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明細書 :培養細胞の層に細胞欠損領域を作製する方法、その利用およびキット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3682772号 (P3682772)
公開番号 特開2003-125761 (P2003-125761A)
登録日 平成17年6月3日(2005.6.3)
発行日 平成17年8月10日(2005.8.10)
公開日 平成15年5月7日(2003.5.7)
発明の名称または考案の名称 培養細胞の層に細胞欠損領域を作製する方法、その利用およびキット
国際特許分類 C12N  5/06      
C12M  1/00      
C12Q  1/02      
FI C12N 5/00 E
C12M 1/00 A
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 12
全頁数 10
出願番号 特願2001-328556 (P2001-328556)
出願日 平成13年10月26日(2001.10.26)
審査請求日 平成16年9月22日(2004.9.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】鈴木 秀和
【氏名】石井 裕正
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
審査官 【審査官】左海 匡子
参考文献・文献 J. Gastroenterol Hepatol. ,1994年,Vol.9,p.325-333
調査した分野 C12N 5/06
C12M 1/00
C12Q 1/02
EUROPAT(QUESTEL)
JSTPlus(JOIS)
MEDLINE(STN)
BIOSIS/WPI(DIALOG)
特許請求の範囲 【請求項1】
フッ素樹脂製の先端部を有する細胞剥離器具を培養細胞の層が形成されている培養容器に挿入して、前記フッ素樹脂製の先端部を前記培養容器の培養細胞の層が形成されている面に接触させ、前記細胞剥離器具または培養容器を回転させることにより、前記培養細胞の層から細胞の一部を剥離して、細胞欠損領域を作製することを含む、培養細胞の層に細胞欠損領域を作製する方法であって、前記細胞剥離器具は、前記培養容器にかぶせる蓋に設けた貫通した穿孔を通して、前記培養容器に挿入される前記の方法
【請求項2】
培養細胞がコンフルエントとなった時または後に、培養細胞の層に細胞欠損領域を作製する請求項1記載の方法。
【請求項3】
フッ素樹脂製の先端部が、一辺の長さ1.0~1.5 mmの四角形の断面を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
細胞欠損領域が、直径1.4~2.1 mmの円形である請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
培養容器が、20~1050 mm2の底面積を有する請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
培養容器が、ポリスチレンなどのプラスチックまたはガラス製である請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
フッ素樹脂が、75 ロックウェル以下の硬さを有する請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
フッ素樹脂が、0.04 以下の静摩擦係数および0.04 以下の動摩擦係数を有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
細胞欠損領域を培養細胞の層の中央に作製する請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の方法で培養細胞の層に細胞欠損領域を作製した後に、薬剤を培養細胞の上層に添加し、細胞欠損の修復の過程を観察することを含む、薬剤の作用を評価する方法。
【請求項11】
培養細胞の層に細胞欠損領域を作製するためのキットであって、(i)フッ素樹脂製の先端部を有する細胞剥離器具、(ii)細胞を培養するための容器にかぶせる蓋であって、前記の細胞剥離器具を挿入するための貫通した穿孔を設けた蓋を含む前記のキット。
【請求項12】
さらに、細胞を培養するための容器を含む請求項11記載のキット。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、培養細胞の層に細胞欠損領域を作製する方法、その利用およびキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞損傷修復作用を持つ薬剤は、抗消化性潰瘍薬や抗皮膚潰瘍薬などとして利用されている。
【0003】
これまでのところ、薬剤の細胞損傷修復作用を評価するには、個々の実験者が独自に培養皿に微小な円形の細胞欠損窓(培養細胞の層において細胞が欠損している部分)を作製しており、その細胞欠損窓の出来・不出来は実験者の技術に依存していた。また、その作製方法については全く報告されていない。
【0004】
Satoらは、ウサギの胃粘膜細胞を培養し、ケイ素のチップを回転させることにより、コンフルエントの培養細胞シートに円形の細胞欠損を作製して、ニコチンの細胞損傷修復機転を評価したことを報告している(J. Gastroenterol Hepatol. (1994) 9, S66-S71)が、円形の細胞欠損を作製するための具体的方法については記載していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、培養細胞の層に細胞欠損領域を均一かつ簡易に作製する方法およびキットを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、上記の方法により作製した細胞欠損を利用して、薬剤の作用を評価する方法を提供することも目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意努力した結果、フッ素樹脂製の先端部を有する細胞剥離器具を用いて、培養細胞の層から細胞の一部を剥離することによって、均一かつ簡易に細胞欠損を作製することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、培養細胞の層に細胞欠損領域を作製する方法であって、フッ素樹脂製の先端部を有する細胞剥離器具を培養細胞の層が形成されている培養容器に挿入して、前記フッ素樹脂製の先端部を前記培養容器の培養細胞の層が形成されている面に接触させ、前記細胞剥離器具または培養容器を回転させることにより、前記培養細胞の層から細胞の一部を剥離して、細胞欠損領域を作製することを含む前記の方法を提供する。
【0009】
上記の方法において、培養細胞がコンフルエントとなった時または直後あるいは無血清培地にて24-48時間経過後に、培養細胞の層に細胞欠損領域を作製するとよい。
【0010】
フッ素樹脂製の先端部は、一辺の長さ1.0~1.5 mmの四角形の断面を有するとよく、好ましくは一辺の長さ1.1~1.4 mmの四角形、より好ましくは一辺の長さ1.2-1.3 mmの四角形の断面を有する。
【0011】
フッ素樹脂製の先端部の形状は、正方形、長方形、半円形のいずれかであるとよいが、細胞欠損領域をシャープな形状に作製するためには正方形が好ましい。
【0012】
細胞欠損領域は、直径1.4~2.1 mmの円形であるとよく、好ましくは直径1.6~1.9 mm、より好ましくは直径1.76±0.12 mmの円形である。
【0013】
培養容器は、20~1050 mm2の底面積を有するとよく、好ましくは35~1000 mm2の底面積、より好ましくは38~995 mm2の底面積を有する。
【0014】
培養容器は、プラスチックまたはガラス製であるとよい。培養容器全体がポリスチレンなどのプラスチックまたはガラス製であってもよいし、培養容器の一部がプラスチックまたはガラス製であってもよい。例えば、プラスチック製の培養容器の一部を切り抜いて、切り抜いた部分にガラス(例えば、カバーグラス)を貼り付けてもよい。
【0015】
培養容器としては、市販の1穴プレート、2穴、4穴、8穴、16穴、24穴、48穴、98穴マルチプレートを使用してもよい。6穴以上のマルチプレートを用いると、大量の実験群を効率良く処理し、実験者や実験施設によるバラツキの少ない安定した結果を得ることができる。
【0016】
フッ素樹脂としては、四フッ化エチレン、その共重合体、三フッ化塩化エチレン、その共重合体、フッ化ビニリデン樹脂などを例示することができる。
【0017】
フッ素樹脂は、75 ロックウェル以下の硬さを有するとよく、好ましくは60 ロックウェル以下、より好ましくは55 ロックウェル以下の硬さを有する。
【0018】
フッ素樹脂は、0.11以下の静摩擦係数および0.11以下の動摩擦係数を有するとよく、好ましくは0.09以下の静摩擦係数および0.09以下の動摩擦係数、より好ましくは0.04以下の静摩擦係数および0.04以下の動摩擦係数を有する。
【0019】
細胞欠損領域は培養細胞の層の中央に作製するとよい。そうすることで、顕微鏡観察でも中心位置を決定しやすい。
【0020】
細胞剥離器具は、フッ素樹脂製の先端部の他に、ハンドル部分を有するとよい。ハンドルの形状としては、棒状が好ましい。ハンドルは、アルミニウム合金などの加工しやすい材料で製造するとよい。
【0021】
細胞剥離器具または培養容器の回転は、一方向の回転だけでもよいが、逆方向の回転を組み合わせることが好ましい。順方向と逆方向の回転を組み合わせることにより、培養細胞の層からきれいに細胞をはがすことができる。例えば、時計方向に180°~720°の回転、好ましくは180°~360°の回転、半時計方向に180°~720°の回転、好ましくは180°~360°の回転を組み合わせるとよい。
【0022】
上記の方法において、貫通した穿孔を設けた蓋を培養細胞の層が形成されている培養容器にかぶせ、前記の穿孔を通して、フッ素樹脂製の先端部を有する細胞剥離器具を培養容器に挿入するとよい。また、穿孔の周囲には細胞剥離器具を挿入するための鞘を設けてもよい。この鞘に細胞剥離器具を挿入することにより、細胞剥離器具を培養細胞層に対して垂直に接触させることができ、その結果、均一な細胞欠損を作製することができる。
【0023】
また、本発明は、上記の方法で培養細胞の層に細胞欠損領域を作製した後に、薬剤を培養細胞層の上層に添加し、細胞欠損の修復の過程を観察することを含む、薬剤の作用を評価する方法を提供する。
【0024】
薬剤としては、細胞損傷修復を抑制する薬剤(例えば、抗がん剤)、細胞損傷修復系の薬剤(例えば、抗消化性潰瘍薬、抗皮膚潰瘍薬)、それらの候補化合物などを例示することができる。
【0025】
例えば、細胞損傷修復を抑制する薬剤(例えば、抗がん剤)の薬剤感受性を調べるためには、以下のようにすればよい。
【0026】
各種癌細胞をコンフルエントの状態にまで培養し、無血清培地に変えて細胞周期をG0期に合わせる。この時点で細胞剥離欠損領域を作製することで、新たな均一な増殖刺激が負荷される。これに対し、抗癌作用を持つと考えられる薬剤を濃度依存性に投与し、細胞欠損に対する修復抑制効果および最適濃度を検討することが可能である。また、複数の薬剤を検討することで、至適抗癌作用をもつ薬剤を選択することが可能となる。
【0027】
また、細胞損傷修復系の薬剤を評価するためには、以下のようにすればよい。
【0028】
本発明の方法により細胞欠損領域を作製した培養細胞系は特に潰瘍性病変の修復機序をシミュレーションした系であるので、抗潰瘍薬の修復促進効果の検定に非常に有用である。例えば、胃潰瘍に対する薬剤の検討では、マウスやラットの胃粘膜細胞をコンフルエントに培養し、2日間ほど、無血清培地で培養する。これにより、細胞周期はG0にそろうことになる。この段階で、本器具により、細胞欠損領域を作製すると、修復機転が活性化されるが、この機転に対する抗潰瘍薬の修復促進効果を定量的に検討することが可能である。また、抗潰瘍薬の至適濃度の決定も可能である。
【0029】
細胞欠損の修復の過程を観察するには、例えば、4xの対物レンズを備えた倒立型顕微鏡で細胞欠損領域を観察し、デジタル画像を取得する。この画像より細胞欠損領域の面積を算出し、これを前値とし、薬剤投与後の経時的変化として各時間で画像を取得し、細胞損傷修復率を算出する。
【0030】
さらに、本発明は、培養細胞の層に細胞欠損領域を作製するためのキットであって、(i)フッ素樹脂製の先端部を有する細胞剥離器具、(ii)細胞を培養するための容器にかぶせる蓋であって、前記の細胞剥離器具を挿入するための貫通した穿孔を設けた蓋を含む前記のキットを提供する。
【0031】
本発明のキットは、さらに、細胞を培養するための容器を含んでもよい。
【0032】
穿孔の周囲には細胞剥離器具を挿入するための鞘を設けてもよい。
【0033】
細胞を培養するための容器は、上記の通りであるが、市販の1穴プレート、2穴、4穴、8穴、16穴、24穴、48穴、98穴マルチプレートを使用してもよい。
【0034】
なお、本明細書において、「~」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の一態様につき、以下に詳細に説明する。
【0036】
直径35 mmの細胞培養皿または直径35.6 mmの凹部が3行×2列で並んだ培養皿を滅菌処理した後に細胞を添加し、適当な条件下でコンフルレントになるまで培養する。細胞剥離器具を挿入するための貫通穴(穿孔)を設けた蓋を培養皿にかぶせ、その穴に細胞剥離器具を挿入する。穴の周囲には細胞剥離器具を挿入するための鞘が設けられていてもよい。細胞剥離器具は、先端に1.2~1.3 mm四方の正方形の断面を持つフッ素樹脂(例えば、4フッ化エチレン)の板を装着したアルミニウム製のハンドルからなる。フッ素樹脂製の先端部を培養皿の底面に形成されている培養細胞層に接触させ、時計方向に180度、半時計方向に180度回転させることによって、培養細胞の層から細胞の一部を剥離させ、微小な円形の細胞欠損窓を形成する。その後、細胞剥離器具を培養細胞から離脱させる。4xの対物レンズを備えた倒立型顕微鏡で微小円形細胞欠損窓を観察し、デジタル画像を取得する。4xの対物レンズの使用は、細胞欠損窓が最大の大きさで画面に収まる点、細胞も観察できる点、位相差の効果も出るという点から好ましい。この画像より円形細胞欠損窓の面積を算出し、これを前値とし、薬剤投与後の経時的変化として各時間で画像を取得し、細胞損傷修復率を算出する。薬物を投与するには、円形細胞欠損を作製した後に、培養皿中の培養液を捨て、薬剤を混ぜた新たな培養液を培養細胞に添加すればよい。デジタル化した画像の面積を算出することにより、従来直径という一次元の指標で評価されていたものを二次元で評価することにより、微量の差を明確化することができるようになり、感度の高い評価系を確立することができた。
【0037】
上記の一連の処理は、機械により自動化して行ってもよい。例えば、顕微鏡のステージを自動的に動かす装置を付加すれば、経時的にデータ画像の取り込みが可能となる。また、顕微鏡システム全体を透明プラスチックの箱の中におさめ、この中の環境を細胞培養でのCOインキュベーターと同じに設定し、経時的取り込みのプログラム(5次元タイムラプス蛍光顕微鏡システム:ARGUS/AQUACOSMOS)を組むことで、無人で実験を行うことが可能である。
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に従って詳述する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施の態様にかかるキットの全体斜視図である(1穴プレートを使用する場合)。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、図1に示したキットの使用状態を示す図である。
【0039】
本発明の第1の実施の態様にかかるキットは、図1に示すように、蓋12、培養皿14および細胞剥離器具16から構成されている。蓋12は上面を有する円柱の形状であり、上面の中央には貫通した穿孔が設けられており、その周囲には細胞剥離器具16を挿入するための鞘18が接着されている。
【0040】
固定ネジは、細胞剥離器具16を細胞層のやや上方で固定し、蓋をした時点で培養皿14の底面に直接接着しないようにするものである。
【0041】
培養皿14に細胞30を添加し、適当な条件下で培養すると、培養皿14の底面には培養細胞の層が形成される。図2および3に示すように、培養皿14に蓋12をかぶせる。図3に示すように、細胞剥離器具16を鞘18の挿入穴20に挿入し、培養皿14の底面に接触させた状態で、細胞剥離器具16を回転させると、培養細胞の層から一部の細胞が剥離して、細胞欠損部が生じる。
【0042】
細胞剥離器具16の回転は、例えば、時計方向に180度、半時計方向に180度というように、互いに逆方向の回転を組み合わせるとよい。細胞剥離器具16は、図2に示すように、ハンドル24、取り付け部26および先端部28から構成される。ハンドル24、取り付け部26および先端部28は、取り付け部26においてネジ止めされている。ハンドル24は、例えば、アルミニウム合金などの加工しやすい材料で製造されている。取り付け部26および先端部28は、四フッ化エチレン、その共重合体、三フッ化塩化エチレン、その共重合体、フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂で製造されている。
【0043】
図4は、本発明の第2の実施の態様にかかるキットの全体斜視図である(6穴マルチプレートを使用する場合)。図5は、図4に示したキットの蓋の底面図である。図6は、図4のB-B線断面図である。図7は、図4に示したキットの使用状態を示す図である。
【0044】
本発明の第2の実施の態様にかかるキットは、図4に示すように、蓋102、培養皿104および細胞剥離器具16から構成されている。蓋102は、図5に示すように、6個の円柱状の凸部106を有しており、凸部106の中央には貫通した穿孔108が設けられている。図6および7に示すように、培養皿104に蓋102をかぶせたときに、蓋102の凸部106は培養皿104の円筒形の凹部110(ウェル)に嵌合する。培養皿104の凹部110に細胞112を添加し、適当な条件下で培養すると、凹部110の底面には培養細胞の層が形成される。図7に示すように、細胞剥離器具16を穿孔108に挿入し、凹部110の底面に接触させた状態で、細胞剥離器具16を回転させると、培養細胞の層から一部の細胞が剥離して、細胞欠損部が生じる。
作製した細胞欠損領域は、4xの対物レンズを備えた倒立型顕微鏡を用い、培養皿の底面の裏側から観察するとよい。
【0045】
[実施例1]薬剤の評価
マウス胃粘膜細胞株(GSM06)(Exp Cell Res. 1993 Dec;209(2):382-7.)を6穴のマルチプレート(細胞培養用マルチプレート、sumilon (株)住友ベークライト)にコンフルエントになるまで培養し、各ウェルの中心に1.2 mm四方の4フッ化エチレン片((株)ニチアス、テフロン)で円形の細胞欠損を作製した。各ウェルには、それぞれ、ランソプラゾール(LPZ,(株)武田薬品工業)を、0、10-7、10-6、10-5M添加し、6時間後、24時間後に倒立型顕微鏡(TE300, (株)Nikon)にて観察した。細胞像は多機能画像解析装置(AQUACOSMOS, (株)浜松ホトエレクトロニクス)に導入し、細胞欠損面積をデジタル解析し、修復率(%)を算出した。
【0046】
6時間後には、LPZ 10-6M以上で修復促進傾向を認めたが、有意差は認められなかった。24時間後には、LPZ10-6Mで有意な修復率の亢進が認められた(図8)が、LPZ 105Mでは認められなかった。
【0047】
LPZは、至適濃度において胃粘膜細胞損傷の修復促進効果を持つことがわかった。このことから、LPZが、周知されているような強力な酸分泌抑制作用だけでなく、粘膜傷害の修復にも作用し、潰瘍治癒を促進している可能性が示唆された。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、細胞損傷修復の評価系を標準化することができるようになった。それにより、組織修復作用を持つ薬剤の評価や細胞傷害作用の定量的評価が簡易に実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の態様にかかるキットの全体斜視図(1穴プレートを使用する場合)。
【図2】図1のA-A線断面図。
【図3】図1に示したキットの使用状態を示す。
【図4】本発明の第2の実施の態様にかかるキットの全体斜視図(6穴マルチプレートを使用する場合)。
【図5】図4に示したキットの蓋の底面図。
【図6】図4のB-B線断面図。
【図7】図4に示したキットの使用状態を示す。
【図8】 LPZ10-6Mによる有意な胃粘膜細胞損傷の修復率の亢進を示す。
【符号の説明】
10:本発明の第1の実施の態様にかかるキット全体(1穴プレートの場合)
12:蓋(1穴プレート用)
14:培養皿(1穴プレート)
16:細胞剥離器具
18:鞘
20:挿入穴
22:固定ネジ
24:ハンドル
26:取り付け部
28:先端部
30:細胞
100:本発明の第2の実施の態様にかかるキット全体(6穴マルチプレートの場合)
102:蓋(6穴マルチプレート用)
104:培養皿(6穴マルチプレート)
106:凸部
108:穿孔
110:凹部(ウェル)
112:細胞
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7