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明細書 :カルシウムシリサイド薄膜の成長方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3584284号 (P3584284)
公開番号 特開2002-289627 (P2002-289627A)
登録日 平成16年8月13日(2004.8.13)
発行日 平成16年11月4日(2004.11.4)
公開日 平成14年10月4日(2002.10.4)
発明の名称または考案の名称 カルシウムシリサイド薄膜の成長方法
国際特許分類 H01L 21/36      
C01B 33/06      
C23C 14/06      
H01L 21/363     
H01L 31/04      
FI H01L 21/36
C01B 33/06
C23C 14/06 E
H01L 21/363
H01L 31/04 E
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2001-086119 (P2001-086119)
出願日 平成13年3月23日(2001.3.23)
審査請求日 平成13年3月23日(2001.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】松井 宏樹
【氏名】倉本 護
【氏名】小野 努
【氏名】野瀬 康男
【氏名】百瀬 与志美
【氏名】立岡 浩一
【氏名】桑原 弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100068814、【弁理士】、【氏名又は名称】坪井 淳
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
審査官 【審査官】渕 真悟
参考文献・文献 特開2002-201095(JP,A)
特開2001-226193(JP,A)
特開2000-269550(JP,A)
特開平09-064417(JP,A)
立岡浩一、小賀努、松田孝司、宗野能長、野瀬康男、小野努、桑原弘,"Mn,Fe,Ca及びMgシリサイドの簡便な成長と構造評価",第47回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集,2000年,P.29, 29p-YG-8
小野努、野瀬康男、小澤康行、倉本護、立岡浩一、桑原弘,"Si基板上へのCa2SiおよびMg2Si薄膜成長と評価",第47回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集,2000年,p.907, 30a-YC-1
Gunther Vogg, Martin S.Brandt, Martin Stutzmann, Martin Albrecht,"From CaSi2 to Siloxene: epitaxial silicide and sheet polymer films on silicon",Journal of Crystal Growth,1999年,Vol.203,pp.570-581
A.THOMAS, H.D.GEILER,"Formation of Ca Silicides in Insulating CaF2 Layers by Ion Implantation",Physica Status Solidi A - Applied Research,1991年,Vol.124,pp.K19-K22
J.F.Morar, M.Wittmer,"Metallic CaSi2 epitaxial films on Si(111)",Physical Review B,1988年 2月15日,Vol.37, No.5,pp.2618-2621
調査した分野 H01L 21/36
C01B 33/06
C23C 14/06
H01L 21/363
H01L 31/04
Web of Science
特許請求の範囲 【請求項1】
マグネシウムシリサイド薄膜が形成されたシリコン基板を密閉空間内でカルシウム蒸気雰囲気に曝して前記マグネシウムシリサイド薄膜のマグネシウム原子と前記蒸気化されたカルシウム原子とを置換反応させることにより前記マグネシウムシリサイド薄膜表面にカルシウムシリサイド薄膜を成長させることを特徴とするカルシウムシリサイド薄膜の成長方法。
【請求項2】
前記マグネシウムシリサイド薄膜は、シリコン基板を密閉空間内でマグネシウム蒸気雰囲気に曝して前記シリコン基板とマグネシウム蒸気とを固気反応させることにより成長されることを特徴とする請求項1記載のカルシウムシリサイド薄膜の成長方法。
【請求項3】
前記シリコン基板を密閉空間内でマグネシウム蒸気雰囲気に曝す工程は、耐熱容器内にシリコン基板とマグネシウムを共存させ、蓋で前記容器を密閉し、この蓋付容器を真空容器内に設置し、前記蓋付容器を前記固気反応が生じる温度に加熱することによりなされることを特徴とする請求項2記載のカルシウムシリサイド薄膜の成長方法。
【請求項4】
前記マグネシウムシリサイド薄膜が形成されたシリコン基板を密閉空間内でカルシウム蒸気雰囲気に曝す工程は、耐熱容器内に前記シリコン基板とカルシウム片を共存させ、蓋で前記容器を密閉し、この蓋付容器を真空容器内に設置し、前記蓋付容器を前記マグネシウムシリサイド薄膜のマグネシウム原子とカルシウム原子とが置換反応を生じる温度に加熱することによりなされることを特徴とする請求項1記載のカルシウムシリサイド薄膜の成長方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルシウムシリサイド(CaSi)薄膜の成長方法に関し、詳しくは光電変換素子への応用が可能なカルシウムシリサイド薄膜の成長方法に係る。
【0002】
【従来の技術】
半導体シリサイド材料には、生体に無害で豊富な資源の元素からなる材料が多く、環境にやさしい光電変換デバイスへの応用が期待されている。中でも、CaSiは可視領域に対応する大きなギャンドギャップを有し、可視領域光電変換デバイス、特に太陽電池への応用が期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カルシウム(Ca)は蒸気圧が高く、シリサイドを生成せずに容易に再蒸発すること、また成長されたカルシウムシリサイドには異なる組成比、異なる結晶構造を有する相が共存する。その結果、Ca:Siのモル比が2:1のカルシウムシリサイド(CaSi)の薄膜を成長することは非常に難しく、シリコン(シリコン単結晶)基板上へのCaSi単相の薄膜成長を実現した例は皆無であった。
【0004】
本発明は、シリコン基板にマグネシウムシリサイド薄膜を介してCa:Siモル比が2:1のカルシウムシリサイド(CaSi)単相の薄膜を成長する方法を提供しようとするものである。
【0005】
すなわち、本発明者らはカルシウム(Ca)と周期律表が同族(IIA族)のマグネシウム(Mg)のシリサイドはシリコン基板上にカルシウムシリサイドに比べて比較的容易にMg:Siのモル比が2:1もしくはこのモル比に近似した組成で成長できることを着目し、予めシリコン基板上に前記モル比を持つマグネシウムシリサイド薄膜を成長し、このシリコン基板を密閉空間内でカルシウム蒸気雰囲気に曝して前記マグネシウムシリサイド薄膜のマグネシウム原子とカルシウム原子とを置換反応させることによって、前記マグネシウムシリサイド薄膜表面にCa:Siのモル比が2:1のカルシウムシリサイド(CaSi)単相の薄膜を成長できることを見出した。この置換反応は、マグネシウムシリサイドの生成エネルギーがカルシウムシリサイドのそれよりも小さく、前記密閉空間内でカルシウム蒸気雰囲気に曝されると、マグネシウムシリサイドからMgが離脱し、このMgが離脱したSiに雰囲気中のCa原子が結合することによりなされるものと推定される。また、前記置換反応においてはカルシウムシリサイドの生成エネルギーが大きいために、マグネシウムシリサイド薄膜上にカルシウムシリサイド薄膜を安定的に成長できるものと推定される。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るカルシウムシリサイド薄膜の成長方法は、マグネシウムシリサイド薄膜が形成されたシリコン基板を密閉空間内でカルシウム蒸気雰囲気に曝して前記マグネシウムシリサイド薄膜のマグネシウム原子とカルシウム原子とを置換反応させることにより前記マグネシウムシリサイド薄膜表面にカルシウムシリサイド薄膜を成長させることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係るカルシウムシリサイド薄膜の成長方法において、前記マグネシウムシリサイド薄膜はシリコン基板を密閉空間内でマグネシウム蒸気雰囲気に曝して前記シリコン基板とマグネシウム蒸気とを固気反応させることにより成長することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
(第1工程)
まず、シリコン基板上にマグネシウムシリサイド薄膜を成長させる。このマグネシウムシリサイド薄膜は、Mg:Siのモル比が2:1もしくはこのモル比に近似した組成を有することが好ましい。
【0010】
前記シリコン基板は、単結晶シリコン基板が好ましい。
【0011】
前記マグネシウムシリサイド薄膜の成長は、例えば密閉空間内で前記シリコン基板をマグネシウム蒸気雰囲気に曝して前記シリコン基板とマグネシウム蒸気とを固気反応させる方法を採用することができる。このような方法により結晶構造が単一で、Mg:Siのモル比が2:1のMgSi薄膜を成長させることが可能になる。
【0012】
前記マグネシウムシリサイド薄膜の成長において、マグネシウムの供給源としては密閉空間にシリコン基板と共存させるブロック状、塊状、粒状のマグネシウム金属を用いることができる。
【0013】
前記マグネシウムシリサイド薄膜の成長において、前記マグネシウム金属を前記密閉空間で蒸気化させ、マグネシウム蒸気の雰囲気を生成するための温度は、350~410℃(マグネシウムシリサイドの成長温度)にすることが好ましい。
【0014】
前記マグネシウムシリサイド薄膜の厚さは、後述するこの薄膜のMg原子とカルシウム(Ca)原子との置換反応により成長されるカルシウムシリサイド薄膜の厚さに応じて設定すればよい。例えば、厚いカルシウムシリサイド薄膜を成長させる場合には前記マグネシウムシリサイド薄膜の厚さを厚くすればよい。ただし、前記マグネシウムシリサイド薄膜は全てカルシウムシリサイド薄膜に変換されず、一部残留するような厚さに設定することが好ましい。
【0015】
(第2工程)
前記マグネシウムシリサイド薄膜が形成されたシリコン基板を密閉空間内でカルシウム蒸気雰囲気に曝す。このとき、前記マグネシウムシリサイド薄膜のマグネシウム原子と蒸気化により生成されたカルシウム原子とが置換反応を起こして、前記マグネシウムシリサイド薄膜表面にCa:Siのモル比が2:1のカルシウムシリサイド(CaSi)単相の薄膜が成長される。
【0016】
なお、この第2工程で前記マグネシウムシリサイド薄膜のMg原子がCa原子で全て置換されて、カルシウムシリサイドが直接シリコン基板上で成長されるようになると、カルシウムシリサイド薄膜とシリコンとの間で相互拡散が起こり、CaSiと異なる組成比を有するカルシウムシリサイド相が生成されるために好ましくない。換言すれば、前記マグネシウムシリサイド薄膜の厚さをCaSi薄膜の成長後にも残留する厚さに設定することにより、Ca:Siのモル比が2:1のカルシウムシリサイド(CaSi)単相の薄膜を再現性よく成長させることが可能になる。
【0017】
前記CaSi薄膜の成長において、カルシウムの供給源としてはブロック状、塊状、粒状のカルシウム金属を用いることができ、このカルシウム金属は前記密閉空間にマグネシウムシリサイド薄膜が形成されたシリコン基板と共存して配置される。
【0018】
前記CaSi薄膜の成長において、前記カルシウム金属を前記密閉空間で蒸気化させ、カルシウム蒸気の雰囲気を生成するための温度は、400~600℃(カルシウムシリサイドの成長温度)にすることが好ましい。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を説明する。
【0020】
まず、容積1Lの耐熱容器(例えば耐熱ガラス容器)内に1cmの単結晶シリコン基板とブロック状マグネシウム0.3gを共存させ、この耐熱ガラス容器の開口部に蓋を取り付けて前記容器内を密閉空間とした。つづいて、この蓋付耐熱ガラス容器を真空容器内に設置し、前記真空容器内のガスを排気して10-5Torrの真空度にした後、前記蓋付耐熱ガラス容器内を370℃に加熱し、この温度で3時間保持することにより前記単結晶シリコン基板上に厚さ約70μmのMgSi薄膜が成長された。
【0021】
次いで、容積1Lの耐熱容器(例えば耐熱ガラス容器)内に前記MgSi薄膜が形成された単結晶シリコン基板とブロック状カルシウム0.2gを共存させ、この耐熱ガラス容器の開口部に蓋を取り付けて前記容器内を密閉空間とした。つづいて、この蓋付耐熱ガラス容器を真空容器内に設置し、前記真空容器内のガスを排気して10-5Torrの真空度にした後、前記蓋付耐熱ガラス容器内を600℃に加熱し、この温度で2時間15分間保持した。
【0022】
このような処理後に成長した薄膜を含む単結晶シリコン基板の断面を電子顕微鏡により観察したところ、図1に示す電子顕微鏡写真が得られた。
【0023】
図1から明らかなように単結晶シリコン基板上のMgSi薄膜表面にCa:Siのモル比が2:1のCaSi薄膜が成長されていることが確認された。なお、前記MgSi薄膜およびCaSi薄膜の厚さは、それぞれ50μm、20μmであった。
【0024】
また、X線回折測定(XRD)により前記単結晶シリコン基板を含む薄膜の構造解析を行ったところ、図2に示すX線回折スペクトル図が得られた。
【0025】
図2から明らかなように結晶構造が単一で、Mg:Siのモル比が2:1のMgSi単相およびCaSi単相の生成を示す回折ピークが観測された。
【0026】
このような図1、図2より、下地であるMgSi単相の薄膜の存在がCaSiと異なる組成比を持つカルシウムシリサイドの生成を抑制し、結果としてCaSi単相の薄膜を成長できることが確認された。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によればシリコン基板にマグネシウムシリサイド薄膜を介してCa:Siのモル比が2:1のカルシウムシリサイド(CaSi)単相の薄膜を成長でき、太陽電池、発光ダイオードのような光電変換素子に有効に応用することができる等顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】成長した薄膜を含む単結晶シリコン基板断面を示す電子顕微鏡写真。
【図2】XRDスペクトル図。
図面
【図1】
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【図2】
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