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明細書 :放電容器及びその放電容器を備えたプラズマラジカル生成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3069700号 (P3069700)
登録日 平成12年5月26日(2000.5.26)
発行日 平成12年7月24日(2000.7.24)
発明の名称または考案の名称 放電容器及びその放電容器を備えたプラズマラジカル生成装置
国際特許分類 H05H  1/24      
H05H  1/46      
FI H05H 1/24
H05H 1/46
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願平11-207851 (P1999-207851)
出願日 平成11年7月22日(1999.7.22)
審査請求日 平成11年7月22日(1999.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】畑中 義式
【氏名】コルツェック・ダリウス
【氏名】エンゲマン・ジュルゲン
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】村田 尚英
調査した分野 H05H 1/24
H05H 1/46
要約 【課題】 ラジカルを放電プラズマの状態から高効率に得るプラズマラジカル生成装置を提供すること。
【解決手段】 高周波放電によってラジカルを生成する放電容器31を備えたプラズマラジカル生成装置において、前記放電容器31が、原料ガスの入り口付近に位置し前記原料ガスに高周波の電力が供給されるカソード部6と、前記カソード部の次段に位置し前記カソード部よりも小さい断面積を有するジェット部5と、前記ジェット部の次段に位置し前記ジェット部よりも大きい断面積を有するアノード部7とを備えた。
特許請求の範囲 【請求項1】
原料ガスからプラズマラジカルを生成するための筒状の放電容器であって、
前記原料ガスの入り口付近に配置され、前記放電容器の外側に前記放電容器を取り囲むように配置されたカソード電極を有し、前記原料ガスに前記カソード電極から高周波の電力供給することによってプラズマを生成するためのカソード部と、
前記カソード部の後段に配置され、前記放電容器の外側に前記放電容器を取り囲むように配置されたアノード電を有するアノード部と、
前記カソード部と前記アノード部との間に配置されて前記カソード部と前記アノード部とを結合する部分であって、くびれた構造を有し、前記くびれた構造によって前記生成されたプラズマを高密度にすることによって高密度ラジカルを生成するジェット部とを備えたことを特徴とする放電容器

【請求項2】
請求項1記載の放電容器において、前記アノード部の前記原料ガスの入り口の部分のガスが流れる方向と垂直な断面積を、前記ジェット部のくびれ部のガスが流れる方向と垂直な断面積よりも小さくし、細管を束ねたキャピラリー構造とすることを特徴とする放電容器

【請求項3】
請求項1記載の放電容器において、前記放電容器は電気的に絶縁物であって、石英、アルミナ、パイレックスガラス、テフロン、窒化珪素のいずれかを含むような材料からなり、前記放電容器のジェット部は空冷又は水冷のできる構造であることを特徴とする放電容器

【請求項4】
前記原料ガスの入り口付近に配置され、前記放電容器の外側に前記放電容器を取り囲むように配置されたカソード電極を有し、前記原料ガスに前記カソード電極から高周波の電力供給することによってプラズマを生成するためのカソード部と、前記カソード部の後段に配置され、前記放電容器の外側に前記放電容器を取り囲むように配置されたアノード電極を有するアノード部と、前記カソード部と前記アノード部との間に配置されて前記カソード部と前記アノード部とを結合する部分であって、くびれた構造を有し、前記くびれた構造によって前記生成されたプラズマを高密度にすることによって高密度ラジカルを生成するジェット部とを備えた筒状の放電容器と
前記カソード電極と、前記アノード電極を挟み込むようにして近接して配置され、放電を発生するための電力を供給する整合回路とを具備することを特徴とするプラズマラジカル生成装置。

【請求項5】
列状又は面的に配列された複数の請求項1記載の放電容器と
少なくとも2つの前記放電容器のアノード電極及びカソード電極に共通給電する手段とを備えたことを特徴とするプラズマラジカル生成装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、高周波放電によって励起されたガスのラジカル又は励起種を効率よく発生させるプラズマラジカル生成装置に関する。

【0002】

【従来の技術】例えば、半導体基板の表面に薄膜を堆積する場合に、真空蒸着法、スパッタリング法、化学気相堆積法、分子線エピタキシー法などが用いられる。この場合において、いずれの方法においても、例えば原料ガス(以下、単に「原料」と称する)を分子状ないしは原子状にして目的とする表面に堆積している。このとき、原料を分子状ないしは原子状とするために、熱、光、イオン、励起種(ラジカル)等のエネルギーにより原料を分解して用いる。

【0003】
上記のように原料を分子状ないしは原子状に分解する場合に、プラズマにより原料を分解する方法が知られている。この場合において、プラズマ源は、薄膜等のプロセッシング部と離れたところにあり、これをリモートプラズマ法と呼んでいる。図12にリモートプラズマ法に関する概略構成を示す。リモートプラズマ法では、図12(a)に示すように高周波の電力62により原料ガス12を励起するが、プラズマ発生部(プラズマ源)43とプロセッシング部(プロセス容器)17とが離れることによりイオン、電子の衝突によるプロセッシング部17の損傷がない。なお、プロセッシング部17ではプロセス用ガスが導入され、プラズマ発生部43で生成されたラジカル13と反応させて反応物質20を出す。このリモートプラズマ法は、場合によっては光トラップを利用することにより紫外線の損傷も防ぐことができる方法でもある。これは図12(b)に示すようにラジカル輸送管8を折り曲げる方法によって行われている。

【0004】
リモートプラズマ法については、畑中他による多くの報告があり(Bulletin ofthe Research institute of Electronics Shizuoka University, Vol. 29, pp.87-94, 1994)、プラズマ源として様々のものについて研究がなされている。例えば、高周波誘導結合型のもの、及びS. Wickramanayaka他によるこれらの装置に数kWの大電力を投入し、高励起状態のラジカルを生成しようとしたもの(Jpn. J. Appl. Phys, Vol. 30, pp. 2897-2900, 1991)等がある。また、野村他によって、電子サイクロトロン共鳴を使ったプラズマ源によって、低い圧力領域でのリモートプラズマによる薄膜堆積がなされている(J. Appl. Phys. 69, pp. 990-993, 1991)。また、Horowitz (J. Vac. Sci. Tech. A6 (3), pp. 1837-1844 (1988))はホロカソード法によって高密度プラズマを得ることを報告している。なお、多数のホロカソードを用いたものはVacuum 36, pp. 837-840 (1986)に報告されている。Bardosらは単一ジェットプラズマをCVD(Chemical Vapor Deposition)法に用いている(Thin Solid Films 158, pp. 265-270 (1988))。しかし、Bardosらでは小さいオリフィスを持つカソードとアノードの導電体容器の間で放電させ基板上に膜を堆積させているものの、小さい面積しか膜を堆積させることができない。

【0005】
Korzecらは、1個又は1個以上のジェット領域の穴を持つカソードとそれを囲むアノード部とからできているホロカソード形の放電プラズマ源(Surface and Coatings Technology 93, pp. 128-133 (1997))を報告している。この主要な部分はすべて導電性の金属でできており、広い面積をカバーできるプラズマ源であるが、ジェット部がプラズマ電位を通して電気的に結合することもあり、上記のジェット領域の穴によりプラズマの強度が不均一となる。また金属による汚染の問題も解決していない。さらに入力ガスが必ずしもジェットの穴部を通らないで流出するロス部分が生ずる等の欠点を有している。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来のプラズマ源によるラジカル(励起種を含む。以下、単に「ラジカル」と称する)の発生においては、高収率のラジカル生成ができないという問題点を有している。

【0007】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、ラジカルを放電プラズマの状態から高効率に得るプラズマラジカル生成装置を提供することを目的とする。本発明において、ラジカルはCVDのみでなく、固体表面のクリーニング又はエッチング、又は改質等にも同様に用いることができる。なお、本発明のプラズマ発生部は高周波ホロカソードプラズマ源に種別されるものである。

【0008】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段を講じた。

【0009】
本発明は、単純ホロカソード形高周波プラズマ放電にジェット部を導入する工夫をすることにより極めて大きな効果を導き出したものである。すなわち、本発明の放電容器は、原料ガスからプラズマラジカルを生成するための筒状の放電容器であって、前記原料ガスの入り口付近に配置され、前記放電容器の外側に前記放電容器を取り囲むように配置されたカソード電極を有、前記原料ガスに前記カソード電極から高周波の電力供給することによってプラズマを生成するためのカソード部と、前記カソード部の後段に配置され、前記放電容器の外側に前記放電容器を取り囲むように配置されたアノード電極を有するアノード部と、前記カソード部と前記アノード部との間に配置されて前記カソード部と前記アノード部とを結合する部分であって、くびれた構造を有し、前記くびれた構造によって前記生成されたプラズマを高密度にすることによって高密度ラジカルを生成するジェット部とを備えたことを特徴とする。ここにおいて、高周波放電は容量的に結合された電極間で発生し、略1MHzから100MHzの高周波放電を対象としており、この高周波放電により励起されたガスのラジカルを効率よく生成している。

【0010】
この放電容器及びこの放電容器を備えたプラズマラジカル生成装置において、好ましい実施態様は以下の通りである。

【0011】
(1) 放電容器はラジカルの再結合の小さい絶縁物でできていること。この放電容器は、上記のように、電力の供給される電極の付けられたカソード部と、アノード部とその両者を結合するジェット部とからなっている。ここで、ジェット部はカソードとアノードとの大きさと特定の関係を有しており、数mmから数cmの長さと径を持ち、このときカソードとアノードは数cm~数十cmである。

【0012】
(2) 前記カソード部に配置されたカソード電極と、前記アノード部に配置されたアノード電極を挟み込むようにして近接して配置され、放電を発生するための電力を供給する整合回路を更に具備すること。また、放電部にはシールド箱が設けられ、そのシールド箱はアノードと同電位となり全体を囲むように配置されていること。更に、ガスの入力部と出力部はシールド箱の筐体に穴があけられて結合されていること。

【0013】
(3) 前記原料ガスの入り口の部分の断面積が、前記ジェット部の断面積よりも小さいこと。このようにすることにより、入り口のガス流速が速くなり、プラズマがガスの入口側に流出することを防ぐことができる。また、単に、入り口の断面積を小さくするのではなく、細い管を束ねるなどのキャピラリー構造としても良い。このキャピラリーの材質は絶縁物であることが好ましい。また、キャピラリーは管であってもビーズ状のものであってもよい。

【0014】
(4) 放電容器は電気的に絶縁物であって石英、アルミナ、パイレックスガラス、テフロン、窒化珪素、窒化アルミニウム等のようなものであること。

【0015】
(5) 放電容器のジェット部は空冷又は水冷のできる構造であること。

【0016】
(6) 放電容器は円筒形であること。

【0017】
(7) 2個以上の放電容器におけるアノード及びカソードが、共通のアノード、及びカソードとして給電できるできること。この時に、1列に整列して多数の放電容器を同一の電源で給電できること。さらに、放電容器を平面的に配列して、それらのアノード部とカソード部に共通に給電できる構造の配置とすること。

【0018】
本発明の放電容器及びこの放電容器を備えプラズマラジカル生成装置によれば、マイクロ波による励起より安価で簡単、また、誘導結合高周波励起よりも構成が簡単、安価であり、複数放電容器を配置或いは配列するなどの拡張性が高いという利点を有する。また、ヘリコンプラズマ、電子サイクロトロン共鳴プラズマ励起装置よりも、磁界を用いることなく、軽量、構造が単純であり安価でもある。更に、単純な従来のホロカソードプラズマ源と比較して、本発明では、ジェット部から高密度ラジカルが得られるという効果を有する。

【0019】
本発明によれば、すべてのガスはジェット部の狭い領域を通過するので、この狭い領域が高密度プラズマとなり、高効率で、励起状態の高いラジカルが得られ、かつ消費電力が小さい。ジェット部の無いものと比較すると、50Wの電力での本発明のプラズマラジカル生成装置は、200W以上の電力での他のプラズマラジカル生成装置と同等である。

【0020】
本発明によるアノード領域すなわち、プラズマ源の出口のプラズマ電位は低い値とすることができ、かつ出口の口径を大きくすることもできるので、均一なラジカル源の面積を大きくできる。本発明による絶縁物容器は、ラジカルの再結合係数が小さいものを使用することで、高い高密度のラジカルを遠方まで取り出し輸送することができる。

【0021】
さらに、高い準位に励起されたラジカルは寿命時間も長く取ることができ、CVD等、特に、高密度薄膜、高品質薄膜、堆積速度の向上等に特別の効果も期待できる。

【0022】
また、ジェット部分の存在により、アノード部の圧力とカソード部の圧力に差を持たせることができるので、より高真空で処理を必要とする場合のラジカル源としては好都合な構造となっている。

【0023】
なお、同筒型の電極で一対の電極を考えると、その筒の長さは電界が筒の端部より内部に浸入できない程度の長さを持つものであり、表皮効果により、電極とプラズマとの間に電界が集中してかかり、電力の消費は主としてここで消費される。電子は電極側とプラズマ側を往復運動することにより効率よくイオン化を行い密度の高いプラズマを生成する。しかし、本発明は、この一般的なホロカソード効果に関するものではなく、径の小さいジェット領域を付け加えることにより、この領域ではプラズマの密度が高くなり、かつすべてのガスはこの領域を通過することにより効率よくラジカルを生成できるようにしている。これにより上記のような効果が得られる。

【0024】

【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。

【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマラジカル生成装置の概略構成を示す図である。なお、本発明装置と従来の装置との違いを明確にするために、図2に従来のプラズマラジカル生成装置の概略構成を示す。図1及び図2から明らかなように、本発明に係るプラズマラジカル生成装置は、従来装置と比べ、ジェット部とアノード部が追加された構成となっている。以下詳細に説明する。

【0026】
図1において、放電容器31は、ガス入力部9と、カソード部6と、ジェット部5と、アノード部7からなり、この放電容器31で生成したラジカルは輸送管部8を介して図示しないプロセス部(詳細は後述する)に導かれる。なお、この放電容器31の壁材は表面再結合の小さい材料で作られていることが好ましい。ガス入り口部9は、放電容器31と同じ材料で構成されており、原料ガス12の逆流を防ぐために、カソード部6よりも小さい断面積を有している。なお、ガス入り口部9についても、詳細は後述する。また、カソード部6とアノード部7では、放電容器31の周囲にそれぞれカソード電極10とアノード電極11が設けられている。また、カソード電極10には高周波電圧が高周波電源14によって供給され、アノード電極11は接地電位15に接続されている。なお、実施形態においては、アノード電極11は接地されているが、特に接地されていなくても良く、固定された電位であって、カソード電極10とアノード電極11が効率よくカップリングするような電位に固定されていれば良い。このように、アノード部7を設けることにより、強いジェット放電を発生させることができる。なお、高周波電源14から供給された高周波電圧によってホロカソードプラズマを発生させるので、その周波数は、ほぼ1MHzから100MHzであることが好ましい。

【0027】
上記のように構成されたプラズマラジカル生成装置の動作を以下に詳細に説明する。

【0028】
ガス入力部9に導かれた原料ガス12はカソード部6を通り、ジェット部5、アノード部7と輸送管部8を通ってプロセス部に結合される。

【0029】
カソード部6でホロカソードプラズマが生成されるが、カソード部6における圧力はホロカソードの放電開始電圧によって決められる。高周波電源14によって給電されたカソード電極10とカソード壁6aとの容量結合により高密度なホロカソードプラズマ2に電力が供給される。容量結合により生じた電子電流32はジェット部5を通りアノードプラズマ部3及びアノード壁7aに達する。本発明においては、このジェット部5を設けて、このジェット部5でのラジカル発生効率を従来よりも高くしている。この理由は、次の通りである。ジェット部5では、電子温度(すなわち、電子の速度)が大きく、(電子の加速電界が強い)衝突励起の場合の励起エネルギーが大きいので、高い励起状態に励起することができるものと考えられる。また、アノードプラズマ部3内のプラズマはリモートプラズマ部4を通過してプロセス部に導入され、所定の処理が行われる。

【0030】
上記のように構成された本発明のプラズマラジカル生成装置の等価回路を図3に示す。

【0031】
図3によれば、すべての電力は容量35(すなわち、カソード壁6a)を介して給電され、ジェット部5を通って流れなければならない。そして、アノード電極11のインピーダンス40が小さいと、高い密度のジェットプラズマが発生される。アノードプラズマ部3からの電流は主として、アノード壁7aの容量を通してアノード電極7から接地される。アノード部7の容量が大きいときは、インピーダンス40は低くなり、アノード部7側のプラズマ電位は低くすることができる。もし、この電極容量36が小さければ、プラズマポテンシャルが大きくなり、図示しないプロセス容器に電流が流れ込み、直接、プラズマとしての働きをするようになる。輸送管部のプラズマ抵抗38に比較して、アノードプラズマ部3の容量インピーダンス40は、輸送管部8のインピーダンス38が高いときか、又はアノード容量36が大きいときに実現できる。充分な容量を持たせるために、例えばアノード電極11はカソード電極の長さと等しいかそれ以上でなければならない。アノード壁7aの厚さは、カソード壁6aよりも等しいか、より薄いものでなければならない。しかし、壁の厚さの限界は機械的強度によって制限される。

【0032】
本発明において、全体のインピーダンスの主要な部分がジェット部のインピーダンス37によって代表されるとき、最も効率的な変換効率が得られる。このことは、カソードプラズマ部2のインピーダンス39とアノードプラズマ部3のインピーダンス40が充分小さいものでなけれぱならないことを意味する。このとき、図4に示すカソード部6の長さと直径の比(Lc/dc)が充分小さくなり、すなわち、典型的な一例では2より小さい。アノード部7における圧力はいつもカソード部6よりも小さくなり、その部分での電子の平均自由行程は長くなる。従って、アノード部7の長さと直径の比(La/da)は、カソード部6のそれより大きくなり、その最適値は略2~4である。

【0033】
ジェット部のプラズマインピーダンスを増加させる方法として、ジェット部5の長さと径の比(Lj/dj)を増加させる方法がある。しかし、ジェット部5は細かく長いとき、放電開始が困難となるので、所定以上の比とすることはできない。この理由は、径が小さくなってくると、電子は再結合に関わるために電子の加速が制限され、電流が流れにくくなるためである。また、径が小さくなりすぎると、カソード領域の圧力が上昇して、電子の平均自由行程が小さくなり、ホロカソード効果が期待できなくなる。その結果として、カソード部6の径を減少させる必要があるが、このときにはカソード電極10の径が小さくなって、プラズマ生成の全体としての効率が小さくなる。経験的にジェット部5の径は、カソードとアノードの圧力差において3程度とすることが望ましい。カソード部6の最適の径はホロカソード効果の得られる条件から決められるが、それはガスの種類と圧力によって異なってくる。水素、窒素、酸素のような分子状のガスの場合には、カソード部6が例えば約1Torrの場合には、カソード径は2~4cmであり、約0.1Torrの場合には、約8~10cmである。放電容器31の圧力が0.1Torr、1Torr、10Torrの場合における各部のサイズの例を図5に示す。ここで、放電容器31の壁圧は2.5mmとしている。図5に示すように、ジェット部はカソードとアノードとの大きさと特定の関係を有しており、数mmから数cmの長さと径を持ち、このときカソードとアノードは数cm~数十cmであることが好ましい。

【0034】
次に、放電容器31に原料ガス12が導入される入り口部9について記載する。原料ガス12の入力部9において、図6(a)に示す接続管29の中に部分放電が発生することがある。入力ガスライン47は通常ステンレススチール管などの導体であり、通常接地されている。ここで、接続管29がカソードプラズマ2によって励起され、このガスライン47との間に放電が生ずる。ここで生ずる放電がガスライン47に拡大して、事故が発生する可能性もあるので、この放電を防ぐ方策が不可欠の問題である。

【0035】
このガス入力部9での放電を避ける方法は、入力部9の口径(すなわち断面積)をジェット部の径より充分小さくすることである。一例としては1mm以下にすることが効果的である。このように、入力部9の口径を小さくするとガス流量が制限され、プラズマの入り口方向への逆流を防ぐので、放電がガスラインに達することはない。従って、図6(b)に示すように細管を束ねたキャピラリーを挿入してガスが通過する断面積を減少させることにより目的を達することができる。ここで、キャピラリー49は接続管29の中に絶縁物30内の保護管50の中に固定される。また、キャピラリー49は、ビーズ状のものを用いて作製しても良い。

【0036】
なお、放電容器31は、電気的に絶縁物であって石英、アルミナ、パイレックスガラス、テフロン、窒化珪素、窒化アルミニウム等のようなものであることが好ましく、円筒形又はそれに近い形であれば良い。また、放電容器31のジェット部5は高温になる可能性が高いので、空冷又は水冷のできる構造であることが好ましい。

【0037】
以下、本発明に係るプラズマラジカル生成装置の上記の放電容器31を適用した例を示す。

【0038】
(適用例1)本発明のプラズマラジカル生成装置の放電容器31を適用したプロセス装置の構成を図7に示す。上記の実施形態では、特に放電容器31に重点をおいて説明したが、図7では、その周辺機器(例えば、電源、シールド箱、プロセス部など)も併せて示されている。

【0039】
図7において、供給される高周波電力は、カソード電極10の最も近くに接地されるとき、電力効率は最も良くなる。整合回路42の容量22、負荷容量23、及びコイル24からなる整合回路42は放電容器31のジェット部5、カソード部6及びアノード部7の周囲に配置されている。高周波電力は接栓21から加えられる。可変容量22、23のチューニングはそれぞれ回転軸22a、23aによってなされる。コイルは図示のように2つの部分に分割され、空間的配置のバランスの良いようにされる。これは、極めてコンパクトな形にでき、しかも効率の良い配置である。

【0040】
プラズマラジカル輸送管8は、プラズマ源43とプロセス容器17とを結ぶものである。プロセス容器17は基板19の付いた基板支持台18の近くに置かれる。プロセスガス44を分散させる分配システム45を通してプロセスガス44が導入されることによって、ラジカルの科学的エネルギー、物理的エネルギーは、プロセスガスの分解のためのエネルギーとして消費されることとなる。反応生成物20は真空ポンプ46で引き取られる。このプラズマ装置からの水素ラジカルの測定結果を図8に示す。図8は通常のホロカソードプラズマ装置を使ったときのラジカルの濃度と本発明にかかる装置を使ったときのラジカルの濃度との比較を示す図である。この測定はNOガスを滴定ガスとしてホロカソード出力端からガラス管中をラジカルを輸送し、その途中で数カ所で滴定ガスを注入して測定したものである。図8によれば、本発明にかかるラジカルは、減衰が少なく、寿命が長いことが示されている。このことは、より高い励起状態にすることができる結果であると解釈される。また、このラジカル源では、近くで使用するときパワー効率が1.6倍、遠方で使用するときは、4倍のパワー効率が得られている。この結果は、ラジカル源としては、有用な結果である。

【0041】
(適用例2)本発明に係る放電容器31を1つ用いてプロセスに使用した適用例を上記の適用例1に示したが、複数個の放電容器31をライン状に並べて使用することもできる。図9に、放電容器31(31a-31e)を複数個一列に整列させた場合を示す。図9において、図7と同じ部分には、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図9においては、各放電容器31a-31eのアノード部とカソード部の電極を共有する形で連結し、アノード電極52とカソード電極51を共通としてカソード電極51のみに高周波を一つの電源14から給電している。このようにすることにより、図示しないインピーダンス整合回路も1つの整合回路によって調整することができる。また、すべての放電容器31は同一のプロセス容器17に結合され、プロセス容器17内の基板固定台18を移動させることにより大面積の薄膜堆積、又はプラズマプロセス装置を作ることができる。

【0042】
図10は、図9のA-A矢視図であって、帯状のストライプ電極を用いてカソード及びアノードを連続して構成する方法を示したものである。例えば、帯状の銅等で放電容器を挟み込むようにして、構成することにより、簡単に電極を共有することができる。例えば、図10に示すように、上部電極帯56と下部電極帯55とで放電容器を挟み込むようにして、この上部及び下部電極帯55及び56を複数の放電容器に共通接続されるように構成している。ここで、すべてのカソード壁57a-57eの径、アノード壁58a-58cの径、及び容器の厚さは同じ寸法であることが好ましい。また、ジェット壁59a-59cの径も同じ寸法であることが好ましい。また、ジェット部59a-59cも同じ寸法でなければならない。

【0043】
図10の複数個の放電容器31の電極を共有化して、カソード電極などに同時に給電する方法は2次元平面的に拡張することができる。その配置例を図11(a)と図11(b)に示す。これは帯状電極を切断することなく連結できるようにするための配置例である。

【0044】
本発明は、上記の発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変形して実施できるのは勿論である。

【0045】

【発明の効果】本発明によれば次のような効果が得られる。

【0046】
上記のように、本発明の放電容器及びこの放電容器を備えたプラズマラジカル生成装置によれば、簡単な構成で、高効率及び高密度のラジカルを生成できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図10】
8
【図9】
9
【図11】
10
【図12】
11