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明細書 :半導体素子用基板、半導体素子の製造方法及び半導体素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3538634号 (P3538634)
公開番号 特開2002-037698 (P2002-037698A)
登録日 平成16年4月2日(2004.4.2)
発行日 平成16年6月14日(2004.6.14)
公開日 平成14年2月6日(2002.2.6)
発明の名称または考案の名称 半導体素子用基板、半導体素子の製造方法及び半導体素子
国際特許分類 C30B 29/22      
C30B 29/38      
H01L 31/04      
H01L 31/10      
H01L 33/00      
FI C30B 29/22 Z
C30B 29/38
H01L 33/00
H01L 31/04
H01L 31/10
請求項の数または発明の数 6
全頁数 5
出願番号 特願2000-225122 (P2000-225122)
出願日 平成12年7月26日(2000.7.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 2000年3月28日 (社)応用物理学会発行の「第47回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第一分冊」359頁上段29a-YQ-5に発表
審査請求日 平成12年7月26日(2000.7.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】角谷 正友
【氏名】福家 俊郎
【氏名】吉村 克彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開 平2-229476(JP,A)
特開 昭49-3899(JP,A)
特開 平4-214095(JP,A)
特開 平8-186329(JP,A)
特公 昭59-48794(JP,B1)
Kiyoshi SHIMAMURA et al.,Growth and characterization of (La,Sr)(Al,Ta)O3 single crystals as substrates for GaN・・・growth,Journal of Crystal Growth,1998年, Vol.194,pp.209-213
Y.M. Le VAILLANT et al.,Caracterization of AlN buffer layers on (0001)-sapphire substrates,Materials Science and Engineering,1997年, B50,pp.32-27
調査した分野 C30B 1/00 - 35/00
H01L 31/04
H01L 31/10
H01L 33/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)なる組成を有し、ペロブスカイト型の結晶構造を有する単結晶材料からなる基材と、
前記基材上に形成されたAlN下地層と、
を具え、
前記AlN下地層は、GaN単結晶層を形成する際に使用するアンモニアガスと前記基材との反応を阻止するように機能することを特徴とする、前記GaN単結晶層を含む半導体素子用基板。

【請求項2】
ペロブスカイト構造の(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)O3基材を準備する工程と、
前記(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)O3基材上にAlN下地層を形成する工程と、
前記AlN下地層上に、1100℃以下の温度でGaN単結晶層をエピタキシャル成長させて形成する工程と、
を含み、
前記AlN下地層は、前記GaN単結晶層を形成する際に使用するアンモニアガスと前記基材との反応を阻止するように機能させたことを特徴とする、半導体素子の製造方法。

【請求項3】
前記GaN単結晶層をエピタキシャル成長させる温度が、700~1100℃であることを特徴とする、請求項2に記載の半導体素子の製造方法。

【請求項4】
前記AlN下地層の厚さが、9~18nmであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の半導体素子の製造方法。

【請求項5】
ペロブスカイト構造の(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)O3基材と、この基材上に形成されたAlN下地層と、このAlN下地層上に形成されたGaN単結晶層とを具え、
前記AlN下地層は、前記GaN単結晶層を形成する際に使用するアンモニアガスと前記基材との反応を阻止するように機能することを特徴とする、半導体素子。

【請求項6】
前記AlN下地層の厚さが、9~18nmであることを特徴とする、請求項5に記載の半導体素子。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子、半導体素子用基板、及び半導体素子の製造方法に関し、さらに詳しくは発光デバイス、トランジスタ、太陽電池、及び光センサなどに好適に用いることのできる半導体素子、及びそれに用いる基板、さらにはその半導体素子を製造する方法に関する。

【0002】

【従来の技術】GaNは直接遷移型の半導体で、青色領域又は紫外光領域での発光デバイス及び受光デバイスへの応用が実現されている。現在においては、サファイア基板上にバッファ層を介してGaN層を形成することにより、不純物などを含まない高品質のGaN層を得ている。しかしながら、GaN層とサファイア基板との間の大きな格子定数差に起因して、GaN層には多数の貫通転位が存在し、上記発光デバイスや受光デバイスに用いた場合における、これらデバイスの寿命を短命化する原因となっていた。

【0003】
かかる観点より、GaN単結晶と格子定数の近いLiGaO2、LiAlO2、及びScMgAlO3などの基板を用いることが検討されている。一方、GaN層を形成する際においては、基板を高温に加熱することによって行う。このため、常温においては、前記基板とGaN単結晶との格子定数が一致していても、実際の層形成時においては、これらの格子定数がずれてしまう場合があった。

【0004】
また、GaN層の形成は、アンモニアガスなどを用いた還元性雰囲気で行うため、前記のような酸化物系の材料からなる基板においては、層形成時の安定性についても問題があった。したがって、上記のような基板を用いることにより、十分実用に耐え得るGaN層を具える半導体素子は実現されるに至っていないのが現状である。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、GaN単結晶と常温のみならず層形成時の加熱時においても格子定数が極めて一致する新規な基板を用い、貫通転位の極めて少ないGaN単結晶層を有する半導体素子を得ることを目的とする。

【0006】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明は、(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)なる組成を有し、ペロブスカイト型の結晶構造を有する単結晶材料からなる基材と、前記基材上に形成されたAlN下地層と、を具え、前記AlN下地層は、GaN単結晶層を形成する際に使用するアンモニアガスと前記基材との反応を阻止するように機能することを特徴とする、前記GaN結晶層を含む半導体素子用基板に関する。

【0007】
また、本発明は、ペロブスカイト構造の(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)O3基材を準備する工程と、前記(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)O3基材上にAlN下地層を形成する工程と、前記AlN下地層上に、1100℃以下の温度でGaN単結晶層をエピタキシャル成長させて形成する工程と、 を含み、前記AlN下地層は、前記GaN単結晶層を形成する際に使用するアンモニアガスと前記基材との反応を阻止するように機能させたことを特徴とする、半導体素子の製造方法に関する。

【0008】
本発明者らは、低転位密度のGaN層を具える半導体素子を得るべく鋭意検討を行った。その結果、(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)O(以下、略して「LAST」という場合がある)なる組成を有し、ペロブスカイト型の結晶構造を有する単結晶材料からなる基材は、その(111)面の格子定数がGaN単結晶の3×3構造の格子定数に一致するとともに、その熱膨脹係数がGaN単結晶に極めて近いことを見出した。

【0009】
かかる観点より、本発明者らは、上記LAST基材上にGaN単結晶層をエピタキシャル成長により形成することを試みた。しかしながら、この形成過程において、GaN層の形成を800℃を超えた温度で行うと、バッファ層の有無によらず、形成したGaN層は剥離してしまい、安定なGaN層が得られないことを見出した。

【0010】
そこで、本発明者らは、GaN層のLAST基材への形成温度の上限が800℃であると仮定し、この温度以下においてGaN単結晶層の形成を試みた。しかしながら、単にLAST基材上にGaN層を形成するのみではGaN層をエピタキシャル成長させることができず、多結晶状のGaN層が得られるのみであった。さらに、このGaN層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、極めて荒れていることが判明した。

【0011】
図1は、LAST基材上にGaN層を600℃で厚さ20nmに形成した場合の、GaN層の表面状態を示す原子力間電子顕微鏡(AFM)写真である。図1(a)は、未処理のGaN層の表面状態を示し、図1(b)は、1040℃で10分間アニール処理した後のGaN層の表面状態を示している。図1から明らかなように、GaN層は相対的に大きな島状構造を呈し、アニール後においては、GaN層が部分的に蒸発してしまい、基材が部分的に露出していることが分かる。また、LAST基材をアンモニアガス中において600℃に加熱したところ、この基材がアンモニアガスと反応して(TaN0.04,Sr(NO3)2)なる化合物を形成されることが確認された。

【0012】
以上のことから、実際のGaN層の形成においては、GaN層の蒸発によって部分的に露出したLAST基材表面とアンモニアガスとが反応し、これによってGaN層のエピタキシャル成長が影響を受けるものと推察された。

【0013】
そこで、本発明者らは、LAST基材上に高温で安定な下地層を設けることを想到するに至った。これによって、このような下地層上にGaN層を形成することにより、GaN層の形成工程においてこのGaN層が部分的に蒸発しても、基材表面が露出せず、上記のようなとアンモニアガスとの反応を防止できるものである。

【0014】
本発明者らは、上記のような下地層として適当な材料を見出すべく鋭意検討を実施した。その結果、AlN層がLAST基材における下地層として適していることを見出した。

【0015】
図2は、LAST基材上にAlN層を600℃で厚さ20nmに形成した場合の、AlN層の表面状態を示すAFM写真である。図2(a)は未処理のAlN層の表面状態を示し、図2(b)は1040℃で10分間アニール処理した後のAlN層の表面状態を示している。図2から明らかなように、AlN層はLAST基材上において比較的小さい島状構造を呈し、アニール後においても基材表面が露出せずに極めて安定であることが判明した。

【0016】
そこで、LAST基材上にAlN層を下地層として形成し、このAlN層上にGaN層を形成することを試みた。その結果、GaN層はエピタキシャル成長によって形成され、C軸配向した単結晶として形成されていることが判明した。そして、この場合は、GaN層の形成温度を1100℃まで高くしても、GaN層はAlN下地層から剥離せず、極めて安定であることが判明した。すなわち、AlN下地層を用いることにより、LAST基材の有する特性が十分に引き出され、さらには比較的高い形成温度によって結晶性に優れたGaN単結晶層が得られるものである。本発明は以上のような研究の結果としてなされたものである。

【0017】
そして、上述したような本発明の半導体素子用基材、並びに半導体素子の製造方法によれば、ペロブスカイト構造の(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)O3基材と、この基材上に形成されたAlN下地層と、このAlN下地層上に形成されたGaN単結晶層とを具えることを特徴とする、本発明の半導体素子を得ることができる。また、この半導体素子におけるGaN単結晶層における転位密度を低減することができる。

【0018】

【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。本発明においては、(La0.29Sr0.71)(Al0.65Ta0.35)Oなる組成を有し、ペロブスカイト型の結晶構造を有する単結晶材料から半導体素子の基材を構成する。この単結晶材料は、La2O、SrCO3、Al2O3及びTa2O5などの原料を加熱溶融し、Czochralski法を用いて作製することができる。また、市販のものを使用することもできる。

【0019】
次いで、本発明においては、ペロブスカイト型のLAST基材上にAlN下地層を形成する。AlN下地層は、MOCVD法など公知の成膜法を用いて形成することができる。また、AlN下地層の厚さは、GaN単結晶層がエピタキシャル成長によって形成することができれば特には限定されない。

【0020】
しかしながら、AlN下地層の厚さの下限は、9nmであることが好ましい。AlN下地層の厚さが上記9nmよりも小さくなると、下地層としての効果が減少してしまう。これによって、上述のようにGaN層形成時においてLAST基材表面が露出し、この表面と原料ガスとしてのアンモニアガスが反応することにより、GaN層のエピタキシャル成長が阻害されてしまう場合がある。

【0021】
また、AlN下地層の厚さの上限は、18nmであることが好ましい。AlN下地層の厚さが上記18nmよりも大きくなると、形成すべくGaN層に対するLAST基材の効果が減少してしまう。すなわち、LAST基材がGaN単結晶とほぼ同一の格子定数及び熱膨脹係数を有するという効果が希薄化されてしまい、GaN単結晶層中の転位密度の減少がはかれず、結晶度が劣化してしまう場合がある。

【0022】
次いで、AlN下地層上にGaN層を形成する。GaN単結晶層中の転位密度などを低減して結晶性をより向上させるには、700~1100℃の温度範囲においてエピタキシャル成長させることによって形成することが好ましい。なお、GaN層は、MOCVD法など、公知の成膜法を用いて形成することができる。

【0023】
以上のような工程を経ることにより、LAST基材と、この基材上に形成されたAlN下地層と、このAlN下地層上に形成されたGaN単結晶層とを具える半導体素子を得ることができる。そして、このような半導体素子におけるGaN単結晶層中の転位密度などが極めて減少し、良好な結晶性を呈するようになる。この結果、青色領域、又は紫外光領域における発光デバイスあるいは受光デバイスの半導体素子などとして好適に用いることができる。

【0024】

【実施例】以下、実施例において本発明の効果を具体的に示す。最初に、MODVD装置の垂直型反応管内にLAST基材を設置した。次いで、前記反応管内にトリメチルアルミニウム(TMA)ガス及びアンモニアガスを流量比5sccm/1000sccmで、Hキャリアガスとともに導入した。その後、前記LAST基材を600℃に加熱して、前記LAST基材上にAlN下地層を厚さ18nmに形成した。

【0025】
次いで、前記反応管内にトリメチルガリウム(TMG)ガス及びアンモニアガスを流量比1.4sccm/750sccmで、H及びNキャリアガスとともに導入した。その後、前記LAST基材全体を1040℃に加熱して、前記AlN下地層上にGaN層をエピタキシャル成長させ、厚さ1000nmに形成した。

【0026】
図3は、このようにして形成したGaN層の表面を、反射高速電子線回折(RHEED)法によって分析した際の反射回折パターンを示す写真である。図3に示すパターンは、ストリーク状となっており、GaN層がC軸配向した単結晶層となっていることが分かる。すなわち、本発明にしたがってGaN層を形成することにより、このGaN層を結晶に優れた単結晶として作製できることが分かる。したがって、低転位で結晶性に優れたGaN単結晶を具える半導体素子を提供することができる。

【0027】
以上、発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明の内容は上記に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。例えば、LAST、AlN下地層、及びGaN単結晶層を一単位として、この構成単位の上側あるいは下側に追加の層などを形成することにより、目的に応じた半導体素子を作製することができる。

【0028】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、極めて簡易な方法によって貫通転位が少なく低転位密度の結晶性に優れたGaN単結晶層を具える半導体素子を提供することができる。したがって、この半導体素子を発光デバイスあるいは受光デバイスとして用いた場合に、それらの寿命を長命化することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2