に対して送出する制御データ送出手段14と、回復訓練装置4から送出される患側上肢手指5の患側関節角度Θ1等に対応する患側角度データ15を受付ける患側角度データ受付手段16と、受付けた患側角度データ15により、健側上肢手指6の各関節角度と対応する患側上肢手指5の各患側関節角度Θ1等との間の誤差を検出し、角度補正データ17を生成する角度補正データ生成手段18と、生成された角度補正データ17及び力覚データ20(後述する)に基づいて制御データ12の補正を行う補正手段19と、回復訓練装置4から送出される患側上肢手指5の運動によって生じる力を示す力覚データ20を受付ける力覚データ受付手段21とから主に構成されている。ここで、補正手段19は本発明における可動規制手段の機能を兼備しているものである。
【0036】
さらに、回復訓練装置4は、その機能的構成として、制御装置3から送出された制御データ12を受付ける制御データ受付手段22と、受付けた制御データ12に基づいて患側上肢手指5を他動的に動かして訓練を行う訓練手段23と、訓練手段23に基づいて変位する患側関節角度Θ1等を検知する患側角度検知手段24と、訓練手段23によって動く患側上肢手指5に生じる力を検知する力検出手段25と、検知した患側関節角度Θ1等に係る患側角度データ15を、制御装置3に対して送出する患側角度データ送出手段26と、検知した力に係る力覚データ20を制御装置3に対して送出する力覚データ送出手段27から主に構成されている。
【0037】
次に、患側上肢手指5を他動的に動かすための回復訓練装置4における訓練手段23の具体的構成について、図3乃至図7に基づいて説明する。なお、本実施形態の上肢手指リハビリシステム1の訓練手段23として、患側上肢手指5の指Fの第二関節PIP、及び第三関節MPをそれぞれ可動させ、各指Fの運動機能の回復訓練を実施することができる指訓練部28について例示している。
【0038】
指訓練部28は、図3乃至図7に示すように、患者CKの指F(例えば、人差し指)に装着されるものであり、患側上肢手指5の手首(図示しない)から先の部位を支持し、患側上肢手指5を訓練の間、所定の高さに保持することが可能な支持本体29と、指Fの第一関節DIP及び第二関節PIPの間に面ファスナー(図示しない)等の周知の固定手段を介して装着される第一装着部30と、指Fの第二関節PIP及び第三関節MPの間に同様の固定手段を介して装着される第二装着部31と、第一装着部30及び第二装着部31と互いに回動自在に連結され、略中央近傍に位置する第一曲折部32によって曲折自在に形成された第一リンクアーム部33と、第一リンクアーム部33の一端(但し、第一装着部30と連結される側と相対する側)と接続し、第一リンクアーム部33及び第一装着部30を介して指Fの第二関節PIPを可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する第一可動モータ34と、第二装着部31及び支持本体29と互いに回動自在に連結され、略中央近傍に位置する第二曲折部35によって曲折自在に形成される第二リンクアーム部36と、第二リンクアーム部36と接続し、第二リンクアーム部36及び第二装着部31を介して指Fの第三関節MPを可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する第二可動モータ37とを有して主に構成されている。
【0039】
ここで、図3乃至図6に示すように、第一可動モータ34は、第二リンクアーム部36の一部に内包された状態で収容され、第一リンクアーム部33と係る第一可動モータ34との間には、第一可動モータ34による軸回転運動を、第一リンクアーム部33を所定の可動範囲(図4乃至図6における矢印αに相当)で運動させるために変換して伝達する平歯車38などの伝達部材を含んで構成される第一伝達機構M1が形成されている。また、第二可動モータ37は、支持本体29に内包された状態で形成され、第二リンクアーム部36と係る第二可動モータ37との間には、第二可動モータ37による軸回転運動を、第二リンクアーム部36を所定の可動範囲(図4乃至図6における矢印βに相当)で運動させるために変換して伝達する第二伝達機構M2が形成されている。
【0040】
さらに、指訓練部28は、その他の構成として、第二リンクアーム部36の一端に接続して設けられ、第二リンクアーム部36を左右方向に揺動させるための揺動連結部39と、揺動連結部39を介して第二リンクアーム部36を揺動させ、第一装着部30及び第二装着部31が装着された指Fを、第三関節MPを回動軸として左右方向に揺動させるための揺動力を供給する第三可動モータ40とを有している。ここで、第三可動モータ40は、図4乃至図6に示すように、第二可動モータ37と同様に支持本体29に内包された状態で配設されている。
【0041】
加えて、第一装着部30及び第二装着部31のそれぞれには、指Fの各関節PIP,MPの動きによって生じる力を検知し、力覚データ20として認識する力覚センサ41が内設されている。
【0042】
ここで、図3乃至図6に示した指訓練部28は、説明を簡略化するため、係る指訓練部28に付設されるその他の訓練手段23及び回復訓練装置4の構成を省略している。これらには、制御データ12に基づいて各々の可動モータ34,37,40をモータ駆動させるための電流を供給するモータドライバや、力覚センサ41及び患側角度検知手段24によって検知され、信号変換処理によって生成された力覚データ20及び患側角度データ15を制御装置3に対して送出する際の、係るデータ15,20の信号を増幅する信号増幅器、及びそれらを接続する複数のケーブル等が含まれている。
【0043】
また、指訓練部28は、患側上肢手指5の手首から先の部位を所定の高さ及び位置に訓練の間に固定して支持するための一対の固定板42及び二つの固定用ボルト43が、支持本体29に取付けられている。
【0044】
上記構成により、指訓練部28は、図4乃至図6に示すように種々の態様に変位させることができる。これにより、患側上肢手指5の指Fを第二関節PIP及び第三関節MPのそれぞれの関節に沿って他動的に運動させることができる。ここで、本実施形態の指訓練部28によれば、指Fの関節の可動範囲は、指をまっすぐに伸ばした状態にしたときを基準とし、第二関節PIPの患側関節角度Θ1が「0°(伸展状態)~100°(屈曲状態)」の可動範囲となり、第三関節MPの患側関節角度Θ2が「-45°(伸展状態)~90°(屈曲状態)」の可動範囲でそれぞれ動かすことができるように設計されている。
【0045】
ここで、図4は”Θ1=0°/Θ2=0°”、図5は”Θ1=30°/Θ2=0°”、図6は”Θ1=0°/Θ2=45°”の状態を示している。さらに、図7に示すように、指訓練部28の第一装着部30及び第二装着部31を指Fにそれぞれ装着することにより、二点鎖線で示される四角形を成す閉リンク機構L1,L2がそれぞれ形成されることとなる。そして、第二関節PIPの患側関節角度Θ1を変位させる場合は、第二リンクアーム部36に対する第一リンクアーム部33の連結角度θを第一可動モータ34(図3等参照)を利用して変位させることにより、各々の連結角度θ,θが変位し、閉リンク機構L1の四角形状が変化する。これにより、第二関節PIPの患側関節角度Θ1の値が変化することとなる。一方、第三関節MPの患側関節角度Θ2を変位させる場合は、第二伝達機構M2を介して連結された第二リンクアーム部36の連結角度θを第二可動モータ37(図3等参照)を利用して変位させることにより、各々の連結角度θ,θが変位し、閉リンク機構L2の四角形状が変化する。これにより、第三関節MPの患側関節角度Θ2の値が変化することとなる。
【0046】
さらに、指訓練部28は、第二リンクアーム部36の一端と揺動連結部39を介して接続され、揺動力を供給可能な第三可動モータ40によって、第一リンクアーム部33及び第二リンクアーム部36を左右方向(図3における矢印γに相当)に揺動させることができる。したがって、本実施形態において示した回復訓練装置4の指訓練部28は、自由度が3に設定されている。
【0047】
次に、本実施形態の上肢手指リハビリシステム1における運動検出装置2、制御装置3、及び回復訓練装置4のそれぞれの処理について、図8及び図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
まず、運動検出装置2は、装着された健側上肢手指6の動きを検出する(ステップS1)。ここで、患者CKの健側上肢手指6は、正常な運動機能を保有し、患者CKの意志に基づいて能動的に動かすことができる。そこで、患者CKは、健側上肢手指6を動かす。そして、運動機能の回復訓練を行うために指訓練部28が取付けられた患側上肢手指5の指F(例えば、左手の人差し指)と左右対称に位置する健側上肢手指6の指(例えば、右手人差し指)を意識的に動かす。そして、運動検出装置2は、係る動きを検出する場合(ステップS1においてYES)、動きに伴って変位する健側上肢手指6の関節の関節角度を検知し、角度データ9として制御装置3に対して送出する(ステップS2)。一方、健側上肢手指6の動きを検出しない場合(ステップS1においてNO)、ステップS1の処理を継続し、運動検出装置2によって動きが検出されるまで待機する。
【0049】
さらに、運動検出装置2は、ステップS2において角度データ9の送出を行った後は、継続して健側上肢手指6の動きを検出するか否かの指示の有無を検出し(ステップS3)、継続して検出を行う指示が有る場合(ステップS3においてNO)、ステップS1の処理に戻り、健側上肢手指6の動きを繰返し、検出する。これにより、健側上肢手指6の動きを経時的に把握することができる。一方、検出を継続して行わない場合(ステップS3においてYES)、検出の処理を終了する(ステップS4)。
【0050】
一方、制御装置3は、初期状態においては、運動検出装置2からの角度データ9の送出の有無を検出する(ステップT1)。ここで、運動検出装置2から角度データ9の送出が検出されると(ステップT1においてYES)、係る角度データ9を受付ける(ステップT2)。一方、角度データ9の送出が検出されない場合(ステップT1においてNO)、ステップT1の処理を継続して行う。
【0051】
そして、受付けた角度データ9に基づいて、制御装置3は回復訓練装置4の指訓練部28を制御するための制御データ12を生成する(ステップT3)。ここで、制御データ12には、上述した指訓練部28のそれぞれの可動モータ35等によって患側関節角度Θ1,Θ2の変位量や可動モータ35をそれぞれ可動させるタイミングなどに係る情報が含まれ、健側上肢手指6の動きに左右対称にして患側上肢手指5を動かすことができるようになっている。そして、生成した制御データ12を回復訓練装置4に対して送出する(ステップT4)。
【0052】
回復訓練装置4は、制御装置3から送出される制御データ12の送出有無を検出する(ステップU1)。そして、制御装置3から制御データ12の送出が検出されると(ステップU1においてYES)、回復訓練装置4は係る制御データ12を受付け(ステップU2)、制御データ12に基づいて指訓練部28の各可動モータ35,37,40の可動量及び可動タイミングを制御し、第一リンクアーム部33に接続された第一装着部30及び第二リンクアーム部36に接続された第二装着部31を介して、指Fの第二関節PIP及び第三関節MPをそれぞれ可動させる(ステップU3)。このとき、指Fの第二関節PIP及び第三関節MPの各々の患側関節角度Θ1,Θ2が検出される(ステップU4)。
【0053】
さらに、仮に運動機能の低下によって指Fの各関節PIP,MPの可動範囲が制御データ12によって指示される可動範囲よりも小さい場合、関節PIP,MPを強制的に動かそうとする負荷が働く。このとき、指訓練部28の力覚センサ41によって指Fに係る力が検出される(ステップU5)。そして、検知された患側関節角度Θ1,Θ2に係る患側角度データ15及び検出された力に対応する力覚データ20を制御装置3に対して送出する(ステップU6)。その後、制御装置3から送出される制御データ2の検出を継続する場合(ステップU7においてNO)、ステップU1の処理に戻る。一方、制御データ2の検出をしない場合(ステップU7においてYES)、回復訓練装置4の処理を終了する(ステップU8)。
【0054】
一方、制御装置3は、回復訓練装置4から前述した患側角度データ15及び力覚データ20の送出を検出すると(ステップT5においてYES)、この患側角度データ15及び力覚データ20を受付ける(ステップT6、ステップT7)。そして、患側角度データ15と運動検出装置2から受付け、制御データ12の生成の基礎となった角度データ9とを比較する。ここで、運動検出装置2から受付けた角度データ9は、患側上肢手指5を健側上肢手指6と左右対称にして各関節を可動させるものであり、いわば「目標値」に相当する。一方、制御データ12に基づいて制御された患側上肢手指5に係る患側角度データ15は、目標値に対する実測値に相当する。
【0055】
実際には、第一可動モータ34等の作動タイミングや、健側上肢手指6の急激な動作等に追動することができず、患側上肢手指5の患側関節角度Θ1,Θ2は必ずしもリアルタイムで完全に一致することはない。そこで、実測値である患側角度データ15を制御装置3は受付け、目標値である角度データ9との比較を行い、誤差(ずれ)を検出する(ステップT8)。誤差が検出される場合(ステップT8においてYES)、誤差を補正するための角度補正データ17を生成(ステップT9)し、F=1を与える(ステップT10)。一方、誤差が検出されない場合(ステップT8においてNO)、すなわち、患側角度データ15と角度データ9が一致する場合は、以降のステップT9及びステップT10の処理をキャンセルする。
【0056】
その後、受付けた力覚データ20の値を判断する(ステップT11)。このとき、力覚データ20によって指Fに予め設定した基準範囲以上に無理な力がかかっていると判断される場合(ステップT11においてYES)、Fの値を判定する(ステップT12)。ここで、F=1の場合(ステップT12においてYES)、すなわち、ステップT9において角度補正データ17が生成されている場合は、係る角度補正データ17をさらに補正し、関節PIP,MPが無理なく可動できる可動範囲に規制した制御データ12の補正を行う(ステップT13)。一方、F≠1の場合(ステップT12においてNO)、角度補正データ17の生成が成されていないため、力覚データ20に基づいて制御データ12の補正を行う(ステップT14)。そして、ステップT13またはステップT14のいずれかによって補正された制御データ12を再び回復訓練装置4に対して送出する(ステップT15)。ここで、指Fに無理な力がかかっていないと判断される場合(ステップT11においてNO)、上述のステップT12からステップT15の処理がキャンセルされる。その後、制御装置3の処理を終了する指示がない場合(ステップT16においてNO)、ステップT1の処理に移行する。一方、制御装置3の処理を終了する指示が有る場合(ステップT16においてYES)、制御装置3における処理を終了する(ステップT17)。
【0057】
これにより、患者CKの意志に基づく健側上肢手指6の動きに左右対称となる患側上肢手指5の他動的な動きが創出されるため、患者CKが自ら目的とする運動を認識しながら、運動機能の回復訓練を行うことができる。そのため、従来のCPM機器と比べ、患者CKの運動機能の回復訓練にかける積極的な意志によって、回復に係る効率が良くなることが期待される。
【0058】
さらに、実測値に相当する患側角度データ15に基づいて制御データ12の補正を行うことにより、健側上肢手指6及び患側上肢手指5のそれぞれの関節を左右対称にするように近づけることができる。また、指訓練部28の力覚センサ41によって指Fの運動によって生じる力を検出し、力覚データ20によって制御データ12を補正することにより、関節PIPの可動範囲が規制され、運動機能が低下し、可動範囲が狭くなった指Fの関節PIP等に可動範囲を超えて無理に可動させるようにすることがない。そのため、回復訓練によって逆に患側上肢手指5の関節PIP等を傷めるようなことがなくなり、安全に本システムを利用することができる。
【0059】
加えて、間接的にではあるが、自らの意志によって患側上肢手指5を動かすことができるため、運動機能の回復訓練に伴って、痛みなどを感じるのではないかといった、患者CKの精神的な不安や恐怖心を和らげることもできる。
【0060】
また、上述した指訓練部28を患側上肢手指5のそれぞれの指Fに対して装着することにより、各指Fを独立して運動させることができる(図10参照)。ここで、図10は、説明を簡略化するため、患側上肢手指5の親指及び人差し指(いずれも図示しない)の二本の指をそれぞれ独立して運動させることが可能な指訓練部28a,28bを有する回復訓練装置4aの一例を示している。各指訓練部28a,28bは固定板42及び固定用ボルト43を介して指訓練部支持台44に配設されている。なお、図10の指訓練部28a,28bにおいて、図3等で示した指訓練部28と同一の機能及び構成を有するものは、同一番号を付し、ここでは詳細な説明を省略している。
【0061】
これにより、従来のように、五本の指をまとめて運動させるような単純な動きだけでなく、手の指Fが本来行うことのできる複雑な動きを患側上肢手指5に他動的に再現させることができるため、指Fの繊細でかつ器用な動きが可能なように運動機能を回復させることができる。なお、指訓練部28a等は、各指Fにそれぞれ対応させたものを形成することも可能であるが、各指Fの関節間の長さをそれぞれ調整可能に形成し、親指から小指まで全ての指Fに対して適応可能なようにしても構わない。
【0062】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0063】
すなわち、本実施形態の上肢手指リハビリシステム1において、訓練手段23の一例として指Fの運動機能の回復訓練を目的とする指訓練部28を例示し、説明したがこれに限定されるものではなく、患側上肢手指5の肩から先の部位(肩関節、肘関節、手関節(手首)等の各々の関節についても他動的に運動させ、回復訓練を行うものに適用することも可能である。なお、係る場合は、各関節に沿って可動させるための肩訓練部、肘訓練部、手首訓練部などを、指訓練部28と同様に複数のリンクアーム部及び可動モータ等を組合せたリンク機構を形成する必要がある。また、これらは個々に構成する場合であっても、或いは全ての訓練部を統合し、患側上肢手指5の各関節の運動を総合させたものであっても良い。
【0064】
さらに、本実施形態の上肢手指リハビリシステム1において、指訓練部28の構成を複数のリンクアーム部33,36及び可動モータ35,37,40によって構成する代表的な形状の例を図3乃至図6等に示したが、係る形状に限定されるものではなく、運動検出装置2から送出される角度データ9に基づいて、患側上肢手指5の関節を滑らかに可動させることができるものであれば、特に指訓練部28の構成等に限定されるものではない。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明の上肢手指リハビリシステムは、患者の意志に基づく健側上肢手指の能動的な動きに対応させ、運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指を左右対称にして他動的に動かすことができる。これにより、従来の単純な機能回復運動に比べ、複雑な動きを患側上肢手指に課すことができるため、運動機能の回復がより効率的に行われる。また、角度補正データ及び力覚データに基づいて制御データの補正が行われるため、健側上肢手指及び患側上肢手指の関節の角度を略一致させることができ、また無理な力が患側の関節に加わることがない。その結果、安全に患側上肢手指のリハビリテーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の上肢手指リハビリシステムの概略構成を示す説明図である。
【図2】上肢手指リハビリシステムにおける運動検出装置、制御装置、回復訓練装置のそれぞれの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】上肢手指リハビリシステムの指訓練部の構成を示す斜視図である。
【図4】指訓練部の構成及び変位の態様を示す側面図である。
【図5】指訓練部の構成及び変位の態様を示す側面図である。
【図6】指訓練部の構成及び変位の態様を示す側面図である。
【図7】指訓練部の各関節の可動を模式的に説明する模式図である。
【図8】上肢手指リハビリシステムにおける運動検出装置、制御装置、及び回復訓練装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】上肢手指リハビリシステムにおける運動検出装置、制御装置、及び回復訓練装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の上肢手指リハビリシステムにおける回転訓練装置の別例構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 上肢手指リハビリシステム(上肢手指リハビリテーションシステム)
2 運動検出装置
3 制御装置
4 回復訓練装置
5 患側上肢手指
6 健側上肢手指
8 角度検知手段
9 角度データ
10 角度データ送出手段
11 角度データ受付手段
12 制御データ
13 制御データ生成手段
14 制御データ送出手段
15 患側角度データ
16 患側角度データ受付手段
17 角度補正データ
18 角度補正データ生成手段
19 補正手段(可動規制手段)
20 力覚データ
21 力覚データ受付手段
22 制御データ受付手段
23 訓練手段
24 患側角度検知手段
26 患側角度データ送出手段
28 指訓練部(訓練手段)
29 支持本体
30 第一装着部
31 第二装着部
32 第一曲折部
33 第一リンクアーム部
34 第二曲折部
35 第一可動モータ
36 第二リンクアーム部
37 第二可動モータ
39 揺動連結部
40 第三可動モータ
41 力覚センサ(力検出手段)
CK 患者
DIP 第一関節
F 指
MP 第三関節
PIP 第二関節
Θ1,Θ2 患側関節角度
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9