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明細書 :測定物の表面状態試験法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4125625号 (P4125625)
公開番号 特開2004-317217 (P2004-317217A)
登録日 平成20年5月16日(2008.5.16)
発行日 平成20年7月30日(2008.7.30)
公開日 平成16年11月11日(2004.11.11)
発明の名称または考案の名称 測定物の表面状態試験法
国際特許分類 G01N   3/00        (2006.01)
G01N   3/303       (2006.01)
G01N   3/40        (2006.01)
FI G01N 3/00 P
G01N 3/303 B
G01N 3/40 C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 10
出願番号 特願2003-109807 (P2003-109807)
出願日 平成15年4月15日(2003.4.15)
審査請求日 平成17年4月14日(2005.4.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】松田 健次
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】森 竜介
参考文献・文献 実開平01-104559(JP,U)
特開平08-136429(JP,A)
特開平08-033691(JP,A)
特開平06-294724(JP,A)
特開平09-089757(JP,A)
特開平01-162127(JP,A)
特開2000-097831(JP,A)
特開平07-280779(JP,A)
特開平04-113256(JP,A)
松田健次,反発硬さに及ぼすハンマ重心の影響,日本トライポロジー学会トライポロジー会議予稿集,社団法人 日本トライポロジー学会,1999年10月 4日,1999-10,p.247-p.248
調査した分野 G01N 3/00-3/62
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、反発後のハンマの振動を計測することにより測定物の表面状況を評価することを特徴とする測定物の表面状態試験法。
【請求項2】
前記測定物の表面状況は、測定物表面に設けた表面膜の付着状況であることを特徴とする請求項1に記載の測定物の表面状態試験法。
【請求項3】
前記測定物の表面状況は、測定物の応力-ひずみ線図の形体の違いであることを特徴とする請求項1に記載の測定物の表面状態試験法。
【請求項4】
前記測定物の表面状況は、測定物の反発硬さ、又は反発係数であることを特徴とする請求項1に記載の測定物の表面状態試験法。
【請求項5】
前記反発後のハンマの振動は、ハンマに照射したレーザ光の反射光をレーザドップラー振動計により検出することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の測定物の表面状態試験法。
【請求項6】
前記反発後のハンマ振動は、ハンマに添付した加速度ピックアップにより検出することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の測定物の表面状態試験方法。
【請求項7】
所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、衝突後のハンマのひずみ変化によって、表面膜の付着状況を評価する測定物の表面状態試験法。
【請求項8】
所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、衝突後のハンマのひずみ変化によって、測定物の応力-ひずみ線図の形体の違いを評価する測定物の表面状態試験法。
【請求項9】
前記ひずみ変化は、ハンマに取り付けた、ひずみゲージ、圧電素子等のひずみ検出手段により測定することを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載の測定物の表面状態試験法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、反発後のハンマの振動状況およびハンマのひずみ変化によって、表面膜の付着状況、測定物の硬さ以外の機械的特性、材料の反発硬さ等を評価するのに好適な測定物(材料)の表面状態試験法(はく離評価試験法)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、基材表面に種々の皮膜を作成する表面改質技術がめざましい進歩をみせているが、被膜材としての機能を十分に発揮するには、皮膜と基材との間に十分な付着強度を有していることが必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
皮膜の付着力測定法として、これまで提案されている引剥がし法、引張り法は、測定データのばらつきが大きく付着力の大きな皮膜には適用できない。引っかき法(JIS R 3255)は、膜厚さが数μm程度以下の薄い膜の付着強度の比較評価試験としては実績があるが、皮膜の剥がれる機構が明らかでなく現象が3次元的であるために解析が困難であるなど構造上の問題も多い。また、厚さが数10μmを越えるような膜の評価は困難である。また、所定のハンマを測定物に衝突させたときの反発係数の違いによって付着強度を評価する方法では、はく離の検出感度が低いという問題がある。
【0004】
また、小形・軽量で操作法が簡便な反発硬さ試験機として、ショア硬さ試験機や反発式ポータブル硬度計が市販されているが、硬さの比較評価しかできない。例え硬さが同じであっても、ヤング率、降伏応力、加工硬化率等の基本的機械的性質が異なる場合には、変形形態や耐久性に違いが生じる場合があるが、上記の反発硬さ試験機ではこれらの情報を得ることができない。
【0005】
本発明は、所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、反発後のハンマの振動状況あるいは衝突時のハンマに生じるひずみによって、表面膜の付着状況、測定物の硬さ以外の機械的特性、材料の反発硬さ等を評価することができる「測定物の表面状態試験法」を提供し、上記問題点を解決することを目的とする。
【0006】
本発明のように、ハンマ衝突型試験機を用いることは下記のような利点がある。
(1)ハンマ質量、衝突速度、圧子形状を変えることにより、衝突面におけるエネルギ密度を容易に変化させることができ、種々の皮膜厚さ、付着強度の測定物に適度なはく離を生じさせることが可能である。
(2)測定物表面に対して垂直方向の運動を扱うので、モデル化が容易である。このため、本発明は、種々の表面改質膜の付着強度をも評価可能な簡便で実用的な表面状態試験法として利用できるものと期待される。さらに、引張試験では評価が困難な各種材料の反発硬さの評価や、ヤング率、降伏応力等の硬さ以外の基本的機械的特性の違いを簡便に評価できる方法としても利用可能である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した技術解決手段は、
所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、反発後のハンマの振動を計測することにより測定物の表面状況を評価することを特徴とする測定物の表面状態試験法である。
また、前記測定物の表面状況は、測定物表面に設けた表面膜の付着状況であることを特徴とする測定物の表面状態試験法である。
また、前記測定物の表面状況は、測定物の応力-ひずみ線図の形体の違いであることを特徴とする測定物の表面状態試験法である。
また、前記測定物の表面状況は、測定物の反発硬さ、又は反発係数であることを特徴とする測定物の表面状態試験法である。
また、前記反発後のハンマの振動は、ハンマに照射したレーザ光の反射光をレーザドップラー振動計により検出することを特徴とする測定物の表面状態試験法である。
また、前記反発後のハンマ振動は、ハンマに添付した加速度ピックアップにより検出することを特徴とする測定物の表面状態試験方法である。
また、所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、衝突後のハンマのひずみ変化によって、表面膜の付着状況を評価する測定物の表面状態試験法である。
また、所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、衝突後のハンマのひずみ変化によって、測定物の応力-ひずみ線図の形体の違いを評価する測定物の表面状態試験法である。
また、前記ひずみ変化は、ハンマに取り付けた、ひずみゲージ、圧電素子等のひずみ検出手段により測定することを特徴とする測定物の表面状態試験法である。
【0008】
【実施の形態】
以下本発明に係る測定物の表面状態試験法の実施形態を説明する。
本発明の「表面状態試験法」の第1の手法は、所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、反発後のハンマの振動状況によって表面膜の付着状況等を評価する試験法である。
表面膜の基材への付着強度の相違は、ハンマを衝突させた際の衝撃力の経時変化の形体に変化をもたらす。反発係数は衝撃力の経時変化を時間で積分した値、すなわち力積に依存するが、付着強度の大小による力積の変化の程度は小さい。一方、反発後のハンマの振動振幅は衝撃力の経時変化の形体に著しく依存する。この振動の変化をとらえることによって、感度よい表面膜のはく離評価が可能となる。ハンマの振動を測定する方法としては、レーザドップラー振動計を用いる以外に、ハンマにひずみゲージまたは加速度ピックアップまたは圧電素子を添付する方法が可能であり、装置のコンパクト化が可能である。
【0009】
さらに、測定物のヤング率、降伏応力、加工硬化率等の基本的機械的性質が異なる場合にも、ハンマを衝突させた際の衝撃力の経時変化の形体に変化をもたらす。すなわち、反発硬さ(反発係数)が同じ材料(衝撃力の経時変化を時間で積分した値が同じ材料)であっても、衝撃力の経時変化の形体が異なれば、反発後のハンマの振動振幅には変化が生じ、この振動の変化をとらえることによって、硬さ以外の測定物の機械的特性の違いの評価が可能となる。
【0010】
また、ハンマの振動の検出に関しては、もしハンマが軸方向に一様な断面であれば、ハンマ重心近傍の側面にひずみゲージを添付することにより感度的に有利となる。すなわち、ハンマの適した場所にひずみゲージを添付することにより、測定物の巨視的な機械的特性である反発硬さあるいは反発係数と、表面膜の付着状況の評価あるいは硬さ以外の測定物の機械的特性の違いをひずみ計によって取得したハンマの振動情報にもとづての評価が可能となる。
【0011】
次に本発明の「表面状態試験法」の第2の手法を説明すると、この手法は、所定の速度でハンマを測定物に衝突させ、ハンマのひずみを計測することによって表面膜の付着状況等を評価する試験法である。
ハンマ衝突時のハンマ内においては、ハンマ先端部に近づくにつれハンマ断面に作用する力は増大する。そこで、ハンマ先端近傍のハンマ側面にひずみゲージを添付すれば、相対的にハンマ振動の影響は小さくなり、衝突荷重の経時変化に対応したひずみ波形を得ることができる。ここで、最大荷重点では速度零であるため、衝突した瞬間から最大荷重点に至るまでの荷重を時間で積分した値I1は、ハンマの衝突速度が一定であれば測定物によらず一定となる。すなわち、これに対応したひずみの積分値S1も衝突速度が一定であれば測定物によらず一定となる。ここで、最大荷重点からハンマが測定物から離れる瞬間までの荷重を時間で積分した値をI2、これに対応したひずみの積分値をS2とすると、衝突直前の速度V1と衝突直後の速度V2の比で定義される反発係数Rは、次式で見積もることができる。
R=(-V2/V1)=(I2/I1)=(S2/S1)
すなわち、ハンマ先端近傍に添付したひずみの情報のみで反発係数を見積もることが可能である。また、あらかじめ衝突速度V1とS1との関係を検定しておれば、衝突速度の評価も可能となる。
さらに、衝突時のハンマ先端部きんぼうのひずみ波形の特徴、例えば、負荷過程または除荷過程の所定の範囲における波形の傾き等によって波形形体を定量化すれば、表面膜の基材への付着強度の相違および硬さ以外の測定物の機械的特性の違いによるひずみ波形の変化は、定量化した値の変化として捉えることが可能となる。即ち、衝突時のハンマ先端部近傍のひずみ波形により、表面膜の基材への付着強度の相違および硬さ以外の測定物の機械的特性の違いの評価が可能となる。
【0012】
以下具体的実施例を説明する。
図1は本発明に使用する試験機(ハンマの振動検出を使用した試験機)の構成図である。
図1において、1はハンマ、2はハンマ先端に取り付けた鋼球、3は市販の指示形(D形)ショア硬さ試験機、4は試験片、5は反射テープ、6はハンマの上端部に当てるレーザ、7はレーザを反射する鏡、8はレーザドップラー振動計センサーヘッド、9は振動計コントローラ、10は記録計である。試験機3は硬度計3の付属の指示部は除去されている。またハンマ3は鋼の丸棒で構成されている。なお日本工業規格(JIS B 7727)のハンマでは評価に適さないと判断されたため、ここでは直径8mm(先端近傍は5mm)、長さ約120mmの鋼の丸棒でできたハンマ1を使用している。ハンマ1の先端には、鋼球2が圧入されている(本例では直径0.7mm)。
【0013】
以上の構成からなる試験機を使用して表面膜の付着状況の評価あるいは硬さ以外の測定物の機械的特性の違いを評価する試験方法を説明する。
試験片4の表面から所定の高さ(本例では1.3mm)の高さより自由落下させて試験片4に衝突させた。このときのハンマ1の反発挙動は、レーザドップラー振動計センサーヘッド8から発せられたレーザ6を鏡7で反射させた後、ハンマ1の上端部に添付した反射テープ5(なお、必要に応じて反射テープを不要とすることもできる)に当ることにより測定した。なお、鏡7を使用せず、レーザドップラー振動計センサーヘッド8から発せられたレーザ6を、直接ハンマ1の上端部に当てることにより測定することも可能である。レーザドップラー振動計ヘッド8は、振動計コントローラー9によって制御され、取得したハンマ1の振動信号は記録計10に記録される。
【0014】
図2および図3に、試験片4として、めっき厚さ20、50および100μmのニッケルめっき材(下地:合金鋼)を用いた場合の測定結果を示す。ここで、めっきの付着強度の影響を調べるため、各めっき厚さとも、付着強度を意図的に変えた2つの試験片A、Bを用意した。試験片Bのめっきの付着強度は、めっき端部を爪で引っかくと容易にはがれる程度であり、一方、試験片Aでは、ピンセットを用いてめっきをはがそうとしてもめっき自身が先に破断してしまう程強い付着強度を有している。図2は、衝突直前の速度V1と衝突直後の速度V2の比より求めた反発係数Rの値である。下地がめっきより硬いため、めっき厚さが減少するにしたがい反発係数は増加している。ただし、試験片AとBの差は小さく、差が最大のめっき厚さ50μmの場合でも、5%程度の違いしか生じていない。
【0015】
一方、図3は、衝突後約4msec間のハンマ上端部の加速度波形の振動解析を行い、得られた1次の固有振動数の振幅Jを示したものである。めっき厚さ100μmの場合、反発係数には1.5%程度しか付着強度の影響が生じなかったのに対し、衝突後のハンマ上端部の加速度振幅には2倍以上の違いが生じ、ハンマ振動の振幅によって感度よくはく離評価が行えることが確認された。なお、この実験条件は、めっき厚さ50μmの試験片よりめっき厚さ100μmの試験片のはく離評価に適しているが、ハンマの形状、寸法および衝突条件を適切に設定することにより、他の試料の対しても感度のよいはく離評価が可能となる。
なお、図1の構成図において、レーザドップラー振動計ヘッド8の代わりに小型の加速度ピックアップを、また振動計コントローラ9の代わりにチャージアンプを用い、反射テープ7を除去してハンマ1の上端部に加速度ピックアップを添付し、加速度ピックアップとチャージアンプを接続するコードの取りまわしに注意してやれば、加速度ピックアップを用いてレーザドップラー振動計の場合と同様なハンマ1の振動信号を取り出すことができる。
【0016】
図4に、本発明の「表面状態試験法」(ハンマのひずみを利用した試験法)の実施例を示す。この実施例は、ハンマのひずみをハンマに取り付けたひずみ検出手段(例えば、ひずみゲージ、圧電素子等)により検出できるようにしている。図中、21は、直径8mm(先端近傍は5mm),長さ約120mmの鋼の丸棒でできたハンマであり、その先端には、直径0.7mmの圧子(鋼球)22が圧入されている。ハンマ先端部近傍および重心近傍の側面には、それぞれ軸に対して対称な位置にひずみゲージ23および24が2枚づつ添付されている。そして、ひずみゲージからの出力(ひずみ振幅)は公知の手段により記録計に表示(記録)できる構成となっている。
【0017】
ハンマ21を、付着強度を意図的に変えた2つのニッケルめっき材A、B(めっき厚さ:100μm、下地:合金鋼)の表面から1.3mmの高さより自由落下させて試験片に衝突させた場合に、ひずみゲージ24から得られたひずみ波形をそれぞれ図5(試験片A)および図6(試験片B)に示す。ここで、試験片Bのめっきの付着強度は、めっき端部を爪で引っかくと容易にはがれる程度であり、一方、試験片Aでは、ピンセットを用いてめっきをはがそうとしてもめっき自身が先に破断してしまう程強い付着強度を有している。最大ひずみは試験片Aの方が大きく、衝突時間は試験片Bの方が大きい。ただし、試験片Aと試験片BのS1の値およびS2の値をそれぞれ比較すると、S1、S2ともに試験片による違いは1%程度であり、R=S2/S1で求まる反発係数の値は、試験片A、Bともに0.51程度となった。なお、レーザドップラー振動計のレーザをハンマ1の上端部に当てることによって求めた反発係数は、試験片Aが0.54、試験品Bが0.53程度であり、ひずみゲージ3から得られた反発係数はこれらの値に近いことが分かる。
図5および図6のひずみ波形の特徴、例えば同図中に示すように、負荷過程および除荷過程のおける最大ひずみの1/4から3/4の範囲のひずみ波形の平均の傾きL1およびL2をそれぞれ算出すると、傾きの絶対値の値は、試験片Bの方が試験片Aよりも、負荷過程L1においては10%程度、除荷過程L2においては8パーセント程度小さい。即ち、衝突時のひずみ波形の特徴を定量化すれば、衝突時のひずみ波形によって、反発係数のみならずはく離評価も行えることが分かる。
【0018】
図7および図8は、それぞれ試験片Aおよび試験片Bにハンマ21を衝突させた場合に、ひずみゲージ23より得られたひずみ波形である。いずれの試験片の場合も衝突後のひずみが顕著に変動していることが分かる。ここで、衝突後約4msec間のひずみ波形の振動解析を行い、1次の固有振動数の振幅Hを求めたところ、試験片Bの場合の振幅Hは試験片Aよりも25%程度大きいことが分かった。すなわち、衝突後のハンマのひずみ振幅によっても感度よくはく離評価が行えることが確認された。
【0019】
図9は、硬さはほぼ同じで、応力—ひずみ線図の形体が異なる、パーライト鋼Cとベイナイト鋼Dの応力—ひずみ線図である。これらの試験片に、日本工業規格(JIS B 7727)のハンマを図1の装置を用いて衝突させたときの、ハンマ上端部の速度の経時変化を図10に示す。衝突直前の速度V1と衝突直後の速度V2の比で定義される反発係数Rは、Cが0.51程度、Dが0.52程度であった。一方、衝突後約4msec間の速度波形の振動解析を行い、1次の固有振動数の振幅Kを求めたところ、Cは0.006m/s程度、Dが0.013m/s程度であり、振幅Kには2倍程度の開きが生じた。すなわち、反発係数のみでは識別ができない材料も、ハンマの振動に注目することにより識別可能になることが確認された。
【0020】
以上本発明の実施形態について説明したが、ハンマの形状、材料およびハンマの先端に設ける圧子は種々の材料の中から適宜選択して使用することができる。たとえば、ハンマ先端に設ける圧子の形状は、球面に限定することなく、円錐、角錐等種々の形状のものを使用することもできる。また、ハンマの振動を検出する方法としてレーザに限定することなく他の振動検出方法を使用することも可能である。さらに、ハンマを測定物に向けてあてる方法として、ハンマを自然落下させる他に、たとえば、バネ力、電磁力、空気圧等の駆動源を利用して鉛直下向き以外の方向に向けてハンマを衝突させたり、ハンマを水平に支えて、振り子のように揺動運動させることも可能である。
さらに、本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【0021】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、ハンマ質量、衝突速度、圧子形状を変えることにより、衝突面におけるエネルギ密度を容易に変化させることができ、種々の皮膜厚さ、付着強度の測定物に適度なはく離を生じさせることが可能である。また、測定物表面に対して垂直方向の運動を扱うので、モデル化が容易である。さらに、本発明は、種々の表面改質膜の付着強度をも評価可能な簡便で実用的な表面状態試験法として利用できるものである。また、引張試験では困難な各種材料の反発硬さの評価や、ヤング率、降伏応力等の硬さ以外の基本的機械的特性の違いを簡便に評価できる方法としても利用可能である。本試験機は、市販の試験機を使用した場合には、構造が簡単かつ操作方法も簡便となり、これまで測定できなかった特性をも評価可能となる、等の優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るはく離評価試験法に使用する試験機の構成図である。
【図2】第1実施例の装置から得られた、試験片A、Bの反発係数を示す図である。
【図3】第1実施例の装置を用いて試験片A、Bの測定を実施した場合のハンマ上端部の加速度波形の1次の固有振動数の振幅を示すグラフである。
【図4】第2実施例に用いるハンマの側面図である。
【図5】ひずみゲージ24から得られた試験片Aのひずみ波形を示す図である。
【図6】ひずみゲージ24から得られた試験片Bのひずみ波形を示す図である。
【図7】ひずみゲージ23から得られた試験片Aのひずみ波形を示す図である。
【図8】ひずみゲージ23から得られた試験片Bのひずみ波形を示す図である。
【図9】硬さがほぼ等しい、パーライト鋼Cとベイナイト鋼Dの応力-ひずみ線図である。
【図10】標準ハンマを用いて得られた、ハンマ上端部の速度の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
1 ハンマ
2 ハンマ先端に取り付けた鋼球
3 市販の指示形(D形)ショア硬さ試験機
4 試験片
5 反射テープ
6 ハンマの上端部に当てるレーザ
7 レーザを反射する鏡
8 レーザドップラー振動計センサーヘッド
9 振動計コントローラ
10 記録計
21 ハンマ
22 鋼球
23、24 ひずみゲージ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9