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明細書 :電流の計測方法および表面の測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3551308号 (P3551308)
公開番号 特開2002-174580 (P2002-174580A)
登録日 平成16年5月14日(2004.5.14)
発行日 平成16年8月4日(2004.8.4)
公開日 平成14年6月21日(2002.6.21)
発明の名称または考案の名称 電流の計測方法および表面の測定装置
国際特許分類 G01N 13/12      
G12B 21/04      
FI G01N 13/12 A
G12B 1/00 601B
請求項の数または発明の数 12
全頁数 13
出願番号 特願2000-372814 (P2000-372814)
出願日 平成12年12月7日(2000.12.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成12年9月5日 社団法人電気化学会発行の「2000年電気化学秋季大会 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成12年12月7日(2000.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】坂口 浩司
【氏名】岩田 太
【氏名】佐々木 彰
【氏名】長村 利彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100110607、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 進也
審査官 【審査官】遠藤 孝徳
参考文献・文献 特開平5-259533(JP,A)
G. Leatherman et al,"Carotene as a Molecular Wire: Conducting Atomic Force Microscopy",The Journal of Physical Chemistry B,米国,The American Chemical Society,1999年 5月20日,第103巻、第20号,p.4006-4010
L. A. Bumm,"Are Single Molecular Wires Conducting?",Science,米国,American Association for Advancement of Science,1996年 3月22日,第271号、第5256号,p.1705-1707
Takao Ishida et al.,"Lateral Electrical Condcution in Organic Monolayer",The Journal of Physical Chemistry,米国,American Chemical Society,1999年,第103巻、第10号,p.1686-1690
調査した分野 G01N 13/10 - 13/24
G12B 21/00 - 21/24
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性の基板に結合させた分子に1分子ずつ接触可能な導電性の探針と、前記探針に電圧を印加する電源と、前記探針と前記基板との間の前記分子を通して流れるトンネル電流を計測する電流測定手段とを備える、表面の測定装置。
【請求項2】
前記探針が前記分子に対して一定の力で間欠的に接触するように制御する制御装置を設けた、請求項に記載の表面の測定装置。
【請求項3】
前記導電性の探針は、先端が0.1~10nmである、請求項またはに記載の表面の測定装置。
【請求項4】
前記分子は、トンネル係数が9.8nm-1以下で、ヘテロ原子を含む有機分子である、請求項のいずれか1項に記載の表面の測定装置。
【請求項5】
前記ヘテロ原子は、硫黄原子である、請求項に記載の表面の測定装置。
【請求項6】
前記分子は、チオール基を有する有機分子である、請求項のいずれか1項に記載の表面の測定装置。
【請求項7】
表面における分子分布を観測するための装置であって、導電性の基板に結合させた分子に1分子ずつ接触可能な導電性の探針と、前記探針に電圧を印加する電源と、前記探針と前記基板との間の前記分子を通して流れるトンネル電流を計測する電流測定手段とを備える表面の測定装置と、
前記電流測定手段により計測した前記トンネル電流から前記分子の分布を解析するためのプログラムが記録されたコンピュータ・システムと、
前記コンピュータ・システムにおいて解析した前記分子の分布を拡大して表示させる表示装置とを備えた、顕微鏡装置。
【請求項8】
前記導電性の探針を前記分子に一定の力で間欠的に接触させて計測する、請求項に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記導電性の探針は、先端が0.1~10nmである、請求項またはに記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
前記分子は、トンネル係数が9.8nm-1以下で、ヘテロ原子を含む有機分子である、請求項のいずれか1項に記載の顕微鏡装置。
【請求項11】
前記ヘテロ原子は、硫黄原子である、請求項10に記載の顕微鏡装置。
【請求項12】
前記分子は、チオール基を有する有機分子である、請求項11のいずれか1項に記載の顕微鏡装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置に関し、より詳細には、分子に導電性の探針を接触させて、分子に流れる電流を直接計測する電流の計測方法、該計測方法により計測した電流を解析して試料表面の状態を測定する表面の測定装置および顕微鏡装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料の電気抵抗または電導度といった電気特性を知るためには、試料に流れる電流を計測する必要がある。従来、試料に流れる電流を計測する方法として、マクロ電極法あるいはトンネル電流を計測する方法が用いられている。マクロ電極法は、金属電極を用いて直接試料に接触させて、試料に電圧を印加し、電流計により試料に流れる電流を計測する方法である。このマクロ電極法では、センチメートル域からマイクロメートル域といった大きさの試料に流れる電流が直接計測することが可能である。
【0003】
分子レベルといった微小な試料に対しては、試料に流れるトンネル電流が計測されている。このトンネル電流を計測し、試料の表面状態を画像化する装置として走査型トンネル顕微鏡がある。走査型トンネル顕微鏡は、先端が数十nmの曲率半径を持つ金属探針を試料に数十nmの距離まで近づけ、トンネル電流が一定となるように探針の高さを制御、記録して試料表面の凹凸を画像化する装置である。
【0004】
走査型トンネル顕微鏡において分子のトンネル電流を計測する場合、一般に金属といった導電性の基板に分子を物理吸着させたものが試料として用いられている。導電性の基板と探針は、電源と接続されており、基板に物理吸着させた分子に走査型トンネル顕微鏡の探針が近づけられ、その探針に電圧が印加されることにより、トンネル電流が流れるような回路が形成されている。この回路の途中に電流測定手段を設けることにより、流れたトンネル電流を計測することができる。上記回路にトンネル電流を流すためには、分子が導電性を有するものであるか、または分子が絶縁性であってもトンネル電流が流れる程度に薄く導電性基板に付着していることが必要である。
【0005】
しかしながら、上述したマクロ電極法により計測された電流は、多数の分子を流れる電流の平均値であり、例えば特定の1分子または数分子に流れる電流を計測することができなかった。また、金属電極と、試料との接触面積が大きいため、試料の欠陥による影響を大きく受けるなどの問題があった。
【0006】
また、上述した走査型トンネル顕微鏡において電流を計測する場合、分子の定性的な電気特性を求めることはできるが、計測したトンネル電流には、分子と、探針との間にギャップが存在するため、分子のみのトンネル電流を定量的に計測をすることができなかった。このため、表面に異なった電気的特性を有する分子が付着している場合、形状の差異は検出できるものの、分子を通して流れる電流を直接用いて表面の情報を得ることができなかった。さらに、絶縁性の分子のトンネル電流を計測する場合、吸着状態によっては導電性基板と、絶縁性の分子との電気的接合がうまくとれないといった問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上述した問題点に鑑み、導電性の基板に分子を結合させることによって電気的接合をとることができ、また分子に導電性の探針を接触させて、探針に電圧を印加し、分子を通して流れる電流を計測することで1分子または数分子に流れる電流を計測することができる電流の計測方法、該電流の計測方法を用いた表面の測定装置および該電流の計測方法を用いた顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、本発明の電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置を提供することによって解決される。
【0009】
本発明の請求項1の発明によれば、導電性の基板に結合させた分子に導電性の探針を接触させる段階と、前記探針に電圧を印加して前記探針と前記基板との間に電流を流す段階と、前記電流を計測する段階とを含む電流の計測方法が提供される。
【0010】
本発明の請求項2の発明によれば、前記導電性の探針を上記分子に一定の力で間欠的に接触させて計測する電流の計測方法が提供される。
【0011】
本発明の請求項3の発明によれば、前記導電性の探針は、先端が0.1~10nmである電流の計測方法が提供される。
【0012】
本発明の請求項4の発明によれば、前記分子は、トンネル係数が9.8nm-1以下で、ヘテロ原子を含む有機分子である電流の計測方法が提供される。
【0013】
本発明の請求項5の発明によれば、前記ヘテロ原子は、硫黄原子である電流の計測方法が提供される。
【0014】
本発明の請求項6の発明によれば、前記分子は、チオール基を有する有機分子である電流の計測方法が提供される。
【0015】
本発明の請求項7の発明によれば、導電性の基板に結合させた分子に接触可能な導電性の探針と、前記探針に電圧を印加する電源と、前記探針と前記基板との間に流れる電流を計測する電流測定手段とを備える表面の測定装置が提供される。
【0016】
本発明の請求項8の発明によれば、前記探針が前記分子に対して一定の力で間欠的に接触するように制御する制御装置を設けた表面の測定装置が提供される。
【0017】
本発明の請求項9の発明によれば、前記導電性の探針は、先端が0.1~10nmである表面の測定装置が提供される。
【0018】
本発明の請求項10の発明によれば、前記分子は、トンネル係数が9.8nm-1以下で、ヘテロ原子を含む有機分子である表面の測定装置が提供される。
【0019】
本発明の請求項11の発明によれば、前記ヘテロ原子は、硫黄原子である表面の測定装置が提供される。
【0020】
本発明の請求項12の発明によれば、前記分子は、チオール基を有する有機分子である表面の測定装置が提供される。
【0021】
本発明の請求項13の発明によれば、表面における分子分布を観測するための装置であって、導電性の基板に結合させた分子に接触可能な導電性の探針と、前記探針に電圧を印加する電源と、前記探針と前記基板との間に流れる電流を計測する電流測定手段とを備える表面の測定装置と、
前記電流測定手段により計測した電流から前記分子の分布を解析するためのプログラムが記録されたコンピュータ・システムと、
前記コンピュータ・システムにおいて解析した前記分子の分布を拡大して表示させる表示装置とを備えた顕微鏡装置が提供される。
【0022】
本発明の請求項14の発明によれば、前記導電性の探針を前記分子に一定の力で間欠的に接触させて計測する顕微鏡装置が提供される。
【0023】
本発明の請求項15の発明によれば、前記導電性の探針は、先端が0.1~10nmである顕微鏡装置が提供される。
【0024】
本発明の請求項16の発明によれば、前記分子は、トンネル係数が9.8nm-1以下で、ヘテロ原子を含む有機分子である顕微鏡装置が提供される。
【0025】
本発明の請求項17の発明によれば、前記ヘテロ原子は、硫黄原子である顕微鏡装置が提供される。
【0026】
本発明の請求項18の発明によれば、前記分子は、チオール基を有する有機分子である顕微鏡装置が提供される。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるわけではない。本発明の電流の計測方法について図1を用いて説明する。図1は、基板1上の分子2に探針3を接触させて、分子2を流れる電流を電流測定手段で計測しているところを示した図である。図1に示す実施の形態では、基板1は、導電性を有し、分子2といった微小試料を流れる電流を計測するために、例えば原子レベルで平坦な表面を有することが好ましい。本発明に用いる基板1は、導電性を有し、原子レベルで平坦な表面を有する金、銀、銅といった金属のほか、分子2を通して流れる電流を計測できる程度に平坦な表面を有するものであればいかなるものでも使用することができる。また、絶縁性の基板に金属といった導電性物質を蒸着といった方法によってメッキして導電性を有するようになされていても良い。
【0028】
また、図1に示す分子2は、基板1と分子2との電気的接合を良好にするために基板1上に例えば、共有結合、イオン結合または配位結合などの化学結合により結合されているのが好ましい。また、可能である場合には、分子2は基板1に対して物理吸着により結合されていても良い。分子2を結合させる方法としては、例えば分子2を溶解した有機溶媒に基板1を浸漬することにより行うことができる。また、分子2を基板1に結合させるためには、加熱するなど従来知られたいかなる方法でも用いることができる。本発明に用いられる分子2としては、無機分子または有機分子を挙げることができるが、特に窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)といったヘテロ原子を含む有機分子が好ましい。また、金属基板と良好に化学結合するヘテロ原子として硫黄を含む有機分子が挙げられる。さらに、硫黄を含む有機分子の中でも、チオール基を有する有機分子が好ましい。チオール基を含む化合物としては、具体的にヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ドデカンチオールといったアルカンチオールが挙げられる。
【0029】
図1に示す導電性の探針3と、電源4とは、導線5aにより接続され、基板1は、電流測定手段6を介して導線5bで電源4と接続されている。図1に示す実施の形態では、探針3を分子2に接触させることで、閉回路が形成され、電源4から分子2を通して電流が流れ、図1中Aで示される電流測定手段6により分子2に流れる電流が計測されるようになっている。電源4から供給された電流は、導線5bを通して導電性の基板1へ供給される。導電性の基板1からは、分子2に接触した導電性の探針3へ向けてトンネル電流が分子2を通して流される。流れたトンネル電流は、探針3を通して導線5aにより電流測定手段6により検出される。本発明においては、分子2を通してトンネル電流が流れる程度に薄く分子2を基板1に結合させる必要がある。また、図1に示す基板1を移動させることによって基板1上の個別あるいは数個の特定の分子2に流れる電流を計測することができ、表面における分子分布を直接測定することが可能となる。
【0030】
また、本発明においては、分子2を通して電流が流れ、また電流測定手段6により流れた電流が計測できるのであれば、図1に示すような閉回路としなくても良い。さらに、分子2を通して流れる電流は、トンネル電流といった微小電流であるため、ピコアンペア域まで計測できる電流測定手段6を用いる必要がある。また、本発明に用いる電源4はバイアス電圧を供給でき、電圧を制御できるものであれば、いかなる電源装置でも用いることができる。
【0031】
図2には、本発明の表面の測定装置の断面図を示す。図2に示す実施の形態では、容器7は、容器7aと蓋7bの2つに分離できるように構成されており、容器7aには、基板1を挿入して設置するための試料入口8と、試料入口8を閉めるための蓋9と、図示しない電流測定手段と接続するための導線5bを通すノズル10と、容器7a内を窒素雰囲気とするため、矢線Bの方向から窒素ガスを供給するノズル11とが備えられている。また、蓋7bには、レーザ照射装置としてレーザ・ダイオード12と、レーザ光の変位を電圧に変換するための変換装置として変換器13とが設けられている。レーザ・ダイオード12で発生させた破線に示すレーザ光は、ビーム・セパレータ14で分波され、分波した一方のレーザ光は、図示しないCCDへ入射させるため、蓋7bの上部に形成された窓15を通して容器7の外部へと導出されている。
【0032】
また、本発明に用いる容器7としては、いかなる材質のものでも用いることができる。さらに、容器7a内に封入した窒素ガスが漏れないように保てるものであれば、容器7aにする蓋9は、今まで知られたいかなる構造とすることができる。また、容器7a内に封入する窒素ガスは、窒素ボンベなどを配管を使用して容器7aと連通させて供給することができる。この際、容器7a内を排気するために図示しない排気ポンプが用いられ、排気ポンプにより排気した後に窒素ガスを導入することができる。
【0033】
図2に示す容器7a内には、分子2を結合した基板1がピエゾ・アクチュエータ16を含んで構成された台17上に配置されている。ピエゾ・アクチュエータ16には、矢線Cの方向より電圧が入力されて圧電効果により台17を移動可能に保持させて、容器7aの上部に固定した探針3との接触する力や接触する位置を変えることができるようになっている。本発明においては、ピエゾ・アクチュエータ16のほか、探針3との接触する力や接触する位置を変えることができれば、今まで知られているいかなる手段を用いても良い。また、本発明においては、台17を移動させる手段以外に、探針3を先端に有するカンチレバー18を直接運動させて分子2に接触する力や接触する位置を変えても良い。
【0034】
また、図2に示す基板1は、電源4と導線5aにより接続されている。さらに、分子2と接触可能な探針3を先端に有するカンチレバー18が容器7aの上部に固定部材19によって配設され、カンチレバー18は、導線5bにより容器7aのノズル10を通して図示しない電流測定手段に接続されている。本発明に用いる台17および固定部材19には、電源4から基板1、探針3およびカンチレバー18を通して矢線Dに示す方向の図示しない電流測定手段へ流すために、絶縁性の材質から構成される。また、本発明に用いるカンチレバー18は、導電性のもの以外に、絶縁性のものに金属といった導電性物質をメッキして導電性を有するようになされていても良い。
【0035】
また、図2に示す実施の形態では、図2に示す容器7の蓋7b内には、レーザ・ダイオード12で発生させたレーザ光を集中させるためのレンズ20と、レーザ光をカンチレバー18の先端部およびCCD21へと分波させるビーム・セパレータ14と、カンチレバー18の先端部において反射したレーザ光を変位検知装置として用いる変位検波器22へ向けて反射させる反射板23と、反射板23で反射したレーザ光の搬送波の変位を検出する変位検波器22とが設けられている。変位検波器22で検出したレーザ光は、変位検波器22で検出した変位を変換器13により電圧に変換する。変換された電圧は、矢線Eに示す方向の図示しない増幅装置へと出力される。また、CCD21は、カンチレバー18の先端のX軸あるいはY軸方向の位置を目視できるように設けられている。
【0036】
図2に示す実施の形態においては、フィードバック制御は、カンチレバー18に反射したレーザ光の変位を変位検波器22で検知し、変位に応じて変換器13により電圧に変換される。基板1の位置移動したことによってレーザ光の光路長が変化し、光路長の変化に応じた変位を変換器13により電圧へと変換し、ピエゾ・アクチュエータ16の駆動制御を行うことで、分子2と探針3とが接触する力が一定となるようにフィードバック制御が行われている。
【0037】
図2に示すフィードバック制御に用いるレーザ・ダイオード12、レンズ20、ビーム・セパレータ14、CCD21、反射板23および変位検波器22には、本発明の表面の測定装置で計測に必要とされるカンチレバー18にレーザ光を適切に照射することができ、反射したレーザ光の変位を適切に検知できるものであればいかなるものでも用いることができる。
【0038】
図3は、本発明の表面の測定装置に用いられるカンチレバー18の先端に設けられた探針3を拡大した図である。図3(a)は、本発明の表面の測定装置に用いるカンチレバー18を分子2に接触させている図を示す。図3(a)に示す実施の形態においては、カンチレバー18は、シリコンといった絶縁性のカンチレバーの基体に金といった導電性の金属を表面全体にメッキすることによって電流が流れるようにされている。図3(b)は、本発明の表面の測定装置に用いるカンチレバー18の先端に設けられた探針3を拡大して示した図である。図3(b)に示す実施の形態においては、探針3は、カンチレバー18と同様、絶縁性の基体に金属がメッキされているものが用いられている。また、探針3の先端は、先が鋭く尖った形をしており、分子2を1分子ずつ接触可能なように0.1~10nmであることが好ましい。本発明の表面の測定装置に用いる探針3は、分子2を1分子ずつ接触できる構造であれば、いかなる形状をしていても良い。
【0039】
図4は、本発明の顕微鏡装置で分子2の分布を測定するために用いる装置のブロックダイヤグラムである。本発明においては、測定を行うためにまず、分子2を結合させた基板1をピエゾ・アクチュエータ16を有する台17の上に配置する。この基板1をバイアス電圧が流れる電源4と導線5aを介して接続する。また、探針3を先端に有するカンチレバー18は、電流増幅器24を介して電流測定手段6と接続され、さらにコンピュータ・システム25へと電流を入力させている。
【0040】
次に、コンピュータ・システム25は、分子2に探針3を接触する力または接触させて基板1を移動する方向を制御するとともに、分子2に探針3を接触させてバイアス電圧を印加する。電流は、電源4から、基板1および分子2を通して流れ、カンチレバー18を通して電流増幅器24へ入力される。電流増幅器24では、分子2を通して流れる電流がナノ域といったように微量であるため、基板1の移動に伴う電流をオペアンプといった増幅手段を用いて増幅している。電流増幅器24を通して流れる電流は、電流測定手段6において分子2を通して流れたトンネル電流に対応している。また、計測した電流は、コンピュータ・システム25へと出力され、トンネル電流に対してX軸方向、Y軸方向の位置をマッピングすることにより、電流像を画像化し、さらに表示装置により電流像を拡大して表示させることができる。表示された電流像は、表面の分子の分布を詳細に示すものとして用いることができる。
【0041】
また、図4のブロックダイヤグラムに示す実施の形態においては、探針3を分子2に一定の力で制御させるために、フィードバック制御が用いられていて、このフィードバック制御は、レーザ・ダイオード12で発生させたレーザー光をカンチレバー18の先端部に搬送させ、反射したレーザー光の変位を変位検波器22で検出し、変換器13で検出した変位を電圧に変換することにより行われる。変換された電圧は、差動増幅器26で増幅された後、電圧信号として図4中の枠で囲まれた増幅装置へと送られる。
【0042】
図4には、増幅装置を枠で囲って示している。図4に示した増幅装置は、前置増幅器27、絶対値増幅器28、対数増幅器29、参照信号発生器30および積分増幅器31から構成されている。差動増幅器26で増幅された電圧信号は、ノイズを低下させ、さらに増幅を行う前置増幅器27へ出力される。また、絶対値増幅器28および対数増幅器29で増幅を重ねることによって変形した電圧信号は、積分増幅器31へと入力され、参照信号発生器30からの信号を用いて整形されるとともに増幅が行われる。積分増幅器31で積分された電圧信号は、高速電圧増幅器32へ出力され、探針3の分子2にかかる力が一定となるように、台17をZ軸方向へ移動させる電圧信号をピエゾ・アクチュエータ16に与える。さらに、高速電圧増幅器32の信号は、コンピュータ・システム25に入力されて、分子2に加えられている探針3の力と、表面状態とを解析することができるようになっている。また、コンピュータ・システム25に、X軸またはY軸方向へ移動させるように入力することによって、コンピュータ・システム25からの信号が高速電圧増幅器32に入力され、高速電圧増幅器32から電圧が出力されてピエゾ・アクチュエータ16により台17をX軸またはY軸方向へと移動させることができる。
【0043】
本発明の顕微鏡装置に用いられる上述した各増幅器には、微小電圧を検出して増幅できるものであれば、従来知られているいかなる増幅器でも用いることができる。また、これらの増幅器およびレーザ・ダイオード12を用いる方法以外に、フィードバック制御できるのであればいかなる手段でも用いることができる。
【0044】
また、図4に示すブロック図内のコンピュータ・システム25には、得られた電流の大小で凹凸を解析して電流像を表示させ、またフィードバック制御系から得た電圧信号により分子2の分布を解析して分子の分布、ピンホールなどといった分子表面像を表示させることができる解析プログラムが記録されている。この解析プログラムには、計測した電流から電流分布を画像化した電流像に変換させるための電流解析機能、電圧信号から分子分布を測定するための表面形状測定機能のほか、カラー等高線機能、三次元表示機能、拡大機能、フィルタリング機能および任意回転機能を有するものであればいかなるプログラムであっても用いることができる。
【0045】
また、本発明に用いるコンピュータ・システム25においては、電流測定手段6からの電流値あるいは電圧信号を記録し、上記プログラムを記録および再生して使用することができるものであれば、いかなるものでも用いることができる。また、表示装置としては、モニターやスクリーンといった画像を拡大して表示できるものを用いることができる。コンピュータ・システム25にパーソナル・コンピュータを用いれば、1台で分子2の分布を解析し、解析した分子分布をモニターにおいて拡大して表示させることができる。
【0046】
以下に本発明の顕微鏡装置についてより詳細に説明する。本発明の顕微鏡装置は、図2に示す表面状態の測定装置と、図4に示す各増幅器およびコンピュータ・システム25と、表示装置とから構成されている。図5は、本発明の顕微鏡装置の探針3部分を拡大して示した図である。図5に示す実施の形態においては、基板1は、平坦なマイカに金を真空蒸着させて原子レベルで平坦としたものを用いている。また、分子2としては、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチール、ドデカンチオールの4種類をそれぞれ基板1に化学結合させた4種類の基板1を用いた。ここで分子2を基板1に化学結合させる方法としては、クロロホルムに分子2を溶解させておき、金を蒸着させた基板1をクロロホルムに1~2時間浸漬させ、クロロホルムを蒸発させることにより行った。分子2を溶解させる有機溶媒としては、クロロホルムのほか、炭化水素系溶剤、アルコール類、エステル系溶剤、エーテル・アセタール系溶剤、ケトン・アルデヒド溶剤、多価アルコール類、その他含窒素化合物溶剤、含硫黄化合物溶剤などを挙げることができる。
【0047】
また、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチール、ドデカンチオール分子をそれぞれ化学結合させた基板1は、導線5bを通して電源4から電圧が印加されている。また、本発明の図5に示した実施の形態においては、電源4としては、乾電池を用いた。印加電圧は、100mVとされていて、探針3に印加され、矢線iの方向へ向けて分子を通して電流を流す構成とされている。さらに、図5に示した実施の形態では、カンチレバー18としては、Siに金33を真空蒸着させたものを用いた。基板1に化学結合させた分子長rは、分子2にオクタンチオールを用いた場合では、約10nmである。また、オクタンチオール分子に接触させて分子分布を詳細に探査するため、先端を1~5nmまで尖鋭化させた探針3を用いた。
【0048】
また、図5に示すように顕微鏡装置として試料表面を測定するためには、その他増幅装置34、コンピュータ・システム25および表示装置35を用いて分子分布を拡大して表示させることにより試料表面を測定できるようになっている。図5に示す他増幅装置34、コンピュータ・システム25および表示装置35、さらには図示しないレーザ照射装置、変位検波装置、ピエゾ・アクチュエータ、電流測定手段といった装置なども用いられるが、上述した実施の形態で使用可能なものであればいかなるものでも用いることができる。
【0049】
図6は、上述した条件で、本発明の顕微鏡装置を用いて観測したオクタンチオール分子の表面像と、計測した電流分布を表示した電流像とを示した図である。ここで、図2に示す基板1が配置されている容器7aは、窒素ガスで置換されており、窒素雰囲気中で分子2に電流を流すことができるようになっている。図6(a)は、オクタンチオール分子に本発明の顕微鏡の探針3を接触させて100mVを印加し、オクタンチオール分子にレーザ光を照射させて変位をコンピュータ・システム25に入力して、基板1の表面像を表示させた図である。また、図6(b)は、オクタンチオール分子に本発明の顕微鏡装置の探針3を接触させて100mVを印加し、計測した電流をコンピュータ・システム25に入力して、電流分布を表示させた電流像を示した図である。図6(b)に示すように、電流像においては、数nmといった微小な穴まで鮮明に確認することができることが示される。
【0050】
図7は、上述した4種類の基板1を作成するために用いたアルカンチオールのCH鎖数とこのアルカンチオール分子を通して流れる電流の対数値との関係を示した図である。本発明の顕微鏡装置を用いて上記したヘキサンチオール(CHの鎖数6)、オクタンチオール(CHの鎖数8)、デカンチール(CHの鎖数10)、ドデカンチオール(CHの鎖数12)の各分子をそれぞれ図5に示す基板1に化学結合させて各分子に電源4から-100~100mVの印加電圧を加えた場合に、各分子に流れる電流を示した図である。-100mVの印加電圧とは、100mVの印加電圧を図5に示す矢線iの方向に加えていることを示し、100mVの印加電圧とは、矢線iとは逆の方向に100mVの印加電圧を加えていることを示す。図7の縦軸には、分子を通して流れる電流(A)の対数値を示し、横軸には、アルカンチオールのCHの鎖数を示している。
【0051】
図7によれば、CHの鎖数が長くなる程、図5に示す基板1と探針3との距離が長くなるために分子2を通して流れるトンネル電流が減少しているのが示されている。また、分子を通して流れる電流(A)の対数値とCHの鎖数との間には、トンネル電流について下記式(1)
【0052】
【数1】
JP0003551308B2_000002t.gif【0053】
で示されることが見出された。式(1)中βは、トンネル係数であり、トンネリングにより電子が通過するポテンシャル障壁に依存する。また、rは、トンネリングにより電子が移動する実効長(nm)を示す。また、図7に示すプロットから、チオール基を有する化合物に対するトンネル係数βは、9.8nm-1となった。従って、本発明の顕微鏡装置は、分子2を通して流れる電流がCHの鎖数に依存するとともに、図6(b)に示す電流像では、数nmといった微小な穴を鮮明に確認できることなどからも、本発明の顕微鏡装置においては、分子2を通して流れるトンネル電流を直接計測しているものと推測される。
【0054】
【発明の効果】
従って、本発明の電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置を提供することにより、導電性の基板に分子を結合させることによって電気的接合をとることができ、また分子に導電性の探針を接触させて、探針に電圧を印加し、分子を通して流れる電流を計測することで1分子または数分子に流れる電流を直接計測することができる。
【0055】
また、電流を直接計測することが可能なため、分子の種類に応じて電気抵抗といった電導効率を比較することが可能となった。さらに、本発明の顕微鏡装置を用いて導電性の探針を2次元表面で操作することにより、分子を通して流れるトンネル電流と、分子分布との両方を観測することを可能にした。
【0056】
本発明の電流の計測方法および表面の測定装置は、電気計測器や化学計測器といった計測装置に応用が可能である。すなわち、本発明は、本発明の電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置を提供することにより、表面の分子の分布に関する状態を明確に与えることを可能にし、電子、電気、半導体、分析触媒、分離、化学、記憶、記録の各分野に対して多大な応用性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】分子を通して流れる電流を本発明の電流の計測方法で計測しているところを示した図。
【図2】本発明の表面の測定装置の断面図。
【図3】本発明の表面の測定装置の探針を拡大した図。
【図4】本発明の顕微鏡装置のブロックダイヤグラムを示した図。
【図5】本発明の顕微鏡装置の探針部分を拡大して示した図。
【図6】オクタンチオール分子を用いて本発明の顕微鏡装置で観測した表面像と、電流像とを示した図。
【図7】アルカンチオールのCH鎖数と、アルカンチオール分子を通して流れる電流の対数値との関係を示した図。
【符号の説明】
1…基板
2…分子
3…探針
4…電源
5a、5b…導線
6…電流測定手段
7、7a…容器
7b…蓋
8…試料入口
9…蓋
10…ノズル
11…ノズル
12…レーザ・ダイオード
13…変換器
14…ビーム・セパレータ
15…窓
16…ピエゾ・アクチュエータ
17…台
18…カンチレバー
19…固定部材
20…レンズ
21…CCD
22…変位検波器
23…反射板
24…電流増幅器
25…コンピュータ・システム
26…差動増幅器
27…前置増幅器
28…絶対値増幅器
29…対数増幅器
30…参照信号発生器
31…積分増幅器
32…高速電圧増幅器
33…金
34…増幅装置
35…表示装置
A…電流計
r…分子長
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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