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明細書 :電子メール配送システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3700772号 (P3700772)
公開番号 特開2003-122680 (P2003-122680A)
登録日 平成17年7月22日(2005.7.22)
発行日 平成17年9月28日(2005.9.28)
公開日 平成15年4月25日(2003.4.25)
発明の名称または考案の名称 電子メール配送システム
国際特許分類 G06F 13/00      
G06F 17/30      
FI G06F 13/00 601C
G06F 17/30 150B
G06F 17/30 170Z
G06F 17/30 340A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2001-318579 (P2001-318579)
出願日 平成13年10月16日(2001.10.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年7月19日 社団法人情報処理学会発行の「情報処理学会研究報告 情処研報 Vol.2001,No.71」に発表
審査請求日 平成16年9月13日(2004.9.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】遠山 元道
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100099254、【弁理士】、【氏名又は名称】役 昌明
【識別番号】100100918、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 公治
【識別番号】100105485、【弁理士】、【氏名又は名称】平野 雅典
【識別番号】100108729、【弁理士】、【氏名又は名称】林 紘樹
審査官 【審査官】石井 茂和
参考文献・文献 特開平11-065960(JP,A)
特開平08-097853(JP,A)
特開平03-113933(JP,A)
特開昭61-163749(JP,A)
高畑 理,藤沼 健太郎,石橋 玲,遠山 元道,Magic Mirror Mailing:個人情報データベースを利用する柔軟なメイル配送システム,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.101 No.193,日本,社団法人電子情報通信学会,2001年 7月12日,第101巻 第193号,p.121-126
調査した分野 G06F 13/00 601
G06F 17/30 150
G06F 17/30 170
G06F 17/30 340
JICSTファイル(JOIS)
WPI(DIALOG)
特許請求の範囲 【請求項1】
アドレス部分に配送範囲指定情報を有する電子メールを受け付けて前記配送範囲指定情報から変換した宛先アドレスに配送するメール配送手段と、配送先利用者の属性情報を格納した個人情報データベースと、前記配送範囲指定情報を検索式に展開するための変換情報を記述したルールベースと、前記個人情報データベースを前記検索式に基づいて検索するデータベース処理系と、前記個人情報データベースを更新するための更新処理系と、階層型のネームスペースに基づいて宛先アドレスのデータ管理を行なうデータ管理システムとを具備することを特徴とする電子メール配送システム。
【請求項2】
前記データベース処理系は、個人情報を収集する手段と、収集した情報に基づいて属性情報の追加と削除と変更の処理を行なう手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の電子メール配送システム。
【請求項3】
前記ルールベースは、前記配送範囲指定情報を前記個人情報データベースに対応した検索式に展開するための推論処理機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の電子メール配送システム。
【請求項4】
配送範囲指定情報をアドレス部分に含む電子メールを受け付け、前記配送範囲指定情報を検索式に展開するための変換情報を記述したルールベースに基づいて前記配送範囲指定情報を検索式に展開し、展開して得られた検索式により、配送先利用者の属性情報を格納した個人情報データベースを検索して宛先アドレスを求め、前記宛先アドレスに前記電子メールを配送することを特徴とする電子メール配送方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子メール配送システムに関し、特に、利用者データベースを検索して動的に宛先を求める電子メール配送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子メールは、現代社会において必須のツールである。電子メールシステムでは、送信されたメールは、メールサーバに蓄えられる。メールサーバが、宛先のメールボックスを持つメールサーバにメールを送信する。メールを受け取ったメールサーバは、宛先のユーザにメールが届いた旨の知らせを行なう。メールボックスの持ち主は、メールサーバに蓄えられたメールを取り出す。電子メールのプロトコルについては、文献1[Kevin Johnson "Internet Email Protocols: A Developer's Guide" (Addison-Wesley, 1999)]などを参照。
【0003】
電子メールシステムでは、基本的には個人宛に電子メールを送るシステム構成になっている。メールアドレスは、ID@ドメインの形である。例えば、(toyama@keio.ac.jp)のような個人名のものである。グループ中の特定の構成員にのみ電子メールを送りたい場合でも、個人相手の電子メールを送るようになっていた。同報通信を行なうには、宛先欄に複数の送付先をすべて指定する必要があった。
【0004】
そこで、同報通信の送付先の指定を容易にできるようにし、電子メールを複数のあて先に同時に配送する目的で、複数の送付先をグループとしてまとめるようにしたメーリングリスト技術が広く用いられている。配送先は、電子メールアドレスの集合と考えられる。その集合を擬人化して名称を与える。その名称に宛てられた電子メールが、定義された電子メールアドレスの集合に配送されるようになっている。グループ名を送付先とすることによって、同じメールを複数の人に一度に送付できる。例えば、(faculty@keio.ac.jp)のように、グループ名のメーリングリストを指示する。これは、代表となる宛先名が固定的に決定されているし、配送対象集合と同数のメーリングリストをあらかじめ定義して、宛先としなければならない(静的制約)。対象となる人(たとえば特定の会社の社員)がN人の場合、その部分集合は2のN乗通り存在するため、すべての要求に対し、あらかじめメーリングリストを用意することは事実上不可能である。また、配送先をメーリングリストの形に編集する手間も必要となる。
【0005】
メーリングリストの運営を容易にするために階層構造化し、電子メールの宛先指定時に、階層化された組織を表示し、特定のグループを検索して指定する方法もある。それぞれのリストの内容は、個別に編集する必要がある。Majordomoに代表される固定的な階層型メーリングリストがある。Majordomoについては、文献2[安田幸弘著「Majordomo Complete Guide-メーリングリストの運営と活用のすべて Linux, FreeBSD 対応」(毎日コミュニケーションズ、1998)]などを参照。
【0006】
従来の電子メール配送システムの例を、図4を参照しながら説明する。図4において、メールサーバ41は、電子メールを受け付けて、データベースを検索して求めたアドレスに、メールを配送する手段である。検索文生成手段42は、メールのアドレス部分に記載された検索方式と属性値から、検索式を生成する手段である。データベース43は、個人情報や組織情報を格納したデータベースである。
【0007】
この電子メール配送システムは、個人情報に関するデータベース43を、電子メールシステムに結合して、データベース43の検索結果から、配送先を動的に決定するものである。例えば、ABC電気株式会社の組織を、単純に、
営業部={営業第1課,営業第2課}
営業第1課={社員A,社員B}
営業第2課={社員C,社員D、社員E}
経理部={経理課}
経理課={社員F}
テニス愛好会={社員B,社員D、社員F}
ゴルフ同好会={社員B,社員F}
とする。このデータを、データベース43に格納しておく。
【0008】
社内メーリングリストの定義は、
all(dept):eigyo,keiri eigyo(dept):eigyo1,eigyo2
eigyo1(dept):A,B eigyo2(dept):C,D,E
keiri(dept):F tennis(sports):B,D,F golf(sports):B,F
となる。
【0009】
この定義に基づいて、メールの宛先部分に、検索方式と属性値を記載する。(eigyo@dept.abc-denki.co.jp)宛てのメールを、メールサーバ41に入力すると、メールサーバ41は、検索文生成手段42に、検索方式(dept)と属性値(eigyo)を引き渡す。検索文生成手段42は、検索方式(dept)と属性値(eigyo)から検索式を生成して、データベース43を参照する。この結果、社員A、B、C、D、Eのメールアドレスが得られ、メールサーバ41に返される。メールサーバ41は、そのアドレスに従って、メールを社員A,B,C,D,Eに配送する。同様にして、(tennis@sports.abc-denki.co.jp)宛ての電子メールは、社員B,D,Fに配送される。このように、電子メールアドレスと個人情報をデータベースに格納し、データベースへの質問の結果として得られる電子メールアドレス集合に、メールを配送する。
【0010】
これでは、多くのリスト定義が必要になり、保守が困難であるので、宛先指定に融通性を持たせるために、ユーザの属性キーワードで、送信相手を検索するシステムがある。企集や団体などにおいて、データベースに格納された構成員の個人情報の検索に基づき、柔軟かつ動的に配布先を決定する電子メールシステムである。固定的な属性のデータベースを用いて、その属性を持ったユーザが指定されるごとに検索し、検索結果を送信相手として宛先指定する。例えば、年齢が40歳の人を宛先とする場合は、アドレスを(40@age.keio.ac.jp)とする。固定的なメーリングリストにおいて、アドレスを例えば、(age40@keio.ac.jp)とすることは、(40@age.keio.ac.jp)を、外延化もしくはSkolem化(述語論理で、制限付の変数を定数に変換すること)したものとみることができる。
【0011】
データベースの検索機能を利用して、部分文字列の検索などを、配送先の決定に用いることもでき、多様な検索による配送先の決定が可能となる。データベースに、個人のメールアドレスを一箇所だけ記録することにより、メールアドレスの変更を、すべてのメーリングリストに一括して行なうことができ、メーリングリスト保守の一元化ができる。
【0012】
個人のメールアドレスは種々の事情で頻繁に変化する。特定の属性を持ったユーザに確実にメールを配信するためには、指定した条件そのものが存在するか否かを別途確認する必要がある。特定の個人が所属するメーリングリストすべてに対し、メールアドレスの変更を個別に行なわなければならず、しばしば、変更もれによって配送が滞る障害が発生する。この作業の軽減と効率化を図るために、個人ごとのプライベートアドレス帳として、特定の条件を満たすユーザのグループを作成するものがある。そのユーザの属性変更や、対応する属性を持った新規ユーザへの動的な対応はできず、各ユーザ自身が自発的に更新する必要がある。その対策として、受信メールを解析して、属性情報などを自動的に更新するシステムもある。
【0013】
ところで、グループを論理演算して宛先を求める方法では、メールサーバは、グループに所属する構成員を、グループごとに記憶しておく。論理和や論理差や論理積や否定等、グループ同士の論理演算として記述された宛先指定を含む電子メールを受け付けると、宛先指定がなされたグループの構成員を用いて、グループの構成員同士について、論理演算に対応する集合演算を行なう。演算結果に基づいて、グループに所属する構成員が使用するワークステーションに対して、電子メールを配送する。
【0014】
この方法では、発信人が、現在計算機を利用している人をすべて調べて、送付先として指定しなければならない。現在すぐに電子メールを読むことができる人のうちのある特定のグループに属する人で、かつ自分自身を除いた利用者に対してのみ、電子メールを送りたいというような複雑な条件をもつ場合にも、各個人をすべて指定する必要があった。
【0015】
それを避けるために、電子メールを送る時点で特定の条件を満たす相手を自動的に決定し、電子メールを送る宛先とするものがある。各利用者の計算機利用状況と、データベースを検索した結果とに基づいて、発信者があらかじめ指定した論理式などを用いて演算する。メール発信時点での指定条件を満たす利用者を、電子メールの送付先とする。
【0016】
以下、従来の電子メール配送システムに関する提案例をいくつかあげる。特許第2797343号公報(特開平2-117239号)に開示された「電子メールシステム」は、グループを宛先指定した電子メールを受け付け、グループに所属する構成員が使用するワークステーションに対して、電子メールを配送するシステムである。メールサーバは、グループに所属する構成員を、グループごとに記憶している。グループ同士の論理演算として記述された宛先指定を含む電子メールを受け付ける。宛先指定がなされたグループの構成員を用いて、グループの構成員同士について、論理演算に対応する集合演算を行なって、電子メールを配送するワークステーションを特定する。
【0017】
特開平3-32250号公報に開示された「電子メールシステムにおける宛先指定方式」は、同報リストで宛先指定をする電子メールシステムである。メール発信者から送られてきた宛先指定情報を、宛先コード情報と論理演算子に分解する。宛先コードが示す宛先を要素として展開された宛先コードを、集合演算する。
【0018】
特開平4-288650号公報に開示された「電子メール送信装置」は、送り先の属性を指定することによって、条件に合う相手全てに電子メールを送る装置である。利用者があらかじめ、送り先に固有な属性を、属性データベースとして定義しておく。電子メール送信時に、送り先の属性の条件を指定する。電子メールシステムが、属性の定義を参照して、条件に合う送り先を探し出して電子メールを送る。
【0019】
特開平6-252943号公報に開示された「電子メールシステム」は、宛先リストと論理演算子で、柔軟な宛先指定をするものである。ユーザは、宛先情報として、宛先リストに論理演算子を付加する。メールサーバは、宛先情報に付加された論理演算子を用いて集合演算して宛先集合を作成する。宛先集合に従って、着信者アドレスに対応するメールボックスにメールを配信する。
【0020】
特開平6-326733号公報に開示された「電子メール送信方式」は、キーワードで指定された受信者にメールを送る方式である。宛て先IDとキーワードを対応させてデータベースに登録しておく。キーワードが付された電子メールを受け付けると、キーワードでデータベースを検索する。キーワードが一致するネットワークIDを宛先として、電子メールを送信する。キーワードによって検索され表示された送信先候補の中から、適切な送信相手を改めて選択することもできる。
【0021】
特許第2679641号公報(特開平8-97853号)に開示された「電子メール送信方法」は、電子メールを送る時点での電子メール利用者の計算機利用状況などに依存して、送付先を自動的に決める方法である。電子メールの送付先の条件を、演算子を用いた論理式で記載する。送付先の条件に基づいて、電子メールを送信する時点での各計算機利用者の利用状況を調査する。各計算機の利用者を記載したデータベースの検索を行なって、電子メールの送付先リストを作成する。論理式により送付先リストの論理演算を行ない、電子メールの送付を行なう。
【0022】
特開平8-202637号公報に開示された「電子メール宛先変換方法」は、人事データから電子メールの宛先を検索するシステムである。電子メール宛先に関連する氏名や電子メールアドレス等を、人事情報データから抽出して、電子メールの宛先データベースとして記憶しておく。検索条件に基づいて、宛先データベースを検索して、該当データを選別抽出する。
【0023】
特開平10-11374号公報に開示されたものは、電子メール送信時に、キーワードを指定して、自動的に送信先候補を抽出する方法である。過去に受信した電子メール文書内から、キーワードと一致する文字列を検索して、適合する受信電子メールを決定する。その電子メールの送信者アドレスから、送信先候補を抽出し、送信先を決定する。
【0024】
特開2001-24693号公報に開示された「共通属性を利用した電子メールシステム」は、ユーザの属性情報を、自動的に電子メールアドレス帳に登録するシステムである。対象ユーザを、自動的にグループのメンバとして管理する。メール宛先として、グループまたは条件を指定する。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の電子メール配送システムでは、ユーザの属性を格納したデータベースを、発信者が指定した論理式で検索していたので、宛先の指定が煩雑であり、融通性にも欠けるという問題があった。
【0026】
本発明は、上記従来の問題を解決して、電子メール配送先選択の柔軟性を高めて操作を容易にし、電子メールによるコミュニケーションを円滑化することを目的とする。さらに、属性データベースの保守を自動化して、整合性を保つための保守コストを削減し、データベースの維持管理を簡単にすることも目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明では、電子メール配送システムを、アドレス部分に配送範囲指定情報を有する電子メールを受け付けて配送範囲指定情報から変換した宛先アドレスに配送するメール配送手段と、配送先利用者の属性情報を格納した個人情報データベースと、配送範囲指定情報を検索式に展開するための変換情報を記述したルールベースと、個人情報データベースを検索式に基づいて検索するデータベース処理系と、個人情報データベースを更新するための更新処理系と、階層型のネームスペースに基づいて宛先アドレスのデータ管理を行なうデータ管理システムとを具備する構成とした。このように構成したことにより、配送先選択の柔軟性を高めることができる。
【0028】
また、データベース処理系に、個人情報を収集する手段と、収集した情報に基づいて属性情報の追加と削除と変更の処理を行なう手段とを備えたので、データベースの維持管理が簡単になり、保守コストが削減できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1~図3を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態)
本発明の実施の形態は、メールアドレス部の配送範囲指定情報を、ルールベースに基づいて検索式に展開し、利用者データベースを検索してアドレスを求めて電子メールを配送するとともに、自動的に利用者データベースを更新する電子メール配送システムである。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態における電子メール配送システムの概念図である。図1において、メール配送系1は、発信者から受け取ったメールのアドレス部分を解析して求めた宛先にメールを配送する手段である。メールフロントエンド2は、メールのアドレス部の前処理を行なう手段である。メーリングリスト処理系3は、メールアドレス部の配送範囲指定情報から、LDAPサーバ4とルールベース5とを介してアドレスを求める手段である。LDAPサーバ4は、階層型のネームスペースに基づいてデータ管理を行なうデータ管理システムである。ルールベース5は、関係データベースからメールアドレスの集合を計算するルールを、リレーショナルデータベース(関係DBまたはRDBと略す)への質問の集合などの形で格納した推論規則データベースであり、メールアドレス部の配送範囲指定情報を、推論規則に基づいて検索式に展開し、利用者データベースを検索してアドレスを求める手段である。
【0032】
データベース処理系6は、個人情報データベースの検索と更新を行なう手段である。DBフロントエンド7は、データベースの検索と更新に関する前処理を行なう手段である。関係DBMS8は、関係データベースの検索と更新処理を行なう手段(Relational Database Management System)である。個人情報DB9は、メールの宛先ユーザの個人情報を格納したデータベースである。EMAIL10は、発信者が作成したメールである。更新処理系11は、データベース更新のためのデータを収集する処理手段である。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態における電子メール配送システムのアドレス検索動作フロー図である。図3は、電子メール配送システムのデータベース更新動作フロー図である。
【0034】
上記のように構成された本発明の実施の形態における電子メール配送システムの動作を説明する。最初に、電子メール配送システムの概要を説明する。本システムでは、発信者が作成した電子メールを受け取り、これに付されたアドレス部分の配送範囲指定情報を解析して、ルールベースを使ってデータベースを参照して得られる電子メールアドレスの集合を配送先とする。本システムは、これらの機能を効率よく実現するメーリングシステムとデータベースの複合体である。
【0035】
本システムは、大きく分けて、メール配送系と、データベース管理系と、ルールベースの3要素から構成されている。すなわち、LDAPに基づくメール配送系と、個人情報を管理するデータベース系と、これらをつなぐルールベースから構成されている。メール配送系は、階層型のネームスペースに基づいてデータ管理を行なう。データベース管理系は、個人情報を正規化した関係表の集合を保持している。ルールベースは、関係データベースへの質問の集合などの形で、関係データベースからメールアドレスの集合を計算するルールを保持している。
【0036】
電子メールの送信者は、データベース検索方式の指定情報と検索基準値とからなる配送範囲指定情報をメールアドレスに含めたメールを作成する。メール配送系は、指定情報と検索基準値に基づいて、メールの配送先を決定する。検索方式の指定情報は、データベースのどの部分でどのような検索を行なうか、を決定するのに必要な情報に与える名前である。パラメータを持つデータベース質問文集合や推論規則を含むルールベースなどにつけた名前である。検索基準値は、特定の検索方式において、具体的に対象集合を定めるのに用いられるパラメータとしての定数または定数のリストである。
【0037】
第2に、メールアドレスの書式を説明する。(x@f.ドメイン)の形で、定数xに関数を適用した結果として得られるメールアドレスの集合を配布先とする。(f)は、個人情報データベースの検索を基本とする計算で実現する。(CS@dept.keio.ac.jp)の場合は、(dept)属性に、(CS)という値を持つ個人を検索して、個人メールアドレスの集合を求める。(40@age.keio.ac.jp)の場合は、年齢という属性が40という値を持つ個人を検索する。「40歳未満」の各種表現(under40@age),(40@under.age),(40@age-under)についても、形式化が可能である。
【0038】
書式には、一体型と分離型があるが、いずれの場合も、メール配送システムは、メールアドレスから抽出した情報を基に、個人情報データベースの検索を行ない、配送先アドレス集合を得て、配送先を決定する。一体型メールアドレスは、(dept.eigyo1@abc-denki.co.jp)の形であり、分離型メールアドレスは、(golf@sports.abc-denki.co.jp)の形である。一体型では、(dept)の部分が検索方式を指定する部分であり、(eigyo1)が検索基準値である。これらの情報から、所属部門を対象として、(eigyo1)という値を直接または間接的にもつ個人の集合を特定する。同様に、分離型では、(sports)で検索方式を指定し、値として(golf)を直接または間接的にもつ個人の集合を特定する。
【0039】
検索基準値のリストを与える例を示す。年齢20歳から22歳の社員にメールを送るメールアドレスは、("20:22"@age.abc-denki.co.jp)となる。さらに複雑な要求に対しては、複合的な検索式そのものをメールアドレスに含めて、("sex=M and age=18:20"@query.abc-denki.co.jp)のようにする。特定の地域に住む社員に電子メールを配送する場合には、地名や郵便番号を使って、(新宿@address.abc-denki.co.jp)や、(106-0004@zip.abc-denki.co.jp)のように指定する。(address)で指定される検索方式では、検索基準値(新宿)を、住所の部分文字列として含むような対象を選択する。(zip)で指定される検索方式では、郵便番号の前方一致検索によって対象を選択する。
【0040】
さらに、検索式を、フリーワードを使って書くようにもできる。例えば、(仕事=教師、かつ、出身=東京)というように書けるようにしてもよい。この場合、ルールベース5に、自然言語理解の機能を持たせるとともに、フリーワードを、知識に基づいて検索用語に変換するルールや、適当なレベルで探索を行なう機能も設けておく。このようにすることにより、予め検索用語を調べておかなくても、普通の言葉で宛先集合を記述することができ、操作性が向上する。これらの配送指定情報のうち、("20:22")や(仕事=教師、かつ、出身=東京)などを用いるものは、従来のメールシステムの規格と整合しないので、従来のメールシステムにそのまま使うことはできないが、会社等の閉じた範囲で運用するか、またはアドレス書式の規格を拡張し、それに応じた処理系を設けることで利用可能となる。
【0041】
第3に、図1を参照して、電子メール配送システムの各部の機能を説明する。メール配送系1は、展開が必要な配送範囲指定情報がアドレス部にあるメール10を受け取った場合に、LDAPサーバ4を参照し、タイムスタンプを見て、そこに最新の情報があれば、そのままアドレス集合に展開する。タイムスタンプにより、LDAPサーバ4の内容が最新でないと判断された場合には、ルールベース5によって展開方法を得る。LDAPサーバ4では、階層型のネームスペースに基づいてデータ管理を行なう。
【0042】
例えば、フリーのOpenLDAPを利用し、データベースから生成されるメールアドレス集合のキャッシュとして使用することができる。この場合、データ構造が階層型に限られる代わりに、アクセスが高速に行なえる。sendmailの比較的新しいバージョンのものは、LDAP対応となっている。LDAPについては、文献3[Bruce Greenblatt著、稲見俊弘訳「インターネットディレクトリ技術入門-LDAP、DSNおよびディレクトリアプリケーションの構築と管理」(ピアソン・エデュケーション、2001)]などを参照されたい。
【0043】
個人情報データベース9は、個人情報を正規化した関係表の集合を保持している。DBフロントエンド7は、WWWを通じて個人情報の追加と削除と変更の処理を行なう。更新処理系11は、データベース更新のためのデータを収集する。例えば、受信したメールを解析して、住所が変更されていたら、データベースの住所を更新する。また、定期的にアンケートメールを出して、属性情報の変更を問い合せて、変更があればデータベースを更新する。エージェントにより、ネットワークから自動的に利用者の属性情報を収集するようにしてもよい。
【0044】
データベース管理システムには、関係DBMS8を使用する。関係データベースについては、文献4[Serge Abiteboul(Editor) et al, "Foundations of Databases: The logical level" (Addison-Wesley, 1994)]などを参照されたい。データベースの検索システムは、関数型/論理型データモデルと、関数/論理プログラミングにおけるSkolem化と、合成関数の部分計算などの理論をベースにしている。関数/論理プログラミングについては、文献5[Guy Cousineau, M. Mauny(Contributor), "The Functional Approach to Programming" (Cambridge U.P. Dec. 1998) ]などを参照されたい。
【0045】
ルールベース5には、RDBへの質問の集合などの形で、関係データベースからメールアドレスの集合を計算するルールを格納する。配送範囲指定情報を検索式に展開して検索する場合に、データベースの参照が必要ならば、個人情報データベース9の検索を行なう。この結果をもとに得られるメールアドレス集合を、LDAPサーバ4にロードする。ルールベース5自体に、集合演算や推論処理機構を持たせることにより、より高度なメール配送(組織図の再帰的展開等)機能を実現できる。しかし、オーバヘッドの大きな処理は、メール配送になじまないので、バランスの取れた設計が必要である。推論機構などについては、文献6[小倉久和、小高知宏著「人工知能システムの構成-基礎からエージェントまで」(近代科学社、2001)]などを参照されたい。
【0046】
第4に、図2を参照しながら、電子メール配送システムのアドレス検索の動作手順を説明する。ステップ21で、配送範囲指定情報をメールアドレス部に記載したメールを受け入れる。ステップ22で、その配送範囲指定情報に対応するアドレス集合が、LDAPサーバにあるかどうかを調べる。ステップ23で、最新の展開アドレスがあれば、ステップ28に飛ぶ。なければ、ステップ24で、ルールベースを参照する。ステップ25で、ルールに従って配送範囲指定情報を検索式に展開する。ステップ26で、データベースを検索して、アドレスを取得する。必要に応じて、ステップ24~ステップ26を繰り返す。ステップ27で、アドレスをLDAPサーバに格納する。ステップ28で、アドレス集合をメール配送系に渡す。ステップ29で、各アドレスにメールを配送する。
【0047】
第5に、図3を参照しながら、電子メール配送システムのデータベース更新の動作手順を説明する。ステップ31で、すべての利用者に定期的に、現在の住所や職業などを尋ねるアンケートメールを送る。ステップ32で、アンケートの回答に基づいて、データベースの対応する属性情報を更新する。ステップ33で、利用者から受信したメールを、自然言語処理手法により分析する。ステップ34で、住所変更や転職の通知メールなどから、住所や職業を抽出して、データベースの対応する属性情報を更新する。ステップ35で、会社内のメールシステムであれば、人事異動の時期に、人事ファイルにアクセスして、職場や地位のデータを得て、データベースの対応する属性情報を更新する。学校内のメールシステムであれば、学籍簿にアクセスして、学科や学年の情報などを得る。ステップ36で、随時インターネットのWEBページを検索して、利用者に関する情報を収集し、データベースの対応する属性情報を更新する。例えば、学会発表や特許出願のデータを収集して、特許出願件数などを属性情報として記録する。
【0048】
上記のように、本発明の実施の形態では、電子メール配送システムを、メールアドレス部の配送範囲指定情報をルールベースに基づいて検索式に展開し、利用者データベースを検索してアドレスを求めて電子メールを配送するとともに、自動的に利用者データベースを更新する構成としたので、配送先選択の柔軟性を高めることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明では、電子メール配送システムを、アドレス部分に配送範囲指定情報を有する電子メールを受け付けて配送範囲指定情報から変換した宛先アドレスに配送するメール配送手段と、配送先利用者の属性情報を格納した個人情報データベースと、配送範囲指定情報を検索式に展開するための変換情報を記述したルールベースと、個人情報データベースを検索式に基づいて検索するデータベース処理系と、個人情報データベースを更新するための更新処理系と、階層型のネームスペースに基づいて宛先アドレスのデータ管理を行なうデータ管理システムとを具備する構成としたので、配送先選択の柔軟性を高めることができるという効果が得られる。
【0050】
また、データベース処理系に、個人情報を収集する手段と、収集した情報に基づいて属性情報の追加と削除と変更の処理を行なう手段とを備えたので、データベースの維持管理が簡単になり、保守コストが削減できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における電子メール配送システムの概念図、
【図2】本発明の実施の形態における電子メール配送システムのアドレス検索動作フロー図、
【図3】本発明の実施の形態における電子メール配送システムのデータベース更新動作フロー図、
【図4】従来の電子メール配送システムの概念図である。
【符号の説明】
1 メール配送系
2 メールフロントエンド
3 メーリングリスト処理系
4 LDAPサーバ
5 ルールベース
6 データベース処理系
7 DBフロントエンド
8 関係DBMS
9 個人情報DB
10 EMAIL
11 更新処理系
41 メールサーバ
42 検索文生成手段
43 データベース
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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