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明細書 :大面積負イオン源

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3653547号 (P3653547)
公開番号 特開2004-030962 (P2004-030962A)
登録日 平成17年3月11日(2005.3.11)
発行日 平成17年5月25日(2005.5.25)
公開日 平成16年1月29日(2004.1.29)
発明の名称または考案の名称 大面積負イオン源
国際特許分類 H01J 27/18      
H01J 37/08      
H01L 21/3065    
H05H  1/46      
FI H01J 27/18
H01J 37/08
H05H 1/46 B
H05H 1/46 C
H01L 21/302 101D
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2002-181340 (P2002-181340)
出願日 平成14年6月21日(2002.6.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第49回応用物理学関係連合講演会(平成14年3月27日~30日、東海大学湘南校舎)に於いて発表
審査請求日 平成14年6月21日(2002.6.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】三重野 哲
【氏名】鶴田 修一
個別代理人の代理人 【識別番号】100092923、【弁理士】、【氏名又は名称】石垣 達彦
審査官 【審査官】村田 尚英
参考文献・文献 特開平01-225042(JP,A)
特開平11-354067(JP,A)
特開平11-354462(JP,A)
特開2000-164580(JP,A)
調査した分野 H01J 27/18
特許請求の範囲 【請求項1】
一方向に長く形成され内部を真空引きされる真空容器と、上記真空容器の外周に設けられ上記真空容器内の長手方向に沿って磁場を形成する磁場発生手段と、上記真空容器内に負性ガスを供給する供給手段と、上記真空容器内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、上記真空容器内の後部側に配置され多数の孔が穿設された孔付き遮蔽板と、真空容器の終端に設けたグリッド状加速電極と、を具備したことを特徴とする大面積負イオン源。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体メモリーなどのプラズマエッチングに使用される大面積負イオン源に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、反応性プラズマを用いて集積回路の微細プラズマエッチングが行われている。上記反応性プラズマを用いる微細プラズマエッチング方法の場合、集積回路の加工サイズが0.1μm以下になると、エッチング基板に蓄積する正イオンが大きな電場を発生し、これが絶縁破壊を生じさせて、基板に孔を開けてしまい、製品の歩留まりが悪くなるという問題がある。
【0003】
この正電荷の効果を取り除くためには、大面積負イオンビームを用いた微細プラズマエッチングが有利である。この場合、基板に入射した負イオンからは、容易に電子が脱離して正電荷と結合し中和されるので、電荷蓄積の効果がほとんどなく、絶縁破壊が起きないので、製品の歩留りを良くすることが可能となる。
【0004】
従来、負イオンビーム用の負イオン源としては、アルカリ金属を触媒に使って負イオンを生成するアルカリ金属導入型負イオン源や磁気フィルター型負イオン源が開発されている。
【0005】
しかし、上記アルカリ金属導入型負イオン源の場合には、そもそも半導体プロセスにはアルカリ金属が含まれないとの条件があり適用できないものであり、磁気フィルター型負イオン源の場合には、密度が薄く半導体プロセスのように高密度であるとの条件に適合しない等いずれも不十分であるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、大面積で高密度であり且つ定常的に負イオンを生成することができる大面積負イオン源を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1記載の大面積負イオン源は、一方向に長く形成され内部を真空引きされる真空容器と、上記真空容器の外周に設けられ上記真空容器内の長手方向に沿って磁場を形成する磁場発生手段と、上記真空容器内に負性ガスを供給する供給手段と、上記真空容器内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、上記真空容器内の後部側に配置され多数の孔が穿設された孔付き遮蔽板と、真空容器の終端に設けたグリッド状加速電極と、を具備したことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】
上記請求項1記載の大面積負イオン源の場合には、真空引きした真空容器内に定常磁場を作り、内部に負性ガスを供給してマイクロ波を照射する。電子サイクロトロン共鳴によりフッ化炭素などの負性ガスを放電させ磁化プラズマを作る。磁化プラズマは磁極線に沿って流れる性質があり、真空容器内の後部側に配置した孔付き遮蔽板の孔からストリングプラズマが放出される。このストリングプラズマは負イオンと正イオンにより成り立っているが、ストリングプラズマの周囲に負イオンが染み出してくる性質がある。これらストリングプラズマを適切な間隔で多数発生させることにより、周囲に高密度の負イオンを蓄積させることが可能となる。よって、この原理を利用し、真空容器の容量、孔付き遮蔽板の面積、孔の数などによって大面積、且つ高密度の負イオンを定常的に作ることができる。そして、この負イオンを真空容器の終端に設けたグリッド状加速電極によって電場加速するにより定常的に負イオンビームとして取り出すことが可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図1~図8を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。図5、図6は本発明の負イオン源の構成を示している。また、図1は、ストリングプラズマSPの周囲に負イオンMが染み出した状態を示し、図4は多数のストリングプラズマSPの周囲に負イオンが蓄積し大面積負イオンMを生成する状況を示している。本発明の負イオン源は、ステンレス製で一方向に長い円筒状の真空容器1から構成されている。上記真空容器1の外周に長手方向に沿って磁場発生手段3としてのソレノイドコイル3a、3bを環状に配置し、上記ソレノイドコイル3a、3bの働きにより長手方向に直線の磁場を作る。
【0010】
また、真空容器1は前後2箇所でターボ分子ンプPと接続され、内部が真空引きされる。また、真空容器1には負性ガスであるフッ化炭素CF4 を供給する負性ガス供給手段5が設けられる。真空容器1の図中右側部分は、ソレノイドコイル3aによる低磁場部分が作られ、また、マイクロ波を石英ガラス7ごしに照射するマイクロ波照射手段9が設けられている。上記マイクロ波照射手段9により真空容器1の図中右側部分にマイクロ波の電場を作り、その中にフッ化炭素ガスCF4 を入れるとフッ化炭素CF4 が電離され、放電が起きる。この領域が電子サイクロトロン共鳴領域ECRであり、フッ化炭素CF4 のプラズマを発生させることができる。
【0011】
上記真空容器1の後部側には多数の孔13を穿った孔付き遮蔽板11が配置されている。発生したプラズマは磁力線に沿って流れる性質があり、図中左側に流れ、この孔13から左側へストリングプラズマSPが流出する。ストリングプラズマSP自身は電子、負イオンなどが混在するものであるが、図1に示すように、ストリングプラズマSPの周囲には負イオンMが染み出してくるという性質があり、図4に示すように、多数のストリングプラズマSPの周囲に負イオンMが蓄積し、大面積の負イオンMが生成される。真空容器1の終端には金属製グリッド15が設けられ、電場加速により負イオンMを加速してイオンビームとして取り出すことが可能となる。
【0012】
以上の構成を基にその作用を説明する。真空容器1の始端側は電子サイクロトロン共鳴領域ECRであり、まず、真空容器1内をターボ分子ボンプPにより真空引きして高度の真空状態とする。真空容器1内にはその周囲に長手方向に沿って環状に配置されたソレノイドコイル3a、3bにより長手方向に直線の磁場が作られる。真空容器1の図中右側部分は、ソレノイドコイル3aによる低磁場部分が形成される。この部分にマイクロ波照射手段9によりマイクロ波を石英ガラス7ごしに照射し、マイクロ波の電場を作る。そして、真空容器1内に負性ガス供給手段5によりフッ化炭素CF4 を供給する。こうするとフッ化炭素CF4 が電離され、放電が起きる。この工程が電子サイクロトロン共鳴であり、電子サイクロトロン共鳴領域ECRにフッ化炭素CF4 のプラズマが発生する。
【0013】
発生したプラズマは磁力線に沿って流れる性質があり、図中左側に流れる。真空容器1の後部側には多数の孔13を穿った孔付き遮蔽板11が配置されている。この孔13から左側へ糸状をなすストリングプラズマSPが流出する。ストリングプラズマSP自身は電子、負イオンなどが混在するものであるが、図1に示すように、ストリングプラズマSPの周囲には負イオンMが染み出てくるという性質があり、図4に示すように、多数のストリングプラズマプラズマSPを集積させれば、各ストリングプラズマSPの周囲に負イオンMが集積されて、それらが大面積の負イオンMを形成する。
【0014】
この負イオンMは、真空容器1の終端に設けたグリッド状加速電極15に電圧をかけ、電場加速により負イオンMを加速してイオンビームとして取り出され、反応性プラズマを用いる微細プラズマエッチング等に使用されることになる。
【0015】
次に実施例により本発明を説明する。
(実験条件)
上記負イオン源の実験条件は以下のように設定した。
真空容器:直径20cmφ×2m
磁束密度:負イオン部で0.19T(テスラー)、電子サイクロトロン共鳴部分で0.088T
ガス:フッ化炭素CF4,圧力p=0.2Torr~2mTorr
マイクロ波:2.45GHz,パワーP RF =0~250W
孔付き遮蔽版:ステンレスSUS304製 直径200mm、穴の直径20mm、穴の数10個、穴間の距離60mm。
プラズマ柱:20cmφ×l56cm
負イオン蓄積部:20cmφ×l45cm
【0016】
(負イオン測定法)
加熱可能なタンタルワイヤー型ラングミュアプローブ(直径0.2mm,長さ3.1mm)にて図5中に表示した位置で測定。
電子飽和電流Jesはバイアス電圧-30Vで測定。
正イオン飽和電流Jisはバイアス電圧+30Vで測定。
【0017】
(実験結果)
まず、図1は、直線磁場中でストリングプラズマを作った時、CF4 などの負性ガスを導入すると、正イオン-負イオンプラズマができ、プラズマの周囲に負イオンが蓄積することを示す概念図である。このことを実証するのが図2で、放電電圧Vd=38V,放電電流ld=0.20A,CF4ガス圧力p=0.27mTorrという条件にて熱電子放出の熱陰極放電によりCF4 ガスを放電させ、ストリングプラズマを発生させ、r=-1~1cmのプラズマ周辺の電子密度と負イオン密度の径方向分布を示した。図2によれば、中央のプラズマ柱部分には電子が高密度で存在し、周囲のプラズマのない部分には負イオンMの蓄積が見られる。さらに、図2と同じプラズマ条件にて、このプラズマの正負イオンをサイクロトロン共鳴質量分析器で測定した結果が図3である。図3によれば正イオンはCF3 +イオン、負イオンは、F-イオンである。
【0018】
次に、図7はCF4 ガス圧力p=1.85mTorr,マイクロ波パワーPRF=160Wという条件下にて、マルチストリングプラズマ内での電子飽和電流 (丸)とイオン飽和電流(四角)の径方向分布をラングミュアプローブで取った結果である。通常の場合、観測地点に電子が存在している時には、電子飽和電流がイオン飽和電流に比較して数十倍に増えるという性質がある。しかし、負イオンのみが存在している場合、負イオン飽和電流と正イオン飽和電流が同じ値をとる。図7によれば、電子飽和電流とイオン飽和電流の絶対値がほとんど変わらないことが見て取れる。従って、観測地点は主に負イオンによって構成されていることがわかる。
【0019】
更に、図7の結果から負イオンの密度を計算することができ、計算した結果が図8である。およそ2~4×10の8乗程度の密度の負イオンが、プラスマイナス10センチの間に蓄積されているというデータが得られた。今回実施した図5、6の装置によって生成した負イオンの密度は108 ~109 cm-3であるが、ECRプラズマ密度などを上げることにより更に高密度の負イオンの発生が可能である。
【0020】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。まず、電子サイクロトロン共鳴磁化プラズマ装置に孔付き遮蔽板11を取り付け、マルチストリングプラズマSPを定常的に生成することができる。また、生成したマルチストリングプラズマSPの周囲に定常的に負イオンMを蓄積することができる。よって、真空容器1の容量、孔付き遮蔽板11の面積、孔13の数などによって大面積、且つ高密度の負イオンを定常的に作ることができる。この負イオンを加速電極などによって電場加速することにより定常的に負イオンビームとして取り出すことが可能である。また、アルカリ金属導入型負イオン源のようにアルカリ金属を使用しないので半導体プロセス等に適したものであり、また、磁気フィルター型負イオン源のように密度が薄いものに比べ、大面積で且つ高密度のイオンビームを定常的に生成することができる。
【0021】
本発明の負イオン源は、上記第1の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で適宜変更できることは勿論である。例えば、上記実施形態の場合、負イオン密度は108 -109 cm-3であるが、ECRプラズマ密度を上げることにより更に高密度の負イオン発生が可能である。さらに、負イオン源の直径は20センチであるが、真空容器の直径を大きくすることにより、さらに大面積にすることができる。
【0022】
また、負性ガスとしては、フッ化炭素のほか、塩素、臭素、酸素を使用でき、この場合にも本発明の負イオン源により、負イオンを定常的に発生させることができる。また、本発明の負イオン源を使用して、フラーレン負イオンビームを作ることも可能であり、ダイヤモンドなどの炭素薄膜合成に用いることも可能である。
【0023】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の大面積負イオン源によると、まず、ECR磁化プラズマ装置を使用してマルチストリングプラズマを定常的に生成することができる。また、生成したマルチストリングプラズマの周囲に定常的に負イオンを蓄積することができる。よって、真空容器の容量、孔付き遮蔽板の面積、孔の数などによって任意の大面積、且つ高密度の負イオンを定常的に作ることができる。また、この負イオンをグリッド状加速電極によって電場加速することにより定常的に負イオンビームとして取り出すことが可能となる。
【0024】
また、本発明の大面積負イオン源はアルカリ金属導入型負イオン源のようにアルカリ金属を使用しないので半導体プロセス等に適したものであり、また、磁気フィルター型負イオン源のように密度が薄いものに比べ、大面積で且つ高密度のイオンビームを定常的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ストリング状磁化プラズマの周囲に負イオンが蓄積する状態を示す斜視図である。
【図2】 ストリングプラズマ周辺の電子密度と負イオン密度の径方向分布を示す図である。
【図3】 プラズマの正負イオンをサイクロトロン共鳴質量分析器で測定した結果を示す図である。
【図4】 直線磁場中で多数のストリング状磁化プラズマの周囲に負イオンが蓄積した状態を示す斜視図である。
【図5】 本発明の第1の実施形態を示す図で、大面積負イオン源の構成を示す断面図である。
【図6】 孔付き遮蔽板の正面図である。
【図7】 マルチストリングプラズマ内での電子飽和電流とイオン飽和電流の径方向分布をラングミュアプローブで取った結果を示す図である。
【図8】 図7のラングミュアプローブ測定結果より負イオン密度を計算した結果を示す図ある。
【符号の説明】
1 真空容器
3 磁場発生手段
5 負性ガス供給手段
7 石英ガラス
9 マイクロ波照射手段
11 孔付き遮蔽板
13 孔
SP ストリングプラズマ
M 負イオン
P ターボ分子ポンプ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7