TOP > 国内特許検索 > マグネシウムシリサイドの合成方法および熱電素子モジュールの製造方法 > 明細書

明細書 :マグネシウムシリサイドの合成方法および熱電素子モジュールの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3772206号 (P3772206)
公開番号 特開2004-018274 (P2004-018274A)
登録日 平成18年2月24日(2006.2.24)
発行日 平成18年5月10日(2006.5.10)
公開日 平成16年1月22日(2004.1.22)
発明の名称または考案の名称 マグネシウムシリサイドの合成方法および熱電素子モジュールの製造方法
国際特許分類 C01B  33/06        (2006.01)
H01L  35/14        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
FI C01B 33/06
H01L 35/14
H01L 35/34
請求項の数または発明の数 14
全頁数 10
出願番号 特願2002-171339 (P2002-171339)
出願日 平成14年6月12日(2002.6.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第49回応用物理学関係連合講演会で発表
審査請求日 平成14年6月12日(2002.6.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】細野 徹朗
【氏名】倉本 護
【氏名】松沢 勇介
【氏名】百瀬 与志美
【氏名】立岡 浩一
【氏名】桑原 弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開平08-056020(JP,A)
特開2001-223396(JP,A)
特開2001-048517(JP,A)
調査した分野 C01B 33/00-33/193
JSTPlus(JOIS)
CA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
Si塊を所望の形状に加工する工程と、
前記加工されたSi塊にp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、
前記Si塊の前記p型予定領域に、p型ドーパントを選択的に導入してp型領域を形成する工程と、
前記Si塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱する工程と
を具備することを特徴とするマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項2】
前記Si塊の前記p型予定領域にp型ドーパントを導入するとともに、前記Si塊の前記n型予定領域にn型ドーパントを導入することを特徴とする請求項1に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項3】
Si塊を所望の形状に加工する工程と、
前記加工されたSi塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱してマグネシウムシリサイドを得る工程と、
前記マグネシウムシリサイドにp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、
前記マグネシウムシリサイドの前記p型予定領域にp型ドーパントを選択的に導入して、p型領域を形成する工程と
を具備することを特徴とするマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項4】
前記マグネシウムシリサイドの前記p型予定領域にp型ドーパントを導入するとともに、前記マグネシウムシリサイドの前記n型予定領域にn型ドーパントを導入することを特徴とする請求項に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項5】
前記ドーパントは、真空蒸着法または塗布法により導入されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項6】
前記p型ドーパントはCuおよびAgからなる群から選択されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項7】
前記n型ドーパントはSbであることを特徴とする請求項2または4に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項8】
前記Si塊のマグネシウム雰囲気の真空中での加熱は、前記Si塊をマグネシウム金属とともに真空容器内で加熱することにより行なわれることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項9】
前記真空容器内での加熱は、200℃以上1102℃以下の温度で行なわれることを特徴とする請求項8に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項10】
前記真空容器内での加熱は、1.5時間以上行なわれることを特徴とする請求項8または9に記載のマグネシウムシリサイドの合成方法。
【請求項11】
交互に接続されたp型およびn型の領域を有するマグネシウムシリサイドを具備する熱電素子モジュールの製造方法であって、
Si塊を前記モジュールの形状に加工する工程と、
前記加工されたSi塊にp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、
前記Si塊の前記p型予定領域に、p型ドーパントを選択的に導入してp型領域を形成する工程と、
前記Si塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱して、選択的に形成されたp型領域を有するマグネシウムシリサイドを得る工程と
を具備することを特徴とする製造方法。
【請求項12】
前記Si塊の前記p型予定領域にp型ドーパントを導入するとともに、前記Si塊の前記n型予定領域にn型ドーパントを導入することを特徴とする請求項11に記載の熱電素子モジュールの製造方法。
【請求項13】
交互に接続されたp型およびn型の領域を有するマグネシウムシリサイドを具備する熱電素子モジュールの製造方法であって、
Si塊を前記モジュールの形状に加工する工程と、
前記加工されたSi塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱してマグネシウムシリサイドを得る工程と、
前記マグネシウムシリサイドにp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、
前記マグネシウムシリサイドの前記p型予定領域にp型ドーパントを選択的に導入して、p型領域を形成する工程と
を具備することを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記マグネシウムシリサイドの前記p型予定領域にp型ドーパントを導入するとともに、前記マグネシウムシリサイドの前記n型予定領域にn型ドーパントを導入することを特徴とする請求項13に記載の熱電素子モジュールの製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウムシリサイドの合成方法に係り、特にp型またはn型に伝導型が制御され、所望の形状を有するマグネシウムシリサイドを合成する方法、および熱電素子モジュールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の固体熱電変換デバイスに使用されているビスマステルル系材料は、熱的に不安定であり、使用可能な温度が200℃前後以下と限られるため、高温の熱源を用いた廃熱発電には利用することができない。一方、鉄シリサイドおよびマンガンシリサイド系材料は、熱的に安定であるものの熱電変換効率が低く、実用的でない。マグネシウムシリサイド系材料は、熱的にも安定で熱電変換効率も高く、期待される材料である。しかしながら、生成・加工が困難であることに加え、活性なMgを含むために発火のおそれがあることから、その実用化が進んでいない。
【0003】
エネルギー枯渇、地球温暖化防止、オゾン層破壊防止対策として高効率の熱電変換デバイスの開発が急がれているにもかかわらず、高温の熱源を用いた廃熱発電用材料開発およびプロセス開発がなされていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、伝導制御された所望の形状のマグネシウムシリサイドを、簡便で安価に合成する方法、および高効率の熱電素子モジュールを安全かつ簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様にかかるマグネシウムシリサイドの合成方法は、Si塊を所望の形状に加工する工程と、前記加工されたSi塊にp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、前記Si塊の前記p型予定領域に、p型ドーパントを選択的に導入してp型領域を形成する工程と、前記Si塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱する工程とを具備することを特徴とする。
本発明の他の態様にかかるマグネシウムシリサイドの合成方法は、Si塊を所望の形状に加工する工程と、前記加工されたSi塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱してマグネシウムシリサイドを得る工程と、前記マグネシウムシリサイドにp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、前記マグネシウムシリサイドの前記p型予定領域にp型ドーパントを選択的に導入して、p型領域を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様にかかる熱電素子モジュールの製造方法は、交互に接続されたp型およびn型の領域を有するマグネシウムシリサイドを具備する熱電素子モジュールの製造方法であって、Si塊を前記モジュールの形状に加工する工程と、前記加工されたSi塊にp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、前記Si塊の前記p型予定領域に、p型ドーパントを選択的に導入してp型領域を形成する工程と、前記Si塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱して、選択的に形成されたp型領域を有するマグネシウムシリサイドを得る工程とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の他の態様にかかる熱電素子モジュールの製造方法は、交互に接続されたp型およびn型の領域を有するマグネシウムシリサイドを具備する熱電素子モジュールの製造方法であって、Si塊を前記モジュールの形状に加工する工程と、前記加工されたSi塊をマグネシウム雰囲気の真空中で加熱してマグネシウムシリサイドを得る工程と、前記マグネシウムシリサイドにp型予定領域およびn型予定領域を画定する工程と、前記マグネシウムシリサイドの前記p型予定領域にp型ドーパントを選択的に導入して、p型領域を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のマグネシウムシリサイドの合成方法は、雰囲気中のマグネシウムとバルク中のSiとの相互拡散によって、Mg2Siを生成することを特徴とするものである。ドーパントを添加しない場合には、得られるMg2Siはn型となり、n型ドーパントを添加することによってドナー密度を制御することができる。一方、p型ドーパントを添加した場合には、p型のMg2Siを合成することが可能である。
【0010】
本発明のマグネシウムシリサイドの合成方法においては、所望の形状に加工されたSi塊が用いられる。例えば、長さが数mmから数cm程度の棒状やU字状などとすることができ、加工に当たっては、Si塊を所望の形状に切断し得る任意の手法を用いることができる。例えば、ワイヤーソウ、デスクカッター、通常のカッターナイフなどを用いることができる。所望される形状に曲線部がなく、Si塊が薄い場合には、半導体基板のカットに使用されるダイサーを用いてもよい。
【0011】
所望の形状に加工されたSi塊はマグネシウム雰囲気中で加熱され、SiとMgとの相互拡散によってMg2Siが合成される。
【0012】
マグネシウム雰囲気中での加熱は、例えば、加工されたSi塊をMg金属とともに真空容器中で加熱することによって行なうことができる。具体的には、図1に示す石英製の蓋付き容器(準閉管容器)1内に、Mg金属2とともにSi塊3を充填し、真空装置(図示せず)内で熱処理を行なう。あるいは、通常の真空封入されたアンプルを用いた場合にも、同様の手法によりMg2Siを成長させることが可能である。
【0013】
熱処理温度は、Mgが真空中で蒸発し始める200℃付近から、Mg2Siの融解温度である1102℃程度までの範囲内とすることができる。例えば、Mgの蒸気圧が10-4Torr程度となる350℃以上の温度で熱処理することによって、Mgを十分に蒸発させてMg2Siを成長させることができる。
【0014】
熱処理時間は、熱処理温度に応じて適宜決定することができ、例えば370℃の場合には、1.5時間以上の加熱を行なうことによってMg2Siを顕著に成長させることができる。なお、処理時間が長いほど、多くのMg2Siが成長するので、実用的な範囲で決定することが望まれる。
【0015】
Mg金属とともに加熱する以外にも、種々の手法を採用してSi塊をマグネシウム雰囲気中で加熱し、Mg2Siを成長させることができる。例えば、大型の容器にMg金属とSi塊とを距離を隔てて配置し、それぞれを別の温度で加熱する。この場合には、Mg雰囲気の圧力、およびMgとSiとの反応速度を独立に制御することが可能となるため、より高い品質のMg2Siを合成することができる。
【0016】
また、Mg化合物やMgを含有する気体を真空容器内に導入して、Si塊とともに加熱してもよい。さらに、通常の真空蒸着でもMg2Siを合成することが可能である。
【0017】
マグネシウム雰囲気中で加熱されるSi塊にドーパントが導入されていない場合には、得られるMg2Siはn型となる。Si塊にn型ドーパントを導入することによって、得られるn型Mg2Siのドナー密度を制御することができる。n型ドーパントとしては、例えばSbが挙げられ、場合によっては他のn型ドーパントを添加してもよい。一方、p型Mg2Siを成長する場合には、p型ドーパントとしてのCuまたはAgを、Si塊の全体または一部に導入すればよい。
【0018】
ドーパントの導入には、Si塊の表面あるいは内部に一定量で導入可能な任意の方法を用いることができる。導入されるドーパントの量は特に限定されるものではなく、適切な伝導度を得ることのできる程度の量であれば十分である。
【0019】
例えば、真空蒸着法による薄膜形成や、銀ペーストのような揮発性溶液に微粒子や粉末を混合した液を塗布する等の方法が挙げられる。いずれの手法を用いても、Si塊表面あるいは内部に所定のドーパントを簡便に導入することができるので好ましい。
【0020】
設備が大がかりとなっても問題ない場合には、熱拡散法やイオン注入法により、Si塊内にドーパントを添加することもできる。また、すでにn型ドーパントとしてのSbが添加された基板を用いてもよい。
【0021】
Si塊へのドーパントの導入は、マグネシウム雰囲気中での加熱前または後のいずれに行なってもよく、Si塊を所望の形状に加工する前に、所定のドーパントを導入することもできる。また、Si塊の一部に選択的にp型ドーパントを導入し、残りの領域にn型ドーパントを導入することもできる。こうして2種類のドーパントが導入されたSi塊をマグネシウム雰囲気中で加熱することによって、p型領域とn型領域とを有するMg2Si、すなわち熱電素子を容易に製造することができる。
【0022】
本発明の方法により合成されたマグネシウムシリサイドを用いて、高効率の熱電素子モジュールを製造することができる。
【0023】
図2を参照して、その一例を説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる熱電素子モジュールの製造方法を説明する概略図である。
【0024】
まず、Si塊を上述したような手法により図2(a)に示すような一辺が1~100mm程度の適当な大きさに加工して、複数個を準備する。その形状は、例えば、立方体状、円柱状、および菱形状など任意とすることができ、また、その寸法は、周囲の温度環境等に応じて適宜決定すればよい。次いで、p型ドーパントまたはn型ドーパントをそれぞれのSi塊に導入し、マグネシウム雰囲気中での加熱を行なって所定の伝導型のMg2Siを得る。なお、すでに説明したように、n型ドーパントは特に導入しなくともn型のMg2Siを得ることができる。図2(a)においては、p型Mg2Siおよびn型Mg2Siを、それぞれ5aおよび5bで表わしている。
【0025】
p型Mg2Si(5a)およびn型Mg2Si(5b)を、図2(b)に示すようにコンタクト6で接続して交互に配置し、支持体7を設けることによって、熱電素子モジュール8が得られる。
【0026】
あるいは、完成モジュールの形状に予め加工されたSi塊を用いて、本発明の方法により熱電素子モジュールを製造することもできる。
【0027】
図3は、本発明の他の実施形態にかかる熱電素子モジュールの製造方法を説明する概略図である。
【0028】
まず、図3(a)に示すようにU字状に加工されたSi塊10を用意する。Si塊の形状は、コの字状やV字状等としてもよい。このSi塊の所定の領域10aには、図3(b)に示すようにp型ドーパントとしてのCuまたはAgの薄膜を形成し、パターニングする。必要に応じて、残りの領域10bにn型ドーパントとしてのSbの薄膜をパターニングしてもよいが、n型ドーパントを特に導入しなくともn型領域が得られる。
【0029】
次いで、マグネシウム雰囲気中で熱処理することによって、図3(c)に示すような一対のp型Mg2Si(11a)とn型Mg2Si(11b)とからなる熱電素子モジュール12が得られる。
【0030】
Si塊の所定の領域へのドーパントの導入は、マグネシウム雰囲気中での加熱前のみならず、加熱後に行なってもよい。
【0031】
本発明の方法を用いることによって、予め加工されたSi塊の形状のままMg2Siを作製することが可能となる。このため、通常の焼成工程を行なうことなく、所望の複雑な形状のMg2Siを容易に作製することができる。また、ドーパントの添加は、真空蒸着による薄膜形成や、表面への塗布という簡単な方法で行なうことができる。このため、p型領域およびn型領域の両方を有するMg2Si塊を作製することができ、熱電素子モジュールを容易に製造することが可能となった。
【0032】
さらに、シリコン塊を予め図4に示すような形状に加工し、所定の領域に所定のドーパントを添加し、マグネシウム雰囲気中で加熱することによって、複数のpn対(11a,11b)が直列接続された熱電素子モジュール13を容易に作製することができる。
【0033】
【実施例】
以下、具体例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
まず、シリコン塊をワイヤーソウによりU字状に加工し、Mg金属とともに準閉管容器に収容した。これを真空容器中、370℃で14時間の熱処理をすることによりマグネシウム雰囲気中で加熱して、Mg2Siを成長させた。得られたMg2SiのX線回折スペクトルを図5に示す。
【0035】
図5から明らかなように、多結晶ではあるがMg2Siのみ成長しており、他の組成比を有する化合物の存在は認められない。このMg2Siは、as-grownにおいてn型であることが、ホール効果測定により明らかになった。このとき、室温での電子密度は約1017cm-3であり、ホール移動度は約200cm2/V.sであった。
【0036】
マグネシウム雰囲気中での加熱時間を2時間15分とした以外は、前述と同様の手法によりMg2Siを成長させた。得られたMg2SiのX線回折スペクトルを、図6(a)に示す。
【0037】
図6(a)から明らかなように、多結晶ではあるがMg2Siのみ成長しており、他の組成比を有する化合物の存在は認められない。このMg2Siは、as-grownにおいてn型であることが、ホール効果測定により明らかになった。このとき、室温での電子密度は8×1016cm-3であり、ホール移動度は200cm2/V.sであった。
【0038】
次に、前述と同様に加工されたシリコン塊をマグネシウム雰囲気中で熱処理する前に、p型ドーパントとしてのCuを予め真空蒸着した。このシリコン塊をMg金属とともに準閉管容器に収容し、真空容器中、370℃で72時間の熱処理をすることによりMg2Siを成長させた。得られたMg2SiのX線回折スペクトルを、図6(b)に示す。
【0039】
さらに、前述と同様に加工されたシリコン塊をマグネシウム雰囲気中で熱処理する前に、p型ドーパントとしてのAgペーストを塗布した。このシリコン塊をMg金属とともに準閉管容器に収容し、真空容器中、370℃で72時間の熱処理をすることによりMg2Siを成長させた。得られたMg2SiのX線回折スペクトルを、図6(c)に示す。
【0040】
いずれの場合にも、図5および図6(a)と同様、Mg2Siが成長していることが確認された。また、成長したMg2Siは、p型を示すことがホール効果測定によって明らかになった。Cu添加Mg2Siの場合、室温における正孔密度およびホール移動度は、それぞれ1×1016cm-3および20cm2/V.sであった。Ag添加Mg2Siの場合には、室温における正孔密度およびホール移動度は、それぞれ2×1016cm-3および70cm2/V.sであった。
【0041】
以上の例では、マグネシウム雰囲気中での加熱前のSi塊にドーパントを導入したが、加熱後にドーパントを導入することもできる。
【0042】
前述と同様の形状に加工したシリコン塊を、Mg金属とともに準閉管容器に収容し、真空容器中、370℃で72時間の熱処理をすることによりMg2Siを成長させた。得られたMg2SiにAgペーストを塗布し、500℃で96時間熱処理したところ、p型のMg2Siを製造することができた。
【0043】
なお、マグネシウム雰囲気中での熱処理条件を改善することによって、より高品質な電気特性を有するMg2Siの作製が可能である。例えば、Mg金属の温度で律せられるMg蒸気圧とSiの温度で律せられるMg2Siの生成速度を独立に制御することによって、結晶品質、電気特性、熱電特性のより優れたMg2Siを合成することが可能となる。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の一態様によれば、伝導制御された所望の形状のマグネシウムシリサイドを、簡便で安価に合成する方法が提供される。また本発明の他の態様によれば、高効率の熱電素子モジュールを安全かつ簡便に製造する方法が提供される。
【0045】
本発明の方法を用いることによって、Si塊の原型を保持したままMg2Siを作製できるため、複雑な形状を有するMg2Si型熱電素子を作製することが可能となる。こうして得られたMg2Si型熱電素子は、固体冷却器、廃熱発電機などの熱電変換素子等の多くの用途に好適に用いることができ、その工業的価値は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるマグネシウムシリサイドの合成方法に用いられる準閉管容器を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる熱電素子モジュールの製造方法を説明する概略図。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる熱電素子モジュールの製造方法を説明する概略図。
【図4】本発明の他の実施形態にかかる熱電素子モジュールの製造方法を説明する概略図。
【図5】実施例の方法により合成されたマグネシウムシリサイドのX線回折スペクトル図。
【図6】実施例の方法により合成されたマグネシウムシリサイドのX線回折スペクトル図。
【符号の説明】
1…準閉管容器
2…Mg金属
3…Si塊
5a…p型Mg2Si
5b…n型Mg2Si
6…コンタクト
7…支持体
8…熱電素子モジュール
10…加工されたSi塊
10a…p型Mg2Si形成領域
10b…n型Mg2Si形成領域
11a…p型Mg2Si
11b…n型Mg2Si
12,13…熱電素子モジュール
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5