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明細書 :電気刺激装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4389036号 (P4389036)
公開番号 特開2004-255104 (P2004-255104A)
登録日 平成21年10月16日(2009.10.16)
発行日 平成21年12月24日(2009.12.24)
公開日 平成16年9月16日(2004.9.16)
発明の名称または考案の名称 電気刺激装置
国際特許分類 A61N   1/36        (2006.01)
A61H   3/00        (2006.01)
FI A61N 1/36
A61H 3/00 B
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2003-052041 (P2003-052041)
出願日 平成15年2月27日(2003.2.27)
審査請求日 平成18年2月10日(2006.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】村岡 慶裕
個別代理人の代理人 【識別番号】100110191、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 和男
審査官 【審査官】大和田 秀明
参考文献・文献 特開2001-218855(JP,A)
特表平06-507090(JP,A)
特開平10-000241(JP,A)
調査した分野 A61N 1/36
A61H 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
皮膚表面に配置される第1電極及び第2電極と、
第1電極及び第2電極間の随意筋電信号に基づいて刺激信号を制御する制御手段と、
直流の刺激信号を供給するトランスレスの昇圧回路と、
直列に接続され共通接続端子が第1電極に接続される第1スイッチ及び第2スイッチと直列に接続され共通接続端子が第2電極に接続される第3スイッチ及び第4スイッチとを有し、第1スイッチ及び第2スイッチと第3スイッチ及び第4スイッチが並列に接続され前記制御手段により制御されるHブリッジ回路と、
該Hブリッジ回路と並列に接続されるコンデンサと、
前記昇圧回路の出力の両端と前記コンデンサの両端との間にそれぞれ接続され前記制御手段により制御されて、前記Hブリッジ回路のすべてのスイッチがオフの期間にオンとなる第5スイッチ及び第6スイッチと、
前記昇圧回路の出力の一端と接続され皮膚表面に配置される第3電極と
を備えることを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
皮膚表面に配置される第1電極及び第2電極と、
第1電極及び第2電極間の随意筋電信号に基づいて刺激信号を制御する制御手段と、
直流の刺激信号を供給するトランスレスの昇圧回路と、
直列に接続される第1スイッチ及び第2スイッチと直列に接続される第3スイッチ及び第4スイッチとが並列に接続され前記制御手段により制御されるHブリッジ回路と、
該Hブリッジ回路と並列に接続されるコンデンサと、
前記昇圧回路の出力の両端と前記コンデンサの両端との間にそれぞれ接続され前記制御手段により制御されて、前記Hブリッジ回路のすべてのスイッチがオフの期間にオンとなる第5スイッチ及び第6スイッチと、
第1スイッチと第2スイッチとの共通接続端子と第1電極及び第2電極との間にそれぞれ接続される第7スイッチ及び第8スイッチと、
第3スイッチと第4スイッチとの共通接続端子と接続され皮膚表面に配置される第3電極と
を備えることを特徴とする電気刺激装置。
【請求項3】
第7スイッチ及び第8スイッチが、ダイアックであることを特徴とする請求項2記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記制御手段は、第1電極及び第2電極間の随意筋電信号に基づいて筋肉が静止しているときに、電気刺激を与えるように制御することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記制御手段は、第1電極及び第2電極間の随意筋電信号から導出される随意筋電の大きさの時間的変化に基づいて制御することを特徴とする請求項4記載の電気刺激装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下垂足患者の運動機能補助、運動機能回復又は筋力増強などのために好適な電気刺激装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
脳血管障害による片麻痺の後遺症に、下垂足と呼ばれるものがある。下垂足患者においては、足関節の背屈筋群の弛緩、底屈筋群の亢進により、足関節の背屈が困難になっている。そのため歩行遊脚時に、健常者では背屈筋群の収縮により足関節が背屈しスムーズに脚が振り出されているのに対し、下垂足患者では、足関節が背屈せず爪先が接地してしまう。この「引きずり歩行」のために患者の歩行は困難なものになっている。
【0003】
図6は、第1従来技術である電気刺激装置の構成を示す図である。電極E11,E12は筋活動を拾いたい筋肉の筋腹に、電極E13は、任意の位置に配置される。患者でも筋肉を動かそうとすると微小な随意筋電が出るので、電極E11,E12はその随意筋電を検出するためのものである。電極E13をグランド電極として、電極E11,E12で検出された目的となる筋肉の随意筋電信号は、入力保護抵抗R11,R12を介して計測増幅器61に入力される。計測増幅器61が飽和しないようにダイオードD11,D12により計測増幅器61の入力は約±0.5Vにリミットされる。その後、帯域300-450Hzを有する数段の多段増幅器62によりマイコン63により認識できる程度の大きさまで増幅され、マイコン63のA/D変換入力PINから、サンプリング周波数1kHzにより取り込まれる。マイコン63は、随意筋電の振幅に比例した幅のパルスを出力して刺激手段64を制御する。刺激パルスは、双極性パルスで、陽極パルスと陰極パルスは、パルス幅、振幅は同一である。刺激パルス振幅は約100Vであり、パルス幅は50μs-1msの間で調整され、その幅が大きくなるほど、強い刺激となる。刺激パルス周期は50msであり、パルスが印加されるタイミングでフォトモスリレーSW11,SW12はオンとなり、刺激パルスを電極E11,E12に導通する。刺激パルスが印加されていない時はフォトモスリレーSW11,SW12はオフとなり、刺激手段64側からのノイズの混入を防ぐと同時に、電極E11,E12の電極間の短絡を防ぐ役目を果たしている。また、フォトモスリレーSW11,SW12はマイコン63によりオン・オフのタイミングを制御される。この従来技術は、振幅100Vと、アイソレーションを同時に実現する手段である刺激手段64としてトランスを使用するものである。
【0004】
図7は、第2従来技術である電気刺激装置の構成を示す図である。この構成は本出願人が特願2002-115756号で提案しているものであり、第1従来技術と異なる点は、フォトモスリレーSW11,SW12を用いる代わりに、それぞれダイアックD13,D14を介して電極E14,E15を共通に刺激手段64の一方端子に接続し、刺激手段64の他方端子をアース、すなわち、電極E16に接続する構成とした点である。これにより、刺激は電極E14,E15と電極E16の2チャンネルで、筋電測定は電極E14,E15の1チャンネルで行うものである。この従来技術も刺激手段64としてはトランスを使用するものである。
【0005】
しかし、トランスはかさばって重いため携帯性能に欠ける。このため電気刺激装置を装着したままで日常生活を送るには不自由を強いられることになる。
【0006】
そこで、小型軽量化するために、トランスを用いる代わりにトランスレスの昇圧回路を用いることが考えられる。
【0007】
図8は、第1参考技術である電気刺激装置の構成を示す図である。この構成は第1従来技術の刺激手段64及びフォトモスリレーSW11,SW12を用いる代わりに、トランスレスの昇圧回路及びHブリッジ回路を用いるものである。昇圧回路84はトランスレスのDC-DCコンバータであり(図3で詳しく説明する)、100Vの直流高圧を発生する。Hブリッジ回路はフォトモスリレーSW21,SW22,SW23,SW24から成り、フォトモスリレーSW21,SW23及びフォトモスリレーSW22,SW24をそれぞれ直列に接続して、フォトモスリレーSW21,SW22の共通接続端子を昇圧回路84の+100V端子に接続し、フォトモスリレーSW23,SW24の共通接続端子を昇圧回路84のグランド端子に接続し、フォトモスリレーSW21,SW23の共通接続端子を電極E21に接続し、フォトモスリレーSW22,SW24の共通接続端子を電極E22に接続するものである。
【0008】
この第1参考技術は次のように動作する。フォトモスリレーSW21,SW24をオンにし、フォトモスリレーSW22,SW23をオフにすると、電極E21から電極E22,E23に電流を流し、負極性である電極E22,E23を興奮させる。逆に、フォトモスリレーSW22,SW23をオンにし、フォトモスリレーSW21,SW24をオフにすると、電極E22から電極E21,E23に電流を流し、負極性である電極E21,E23を興奮させる。このように第1参考技術では電極E23を常に興奮させることになってしまう。
【0009】
図9は、第2参考技術である電気刺激装置の構成を示す図である。この構成は第2従来技術の刺激手段64を用いる代わりに、トランスレスの昇圧回路及びHブリッジ回路を用いるものである。昇圧回路84はトランスレスのDC-DCコンバータであり(図3で詳しく説明する)、100Vの直流高圧を発生する。Hブリッジ回路はフォトモスリレーSW21,SW22,SW23,SW24から成り、フォトモスリレーSW21,SW23及びフォトモスリレーSW22,SW24をそれぞれ直列に接続して、フォトモスリレーSW21,SW22の共通接続端子を昇圧回路84の+100V端子に接続し、フォトモスリレーSW23,SW24の共通接続端子を昇圧回路84のグランド端子に接続し、フォトモスリレーSW21,SW23の共通接続端子をダイアックD23,D24の共通接続端子に接続し、フォトモスリレーSW22,SW24の共通接続端子を電極E23に接続するものである。
【0010】
この第2参考技術は次のように動作する。フォトモスリレーSW21,SW24をオンにし、フォトモスリレーSW22,SW23をオフにすると、電極E24,E25から電極E26に電流を流し、負極性である電極E26を興奮させる。逆に、フォトモスリレーSW22,SW23をオンにし、フォトモスリレーSW21,SW24をオフにすると、電極E26から電極E24,E25に電流を流し、負極性である電極E24,E25を興奮させる。しかし、昇圧回路84のグランドを筋電測定系のアースである電極E26に接続すると、フォトモスリレーSW22をオンにしたときに+100V端子がアースと短絡してしまう。
【0011】
【特許文献1】
特願2002-115756号
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このように、第1参考技術及び第2参考技術では、せっかく小型軽量化のために昇圧回路をトランスレスにしても、昇圧回路と筋電測定系とで異なる電源を用意しなければならず十分に小型軽量化することができない。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、小型軽量化のために昇圧回路を非絶縁系であるトランスレスにした上で、昇圧回路と筋電測定系とで電源を兼用することができる電気刺激装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気刺激装置は、皮膚表面に配置される第1電極及び第2電極と、第1電極及び第2電極間の随意筋電信号に基づいて刺激信号を制御する制御手段と、直流の刺激信号を供給するトランスレスの昇圧回路と、直列に接続され共通接続端子が第1電極に接続される第1スイッチ及び第2スイッチと直列に接続され共通接続端子が第2電極に接続される第3スイッチ及び第4スイッチとを有し、第1スイッチ及び第2スイッチと第3スイッチ及び第4スイッチが並列に接続され前記制御手段により制御されるHブリッジ回路と、該Hブリッジ回路と並列に接続されるコンデンサと、前記昇圧回路の出力の両端と前記コンデンサの両端との間にそれぞれ接続され前記制御手段により制御されて、前記Hブリッジ回路のすべてのスイッチがオフの期間にオンとなる第5スイッチ及び第6スイッチと、前記昇圧回路の出力の一端と接続され皮膚表面に配置される第3電極とを備える。
【0015】
また、本発明の電気刺激装置は、皮膚表面に配置される第1電極及び第2電極と、第1電極及び第2電極間の随意筋電信号に基づいて刺激信号を制御する制御手段と、直流の刺激信号を供給するトランスレスの昇圧回路と、直列に接続される第1スイッチ及び第2スイッチと直列に接続される第3スイッチ及び第4スイッチとが並列に接続され前記制御手段により制御されるHブリッジ回路と、該Hブリッジ回路と並列に接続されるコンデンサと、前記昇圧回路の出力の両端と前記コンデンサの両端との間にそれぞれ接続され前記制御手段により制御されて、前記Hブリッジ回路のすべてのスイッチがオフの期間にオンとなる第5スイッチ及び第6スイッチと、第1スイッチと第2スイッチとの共通接続端子と第1電極及び第2電極との間にそれぞれ接続される第7スイッチ及び第8スイッチと、第3スイッチと第4スイッチとの共通接続端子と接続され皮膚表面に配置される第3電極とを備える。
【0016】
また、第7スイッチ及び第8スイッチが、ダイアックであることで、更に小型軽量化される。
【0017】
また、前記制御手段は、第1電極及び第2電極間の随意筋電信号に基づいて筋肉が静止しているときに、電気刺激を与えるように制御することで、日常生活を送りながら本装置を装着して使用しても体の動きを妨げられることがない。
【0018】
また、前記制御手段は、第1電極及び第2電極間の随意筋電信号から導出される随意筋電の大きさの時間的変化に基づいて制御することで、確実に体が静止していることを検出することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。本実施の形態の電気刺激装置は、第1参考技術(図8参照)の昇圧回路84とHブリッジ回路との間にフォトモスリレーSW5,SW6とコンデンサCとを挿入したものであり、主に電極E1,E2,E3、入力保護抵抗R1,R2、ダイオードD1,D2、計測増幅器11、多段増幅器12、マイコン13、昇圧回路14、フォトモスリレーSW5,SW6、コンデンサC、Hブリッジ回路から成る。電極E1,E2は、筋活動を取得すべき筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、患者が筋肉を動かそうとした時に発生する微弱な随意筋電を検出すると共に、刺激信号を皮膚から筋肉に与えるための電極として機能する。電極E3は、皮膚表面の任意の場所に配置され、グランド電極として機能する。入力保護抵抗R1,R2は、それぞれ電極E1,E2と計測増幅器11との間に接続され、刺激信号を電極E1,E2に印加する際に計測増幅器11を保護する。ダイオードD1,D2は、計測増幅器11の入力端子間に逆極性に接続され、計測増幅器61が飽和しないように入力を約±0.5Vでリミットする。計測増幅器11は、電極E1,E2が取得した随意筋電を入力保護抵抗R1,R2を介して受けてその微弱な随意筋電を増幅する。多段増幅器12は、計測増幅器11が増幅した随意筋電を受けてマイコン13が認識できる程度まで増幅する。マイコン13は、多段増幅器12で増幅された随意筋電を受けて、随意筋電量を算出し、フォトモスリレーSW5,SW6及びHブリッジ回路を制御する。昇圧回路14は、計測増幅器11や多段増幅器12の筋電測定系と電源を兼用する、非絶縁系のトランスレスの昇圧回路であって約+100Vの直流電圧を供給する。具体的な構成は図3で詳しく説明する。フォトモスリレーSW5,SW6は、それぞれ昇圧回路14の両極とコンデンサCの両端との間に接続されマイコン13によってオン・オフを制御される。コンデンサCは、フォトモスリレーSW5,SW6がオンのときに昇圧回路14の+100Vを受けて、常にHブリッジ回路にその+100Vを供給する。Hブリッジ回路は、フォトモスリレーSW1,SW2,SW3,SW4から成り、フォトモスリレーSW1,SW3及びフォトモスリレーSW2,SW4をそれぞれ直列に接続して、フォトモスリレーSW1,SW2の共通接続端子をコンデンサCの+100V端子に接続し、フォトモスリレーSW3,SW4の共通接続端子をコンデンサCのグランド端子に接続し、フォトモスリレーSW1,SW3の共通接続端子を電極E2に接続し、フォトモスリレーSW2,SW4の共通接続端子を電極E1に接続するものである。フォトモスリレーSW1~SW6は光によって制御されるものであるのでマイコン13とは電気的に絶縁されている。
【0022】
図2は、第1実施の形態の動作を説明する波形図である。初段が刺激パルス信号であり、60ms毎に印加される刺激パルス波形2つをもって1組とし、2つの刺激波形は、同一である。したがって、刺激波形は120ms毎に更新される。刺激パルスの波形はマイコン13によって制御されるフォトモスリレーSW1~SW6によって実現される。すなわち、刺激を加えない期間にフォトモスリレーSW1~SW4をオフ、フォトモスリレーSW5,SW6をオンにしてコンデンサCに100Vを充電しておき、刺激を加える期間はフォトモスリレーSW5,SW6をオフにして、まずフォトモスリレーSW2,SW3をオフのまま、フォトモスリレーSW1,SW4をオンにして電極E2から電極E1に電流を流し、負極性である電極E1を興奮させ、次にフォトモスリレーSW1,SW4をオフにしてから、フォトモスリレーSW2,SW3をオンにして電極E1から電極E2に電流を流して、負極性である電極E2を興奮させる。この間、電極E3は刺激に関与しない。このように、Hブリッジ回路は、電極E1,E2に交流を印加する直流/交流変換器であると同時に、電極E3と電極E1,E2とが短絡するのを阻止するスイッチの機能を有する。なお、刺激波形は、+-を1パルスずつだけでなく、+-+-などと連続させたりするなど、任意の波形を生成してもよい。
【0023】
マイコン13の入力ではA/D変換入力PINから随意筋電が取り込まれサンプリング周期1msでサンプリングされてデジタル変換される。その波形は、2段目に示すように、刺激信号及び刺激起因のアーチファクトにM波(ある運動神経に対し電気刺激を加えると、神経上にインパルスが発生し、それが神経を下降して筋肉に達し、筋肉を収縮させる時に誘発される筋電位)を含む筋電が重畳した信号となっている。刺激信号は60ms周期の初めに入力され、その振幅は随意筋電と比べて極めて大きく、かつ、その後の信号処理には必要ない信号であるのでるので、振幅が所定値以上に大きくならないように2つのダイオードによりリミットされる。60ms毎の2つの刺激波形が同一であるので、対応する60ms毎の2つのアーチファクト及びM波も同一になり、それらの差分をとることでアーチファクト及びM波を相殺して随意筋電による成分だけを抽出することができる。ただし、60ms周期の初めからしばらく(およそ20ms)は不安定であるので、周期の終わり近く(下記例では15msとしたが、より広くすることもできる)を選択して差分をとることで安定的に随意筋電による成分を抽出することができる。その際に周期を60ms、すなわち、20msの整数倍としているので20ms(50Hz)のハムノイズを除去することができる。サンプリング周期を1ms、この信号の刺激波形が更新される時点を1として、1周期目の信号をa(1),a(2)・・・a(60)、2周期目の信号をa(61),a(62)・・・a(120)とすると、
b(n)=a(n)-a(n-60); 104≦n≦119
b(n)=0; 1≦n≦103,n=120
としたものが3段目の信号処理後の波形となる。n=120のデータを使わないのは、マイコン13が次の刺激強度の演算を行っており、演算処理には値として反映できないためである。この信号処理により、随意筋電以外の刺激及び刺激起因のアーチファクト、周期20msのハムノイズ、M波が除去される。その後、マイコン13はb(n)の最大値-最小値を算出し、その大きさに応じた幅のパルスを出力してHブリッジ回路を制御する。これにより次の刺激の強度を決定する。刺激周期は、信号処理手法が同様であれば、60msに限定されない。
【0024】
図3は、昇圧回路の構成の例を示す図である。すでに説明したように、この昇圧回路はトランスレスのDC-DCコンバータであり、より具体的には、出力電圧をIC30でモニタして所定電圧以下の場合にスイッチングによって電荷を蓄積していって高圧(+100V)を得るものである。
【0025】
まず、IC30から説明する。端子5の電圧と基準電圧発生器31からの基準電圧とを電圧比較器32が比較して、端子5の電圧が基準電圧よりも低い場合に高電位をアンド回路33の1端子に出力する。他方、発振器35の出力は、アンド回路33の他端子に供給されると共に反転されてFF(セットリセットフリップフロップ)34のR端子に入力される、アンド回路33の出力はFF34のS端子に入力される。FF34の出力QはトランジスタTR31のゲートに入力され、トランジスタTR31のエミッタは抵抗R31を介して端子2に接続されると共にトランジスタTR32のゲートに入力され、トランジスタTR32のエミッタは端子2に接続される。これにより、端子5の電圧が基準電圧よりも低い場合にFF34の出力Qは発振器35の発振周波数で反転を繰り返し、端子1と端子2を周期的に短絡する。端子5の電圧が基準電圧よりも高い場合にはアンド回路33の出力が低電位のままなので、Qは低電位のままであり端子1と端子2との間は開放されたままとなる。
【0026】
端子1と端子2とが短絡されると抵抗R32に電源電位(+10V)が印加され、トランジスタTR33のゲートに入力されトランジスタTR33をオンにする。このため、電源(+10V)からコイルL31を介してアース端子4に電流が流れる。つぎに、端子1と端子2とが開放されるとトランジスタTR33がオフになり、コイルL31は電流をダイオードD32を介してコンデンサC33に流してコンデンサC33に電荷を蓄積する。これを繰り返すことによってコンデンサC33には高圧(+100V)が得られる。その高圧は抵抗R34及び抵抗R35によって分圧されて端子5でIC30によってモニタされる。なお、コンデンサC34は電源電位(+10V)を保持する。
【0027】
図4は、本発明の第2実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。本実施の形態の電気刺激装置は、第2参考技術(図9参照)の昇圧回路84とHブリッジ回路との間にフォトモスリレーSW5,SW6とコンデンサCとを挿入したものであり、この点で第1実施の形態と同じである。ただし、本実施の形態のHブリッジ回路は、電極E4,E5に交流を印加する直流/交流変換器であると同時に、電極E6と昇圧回路14の出力V+とが短絡するのを阻止するスイッチの機能を有する。
【0028】
図5は、本発明の第3実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。本実施の形態の電気刺激装置は、第1参考技術(図8参照)の昇圧回路84の極性を逆にしたものである。このため電極E3に負極性の電流を流すことはなく、電極E3を興奮させることはない。正極性であっても若干の興奮があるが、流れる電流の影響を少なくするために電極E3を大きくすることでその影響は実質的になくすことが可能である。
【0029】
本発明の電気刺激装置は小型軽量化されるため、携帯したままで、筋力増強のために用いることができる。以下にその実施の形態を説明する。
【0030】
モントリオールオリンピックでソ連の選手に使用された筋力増強のための電気刺激は、EMS(Electrical Muscle Stimulation)と呼ばれ、リハビリテーションやスポーツ医療の分野で普及した。この方法は、筋肉または神経に外部から電気刺激を与え、強制的に筋肉の収縮を起こさせ、筋力増強を生じさせるものである。最近では、EMSベルトと称し、「10分間で600回の腹筋運動と同じ効果がある」などの宣伝が行われ、本人の努力や腹筋の筋力増強に必要とされるような無理な姿勢を取ることなく、筋力増強できるという利点があるとされている。しかしながら、せっかく本発明によって電気刺激装置が小型軽量化されて常時携帯あるいは装着可能となっても、本人の意思とは関係なく筋肉が勝手に収縮してしまうために、日常生活動作を阻害する(下肢や腹筋、臀筋であれば歩行運動の妨げになるし、上肢筋であれば上肢運動の妨げとなる)という問題点がある。そこで、日常の行動を妨げることなく、筋力増強をすることができる電気刺激装置を説明する。
(1).携帯型の電気刺激兼随意筋電検出装置により、電気刺激を与えながら、随意筋電をモニターし、日常動作をしていない間、電気刺激を与えて筋力増強を行い、日常動作をしている間、電気刺激を止めて日常運動を阻害しないようにする。体幹筋(腹筋、背筋、臀筋など)の場合は、筋電検出兼電気刺激が1チャンネルで良いが、関節運動を起こす上肢筋や下肢筋の場合は、主動筋と拮抗筋それぞれに筋電検出兼電気刺激が必要となるために2チャンネル必要となる。その場合には、図1におけるコンデンサCの両端に筋電アンプを付加したHブリッジ回路を増設する。上肢下肢筋の場合には、主動筋と拮抗筋どちらかに随意運動が生じた場合に、電気刺激を止めるようにする。
(2).昇圧回路+Hブリッジ回路を用いて双極性パルスを発生し、火傷を防ぐ。
(3).電気刺激を与えながら筋電検出するには、絶縁が必要となり、トランスを用いると、電気刺激のみの装置に比べ大きくなるが、フォトモスリレーを電気刺激出力部に用いることにより電気刺激兼随意筋電検出装置をより小型化することができる。
【0031】
体を動かしているときは筋電位が大きく変動することに着目して、以下の信号処理により体を動かしているときを検出する。
(1).同一の刺激を2回ずつ繰り返して加えて、続けた2回の刺激で同期減算して随意筋電のみを抽出する。
(2).(1).で得られた随意筋電信号の最大値-最小値(又は、すべての値についての絶対値の積算値)の計算を行う。この値は随意筋電の大きさを反映していて、その最新のものをVemg[0]、その1つ前をVemg[1]・・・とする。
(3).|Vemg[0]-Vemg[1]|>Vthとなったら、随意筋電量が大きく変動したとして、刺激を1秒程止める。ここでのVthは、筋肉や皮下脂肪の厚さ、皮膚と電極の接触インピーダンス、筋電アンプの増幅率で多少異なるので、使用時の最初に調整する必要がある。
【0032】
基本的に、体幹筋が姿勢を保持している時の筋電は、ごく小さいので、弛緩しているとみなしても良いかもしれないが、厳密には、弛緩ではなく、運動を伴わない等尺性収縮である。
【0033】
上記の手法であれば、弛緩時も等尺性収縮も同様に扱え、体を動かしているときと、静止していて力が入っているときの違いを判別できる。
【0034】
体幹筋だけでなく、四肢の主動筋と拮抗筋にも使用できる。鞄を持っている際の上腕2頭筋と3頭筋などの等尺性収縮も検出できる。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0036】
フォトモスリレーの代わりにフォトトランジスタを用いても良い。
【0037】
昇圧回路は任意の非絶縁系のトランスレスのものを用いても良い。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、請求項1及び2記載の本発明によれば、小型軽量化のために昇圧回路を非絶縁系であるトランスレスにした上で、昇圧回路と筋電測定系とで電源を兼用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施の形態の動作を説明する波形図である。
【図3】昇圧回路の構成の例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。
【図6】第1従来技術である電気刺激装置の構成を示す図である。
【図7】第2従来技術である電気刺激装置の構成を示す図である。
【図8】第1参考技術である電気刺激装置の構成を示す図である。
【図9】第2参考技術である電気刺激装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
11、61、81 計測増幅器
12、62、82 多段増幅器
64 刺激手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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