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明細書 :電流の計測方法および表面形状の測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3551315号 (P3551315)
公開番号 特開2002-267588 (P2002-267588A)
登録日 平成16年5月14日(2004.5.14)
発行日 平成16年8月4日(2004.8.4)
公開日 平成14年9月18日(2002.9.18)
発明の名称または考案の名称 電流の計測方法および表面形状の測定装置
国際特許分類 G01N 13/12      
G12B 21/04      
FI G01N 13/12 A
G12B 1/00 601B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2001-064937 (P2001-064937)
出願日 平成13年3月8日(2001.3.8)
審査請求日 平成13年3月8日(2001.3.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】坂口 浩司
【氏名】岩田 太
【氏名】佐々木 彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100110607、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 進也
【識別番号】100112520、【弁理士】、【氏名又は名称】林 茂則
審査官 【審査官】遠藤 孝徳
参考文献・文献 特開平10-283970(JP,A)
特開平11-271345(JP,A)
特開2002-174580(JP,A)
特開平10-78440(JP,A)
特開平5-259532(JP,A)
Dror Sarid,"Tapping-mode scanning force microscopy: Metallic tips and samples",Computational Materials Science,Elsevier Science B. V.,1996年 4月,第5巻、第4号,p.291-297
G. Leatherman et al.,"Carotene as a molecular Wire: Conductiong Atomic Force Microscopy",The Journal of Physical Chemistry B,米国,The American Chemical Society,1999年 5月20日,第103巻、第20号,p.4006-4010
坂口浩司、岩田太、平井篤史、佐々木彰、長村利彦,“電導性AFMで探る有機分子のトンネル電導”,電気化学大会講演要旨集,日本,社団法人電気化学会,2000年 9月12日,秋季、2029,p.220
L. A. Bumm et al. ,"Are Single Molecular Wires Conducting?",Science,米国,American Association for Advancement of Science,1996年 3月22日,第271巻、第5256号,p.1705-1707
Takao Ishida et al.,"Lateral Electrical Conduction in Organic Monolayer",The Journal of Physical Chemistry B,米国,American Chemical Society,1999年,第103巻、第10号,p.1686-1690
Takao Ishida, Wataru Mizutani, Nami Choi, Uichi Akiba, Masamichi Fujihira, and Hiroshi Tokumoto,"Structual Effects on Electrical Conduction of Conjugated Molecules Studied by STM",The Journal of Physical Chemistry B,米国,American Chemical Society,2000年,第104巻、第49号,p.11680-11688
調査した分野 G01N 13/10 - 13/24
G12B 21/00 - 21/24
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性の基板に配置した試料に一定の力で接触可能な導電性の探針と、所定周波数の電圧を出力させる電圧出力手段と、前記所定周波数の電圧により前記探針を所定周期で振動させる探針振動手段と、前記導電性の基板に電圧を印加する電源と、前記探針と前記試料とが接触して前記探針と前記基板との間に流れたトンネル電流を計測する電流測定手段とを備える、表面の測定装置。
【請求項2】
前記探針は、先端が0.1~10nmである、請求項に記載の表面の測定装置。
【請求項3】
前記周波数は、0.1~10kHzである、請求項またはに記載の表面の測定装置。
【請求項4】
試料表面を観測するための装置であって、導電性の基板に配置した試料に一定の力で接触可能な導電性の探針と、所定周波数の電圧を出力させる電圧出力手段と、前記所定周波数の電圧により前記探針を所定周期で振動させる探針振動手段と、前記導電性の基板に電圧を印加する電源と、前記探針と前記試料とが接触して前記探針と前記基板との間に流れたトンネル電流を計測する電流測定手段とを備える表面の測定装置と、
前記電流測定手段により計測した前記トンネル電流から前記試料表面を解析するためのプログラムが記録されたコンピュータ・システムと、
前記コンピュータ・システムにおいて解析した前記試料表面を拡大して表示させる表示装置とを備えた、顕微鏡装置。
【請求項5】
前記探針は、先端が0.1~10nmである、請求項に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記周波数は、0.1~10kHzである、請求項またはに記載の顕微鏡装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置に関し、より詳細には、導電性の探針を振動させながら一定の力かつ所定周期で試料に接触させて、探針と試料とが接触した際に流れる電流を直接計測する電流の計測方法、該計測方法により計測した電流を解析して試料表面の状態を測定する表面の測定装置および顕微鏡装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、試料の電気抵抗または電導度といった電気特性を知るためには、試料に流れる電流を計測する必要がある。分子レベルといった微小な試料に対しては、試料に流れるトンネル電流が計測されている。このトンネル電流を計測し、試料の表面状態を画像化する装置として走査型トンネル顕微鏡が用いられている。走査型トンネル顕微鏡は、先端が数十nmの曲率半径を持つ金属探針を試料に数十nmの距離まで近づけ、トンネル電流が一定となるように探針の高さを制御、記録して試料表面の凹凸を画像化する装置である。
【0003】
また、試料などの表面情報においては、上述した走査型トンネル顕微鏡以外に走査型プローブ顕微鏡も用いられている。走査型プローブ顕微鏡においては、走査探針を一定の振動振幅として探針先端と試料表面との間の位置関係をフィードバック制御しながら試料の表面を測定することができるものがあり、また試料に探針の先端を接触させてより正確に測定する顕微鏡も用いられている。例えば、特開平10-78440号公報に開示の走査型プローブ顕微鏡によれば、探針を励振させることにより探針を所定の振幅で振動させ、試料と接触した探針の先端の荷重が常に一定となるように、走査探針の振幅最下点を検出することが可能な検出手段が設けられている。このように所定の振幅で振動させて接触する荷重を常に一定とすることにより、上述した生体試料などといった極めて柔らかく、かつ不均一な硬さを有する試料表面の情報を得ることが可能とされている。
【0004】
上述した走査型トンネル顕微鏡において試料の電流を計測する場合、試料の定性的な電気特性を求めることはできるが、計測したトンネル電流には、試料と探針との間にギャップが存在するため、試料のみのトンネル電流を定量的に計測をすることができなかった。このため、表面に異なった電気的特性を有する分子が付着している場合、形状の差異は検出できるものの、試料を通して流れる電流を直接用いて表面の情報を得ることができなかった。また、バイオテクノロジーの分野では、生体分子や生体高分子といった生体試料、特に酵素、細菌、DNA、タンパク質などのナノメートル構造体の試料表面情報はもちろんのこと、局所的に電極を取り付けて電子やイオンの動きを計測したいといったニーズがある。しかしながら、上述した走査型プローブ顕微鏡では、このような機械的強度が弱い試料に直接探針を接触させて詳細な表面情報を得ることができるものの、直接電気的計測を行うことはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上述した問題点に鑑み、基板に電圧を印加し、基板上に配置した試料に導電性の探針を振動させながら一定の力かつ所定周期で接触させることにより、機械的強度が弱い試料または不均一な硬さを有する試料を通して流れるトンネル電流を計測することができる電流の計測方法、該電流の計測方法を用いた表面の測定装置および該電流の計測方法を用いた顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、本発明の電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置を提供することによって解決される。
【0007】
本発明の請求項1の発明によれば、試料を配置した導電性の基板に電圧を印加する段階と、導電性の探針を一定の力かつ所定周期で前記試料に接触するように振動させる段階と、前記探針と前記試料とが接触して前記探針と前記基板との間に流れた電流を計測する段階とを含む電流の計測方法が提供される。
【0008】
本発明の請求項2の発明によれば、前記探針は、所定周波数の電圧が印加されることにより所定周期で振動する電流の計測方法が提供される。
【0009】
本発明の請求項3の発明によれば、前記探針は、先端が0.1~10nmである電流の計測方法が提供される。
【0010】
本発明の請求項4の発明によれば、前記周波数は、0.1~10kHzである電流の計測方法が提供される。
【0011】
本発明の請求項5の発明によれば、導電性の基板に配置した試料に一定の力で接触可能な導電性の探針と、所定周波数の電圧を出力させる電圧出力手段と、前記所定周波数の電圧により前記探針を所定周期で振動させる探針振動手段と、前記導電性の基板に電圧を印加する電源と、前記探針と前記試料とが接触して前記探針と前記基板との間に流れた電流を計測する電流測定手段とを備える表面の測定装置が提供される。
【0012】
本発明の請求項6の発明によれば、前記探針は、先端が0.1~10nmである表面の測定装置が提供される。
【0013】
本発明の請求項7の発明によれば、前記周波数は、0.1~10kHzである表面の測定装置が提供される。
【0014】
本発明の請求項8の発明によれば、試料表面を観測するための装置であって、導電性の基板に配置した試料に一定の力で接触可能な導電性の探針と、所定周波数の電圧を出力させる電圧出力手段と、前記所定周波数の電圧により前記探針を所定周期で振動させる探針振動手段と、前記導電性の基板に電圧を印加する電源と、前記探針と前記試料とが接触して前記探針と前記基板との間に流れた電流を計測する電流測定手段とを備える表面の測定装置と、
前記電流測定手段により計測した電流から前記試料表面を解析するためのプログラムが記録されたコンピュータ・システムと、
前記コンピュータ・システムにおいて解析した前記試料表面を拡大して表示させる表示装置とを備える顕微鏡装置が提供される。
【0015】
本発明の請求項9の発明によれば、前記探針は、先端が0.1~10nmである顕微鏡装置が提供される。
【0016】
本発明の請求項10の発明によれば、前記周波数は、0.1~10kHzである顕微鏡装置が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるわけではない。本発明の電流の計測方法について図1を用いて説明する。図1は、基板1上の試料2に探針3を振動させながら接触させて、探針3が試料2と接触して流れた電流を電流測定手段で計測しているところを示した図である。図1に示す実施の形態では、基板1は、導電性を有し、分子といった微小の試料2を流れる電流を計測するために、例えば原子レベルで平坦な表面を有することが好ましい。本発明に用いる基板1は、導電性を有し、原子レベルで平坦な表面を有する金、銀、銅といった金属のほか、試料2を通して流れる電流を計測できる程度に平坦な表面を有するものであればいかなるものでも使用することができる。また、絶縁性の基板に金属といった導電性物質を蒸着といった方法によってメッキして導電性を有するようにされていても良い。
【0018】
また、図1に示す試料2は、基板1上に配置される。試料2の種類によっては、基板1と試料2との電気的接合を良好にするために基板1上に例えば、共有結合、イオン結合または配位結合などの化学結合により結合されているのが好ましい。また、試料2は基板1に対して物理吸着により結合されたものを用いても良い。試料2を基板1に結合させる場合には、加熱するなど従来知られたいかなる方法でも用いることができる。本発明に用いられる試料2としては、無機分子、有機分子、または機械的強度の弱く、不均一な硬さを有する細菌、酵素、DNA、タンパク質などの生体高分子といった有機高分子などいかなる試料でも用いることができる。また、基板1に結合される試料2としては、導電性の基板1と電気的接合を良好とする窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)といったヘテロ原子を含む有機化合物などを用いることができる。
【0019】
図1に示す導電性の探針3と電源4とは、導線5aにより接続され、基板1は、電流測定手段6を介して導線5bで電源4と接続されている。図1に示す実施の形態では、探針3が試料2に接触することにより閉回路が形成され、電源4から試料2を通して電流が流れ、図1中Aで示される電流測定手段6により試料2に流れる電流が計測されるようになっている。また、導電性の探針3には、探針振動手段として圧電素子7が設けられ、圧電素子7は、電圧出力手段8と接続されている。
【0020】
図1に示す電源4から供給された電流は、導線5aを通して導電性の基板1へ供給される。導電性の基板1からは、試料2に接触した導電性の探針3へ向けてトンネル電流が試料2を通して流される。流れたトンネル電流は、探針3を通して導線5bにより電流測定手段6により検出される。また、電圧出力手段8は、サイン波といった所定周波数の電圧を圧電素子7に出力する。圧電素子7に入力された電圧は、機械量へと変換され、電圧の所定周波数に対応した周期で導電性の探針3を振動させる。図1では、実線と破線とで示された間において導電性の探針3を振動させている。本発明においては、電圧出力手段8において出力する周波数は、試料2に探針3を接触させて電流を検出するために0.1~10kHzとするのが好ましい。本発明においては、探針3を振動させることにより上述したような機械的強度の弱い生体分子や生体高分子を破壊することなく測定することができる。
【0021】
本発明においては、試料2を配置する際、試料2を通してトンネル電流が流れる程度に薄く試料2を基板1に配置させる必要がある。また、図1に示す基板1を移動させることによって基板1上の試料2に流れる電流を計測することができ、試料表面を直接測定することが可能となる。
【0022】
本発明においては、試料2を通して電流が流れ、また電流測定手段6により流れた電流が計測できるのであれば、図1に示すような閉回路としなくても良い。また、試料2を通して流れる電流は、トンネル電流といった微小電流であるため、ピコアンペア域まで計測できる電流測定手段6を用いる必要がある。さらに、本発明に用いる電源4はバイアス電圧を供給でき、電圧を制御できるものであれば、いかなる電源装置でも用いることができる。また、本発明において電圧出力手段8は、所定の周波数の電圧を出力することができるものであればいかなるものでも用いることができ、さらに電圧出力手段8から出力された電圧を機械量に変換することができるものであればいかなる探針振動手段を用いることができる。
【0023】
図2は、本発明の表面の測定装置の断面図を示す。図2に示す実施の形態では、容器9は、容器9aと蓋9bの2つに分離できるように構成されており、容器9aには、基板1を挿入して設置するための試料入口10と、試料入口10を閉めるための蓋11と、図示しない電流測定手段と接続するための導線5bを通すノズル12と、容器9a内を窒素雰囲気とするため、矢線Bの方向から窒素ガスを供給するノズル13とが備えられている。また、蓋9bには、レーザ照射装置としてレーザ・ダイオード14と、レーザ光の変位を電圧に変換するための変換装置として変換器15とが設けられている。レーザ・ダイオード14で発生させた破線に示すレーザ光は、ビーム・セパレータ16で分波され、分波した一方のレーザ光は、CCD23へ入射させるため、蓋9bの上部に形成された窓17を通して容器9の外部へと導出されている。
【0024】
また、本発明に用いる容器9としては、いかなる材質のものでも用いることができる。さらに、容器9a内に封入した窒素ガスが漏れないように保てるものであれば、容器9aにする蓋11は、今まで知られたいかなる構造とすることができる。また、容器9a内に封入する窒素ガスは、窒素ボンベなどを配管を使用して容器9aと連通させて供給することができる。この際、容器9a内を排気するために図示しない排気ポンプが用いられ、排気ポンプにより排気した後に窒素ガスを導入することができる。
【0025】
図2に示す容器9a内には、試料2を配置した基板1がピエゾ・アクチュエータ18を含んで構成された台19上に配置されている。ピエゾ・アクチュエータ18には、矢線Cの方向より電圧が入力されて圧電効果により台19を移動可能に保持させて、容器9aの上部に固定した探針3との接触する力や接触する位置を変えることができるようになっている。本発明においては、ピエゾ・アクチュエータ18のほか、探針3との接触する力や接触する位置を変えることができれば、今まで知られているいかなる手段を用いても良い。また、本発明においては、台19を移動させる手段以外に、探針3を先端に有するカンチレバー20を直接運動させて試料2に接触する力や接触する位置を変えても良い。
【0026】
また、図2に示す基板1は、電源4と導線5aにより接続されている。さらに、試料2と接触可能な探針3を先端に有するカンチレバー20が容器9aの上部に圧電素子7を介して固定部材21に配設され、カンチレバー20は、導線5bにより容器9aのノズル12を通して図示しない電流測定手段に接続されている。また、圧電素子7も導線により容器9aのノズル12を通して図示しない電圧出力手段に接続されている。本発明に用いる台19および固定部材21には、電源4から基板1、探針3およびカンチレバー20を通して矢線Dに示す方向の図示しない電流測定手段へ流すために、絶縁性の材質から構成される。また、本発明に用いるカンチレバー20は、導電性のもの以外に、絶縁性のものに金属といった導電性物質をメッキして導電性を有するようになされていても良い。
【0027】
また、図2に示す実施の形態では、図2に示す容器9の蓋9b内には、レーザ・ダイオード14で発生させたレーザ光を集中させるためのレンズ22と、レーザ光をカンチレバー20の先端部およびCCD23へと分波させるビーム・セパレータ16と、カンチレバー20の先端部において反射したレーザ光を変位検知装置として用いる変位検波器24へ向けて反射させる反射板25と、反射板25で反射したレーザ光の搬送波の変位を検出する変位検波器24とが設けられている。変位検波器24で検出したレーザ光は、変位検波器24で検出した変位を変換器15により電圧に変換する。変換された電圧は、矢線Eに示す方向の図示しない増幅装置へと出力される。また、CCD23は、カンチレバー20の先端のX軸あるいはY軸方向の位置を目視できるように設けられている。
【0028】
図2に示す実施の形態においては、フィードバック制御は、所定周期においてカンチレバー20が上下に振動し、探針3が所定周期の振動において反射したレーザ光の変位を変位検波器24で検知し、変位に応じて変換器15により電圧に変換される。基板1が位置移動して振幅が変化することによって所定周期でのレーザ光の光路長が変化し、光路長の変化に応じた変位を変換器15により電圧へと変換し、ピエゾ・アクチュエータ20の駆動制御を行うことで、試料2と探針3とが接触する力を一定とするようにフィードバック制御が行われている。
【0029】
図2に示すフィードバック制御に用いるレーザ・ダイオード14、レンズ22、ビーム・セパレータ16、CCD23、反射板25および変位検波器24には、本発明の表面の測定装置で計測に必要とされるカンチレバー20にレーザ光を適切に照射することができ、反射したレーザ光の変位を適切に検知できるものであればいかなるものでも用いることができる。
【0030】
図3は、本発明の表面の測定装置に用いられるカンチレバー20の先端に設けられた探針3を拡大した図である。図3(a)は、本発明の表面の測定装置に用いるカンチレバー20を試料2の分子に接触させている図を示す。図3(a)に示す実施の形態においては、カンチレバー20は、シリコンといった絶縁性のカンチレバーの基体に白金-イリジウム合金や金といった導電性の金属を表面全体にメッキすることによって電流が流れるようにされている。図3(b)は、本発明の表面の測定装置に用いるカンチレバー20の先端に設けられた探針3を拡大して示した図である。図3(b)に示す実施の形態においては、探針3は、カンチレバー20と同様、絶縁性の基体に金属がメッキされているものが用いられている。また、探針3の先端は、先が鋭く尖った形をしており、試料2の1分子ずつと接触可能なように0.1~10nmであることが好ましい。本発明の表面の測定装置に用いる探針3は、試料2の1分子ずつと接触できる構造であれば、いかなる形状をしていても良い。
【0031】
図4は、本発明の顕微鏡装置で試料2の分子分布を測定するために用いる装置のブロックダイヤグラムである。本発明においては、測定を行うためにまず、試料2を結合した基板1をピエゾ・アクチュエータ18を有する台19の上に配置する。この基板1をバイアス電圧が流れる電源4と導線5aを介して接続する。また、探針3を先端に有するカンチレバー20は、電流増幅器26を介して電流測定手段6と接続され、さらにロックイン増幅器27、コンピュータ・システム28へと電流を入力させている。さらに、カンチレバー20は、電圧出力手段8から出力された所定周波数の電圧を圧電素子7で機械量に変換することにより所定周期で振動させることができるようになっている。また、電圧出力手段8から出力された所定周波数の電圧は、ロックイン増幅器27へも出力され、圧電素子7を介してカンチレバー20へ出力した周波数の電圧に同期した電流をロックイン増幅器27で増幅することができるようになっている。
【0032】
次に、コンピュータ・システム28は、試料2に探針3を接触させる力または基板1を移動する方向を制御する。電流は、電源4から、基板1および試料2を通して流れ、カンチレバー20を通して電流増幅器26へ入力される。電流増幅器26では、試料2を通して流れる電流がナノ域といったように微量であるため、基板1の移動に伴う電流をオペアンプといった増幅手段を用いて増幅している。電流増幅器26を通して流れる電流は、電流測定手段6において試料2を通して流れたトンネル電流に対応している。また、計測した電流は、コンピュータ・システム28へと出力され、トンネル電流に対してX軸方向、Y軸方向の位置をマッピングすることにより、電流像を画像化し、さらに表示装置により電流像を拡大して表示させることができる。表示された電流像は、試料表面の分子分布を詳細に示すものとして用いることができる。
【0033】
また、図4のブロックダイヤグラムに示す実施の形態においては、所定周期で振動される探針3が振動の最下点において試料2に一定の力で制御されるようにフィードバック制御が用いられていて、このフィードバック制御は、レーザ・ダイオード14で発生させたレーザー光をカンチレバー20の先端部に搬送させ、反射したレーザー光の変位を変位検波器24で検出し、変換器15で検出した変位を電圧に変換することにより行われる。変換された電圧は、差動増幅器29で増幅された後、電圧信号として図4中の枠で囲まれた増幅装置へと送られる。
【0034】
図4には、増幅装置を枠で囲って示している。図4に示した増幅装置は、前置増幅器30、絶対値増幅器31、対数増幅器32、参照信号発生器33および積分増幅器34から構成されている。差動増幅器29で増幅された電圧信号は、ノイズを低下させ、さらに増幅を行う前置増幅器30へ出力される。また、絶対値増幅器31および対数増幅器32で増幅を重ねることによって変形した電圧信号は、積分増幅器34へと入力され、参照信号発生器33からの信号を用いて整形されるとともに増幅が行われる。積分増幅器34で積分された電圧信号は、高速電圧増幅器35へ出力され、探針3の振動の最下点において試料2にかかる力が一定となるように、台19をZ軸方向へ移動させる電圧信号をピエゾ・アクチュエータ18に与える。さらに、高速電圧増幅器35の信号は、コンピュータ・システム28に入力されて、試料2に加えられている探針3の力と、表面状態とを解析することができるようになっている。また、コンピュータ・システム28に、X軸またはY軸方向へ移動させるように入力することによって、コンピュータ・システム28からの信号が高速電圧増幅器35に入力され、高速電圧増幅器35から電圧が出力されてピエゾ・アクチュエータ18により台19をX軸またはY軸方向へと移動させることができる。
【0035】
本発明の顕微鏡装置に用いられる上述した各増幅器には、微小電圧を検出して増幅できるものであれば、従来知られているいかなる増幅器でも用いることができる。また、これらの増幅器およびレーザ・ダイオード14を用いる方法以外に、フィードバック制御できるのであればいかなる手段でも用いることができる。
【0036】
また、図4に示すブロック図内のコンピュータ・システム28には、得られた電流の大小で凹凸を解析して電流像を表示させ、またフィードバック制御系から得た電圧信号により試料2の表面を解析して試料表面の分子分布、ピンホールなどといった試料の表面像を表示させることができる解析プログラムが記録されている。この解析プログラムには、計測した電流から電流分布を画像化した電流像に変換させるための電流解析機能、電圧信号から試料の分子分布を測定するための表面形状測定機能のほか、カラー等高線機能、三次元表示機能、拡大機能、フィルタリング機能および任意回転機能を有するものであればいかなるプログラムであっても用いることができる。
【0037】
また、本発明に用いるコンピュータ・システム28においては、電流測定手段6からの電流値あるいは電圧信号を記録し、上記プログラムを記録および再生して使用することができるものであれば、いかなるものでも用いることができる。また、表示装置としては、モニターやスクリーンといった画像を拡大して表示できるものを用いることができる。コンピュータ・システム28にパーソナル・コンピュータを用いれば、1台で試料2における分子の分布を解析し、解析した分子分布をモニターにおいて拡大して表示させることができる。
【0038】
以下に本発明の顕微鏡装置についてより詳細に説明する。本発明の顕微鏡装置は、図2に示す表面状態の測定装置と、図4に示す各増幅器およびコンピュータ・システム28と、表示装置とから構成されている。図5は、本発明の顕微鏡装置の探針3部分を拡大して示した図である。図5に示す実施の形態においては、基板1は、平坦なマイカに金を真空蒸着させて原子レベルで平坦としたものを用いている。また、試料2としては、光配向熱分解グラファイト(HOPG)を用い、基板1に配置する。
【0039】
また、光配向熱分解グラファイト(HOPG)を配置した基板1は、導線5aを通して電源4から電圧が印加されている。また、図5に示した本発明の実施の形態においては、印加電圧1Vを基板1に印加し、矢線iの方向へ向けて試料2を通して電流を流す構成としている。さらに、図5に示した実施の形態では、カンチレバー20としては、白金-イリジウム合金のものを用いている。また、カンチレバー20には、圧電素子7が設けられており、図示しない電圧発生手段から入力される周波数1kHzを機械量に変換し、周波数1kHzに対応する周期で振動させている。さらに、各周期の振動の最下点において試料2に一定の力で接触するようにフィードバック制御されている。
【0040】
図5に示すように顕微鏡装置として試料表面を測定するためには、その他増幅装置36、コンピュータ・システム28および表示装置37を用いて試料の分子分布を拡大して表示させることにより試料表面を測定できるようになっている。図5に示す他増幅装置36、コンピュータ・システム28および表示装置37、さらには図示しないレーザ照射装置、変位検波装置、ピエゾ・アクチュエータ、電流測定手段といった装置なども用いられるが、上述した実施の形態で使用可能なものであればいかなるものでも用いることができる。
【0041】
図6は、上述した条件で、本発明の顕微鏡装置を用いて測定した光配向熱分解グラファイト(HOPG)を通して流れる電流と、探針3と試料との間の距離との関係を示した図である。図6に示す左側縦軸には、探針3の振幅(%)を示し、右側縦軸には、電流測定手段において測定された電流(nA)が示されている。また、横軸には、探針3と試料2との間の距離(nm)が示されている。ここで、振幅(%)とは、探針3が試料2に接触しない位置での探針3の振幅を100%として示している。図6(a)は、探針3を振動させながら試料2の位置を変化させた場合の振幅変化および測定電流値を示した図である。図6(a)に示す振幅は、基板1を設置した台をピエゾ・アクチュエータ18により上部方向へ移動させて探針3が試料2に接触することにより減衰していき、最終的に振幅が0となっている。図6(a)に示すAは、探針3が試料2に接触していない非接触領域であり、Bは、探針3が試料2に接触して探針3の振幅が減衰するタッピング領域であり、Cは、探針3の振幅が0となったコンタクト領域である。図6(a)では、Aの非接触領域においては電流を検出することはできないが、探針3が試料2と常に接した状態であるCのコンタクト領域においては、探針3と試料2との間の距離に比例して増加している。
【0042】
図6(b)は、図6(a)に示したタッピング領域を拡大して示した図である。図6(b)に示すようにタッピング領域においても、探針3が試料2に接触することにより電流を検出することができることを見出すことができた。また、探針3と試料2との距離が接近し、振幅が減衰するに従って検出される電流は加速度的に増加することを見出すことができた。
【0043】
図7は、本発明の顕微鏡装置を用いて測定した表面像と測定した電流分布を表示させた電流像とを示した図である。図7に示す実施の形態においては、試料2としてカーボンファイバ38をエポキシ樹脂39に埋め込んだものを用いた。図7に示す実施の形態では、探針3が試料2に接触した場合、導電性を有するカーボングラファイト38に電流が流れ、絶縁性のエポキシ樹脂39には電流が流れないようになっている。図7(a)は、試料2を配置した基板1に50mVを印加し、カンチレバー20にレーザ光を照射して変位をコンピュータ・システム28に入力して、基板1の表面像を表示させた図である。また、図7(b)は、図7(a)と同様に試料2を配置した基板1に50mVを印加し、探針3が接触した時に流れる電流を計測し、コンピュータ・システム28に入力して電流分布を表示させた電流像を示した図である。図7(a)に示す表面像および図7(b)に示す電流像においては、互いにカーボングラファイト38の形状が鮮明に確認することができることが示されている。また、図7(a)および図7(b)には、所定周期で探針3を振動させながら測定を行うために試料2の表面に傷などをつけることなく試料表面を測定することができていることが示されている。
【0044】
【発明の効果】
従って、本発明の電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置を提供することにより、試料に導電性の探針を振動させながら一定の力で接触させて、試料を通して探針に流れる電流を計測することで試料に流れる電流を直接計測することができる。
【0045】
また、電流を直接計測することが可能なため、試料の種類に応じて電気抵抗といった電導効率を比較することが可能となる。さらに、本発明の顕微鏡装置を用いて導電性の探針を2次元表面で操作することにより、試料を通して流れるトンネル電流と、試料表面との両方を観測することを可能にした。また、探針を一定の力かつ所定の周期で試料に接触させることができるため、生体試料などの極めて柔らかく、不均一の硬さを有する試料の電流の計測および電流計測から表面情報を得ることを可能にした。
【0046】
本発明の電流の計測方法および表面の測定装置は、電気計測器や化学計測器といった計測装置に応用が可能である。すなわち、本発明は、本発明の電流の計測方法、表面の測定装置および顕微鏡装置を提供することにより、表面の分子の分布に関する状態を明確に与えることを可能にし、電子、電気、半導体、分析触媒、分離、化学、記憶、記録の各分野、特にバイオテクノロジーの分野に対して多大な応用性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料を通して流れる電流を本発明の電流の計測方法で計測しているところを示した図。
【図2】本発明の表面の測定装置の断面図。
【図3】本発明の表面の測定装置の探針を拡大した図。
【図4】本発明の顕微鏡装置のブロックダイヤグラムを示した図。
【図5】本発明の顕微鏡装置の探針部分を拡大して示した図。
【図6】本発明の顕微鏡装置を用いて測定した光配向熱分解グラファイト(HOPG)を通して流れる電流と、探針と試料との間の距離との関係を示した図。
【図7】本発明の顕微鏡装置を用いて測定した表面像と測定した電流分布を表示させた電流像とを示した図。
【符号の説明】
1…基板
2…試料
3…探針
4…電源
5a、5b…導線
6…電流測定手段
7…圧電素子
8…電圧発生手段
9、9a…容器
9b…蓋
10…試料入口
11…蓋
12…ノズル
13…ノズル
14…レーザ・ダイオード
15…変換器
16…ビーム・セパレータ
17…窓
18…ピエゾ・アクチュエータ
19…台
20…カンチレバー
21…固定部材
22…レンズ
23…CCD
24…変位検波器
25…反射板
26…電流増幅器
27…ロックイン増幅器
28…コンピュータ・システム
29…差動増幅器
30…前置増幅器
31…絶対値増幅器
32…対数増幅器
33…参照信号発生器
34…積分増幅器
35…高速電圧増幅器
36…増幅装置
37…表示装置
38…カーボングラファイト
39…エポキシ樹脂
A…電流計
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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