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明細書 :パワーアシスト型移動台車

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4523244号 (P4523244)
公開番号 特開2004-344435 (P2004-344435A)
登録日 平成22年6月4日(2010.6.4)
発行日 平成22年8月11日(2010.8.11)
公開日 平成16年12月9日(2004.12.9)
発明の名称または考案の名称 パワーアシスト型移動台車
国際特許分類 A61G   5/04        (2006.01)
A61G   3/00        (2006.01)
B62B   3/00        (2006.01)
FI A61G 5/04 501
A61G 3/00
B62B 3/00 G
請求項の数または発明の数 8
全頁数 24
出願番号 特願2003-145485 (P2003-145485)
出願日 平成15年5月22日(2003.5.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成14年11月27日東北大学において開催された第45回自動制御連合講演会で発表
審査請求日 平成18年2月28日(2006.2.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】平田 泰久
【氏名】小菅 一弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100082337、【弁理士】、【氏名又は名称】近島 一夫
【識別番号】100083138、【弁理士】、【氏名又は名称】相田 伸二
審査官 【審査官】和田 雄二
参考文献・文献 特開2001-008982(JP,A)
国際公開第01/042077(WO,A1)
特開2001-255939(JP,A)
特開平02-276402(JP,A)
特開平10-023613(JP,A)
特開平06-119038(JP,A)
特開2001-097221(JP,A)
特開2001-258957(JP,A)
特開昭60-241438(JP,A)
特開2002-104216(JP,A)
特開2002-029442(JP,A)
特開2000-343469(JP,A)
特表2003-508285(JP,A)
特開2001-075649(JP,A)
特開2001-233219(JP,A)
特開2001-187089(JP,A)
特開平11-347068(JP,A)
特開平11-198075(JP,A)
特開平09-024071(JP,A)
特開2003-052758(JP,A)
特開2001-354156(JP,A)
調査した分野 A61G 5/04
B62B 3/00
B62K 3/00
B62K 5/00
B62K 17/00
G05D 1/02
B25J 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
利用者の移動を支援するパワーアシスト型移動台車において、
回転自在な複数の車輪によって安定した姿勢で支持される車体と、
前記複数の車輪のうちの少なくとも3個を独立に駆動制御する駆動手段と、
前記車体に対して相対変位可能に配設されるとともに、利用者を支持する支持部と、
前記車体と前記支持部との間に介装され、前記支持部に作用する外力を検出する力覚センサと、
前記力覚センサが検出した外力の大きさ及びその方向に基づき、前記駆動手段を制御して前記車体の移動方向及び移動速度を決定する制御手段と、を備え、
前記独立に駆動制御される車輪が、全方向移動機能を有し、
前記支持部は、歩行する利用者の腕を介して又は歩行する利用者の腰部を保持して、外力として利用者の体重の一部が作用するサポート部と、前記車体を覆うカバー状に構成されていて、前記外力として障害物からの力が作用する障害物当接部と、を有してなる、
ことを特徴とするパワーアシスト型移動台車。
【請求項2】
前記車体が、すべて独立に駆動制御される車輪により支持されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーアシスト型移動台車。
【請求項3】
障害物との間の距離を計測する測距センサを有し、
前記制御手段は、前記測距センサが計測する距離に基づいて、前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーアシスト型移動台車。
【請求項4】
利用者の位置を検出する位置センサを有し、
前記制御手段は、前記位置センサが検出する利用者の位置に基づいて、利用者が前記支持部から離れたか否かを判別し、離れたと判別した場合には、前記駆動手段を停止させる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車。
【請求項5】
前記制御手段は、前記力覚センサから得られた力及びモーメントが、ダンピング係数とパワーアシスト型移動台車全体の並進速度及び回転速度との積に等しいものとして、前記駆動手段に対してダンピング制御を行う、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車。
【請求項6】
前記制御手段は、キャスタの運動についての情報を有し、前記力覚センサから得られた力及びモーメントに基づいて、パワーアシスト型移動台車全体を前記キャスタと仮想してその運動に対応するように、前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車。
【請求項7】
前記制御手段は、前記仮想上のキャスタのフリージョイントの回転中心からキャスタホイールの回転中心までの水平距離を、前記パワーアシスト型移動台車全体の移動速度に応じて変化させる、
ことを特徴とする請求項に記載のパワーアシスト型移動台車。
【請求項8】
前記制御手段は、前記力覚センサから得られた力及びモーメントと、利用者が意図したパワーアシスト型移動台車全体の速度ベクトルとの関係をニューラルネットワークに学習させ、その学習結果に基づいて、利用者の意図に基づく運動を生成すべく、前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歩行等に障害のある利用者を支援する歩行支援機器又は車椅子等に係り、詳しくは駆動源を備え、しかも安全性の高いパワーアシスト型移動台車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、歩行支援の分野では、単にフレームに車輪やキャスタを取り付けたシンプルな歩行器が開発・販売され、広く用いられている。また、近時、速度超過や転倒防止を考慮して、歩行器にブレーキやアクチュエータを付加したシステムが開発されている(例えば、非特許文献1参照)。特に車輪にアクチュエータを付加したシステムでは、力センサ等の外界センサの情報を基に、車輪を駆動し、適切に利用者の支援を行うシステムとして非常に期待されている。
【0003】
また研究分野においても、歩行支援システムを含め利用者との力学的な相互作用を前提としたシステムの研究が数多く行われている。これらのシステムにおいては、システムの一部にセンサを取り付け、そのセンサが検出した力情報を主に利用してシステムの運動制御(移動制御)を行っていた(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
さらに、従来の歩行支援システムにおいては、移動ベース(移動台台車)の移動を実現するための車輪の種類や配置が限定されていて、非ホロノミック拘束(例えば、真横に動くことができない)を有したものがほとんどである(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0005】
【非特許文献1】
M.Fujie,Y.Nemoto,S.Egawa,A.Sakai,S.Hattori,A.Koseki,T.Ishii,“PowerAssisted Walking Support and WalkRehabilitation”,Porc.of 1st International Workshop on Humanoidand Human Friendly Robotics,1998.
【非特許文献2】
J.Manuel,H.Wandosell,B.Graf,“Non-Holonomic Navigation System of a walking-Aid Robot”,Proc.of IEEE International Workshop on Robot andHuman Interactive Communication,pp.518-523,2002.
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アクチュエータを搭載した歩行支援システムでは、アクチュエータを搭載していることに起因して、その安全性への対策が最重要課題となり、また、通常の歩行器と異なり、外界センサの情報を基にその運動を制御することから、利用者の操作性を考慮した制御系の設計はもちろん、外界センサの形状や配置等を考慮した装置設計が必要となる、といった問題があった。
【0007】
また、システムの一部に取り付けたセンサからの力情報に基づいて制御を行うものは、利用者や障害物がセンサ部以外に接触する場合が予測され、このため、別に超音波センサ等のセンサが必要となり、安全対策が大掛かりなものとなった。また利用者が接触できる部分が限定されるため、システムの直感的な操作は困難であり、その操作に熟練を要する、という問題があった。
【0008】
さらに、非ホロノミック拘束を有するものは、直進安定性は増すが、移動ベース自体の運動特性を大きく変化させることができないため、利用者の種々の個人事情(例えば体力の低下の程度)に好適なシステムを構築するには難があった。また、狭い場所での運動や移動ベースを利用した複雑な作業を行うことを考慮すると、その操作性は必ずしも良好なものではなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の問題を解消して、簡単な構成で操作性に優れ、しかも安全性の高いパワーアシスト型移動台車を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、利用者の移動を支援するパワーアシスト型移動台車(1,2)において、回転自在な複数の車輪(10a,10b,10c,10d)によって安定した姿勢で支持される車体(11)と、前記複数の車輪(10a,10b,10c,10d)のうちの少なくとも個を独立に駆動制御する駆動手段(20)と、前記車体(11)に対して相対変位可能に配設されるとともに、利用者(S)を支持する支持部(12,12A)と、前記車体(11)と前記支持部(12,12A)との間に介装され、前記支持部(12,12A)に作用する外力を検出する力覚センサ(13)と、前記力覚センサ(13)が検出した外力の大きさ及びその方向に基づき、前記駆動手段(20)を制御して前記車体(11)の移動方向及び移動速度を決定する制御手段(14)と、を備える、ことを特徴とする。
【0011】
そして、前記独立に駆動制御される車輪が、全方向移動機能を有し、前記支持部(12,12A)は、前記外力として利用者(S)の体重が作用してなる、ことを特徴とする。
【0012】
更に、前記支持部は、歩行する利用者の腕を介して又は歩行する利用者の腰部を保持して、外力として体重の一部が作用するサポート部(38,56,60)と、前記車体を覆うカバー状に構成されていて、前記外力として障害物からの力が作用する障害物当接部(24,25,26,27)とを有する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項1に記載のパワーアシスト型移動台車(1,2)において、前記車体(11)が、すべて独立して駆動制御される全方向移動車輪(10a,10b,10c,10d)により支持される、ことを特徴とする。なお、全方向移動機能を有する車輪は、例えばメカナムホイール、オムニホイール等からなるが、これら車輪は、2個では移動台車(1,2)の回転が困難なので、回転も含めて全方向移動可能となるようにするには、少なくとも3個が全方向移動機能を有する。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項1又は2に記載のパワーアシスト型移動台車(2)において、障害物との間の距離を計測する測距センサ(51,53)を有し、前記制御手段(14)は、前記測距センサ(51,53)が計測する距離に基づいて、前記駆動手段(20)を制御する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車(2)において、利用者(S)の位置を検出する位置センサ(54)を有し、前記制御手段(20)は、前記位置センサ(54)が検出する利用者(S)の位置に基づいて、利用者(S)が前記支持部(12A)から離れたか否かを判別し、離れたと判別した場合には、前記駆動手段(20)を停止させる、ことを特徴とする。
【0019】
請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車(1,2)において、前記制御手段(14)は、前記力覚センサ(13)から得られた力及びモーメントが、ダンピング係数とパワーアシスト型移動台車全体の並進速度及び回転(角)速度との積に等しいものとして、前記駆動手段(20)に対してダンピング制御を行う、ことを特徴とする。
【0020】
請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車(1,2)において、前記制御手段(14)は、キャスタの運動についての情報を有し、前記力覚センサ(13)から得られた力及びモーメントに基づいて、パワーアシスト型移動台車全体を前記キャスタと仮想してその運動に対応するように、前記駆動手段(20)を制御する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項に係る発明は、請求項に記載のパワーアシスト型移動台車(1,2)において、前記制御手段(20)は、前記仮想上のキャスタのフリージョイント(40)の回転中心からキャスタホイール(42)の回転中心までの水平距離(r)を、前記パワーアシスト型移動台車全体の移動速度に応じて変化させる、ことを特徴とする。
【0022】
請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載のパワーアシスト型移動台車(1,2)において、前記制御手段(14)は、前記力覚センサ(13)から得られた力及びモーメントと、利用者が意図したパワーアシスト型移動台車全体の速度ベクトルとの関係をニューラルネットワークに学習させ、その学習結果に基づいて、利用者の意図に基づく運動を生成すべく、前記駆動手段(20)を制御する、ことを特徴とする。
【0023】
なお、上述のカッコ内の符合は、図面と対照するためのものであり、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであって、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【0024】
【発明の効果】
請求項1の発明によると、力覚センサは、利用者を支持する支持部に作用する外力を検出する、すなわち、利用者が支持部に接触して、利用者の体重のかけかたにより、利用者の意思を検出することができる。そして制御手段は、この力覚センサが検出した外力の大きさ及び方向に基づいて駆動手段を制御して車体の移動方向及び移動速度を決定する。すなわち、利用者が支持部に体重をかけることに基づいて、(パワーアシスト型)移動台車の運動を制御することができるので、直感的で簡単、しかも安全な操作が可能となる。
【0025】
そして、支持部には利用者の体重の一部が作用するので、利用者は支持部に体重の一部を負荷することで、移動台車の運動を制御することが可能となる。また、独立に駆動制御される少なくとも3個の車輪が、全方向移動機能を有するので、移動台車の全方向移動が可能となる。
【0026】
更に、支持部には障害物当接部を介して障害物からの外力が作用するので、力覚センサは外力を支持部を介して検出することができる。すなわち、同じ力覚センサによって、利用者からの外力と障害物からの外力とを検出することができる。したがって、移動台車の移動制御には、障害物からの外力も加味されることになり、安全性を向上させることができる。また障害物からの外力を検出するための別のセンサが不要となるので、その分構成を簡略化することができる。
【0027】
請求項の発明によると、移動台車の全方向移動を円滑なものとすることができる。
【0028】
請求項の発明によると、測距センサによって移動台車から障害物までの距離を計測することができる。したがって、例えばこの測距センサの出力を基に移動台車の運動を制御することにより、障害物への衝突を未然に防止することができる。
【0029】
請求項の発明によると、位置センサの出力に基づいて、利用者が支持部から離れたと判別した場合には、駆動手段を停止させるので、利用者が離れているときの不測の動作を防止することができる。なお、位置センサの配設個数や配設位置を適宜なものとすることによって、利用者が所定の位置(移動台車を利用する際の正規の位置)にいない場合を検知して、所定の位置にいる場合に限って駆動手段が動作するようにすることも可能である。
【0030】
請求項の発明によると、支持部はサポート部と一体なので、利用者は前方に配置されたサポート部に腕を介して体重の一部を掛けることで、移動台車の運動を制御することができる。
【0031】
請求項の発明によると、支持部は腰部を保持するサポート部と一体なので、利用者はこのサポート部に体重の一部を掛けることで、移動台車の運動を制御することができる。つまり、両手がフリーな状態となるので、歩行はもちろん、手作業をも行うことが可能となる。
【0033】
請求項の発明によると、支持部に加えた力の方向に移動台車の運動を生成することができる。
【0034】
請求項の発明によると、移動台車は、仮想的にキャスタのフリージョイントの運動特性を有することになる。
【0035】
請求項の発明によると、移動台車は、仮想的にキャスタのフリージョイントの運動特性を有するに加え、仮想上のキャスタのフリージョイントの回転中心からキャスタホイールの回転中心までの水平距離(キャスタのオフセット)を移動台車の移動速度に応じて適宜に変化させることにより、移動台車の直進運動の安定性を増したり、全方向移動を可能としたりする。
【0036】
請求項の発明によると、利用者の意図に基づいて移動台車の運動を生成することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において、同一の符号を付したものは、同様の構成又は作用を有するものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。
【0038】
<実施の形態1>
図1,図2に、本発明に係るパワーアシスト型移動台車の一例として、実施の形態1に係るパワーアシスト型移動台車(以下単に「移動台車」という。)1の基本的な構成を模式的に示す。このうち図1は右側面図、また図2は図1のA-A線矢視図である。なお、これらの図においては、支持部12は、二点鎖線で示している。またこれらの図中では、右方向が前方となる。
【0039】
図1,図2に示すように、移動台車1は、駆動手段としての回転自在な複数(本実施の形態では4個)の車輪10a,10b,10c,10dと、これら車輪10a~10dによって安定した姿勢で支持される車体11と、この車体11に対して相対変位可能に配設された支持部12と、これら車体11と支持部12との間に介装された力覚センサ13と、この力覚センサ13の出力に基づいて上述の車輪10a~10dを制御する制御手段14とを備えている。以下、車輪10a~10dから順に説明する。
【0040】
車輪10a~10dとしては、全方向移動機能を有する車輪、例えば図3に示すメカナムホイール15や図4に示すオムニホイール16を使用することができる。このうちメカナムホイール15は、車輪の全周にわたって等間隔で多数のローラ17が配設されている。これらローラ17は、それぞれ車軸15aに対して45度傾斜された軸17aによって回動自在(正逆方向の従動回転自在)に支持されている。一方、オムニホイール16は、図4に示すように、車輪の外周を3等分する位置を通る接線を軸18aとした回動自在な3個のローラ18を2列に並べて配設したものである。1列目の3個のローラ18と二列目の3個のローラ18とは、位相を60度ずらして並べてある。したがって、全体の軸方向から見た場合には、6個のローラ18が配設されてるように見え、これら6個のローラ18の外周を連ねるとほぼ円周が形成される。
【0041】
本実施の形態では、上述のメカナムホイール15とオムニホイール16とのうちの、前者のメカナムホイール15を使用して全方向移動機構を構成した。すなわち、前述の4個の車輪10a~10dのすべてに、上述のメカナムホイール15を使用した。
【0042】
図5に、4個の車輪10a~10dの配置例を示す。同図中では車体11の中心を基準に、車体11の前側がX軸に、また左側がY軸に設定されている。4個の車輪10a~10dは、車体11の4隅にいずれも車軸15aを左右方向に向けた状態で取り付けられている。各車輪10a~10dは、駆動源としてそれぞれ個別にモータ20を有している。モータ20としては例えば、DCブラシレスモータを使用することができる。各モータ20と各車輪10a~10dとの間には、減速機21として、例えばハーモニック減速機が介装されている。各モータ20の回転は、減速機21によって適宜に減速された状態で、各車輪10a~10dに伝達されるようになっている。各モータ20には、後述する制御手段14が接続されている。図5に示すように、4個の車輪10a~10dのうち、車輪10a(左の前輪)と車輪10c(右の後輪)とは、ローラ17の軸17aが同方向(同図中では右下がり)に、また車輪10b(右の前輪)と車輪10d(左の後輪)とは、ローラ17の軸17aが同方向(同図中では左下がり)となっている。なお、同図では各車輪10a~10dの車軸17aの向きは、移動台車1を上方から見たときの向きを示している。したがって、例えば車輪10a~10dが路面や床面上を転動する際に路面や床面に最も近接する車軸17aの向きは逆向きとなっている。同図中には、各車輪10a~10dが矢印方向に単独で回転したときの、軸17aが45度傾斜していることに起因する各車輪10a,10b,10c,10dの移動方向を矢印a,b,c,dで示している。なお、各車輪10aの回転と車体11の進行方向との関係については、以下で順次説明する車体11、支持部12、力覚センサ13、制御手段14の説明が終えてから改めて説明する。
【0043】
車体11は、例えばフレーム(不図示)を適宜に組み合わせることによって構成されており、その前後左右の4隅には、上述の車輪10a~10dが車軸15aを左右方向に向けた状態で回動自在に取り付けられている。なお、以下では説明の便宜上、車体11が直方体の箱状に形成されているものとする。
【0044】
支持部12は、本実施の形態では、図6(一部破断斜視図)に示すように、ほぼ直方体状に形成されている。支持部12は、ほぼ水平な上板23と、前板24と、左側板25と、右側板26と、後板27とが一体に構成されており、下部には開口部28が形成されている。これらのうち、前板24と左側板25と右側板26と後板27は、障害物当接部として作用する。支持部12は、上述の車体11を上方から覆うように配設されるとともに、車体11に対して相対変位可能に配設されている。支持部12のうち、上述の上板23は、後述のように、利用者からの外力(例えば、体重の一部)が入力される部分であり、また前板24や左・右側板25,26は、例えば障害物等に接触した場合に、障害物等から外力が入力される部分である。支持部12は、上述のような外力が入力されたときには、車体11に対して相対変位(相対移動)するようになっている。次に説明する力覚センサ13は、このような車体11と支持部12との関係に基づいて、支持部12に作用する外力を検出するものである。なお、支持部12は、上述のように、利用者や障害物等からの外力によって、車体11に対して有効に相対移動するものであれば、上述の形状に限定されるものではない。使用態様によって適宜に他の形状を採用することが可能である。例えば、その使用態様においては、後板27に障害物が接触する可能性は極めて少ないような場合には、後板27を積極的に排除するようにしてもよい。
【0045】
力覚センサ13は、図7に示すように、2枚のプレート、すなわち上側のセンサプレート30と、下側のベースプレート31とを適宜な間隔を介して平行に配設し、これらの間に複数のリンク32を配設したものである。複数のリンク32は、2枚のプレートの周縁部の近傍に、偏りなく配設されている。例えば2本のリンク32が一組となって、6組のもの(合計12本のリンク32)が配設されている。各リンク32には、ひずみゲージ(不図示)が張られていて、このひずみゲージによってリンク32の軸力を計測する。計測された軸力は、次に説明する制御手段14に入力される。図8に示すように、上述の2枚のプレートは、相互に相対移動可能に配設されており、このうち下側のベースプレート31は、上述の車体11の上面に固定され、一方、上側のセンサプレート30は、上述の支持部12の上板23の裏面に固定されている。つまり、ベースプレート31は車体11と一体構成され、一方、センサプレート30は支持部12と一体に構成されている。したがって、力覚センサ13は、支持部12に作用する外力を直接的に検出できるようになっている。なお、力覚センサ13としては、市販の力覚センサ(不図示)を適宜な位置に複数配設し、これら力覚センサからの情報を次に説明する制御手段14によって統合して、センサプレート30ひいては支持部12に作用する外力を検出するようにしてもよい。なお、本実施の形態をはじめ、本発明において使用される力覚センサ13は、支持部(ボディ)12全体に作用する外力を検出する、という意味でボディフォースセンサと呼ばれることもある。
【0046】
制御手段14は、上述の力覚センサ13が検出した外力の大きさ及びその方向に基づき、前述のモータ20を制御して車体11の移動方向及び移動速度を決定するものである。図9に示すように、制御手段14は、A/Dボード33、カウンタボード35、D/Aボード36、モータドライバ37、CPUボード39等によって構成されている。力覚センサ13からの情報、すなわち12本のリンク32のひずみゲージからの情報f1~12は、A/Dボードで読み込まれ、力情報となる。一方、4個のモータ20(図2参照)にはそれぞれエンコーダ34が装着されていて、これらエンコーダ34からの情報θ1~4は、カウンタ35で検出され、これを基に、各モータ20の回転角度が導出される。制御手段14は、上述の力覚センサ13からの情報f1~12と、エンコーダ34からの情報θ1~4とに基づいて、移動台車1の速度等を導出し、その値に基づく電圧値をD/Aボード36から出力する。出力された電圧は、モータドライバ37に入力される。各モータ20は、モータドライバ37からの情報(電圧値)τ1~4に基づいてその回転が制御される。この制御手段14には、力覚センサ13等の出力に基づき、各モータ20を介して各車輪10a~10dを個別に制御して移動台車1の速度や移動方向を制御するための制御プログラムが格納されている。なお、この制御プログラムに基づく、移動台車1の移動制御方法については、後に詳述する。
【0047】
以上で本発明に係る移動台車1の基本的な構成、すなわち車輪10a~10d、車体11、支持部12、力覚センサ13、制御手段14を備えた移動台車1の構成についての説明を終える。
【0048】
次に、移動台車1の動作について説明する。
【0049】
まず、上述のメカナムホイール15を使用した全方向移動機構を採用することで、移動台車1が任意の並進速度及び角速度を生成することができる点について、図5を参照して説明する。
【0050】
この全方向移動機構では、車輪10a,10b,10c,10dの角速度ベクトル
【数1】
JP0004523244B2_000002t.gifと移動台車1の運動速度ベクトル
【数2】
JP0004523244B2_000003t.gifとの間には、以下の関係が成り立つ。
【0051】
【数3】
JP0004523244B2_000004t.gif【0052】
ただし、
【数4】
JP0004523244B2_000005t.gifここで、αはローラ17の軸17aと車軸15aとのなす角度、2aはトレッドの長さ、2bはホイールベースの長さを表す。
【0053】
このように、4個の車輪10a~10dの角速度を制御することにより、移動台車1の任意の並進速度及び角速度を生成することが可能である。
【0054】
つづいて、力覚センサ13を使用して、支持部12に作用する外力を検出することができる点について説明する。
【0055】
図5に示す位置に、力覚センサ13の複数のリンク32を配置し、これらのリンク32に前述のように、ひずみゲージ(不図示)を貼る。各リンク32にかかる軸力をこれらひずみゲージによりひずみとして検出し、次式によってセンサプレート30(図8参照)上の力に変換する。
【0056】
【数5】
JP0004523244B2_000006t.gif【0057】
ただし、
【数6】
JP0004523244B2_000007t.gifここで、Fはセンサプレート30(図8参照)での力/モーメント、fは各リンク32に発生する軸力である。また、Jpはパラレルリンク機構のヤコビ行列である。
【0058】
センサプレート30の上には、利用者を支え、かつその力を力覚センサ13に伝えるための支持部12が設置されている。利用者は、例えば、この支持部12(支持部12の上板23)に手や腕を置き、この支持部12に力/モーメントを加える。この力に基づいて、移動台車1の運動が生成される。また、力覚センサ13は、支持部12に作用する力/モーメントを計測することができる。したがって、支持部12が障害物や他人に接触したことを検出することが可能である。すなわち、力覚センサ13は、支持部12を介して、外力として利用者からの意図的で積極的な負荷(入力)はもちろん、障害物や他人からの消極的な入力をも検出することができる、という特徴を有する。
【0059】
次に、このような特徴を利用した、移動台車1の移動制御方法として、まずダンピング制御について説明する。
【0060】
図10に示す移動台車1は、図8に示す移動台車1を一部改造したものである。具体的には、図8中の支持部12の後板27をなくし、図10に示すように、上板23の後端の左右両端にステー38aを立設し、このステー38aの上端に水平な腕置き(サポート部)38を設けるようにした。
【0061】
利用者は、この腕置き38に腕を載せ、力の入れ加減やその方向を調整することで移動台車1を移動させる。利用者から外力として腕置き38に入力された力は、ステー38a、上板12を介して力覚センサ13によって検出される。
【0062】
移動台車1は、利用者の上体をサポートしつつ、利用者が加える力に基づいて運動を生成しなければならない。そこで、移動台車1の速度が次式の特性を満たすように制御する場合、いわゆるダンピング制御(図11参照)を考える。
【0063】
【数7】
JP0004523244B2_000008t.gif【0064】
ここで、
【数8】
JP0004523244B2_000009t.gifは力覚センサ13から得られた力/モーメント、
【数9】
JP0004523244B2_000010t.gifはダンピング係数、
【数10】
JP0004523244B2_000011t.gifは移動台車1の並進/回転速度である。このようなダンピング制御によって、利用者が加えた力の方向に移動台車1の速度が生成される。
【0065】
この種の移動台車1にあっては安全性が極めて重要である。そこで、上述の移動台車1が図10に示すように、障害物Mなどの物体に接触した場合を考える。
【0066】
移動台車1には、利用者が加える力/モーメント
【数11】
JP0004523244B2_000012t.gifと物体(障害物M)からの拘束力
【数12】
JP0004523244B2_000013t.gifが働き、移動台車1の速度と力/モーメントとの関係式は、次式で表される。
【0067】
【数13】
JP0004523244B2_000014t.gif【0068】
移動台車1が物体によって完全に拘束されるとき、作用反作用の法則から、
【数14】
JP0004523244B2_000015t.gifが成り立ち、
【数15】
JP0004523244B2_000016t.gifすなわち、拘束状態において移動台車1は運動を生成せず、受動的歩行支援機器と同等の安全性を確保できることがわかる。
【0069】
安全性についての検証実験を行った。移動台車1の支持部12の前板24を障害物Mに見立てたコンクリートブロックに突き当てた。このとき、力覚センサ13で検出された力と移動台車1の位置とを測定した。検出された力を図12(a)に、また移動台車1の位置を図12(b)に示す。(a)のtime35以降に示すように、移動台車1が物体に接触したとき、力覚センサ13で検出される力はほぼ0となった。また、移動台車1は、位置が変化することなく停止している。このことから、拘束状態においては、移動台車1は停止し、利用者が加える力以上の力を環境に与えておらず、受動的歩行支援機器と同等の安全性を有することが確認できた。
【0070】
つづいて、移動制御方法として、キャスタアクションを説明する。キャスタアクションとは、キャスタの運動特性を移動台車1の運動制御系に適用するものである。はじめに、移動台車1がキャスタの運動特性を持つために、図13に示すようなキャスタ座標系Σとフリージョイント座標系Σを設定する。同図中の符合40はフリージョイント、41はホイールサポート、42はキャスタホイールを示す。キャスタ座標系はそのx軸が仮想的に実現されるキャスタの進行方向となり、原点回りに自由に回転することのできる座標系である。一方、フリージョイント系は移動台車1に固定され、移動台車1とともに運動する座標系である。
【0071】
いま、これらの座標系に基づいて移動台車1を次式の特性を満たすように制御する。
【0072】
【数16】
JP0004523244B2_000017t.gif【0073】
ここで、
【数17】
JP0004523244B2_000018t.gifはキャスタ座標系及びフリージョイント座標系における移動台車1の回転速度及び回転角速度であり、
【数18】
JP0004523244B2_000019t.gifは正の減衰係数、
【数19】
JP0004523244B2_000020t.gifはキャスタのオフセット、
【数20】
JP0004523244B2_000021t.gifはキャスタ座標系及びフリージョイント座標系に働く力・モーメントを表す。またキャスタ座標系は、次式[数22]で導出される回転角速度
【数21】
JP0004523244B2_000022t.gifに基づいて回転させる。
【0074】
【数22】
JP0004523244B2_000023t.gif【0075】
これにより、移動台車1は仮想的にキャスタのフリージョイントの運動特性を持つことになる。ただし、この制御系では、利用者の操作を考慮して、キャスタの進行方向には速度が生成しやすく、それ以外の方向には速度が生成しにくいという、キャスタ車輪の進行方向に対して異方性的なダンピング特性を有した制御系となっている。
【0076】
次に適応キャスタアクションについて説明する。
【0077】
上述のキャスタアクションを用いることにより、移動台車1の利用者の加える力の方向に仮想的に実現されたキャスタの進行方向を向け、その方向に運動を生成する。ここで、そのキャスタの運動特性、すなわち移動台車1の運動特性はキャスタのオフセットrによって大きく影響される。例えば、rを大きくすればキャスタ座標系の回転速度は小さくなり、進行方向に垂直な成分から生じる移動台車1の運動への影響を小さくすることができる。これにより、直進運動の安定性が増す。一方、rを小さくすれば、ある力が移動台車1に働いたときのキャスタ座標系の回転速度は大きくなり、瞬間的に加えられた力の方向に回転し移動台車1の全方向移動が実現できる。
【0078】
従来開発されてきた歩行支援システムは、ほとんどが非ホロノミック拘束を受ける構造を有していたため、狭い場所での運動等ではその操作性は必ずしもよいものではなかった。しかし、この非ホロノミック拘束によって直進運動の安定性が増し、遠くへの移動では大きな利点となっていた。
【0079】
そこで、移動台車1の全方向移動機構を生かし、行う作業や運動に応じてキャスタのオフセットを変化させ、システムの運動特性を変化させる適応キャスタアクションと呼ばれる手法を採用した。
【0080】
ここでは、適応キャスタアクションの一例として、移動台車1の進行方向、すなわちフリージョイント座標系のy軸方向の速度に基づいてキャスタのオフセットを変化させる手法を説明する。移動台車1の進行方向の速度が遅いときには、キャスタのオフセットを非常に小さくする。これにより移動台車1の全方向移動が実現でき、狭い場所での種々な運動が可能となる。また、移動台車1の進行方向への速度が速いときには、キャスタのオフセットを大きくし、直進性を向上させる。これにより、たとえ利用者が歩行中に何かにつまづいて進行方向以外に大きな力を加えたとしても、その力に大きく影響されることなく、ある目的地への移動が可能となる。
【0081】
つづいて、上述の適応キャスタアクションの有効性を示す実験を行った。はじめに、移動台車1の進行方向に力を加えることにより移動を行い、その移動中に利用者が何かにつまづいたと仮定して意図的に進行方向と垂直な方向に力を加えた。そのときの移動台車1に加わる力とその運動を図14(a),(b)に示す。この結果から、移動台車1は進行方向に加えられた力に基づいてその方向には運動は生成しているが、進行方向と垂直な方向には運動は生成していないことがわかる。これにより、直進運動の安定性が増していることがわかる。また、進行方向への速度が遅いときに、進行方向と垂直な方向に力を加えることにより、その方向への移動実験を行った。このとき移動台車1に加わる力とその運動を図14(c),(d)に示す。この結果から、進行方向への速度が小さいときには、移動台車1の全方向移動が可能となり、狭い場所等での作業性が向上すると考えられる。
【0082】
なお、上述のキャスタアクション、適応キャスタアクションのいずれを採用した場合でも、図10で説明したのと同様、十分な安全性を確保することができる。
【0083】
次に、ニューラルネットワークを用いた制御アルゴリズムについて説明する。
【0084】
移動台車1を使用する際、利用者の障害の程度により、必ずしも利用者が意図する方向に力をかけるとは限らない。前述のダンピング制御を採用した場合には、利用者が意図しない方向に移動台車1の運動が生成される場合があった。
【0085】
そこで、ニューラルネットワークを用い、利用者が意図する移動台車1の進行速度と移動台車1に加えられる力/モーメントとの関係を求めることを考える。すなわち、移動台車1に加えられた力/モーメントと、利用者が意図した移動台車1の速度ベクトルとの関係をニューラルネットワークに学習させることで、利用者の意図に基づいて移動台車1が運動を生成するような制御則を採用する。
【0086】
ニューラルネットワークの学習は以下のように行う。移動台車1を、利用者が加える力ではなく、力の大きさに応じて軌道上を追従するように制御し、利用者とともに軌道上を運動する。図15に示すように、このとき利用者が移動台車1に加えた力/モーメントをニューラルネットワークの入力とし、移動台車1の速度ベクトルをニューラルネットワークの出力とする。ニューラルネットワークはバックプロパゲーション学習則を適用し、オフラインで学習する。適用するニューラルネットワークを図16に示す。学習後、利用者が入力情報となる力/モーメントを加えたときに、ニューラルネットワークは進むべき方向の速度ベクトルを出力することになり、移動台車1はニューラルネットワークの出力に基づき手運動することになる。
【0087】
上述のニューラルネットワークを用いた制御アルゴリズムの有効性を検証するため、前述のダンピング制御と、ニューラルネットワークを用いた制御とを移動台車1に適用し、目標軌道にどれだけ追従できるかを比較し実験を行った。被験者(利用者S)は4人の健常者(subjectA,B,C,D)で、任意の側の片足に膝間接を固定するサポータと1kgの足首用重りを装着し、擬似的に障害のある状態とする。図17に、ニューラルネットワークの学習に用いる軌道(前進,左,右,左旋回,右旋回,左回転,右回転)を示す。被験者Sは、移動台車1に力を加えながら移動台車1とともに図17の軌道上を運動し、移動台車1は加えられた力の大きさに応じて軌道に沿って運動する。このときの加えられた力/モーメントと速度ベクトルとの関係をニューラルネットワークに学習させる。
【0088】
ニューラルネットワークの学習後、移動台車1にダンピング制御と、ニューラルネットワークを用いた制御とのそれぞれを適用し、S字形の目標軌道に対して、被験者がどれだけ軌道に沿って歩行することが出きるかを比較した。それぞれの制御を適用した際の移動台車1の軌跡と目標軌道とを図18(a)~(d)に示す。移動台車1の軌跡と目標軌道とのずれを誤差としたときの誤差の積分値、すなわち移動台車1の軌跡と目標軌道とが作る面積を求め、その面積が小さい方が被験者の意図した方向に進んでいるものとする。移動台車1の軌跡と目標軌道とが作る面積を図19に示す。すべての被験者において、ダンピング制御よりニューラルネットワークを用いた制御の方が面積は小さい。このことから、ニューラルネットワークを用いた制御の方が、被験者(利用者)が意図した方向に進んでいることがわかる。
【0089】
<実施の形態2>
以下では、移動台車のより具体的な応用例(適用例)を説明する。
【0090】
図20に実施の形態2に係る移動台車2の上方から見た図を模式的に示す。図に示す移動台車2は、車体(不図示)、支持部12A、力覚センサ((不図示))の形状を、上面視において門形、つまり後方を開放するように構成し、内側に、利用者が入り込むスペース52を確保した。利用者はこのスペース52に入り、門字形の支持部12Aに力を加えて、移動台車2を、前述の実施の形態1の移動台車1と同様に移動させることができる。
【0091】
さらに本実施の形態では、支持部12Aの前面と左側面と右側面とに、測距センサとして複数の超音波センサ51を配置した。これら超音波センサ51によって、移動台車2と障害物との距離を計測する。また、超音波センサ51に代えて図21に示すように、測距センサとして、レーザファジーファインダ53を前面に装着して利用するようにしてもよい。このレーザファジーファインダ53によると、比較的簡単な構成で障害物との距離を計測することが可能となる。
【0092】
上述の超音波センサ51やレーザファジーファインダ53等の測距センサを用いて移動台車2と障害物との間の距離を計測し、その計測結果を制御手段14(図2参照)に入力し、これに基づいて移動台車2の移動制御を行うことにより、障害物との衝突を未然に防止することができる。
【0093】
図22に示すは移動台車2は、その支持部12Aの内側に、位置センサとして複数の超音波センサ54を配設している。これら超音波センサ54によって、利用者が支持部12A内側のスペース52から離れているか否かを判別する。そして、離れたと判別した場合には、直ちにモータ20(図2参照)を停止させて、移動台車2を停止させる。これにより、移動台車2の不測の移動を防止することができる。さらに、利用者がスペース52内にいた場合でも、その位置によって(例えば、正規の位置からずれた位置にいた場合)、移動台車2の運動を変化させ、速度の変更や停止等の制御を行うことにより、一層の安全性を確保することができる。なお、超音波センサ54に代えて、上述のレーザファジーファインダを装着するようにしてもよい。
【0094】
ここで、利用者が移動台車2を使用する場合の、支持部12A上の接触点を限定することができるような場合には、その接触点近傍にタッチセンサ等の触覚センサを取り付けることにより、その接触センサに接触しない限り移動台車2が動作しないような安全機能を持たせることも可能である。
【0095】
図23に、移動台車2を歩行支援システムに適用した例を示す。
【0096】
同図に示すように、移動台車2の支持部12Aの上面にサポート部55を設けた。サポート部55は、利用者Sの胸の高さ近傍に腕置き56を有しており、さらにその前端には利用者の操作部となる操作桿57が固定されている。この操作桿57は、腕置き56と一体に構成されているので、利用者Sは、腕置き56に腕を載せるとともにこの操作桿57を握って操作することにより、一層適宜にサポート部55に力を加えて、この力に基づいて移動台車2を運動させることができる。サポート部55は、支持部12Aを介して力覚センサ13(図8参照)と一体的に構成されて、サポート部55全体が力の入力部になる。したがって、このようなシステムは、キャスタの取り付けられた台車のような力に対して受動的な機器と同様の安全性と直感的な操作性とを提供することができる。なお、サポート部55は、例えば支持部12Aの一部に孔を開けるなどして、力覚センサ13に直接取り付けるようにしてもよい。ここで、操作桿57に代えてジョイスティックを配設するようにしてもよい。例えば、ジョイスティックの操作を電気信号に変換して、この信号を、移動台車2の移動制御の補助として利用することも可能である。この場合には、より細かい移動制御を実現することができる。すなわち、例えば体力が減退していたり、障害が進行していたりして、腕置き56からの力の入力だけでは、円滑な操作ができないような場合には、ジョイスティックを握っての補助的な操作が有効となる。なお、移動台車2の移動制御に対する、腕置き56とジョイスティックの寄与率とを適宜に変更することでさらに、障害の種類や程度に応じたきめ細かい対応が可能となる。
【0097】
図24に、移動台車2を支援型歩行システムに適用した例を示す。
【0098】
同図に示すように、移動台車2の支持部12Aの上面にサポート部60を設けた。サポート部60は、利用者Sの腰の高さ近傍に保持部61を有しており、この保持部61によって身体の一部、(例えば腰)を保持することにより、体重を支える。これにより、利用者Sは、両手が自由に使え、かつ前方の空間が広がるため、歩行支援システムを使用しながら、両手を利用して様々な作業を行うことができるようになる。この種の歩行支援システムは、どの部分でも力の検出が可能なサポート部60と、全方向移動可能な移動台車2によって比較的容易に構築することが可能となる。
【0099】
図25に、移動台車をパワーアシスト型車椅子システムに適用した例を示す。この例では、移動台車としては、前述の実施の形態1で説明した移動台車1を使用している。
【0100】
同図に示すように、移動台車2の支持部12の上面に椅子62を取り付けている。椅子62は、利用者が着座する座部63と、肘掛け64と、操作部となる操作桿65と、例えば介護者が使用する腕置き66とを有している。これにより電動車椅子として利用することができる。利用者は座部63を介して力を加える。なお、この操作桿65は、図23で説明した操作桿57と同様、ジョイスティックに代えるようにしてもよい。
【0101】
また、図23で説明した歩行支援システムのサポート部55と同等の考え方から、車椅子の後方から介護者などが腕置き66を介して力を加えることが可能であり、介護者などが少ない力で車椅子を押したりすることができるようになる。すなわちパワーアシストシステムとしても利用することができる。
【0102】
さらに、車椅子の外側の大部分が、力覚センサ13と一体の支持部12によって覆われているので、介護者が加える力はもちろん、障害物等に接触した際の力も検出することができ、高い安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の移動台車の右側面を模式的に示す図である。
【図2】図1のA-A線矢視図である。
【図3】メカナムホイールの斜視図である。
【図4】オムニホイールの斜視図である。
【図5】メカナムホイールの配置を示す上面図である。
【図6】支持部の全体構成を示す一部破断斜視図である。
【図7】力覚センサを示す図である。
【図8】車体と支持部との間に介装された力覚センサの取り付け状態を説明する図である。
【図9】移動台車全体の制御を説明するためのブロック図である。
【図10】移動台車の安全性を説明するための図である。
【図11】ダンピング制御を説明するための図である。
【図12】(a),(b)は移動台車の安全性を確認するための実験結果を示す図である。
【図13】キャスタアクションを説明するための図である。
【図14】(a)~(d)は、キャスタアクションの有効性を説明するための図である。
【図15】ニューラルネットワークを用いたときに台車の運動を説明するための図である。
【図16】ニューラルネットワークを説明する図である。
【図17】ニューラルネットワークの学習に用いる軌道を説明する図である。
【図18】(a)~(d)は、ダンピング制御と比較したときの、ニューラルネットワークを用いた制御の有効性を示す図である。
【図19】ダンピング制御と比較したときの、ニューラルネットワークを用いた制御の有効性を示す図である。
【図20】測距センサとして超音波センサを装着した移動台車の上面図である。
【図21】測距センサとしてレーザファジーファインダを装着した移動台車の上面図である。
【図22】位置センサとして超音波センサを装着した移動台車の上面図である。
【図23】移動台車を歩行支援システムに適用した例を示す図である。
【図24】移動台車を後方支援型歩行システムに適用した例を示す図である。
【図25】移動台車をパワーアシスト型車椅子システムに適用した例を示す図である。
【符号の説明】
1,2 移動台車
10a,10b,10c,10d
車輪
11 車体
12,12A
支持部
13 力覚センサ
14 制御手段
20 駆動手段(モータ)
24 障害物当接部(前板)
25 障害物当接部(左側板)
26 障害物当接部(右側板)
27 障害物当接部(後板)
40 フリージョイント
42 キャスタホイール
51 測距センサ(超音波センサ)
53 測距センサ(レーザファジーファインダ)
54 位置センサ(超音波センサ)
55,60 サポート部
63 座部
r キャスタのフリージョイントの回転中心からキャスタホイールの回転中心までの水平距離
M 障害物
S 利用者
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24