TOP > 国内特許検索 > 酸素ガス検知装置 > 明細書

明細書 :酸素ガス検知装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3663440号 (P3663440)
公開番号 特開2004-184219 (P2004-184219A)
登録日 平成17年4月8日(2005.4.8)
発行日 平成17年6月22日(2005.6.22)
公開日 平成16年7月2日(2004.7.2)
発明の名称または考案の名称 酸素ガス検知装置
国際特許分類 G01N 27/12      
FI G01N 27/12 C
G01N 27/12 B
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2002-351273 (P2002-351273)
出願日 平成14年12月3日(2002.12.3)
審査請求日 平成14年12月3日(2002.12.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】荻田 正己
【氏名】山田 靖
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 欧州特許出願公開第0464243(EP,A1)
特開平10-48170(JP,A)
調査した分野 G01N 27/12
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板表面に形成され、平均粒径が10~50nmの酸化ガリウム結晶を有する薄膜と、
前記薄膜表面に形成された一対の電極と
を具備したことを特徴とする酸素ガス検知装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板表面に形成され、平均粒径が10~50nmの酸化ガリウム結晶を有する薄膜と、
前記表面に形成された一対の電極と、
前記電極を含む前記薄膜表面に形成され、前記薄膜の酸化ガリウム結晶より平均粒径が大きな酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜と
を具備したことを特徴とする酸素ガス検知装置。
【請求項3】
前記薄膜は、酸化ガリウム結晶単独からなることを特徴とする請求項1または2記載の酸素ガス検知装置。
【請求項4】
前記薄膜は、酸化ガリウム結晶に酸化ガリウムと原子半径が近似し、かつ電子的な作用を生じる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1または2記載の酸素ガス検知装置。
【請求項5】
前記元素は、ZrおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項4記載の酸素ガス検知装置。
【請求項6】
前記元素は、前記薄膜に0.01~30原子%含有されることを特徴とする請求項4記載の酸素ガス検知装置。
【請求項7】
前記薄膜は、粒径10~30nmの酸化ガリウム結晶が全体の結晶粒径の50%以上を占めることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の酸素ガス検知装置。
【請求項8】
前記薄膜は、10nm~10μmの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の酸素ガス検知装置。
【請求項9】
前記多孔質薄膜は、平均粒径が50nmを超え、1000nm以下の酸化ガリウム結晶からなることを特徴とする請求項2記載の酸素ガス検知装置。
【請求項10】
前記多孔質薄膜は、100nm~10μmの厚さを有することを特徴とする請求項2記載の酸素ガス検知装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素ガス検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車または工場ボイラ等からは、有害なガスを低減するために排ガス浄化システムが広く用いられている。この排ガス浄化システムは、自動車等からの燃焼排ガス中の酸素濃度を検知し、燃焼排ガスの空燃比を触媒が効率よく作用する領域に制御するものである。
【0003】
ところで、燃焼排ガス中の酸素濃度を検知する装置としては主に酸化ジルコニウムを用いた濃淡電池型のものが知られている。しかしながら、この酸素ガス検知装置は構造が複雑であるため、高価になる問題があった。
【0004】
一方、特許文献1および特許文献2には酸化アルミニウムのような基板表面に酸化ガリウムからなるセンサ素子を形成した抵抗変化型の酸素センサが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7-198647号公報
【0006】
【特許文献2】
特表平11-501710号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記抵抗変化型の酸素センサは優れた酸素ガス感度を有するものの、応答性が低いという問題があった。また、この酸素センサは空気が過剰な雰囲気において抵抗が高く、ノイズの影響を受け易い問題があった。
【0008】
本発明は、優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での検出が可能な酸素ガス検知装置を提供しようとするものである。
【0009】
本発明は、優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能で、さらに抵抗の温度依存性が小さい酸素ガス検知装置を提供しようとするものである。
【0010】
本発明は、優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能で、さらに電極に起因する高温長時間での抵抗の経時変化を抑制することが可能な酸素ガス検知装置を提供しようとするものである。
【0011】
本発明は、優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能で、さらに抵抗の温度依存性が小さく、しかも電極に起因する高温長時間での抵抗の経時変化を抑制することが可能な酸素ガス検知装置を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る酸素ガス検知装置は、基板と、
前記基板表面に形成され、平均粒径が10~50nmの酸化ガリウム結晶を有する薄膜と、
前記薄膜表面に形成された一対の電極と
を具備したことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る別の酸素ガス検知装置は、基板と、
前記基板表面に形成され、平均粒径が10~50nmの酸化ガリウム結晶を有する薄膜と、
前記薄膜表面に形成された一対の電極と
少なくとも前記電極表面に形成された酸化ガリウムからなる多孔質薄膜と
を具備したことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、この第1実施形態の酸素ガス検知装置を示す断面図である。
【0016】
基板1の表面には、センサ部である酸化ガリウム(例えばGa23)結晶を有する薄膜2が形成されている。一対の電極3a、3bは、前記薄膜2の表面に形成されている。これら電極3a、3bは、互いに入り込んだ櫛歯形状をなす。
【0017】
前記基板としては、シリコン、アルミナ等の種々の材料からなるものを用いることができるが、特に検知時の高温雰囲気において前記酸化ガリウムへの不純物の汚染等を回避することが可能なシリコン基板が好ましい。
【0018】
前記薄膜は、平均粒径が10~50nmの酸化ガリウム結晶単独からなるもの、またはこの酸化ガリウム結晶にさらに酸化ガリウムと原子半径が近似し、かつ電子的な作用を生じる少なくとも1種の元素を含有するものを挙げることができる。前記元素は、例えば前記酸化ガリウム結晶の格子に取り込まれた形態で前記薄膜の存在する。
【0019】
前記薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径を10nm未満にすると、酸素ガス感度が高くなるものの、応答性が低下する虞がある。一方、前記薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径が50nmを超えると、応答性が高くなるものの、酸素ガス感度が低下する虞がある。より好ましい前記薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径は、15~40nmである。
【0020】
前記元素は、ZrおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。前記元素は、前記薄膜に0.01~30原子%、より好ましくは1~10原子%含有されることが望ましい。前記元素の量を0.01原子%未満にすると、抵抗の温度依存性を改善する効果を十分に達成することが困難になる虞がある。一方、前記元素の量が30原子%を超えると、前記薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の特徴が失われる虞がある。
【0021】
前記薄膜は、特に粒径10~30nmの酸化ガリウム結晶が全体の結晶粒径の50%以上、より好ましくは70%以上を占めることが望ましい。このように酸化ガリウム結晶粒径の分布が10~30nmにピークを有する薄膜は、酸素ガス感度および応答性をさらに向上させることが可能になる。
【0022】
前記薄膜は、10nm~10μmの厚さ、より好ましくは30nm~2μmの厚さを有することが望ましい。前記薄膜の厚さを10nm未満にすると、その薄膜が不連続になって、酸素感応性が不安定になるばかりか、抵抗も高くなってノイズの影響を受け易くなる虞がある。一方、前記薄膜の厚さが10μmを超えると、十分な量の被検ガスが前記酸化ガリウム薄膜内に拡散されず、応答性および感度の低下を招く虞がある。
【0023】
前記酸化ガリウム結晶単独からなる薄膜は、例えば次のような方法により形成される。
【0024】
すなわち、酸化ガリウムをターゲットとするスパッタ法により基板表面に成膜する。この成膜工程において、前記平均粒径の酸化ガリウム単独からなる薄膜を形成するにはいくつかのパラメータを制御する。このパラメータとしては、例えばターゲットの種類、真空度、真空室のガス雰囲気、ターゲットと基板との距離、基板温度を挙げることができる。具体的には、下記に示す3つの方法がある。
【0025】
1)酸化ガリウム焼結体からなるターゲットを用い、アルゴン雰囲気中で前記ターゲットの高周波電力を印加してスパッタする。この時、真空室の真空度をガス流入量および排気バルブの開度を調節して2~10paに制御する。
【0026】
2)酸化ガリウム粉末からなるターゲットを用い、前記1)と同様な方法でスパッタする。
【0027】
3)ガリウム金属からなるターゲットを用い、アルゴンガスに酸素を混合した雰囲気で前記1)と同様な方法でスパッタする。
【0028】
前記1)、2)の方法による酸化ガリウム薄膜の成膜において、アルゴンガスのみならずアルゴンガスに酸素を混合して混合ガス雰囲気でスパッタを行なってもよい。
【0029】
また、前記1)~3)の方法による酸化ガリウム薄膜の成膜において、スパッタ時に基板を加熱してもよい。
【0030】
前記酸化ガリウム結晶を有し、かつ酸化ガリウムと原子半径が近似し、かつ電子的な作用を生じる少なくとも1種の元素(例えばZrおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素)を含む薄膜は、例えば次のような方法により形成される。
【0031】
1)酸化ガリウム焼結体のスパッタ面に前記元素の粉末(例えば記元素の酸化物粉末)を分散させたターゲットを用い、アルゴン雰囲気中で前記ターゲットの高周波電力を印加してスパッタする。
【0032】
2)酸化ガリウム粉末および前記元素の粉末(例えば記元素の酸化物粉末)の混合粉末からなるターゲットを用い、前記1)と同様な方法でスパッタする。
【0033】
3)酸化ガリウム焼結体(または酸化ガリウム粉末)からなる第1ターゲットと前記元素の板(例えば記元素の酸化物板)または粉末(例えば記元素の酸化物粉末)からなる第2ターゲットを有する多元ターゲットを用い、前記1)と同様な方法でスパッタする。
【0034】
4)酸化ガリウム焼結体(または酸化ガリウム粉末)と前記元素の板(例えば記元素の酸化物板)または粉末(例えば記元素の酸化物粉末)を交互に配置したモザイク状のターゲットを用い、前記1)と同様な方法でスパッタする。
【0035】
前記1)~4)の方法による前記元素を含む酸化ガリウム薄膜の成膜において、アルゴンガスのみならずアルゴンガスに酸素を混合して混合ガス雰囲気でスパッタを行なってもよい。
【0036】
また、前記1)~4)の方法による酸化ガリウム薄膜の成膜において、スパッタ時に基板を加熱してもよい。
【0037】
前記電極材料は、高温で安定な金属であれば特に限定されず、例えば白金、タンタル、タングステンを用いることができる。
【0038】
次に、本発明に係る第1実施形態の酸素ガス検知装置の作用を説明する。
【0039】
前述した図1に示す酸素ガス検知装置を燃焼排ガス中に配置すると、燃焼排ガス中の酸素が酸化ガリウム結晶を有する薄膜2内に拡散し、抵抗値が変化する。この抵抗値変化を前記薄膜2表面に形成した櫛歯状の一対の電極3a、3bで測定することによって、前記燃焼排ガス中の酸素濃度を検知する。
【0040】
このような燃焼排ガス中の酸素濃度の検知において、前記センサ部である薄膜2を平均粒径が10~50nmの酸化ガリウム結晶を有する構成にすることによって、前記薄膜2への酸素の迅速な拡散とそれによる大きな抵抗値の変化がバランスよくなされる。このため、高い酸素ガス感度と応答性を示す酸素ガス検知装置を実現できる。
【0041】
すなわち、本発明らは酸素ガス検知装置においてセンサ部である薄膜の結晶の大きさが酸素ガス感度と検知時の応答性に相関することを究明した。具体的には、前記薄膜の酸化ガリウム結晶の平均粒径を小さくすると、薄膜が緻密化されて有効表面積が大きくなり、高い酸素ガス感度が得られる。反面、酸素ガスが酸化ガリウムに拡散する時間が長くなって応答時間が長くなる。一方、前記薄膜の酸化ガリウム結晶の平均粒径を大きくすると、薄膜が粗な状態になって、酸素ガスが酸化ガリウムを速やかに拡散して応答時間が短くなるものの、有効表面積が小さくなり、酸素ガス感度が低下する。
【0042】
このようなことから、本発明らは前記センサ部である薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径を10~50nmに規定することによって、前記酸素ガス感度と応答性を両立した酸素ガス検知装置を見出した。
【0043】
特に、粒径10~30nmの酸化ガリウム結晶が全体の結晶粒径の50%以上、つまり酸化ガリウム結晶の粒径分布が10~30nmにピークを有する薄膜を用いることによって、より一層高い酸素ガス感度と応答性を示す酸素ガス検知装置を実現できる。
【0044】
また、前記薄膜2は熱的安定性の優れた酸化ガリウム結晶を有するため、高温(例えば700~900℃)の燃焼排ガス中の酸素を長時間に亘って安定的に検知し得る酸素ガス検知装置を実現できる。
【0045】
さらに、本発明の酸素ガス検知装置は空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能である。
【0046】
前記薄膜として酸化ガリウム結晶にさらに例えばZrのような酸化ガリウムと原子半径が近似し、かつ電子的な作用を生じる少なくとも1種の元素を含有するものを用いることによって、酸化ガリウム結晶単独の薄膜に比べて酸素ガス検知時の抵抗値を低く抑えることができる。このため、電磁ノイズ等の雑音の影響を受け難くなる。その結果、燃焼排ガス中の酸素ガスをより高精度で検知することが可能な酸素ガス検知装置を実現できる。
【0047】
前記酸化ガリウム結晶にさらに前記元素を含む薄膜は、温度に対する抵抗値の変化率を抑えことができる、つまり抵抗値の温度依存性を低減できる。このため、時間の経過と共に温度が変動する燃焼排ガスの酸素ガスの検知において燃焼排ガスの温度影響を受け難くなり、温度変動に伴う抵抗値のドリフトを低減できる。その結果、高温の燃焼排ガス中の酸素ガスをより高精度で検知することが可能な酸素ガス検知装置を実現できる。
【0048】
このように酸化ガリウム結晶を有する薄膜に例えばZrのような酸化ガリウムと原子半径が近似し、かつ電子的な作用を生じる少なくとも1種の元素を含有させることによる効果は、前記元素が酸化ガリウム結晶の電子に作用し、酸化ガリウム結晶内の電子密度が高くなることに起因するものと考えられる。
【0049】
(第2実施形態)
図2は、この第2実施形態の酸素ガス検知装置を示す断面図である。
【0050】
基板1の表面には、センサ部である酸化ガリウム(例えばGa23)結晶を有する薄膜2が形成されている。一対の電極3a、3bは、前記酸化ガリウム薄膜2の表面に形成されている。これら電極3a、3bは、互いに入り込んだ櫛歯形状をなす。薄膜2を構成する酸化ガリウム結晶より平均粒径の大きな酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜4は、前記電極3a,3bを含む全面に形成されている。
【0051】
前記基板、前記酸化ガリウム(例えばGa23)結晶を有する薄膜および電極は、前記第1実施形態で説明したのと同様なものが用いられる。
【0052】
前記多孔質薄膜は、平均粒径が50nmを超え、1000nm以下の酸化ガリウム結晶からなることが好ましい。このような多孔質薄膜は、前記電極の保護機能を維持しつつ、酸素ガスを速やかにセンサ部である酸化ガリウム結晶を有する前記薄膜に拡散させることが可能になる。前記多孔質薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径を50nm以下にすると、酸素ガスをその下のセンサ部である酸化ガリウム結晶を有する前記薄膜に速やかに拡散させることが困難になり、酸素ガスの感度低下、応答性の低下を招く虞がある。一方、前記多孔質薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径が1000nmを超えると、前記電極の保護機能が低下する虞がある。より好ましい前記多孔質薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径は、100~500nmである。
【0053】
前記多孔質薄膜は、100nm~10μmの厚さを有することが好ましい。前記多孔質薄膜の厚さを100nm未満にすると、前記電極の保護機能が低下する虞がある。一方、前記多孔質薄膜の厚さが10μmを超えると、酸素ガスをその下のセンサ部である酸化ガリウム結晶を有する前記薄膜に速やかに拡散させることが困難になり、酸素ガスの感度低下、応答性の低下を招く虞がある。より好ましい前記多孔質薄膜の厚さは、500nm~2μmである。
【0054】
前記酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜は、例えば酸化ガリウムをターゲットとするスパッタ法により前記電極を含む薄膜および基板表面に成膜する。この成膜工程において、例えばターゲットの種類、真空度、真空室のガス雰囲気、ターゲットと基板との距離、基板温度から選ばれるパラメータを制御することにより前記平均粒径が50~1000nmの酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜を形成することが可能になる。
【0055】
次に、本発明に係る第2実施形態の酸素ガス検知装置の作用を説明する。
【0056】
前述した図2に示す酸素ガス検知装置を燃焼排ガス中に配置すると、燃焼排ガス中の酸素が参加ガリウム結晶からなる多孔質薄膜4を透過して酸化ガリウム結晶を有する薄膜2内に拡散し、抵抗値が変化する。この抵抗値変化を前記薄膜2表面に形成した櫛歯状の一対の電極3a、3bで測定することによって、前記燃焼排ガス中の酸素濃度を検知する。
【0057】
このような燃焼排ガス中の酸素濃度の検知において、前記センサ部である薄膜2を平均粒径が10~50nmの酸化ガリウム結晶を有する構成にすることによって、前述した第1実施形態と同様に、高い酸素ガス感度と応答性を示し、高温(例えば700~900℃)の燃焼排ガス中の酸素を長時間に亘って安定的に検知でき、さらに空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能な酸素ガス検知装置を実現できる。
【0058】
また、前記薄膜として酸化ガリウム結晶にさらに例えばZrのような酸化ガリウムと原子半径が近似し、かつ電子的な作用を生じる少なくとも1種の元素を含有するものを用いることによって、前述した第1実施形態と同様に、温度に対する抵抗値の変化率を抑えて高温の燃焼排ガス中の酸素ガスをより高精度で検知することが可能な酸素ガス検知装置を実現できる。
【0059】
さらに、燃焼排ガス、特に高温(例えば700~900℃)の燃焼排ガス中に長時間に亘って検知する際、前記薄膜2を構成する酸化ガリウム結晶より平均粒径の大きな酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜4を前記電極3a,3bを含む全面に形成することによって、前記電極3a、3bに起因する抵抗値の経時変化を防止できる。
【0060】
すなわち、酸素ガスの検知時において一対の電極3a、3bを高温(例えば700~900℃)の燃焼排ガス中に長時間に亘って曝すと、前記電極3a、3bが変質して抵抗値が経時変化し、酸素ガスの検知精度が低下する。
【0061】
このようなことから、前記電極3a,3bを含む全面に酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜4を形成することによって、前記電極3a、3b表面を前記燃焼ガス雰囲気から保護することができる。また、前記多孔質薄膜4は前記センサ部の薄膜2と平均粒径が異なるものの、酸化ガリウム結晶を主体とした同材質で、熱膨張係数が等しいため、前記電極3a、3bへの応力の発生を回避できる。その結果、高温(例えば700~900℃)の燃焼排ガス雰囲気に長時間に亘って曝しても、前記多孔質薄膜4による前記電極3a、3bの保護を長時間に亘って維持できるため、前記電極3a、3bの変質を防止できる。さらに、高温(例えば700~900℃)の燃焼排ガス中の酸素ガスを前記多孔質薄膜を通してセンサ部である所定の結晶粒径を持つ酸化ガリウム結晶を有する薄膜に速やかに拡散させることができる。
【0062】
したがって、前記電極3a、3bに起因する抵抗値の経時変化を防止して長時間に亘って酸素ガスを高い精度で検知することが可能な酸素ガス検知装置を実現できる。
【0063】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0064】
(例1~例7)
酸化ガリウム粉末からなるターゲットを用い、アルゴン雰囲気中で前記ターゲットに50Wの高周波電力を印加してスパッタ形成した。この時、真空室の真空度をガス流入量および排気バルブの開度を調節して2~10Paに制御することにより平均粒径が5nm(例1)、10nm(例2)、20nm(例3)、30nm(例4)、40nm(例5)、50nm(例6)および55nm(例7)の酸化ガリウム結晶からなり、厚さが1μmの7種の薄膜がシリコン基板の表面に形成された。なお、例2~例6の薄膜は前記平均粒径の酸化ガリウム結晶からなると共に、それぞれ粒径10~30nmの酸化ガリウム結晶が全体の結晶粒径の53%、67%、72%、71%、56%を占めていた。
【0065】
次いで、前記薄膜の外周をエッチング除去した。つづいて、前記薄膜を含むシリコン基板に厚さ0.3μmの白金膜をそれぞれ成膜した後、これら白金膜をそれぞれパターニングして互いに入り込んだ櫛歯形状をなす一対の電極を形成することにより前述した図1に示す7つの酸素ガス検知装置を製造した。
【0066】
得られた例1~例7の酸素ガス検知装置を排ガスの流路に設置し、酸素ガス感度(抵抗値変化)および応答時間(秒)を測定した。薄膜を構成する酸化ガリウム結晶の平均粒径と酸素ガス感度および応答時間の関係を図3に示す。
【0067】
図3から明らかなように平均粒径が10nm未満の酸化ガリウム結晶からなる薄層を有する例1の酸素ガス検知装置は、酸素ガス感度が高いものの、応答時間が長くなる。一方、平均粒径が50nmを超える酸化ガリウム結晶からなる薄層を有する例7の酸素ガス検知装置は、応答時間が短くなるものの、酸素ガス感度が低下する。
【0068】
これに対し、平均粒径が10nm~50nmの酸化ガリウム結晶からなる薄層を有する例2~例6の酸素ガス検知装置は、高い酸素ガス感度と、良好な応答性を示すことがわかる。
【0069】
また、本発明の例2~例6の酸素ガス検知装置を空気量が10体積%と過剰な燃焼排ガスの流路に設置し、酸素ガス感度(抵抗値変化)および応答時間(秒)を測定した。その結果、300~500kΩと低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能で、かつ10~50/秒と優れた応答性を示した。
【0070】
(例8)
酸化ガリウム粉末および酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末の混合粉末からなるターゲットを用い、アルゴン雰囲気中で前記ターゲットに50Wの高周波電力を印加してスパッタ形成した。この時、真空室の真空度をガス流入量および排気バルブの開度を調節して8Paに制御することにより平均粒径が20nmの酸化ガリウム結晶に5原子%のZrを含有する厚さ1μmの薄膜がシリコン基板の表面に形成された。
【0071】
次いで、前記薄膜の外周をエッチング除去した。つづいて、前記薄膜を含むシリコン基板に厚さ0.3μmの白金膜をそれぞれ成膜した後、これら白金膜をそれぞれパターニングして互いに入り込んだ櫛歯形状をなす一対の電極を形成することにより前述した図1に示す酸素ガス検知装置を製造した。
【0072】
得られた例8の酸素ガス検知装置を排ガスの流路に設置し、温度に対する酸素ガス感度(抵抗値変化)を測定した。その結果を図4に示す。なお、図4には前記例4の平均粒径が30nmの酸化ガリウム結晶単独からなる厚さ1μmの薄膜を有する酸素ガス検知装置による温度に対する酸素ガス感度(抵抗値変化)を併記する。
【0073】
図4から明らかなように酸化ガリウム結晶にZrを含有する薄膜を備えた例8の酸素ガス検知装置は、酸化ガリウム結晶単独からなる薄膜を備えた例4の酸素ガス検知装置に比べて酸素ガス検知時の抵抗値が低く、かつ温度に対する抵抗値の変化率を抑えことができる、つまり抵抗値の温度依存性を低減できることがわかる。
【0074】
また、例8および例4の酸素ガス検知装置を700~900℃の温度範囲で変化する高温の燃焼排ガスの流路に設置し、時間の経過に対する酸素ガス感度(抵抗値変化)を測定した。その結果を図5に示す。
【0075】
図5から明らかなように酸化ガリウム結晶にZrを含有する薄膜を備えた例8の酸素ガス検知装置は、酸化ガリウム結晶単独からなる薄膜を備えた例4の酸素ガス検知装置に比べて燃焼排ガスの温度の影響を受け難くなり、その燃焼排ガス中の酸素ガス検知時の抵抗値のドリフトも小さくなることがわかる。また、例8の酸素ガス検知装置は燃焼排ガス中の酸素ガス検知時の抵抗値が低く、電磁ノイズの影響を受け難くなることがわかる。
【0076】
(例9)
酸化ガリウム粉末からなるターゲットを用い、アルゴン雰囲気中で前記ターゲットに50Wの高周波電力を印加してスパッタ形成した。この時、真空室の真空度をガス流入量および排気バルブの開度を調節して8Paに制御することにより平均粒径が20nmの酸化ガリウム結晶からなり、厚さ1μmの薄膜がシリコン基板の表面に形成された。
【0077】
次いで、前記薄膜の外周をエッチング除去した。つづいて、前記薄膜を含むシリコン基板に厚さ0.3μmの白金膜をそれぞれ成膜した後、これら白金膜をそれぞれパターニングして互いに入り込んだ櫛歯形状をなす一対の電極を形成した。ひきつづき、酸化ガリウム粉末からなるターゲットを用い、アルゴン雰囲気中で前記ターゲットに50Wの高周波電力を印加してスパッタ形成した。この時、真空室の真空度をガス流入量および排気バルブの開度を調節して0.5Paに制御することによって、平均粒径が100nmの酸化ガリウム結晶からなり、厚さが2μmの多孔質薄膜(保護膜)を前記電極を含む全面に形成することにより前述した図2に示す酸素ガス検知装置を製造した。
【0078】
(例10)
保護膜として厚さ2μmの酸化ケイ素膜を電極を含む全面に形成した以外、例9と同様な方法により酸素ガス検知装置を製造した。
【0079】
得られた例9、例10および例4の酸素ガス検知装置を700~900℃の温度範囲で変化する高温の燃焼排ガスの流路に設置し、時間の経過に対する酸素ガス感度(抵抗値変化)を測定した。その結果を図6に示す。
【0080】
図6から明らかなように酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜を電極の保護膜として備えた例9の酸素ガス検知装置は、多孔質薄膜を形成しない例4の酸素ガス検知装置に比べて高温の燃焼排ガス中の酸素ガスを長時間検知しても抵抗値の変化が小さく、高温の燃焼排ガス中の酸素ガスを長時間間安定的に検知できることがわかる。これは、前記酸化ガリウム結晶からなる多孔質薄膜が前記電極表面を前記燃焼ガス雰囲気から保護できること、前記多孔質薄膜が前記センサ部の薄膜と平均粒径が異なるものの、酸化ガリウム結晶を主体とした同材質で、熱膨張係数が等しく、前記電極への応力の発生を回避できること、燃焼排ガス中の酸素ガスを前記多孔質薄膜を通してセンサ部の薄膜に速やかに拡散させることができること、によるものである。
【0081】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での検出が可能で、自動車または工場ボイラ等から排出される高温の燃焼排ガス排ガス浄化システムに有効に適用可能な酸素ガス検知装置を提供できる。
【0082】
本発明によれば、優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能で、さらに抵抗の温度依存性が小さく、自動車または工場ボイラ等から排出される高温の燃焼排ガス排ガス浄化システムに有効に適用可能な酸素ガス検知装置を提供できる。
【0083】
また、本発明によれば優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能で、さらに電極に起因する高温長時間での抵抗の経時変化を抑制することが可能で、自動車または工場ボイラ等から排出される高温の燃焼排ガス排ガス浄化システムに有効に適用可能な酸素ガス検知装置を提供できる。
【0084】
さらに、本発明によれば優れた酸素ガス感度と応答性とを有し、耐久性に優れ、かつ空気が過剰な燃焼排ガスでも低い抵抗値領域での酸素ガスの検出が可能で、さらに抵抗の温度依存性が小さく、しかも電極に起因する高温長時間での抵抗の経時変化を抑制することが可能で、自動車または工場ボイラ等から排出される高温の燃焼排ガス排ガス浄化システムに有効に適用可能な酸素ガス検知装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態の酸素ガス検知装置を示す断面図。
【図2】本発明に係る第2実施形態の酸素ガス検知装置を示す断面図。
【図3】例1~例7における酸素ガス検知装置による酸素ガス感度(抵抗値変化)および応答時間(秒)の測定結果を示す図。
【図4】例8および例4の酸素ガス検知装置による温度に対する酸素ガス感度(抵抗値変化)の測定示す図。
【図5】例8および例4の酸素ガス検知装置による700~900℃の温度範囲で変化する高温の燃焼排ガス中の酸素ガス検知時における時間の経過に対する酸素ガス感度(抵抗値変化)の測定結果を示す図。
【図6】例9、例10および例4の酸素ガス検知装置による700~900℃の温度範囲で変化する高温の燃焼排ガス中の酸素ガス検知時における時間の経過に対する酸素ガス感度(抵抗値変化)の測定結果を示す図。
【符号の説明】
1…シリコン基板、
2…薄膜、
3a,3b…電極、
4…多孔質薄膜。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5