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明細書 :凍結保護物質の調製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4334719号 (P4334719)
公開番号 特開2001-139599 (P2001-139599A)
登録日 平成21年7月3日(2009.7.3)
発行日 平成21年9月30日(2009.9.30)
公開日 平成13年5月22日(2001.5.22)
発明の名称または考案の名称 凍結保護物質の調製方法
国際特許分類 C12P  21/00        (2006.01)
C07K   1/18        (2006.01)
C07K   1/20        (2006.01)
C07K   1/22        (2006.01)
C07K  14/27        (2006.01)
C12R   1/18        (2006.01)
FI C12P 21/00 B
C07K 1/18
C07K 1/20
C07K 1/22
C07K 14/27
C12P 21/00 B
C12R 1:18
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2000-059444 (P2000-059444)
出願日 平成12年3月3日(2000.3.3)
優先権出願番号 1999240928
優先日 平成11年8月27日(1999.8.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年3月7日(2006.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】小幡 斉
【氏名】河原 秀久
【氏名】山出 和弘
【氏名】小村 啓悟
【氏名】金子 昌二
【氏名】坂本 紀子
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
審査官 【審査官】池上 文緒
参考文献・文献 特開平05-276977(JP,A)
特開平05-236944(JP,A)
Biosci. Biotechnol. Biochem. (1998) vol.62, no.11, p.2091-2097
日本農芸化学会 西日本・関西支部合同大会およびシンポジウム講演要旨集 (1997) p.32(A-13)
日本農芸化学会1999年度大会講演要旨集 (Mar 1999) p.269(3a411A)
化学と生物 (1997) vol.35, no.10, p.679-681
調査した分野 C12P 21/00
C07K 14/27
PubMed
BIOSIS/WPI(DIALOG)
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)を、20~40℃で前培養した後、5℃~18℃、10~96時間低温培養し、低温培養後の菌体内の物質を、硫酸アンモニウムで塩析し、硫酸アンモニウムでの塩析後の画分を、第4級アンモニウム基を有する陰イオン交換クロマトグラフィーにかけて活性画分を溶出させ、溶出された活性画分を吸着クロマトグラフィーにかけてさらに活性画分を溶出させ、溶出された活性画分をゲルろ過クロマトグラフィーにかけてさらに活性画分を溶出させ、溶出された活性画分を疎水性クロマトグラフィーにかけてさらに活性画分を溶出させ、溶出された活性画分を分取して、分子量29000Da(ゲル濾過クロマトグラフィーによる測定、及びSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による測定)の単量体からなる凍結保護物質を精製することにより得られる凍結保護物質を、0.01~1μg/mlの濃度に調製することを特徴とする凍結保護物質の調製方法。
【請求項2】
析を、飽和度60~80%の硫酸アンモニウムによって行う請求項記載の凍結保護物質の調製方法。
【請求項3】
イオン交換クロマトグラフィーによる精製工程において、リン酸カリウム緩衝液と塩化ナトリウムにより、塩化ナトリウムの濃度勾配溶出法で活性画分を溶出させる請求項1又は2記載の凍結保護物質の調製方法。
【請求項4】
着クロマトグラフィーによる精製工程において、リン酸カリウム緩衝液の濃度勾配溶出法で活性画分を溶出させる請求項1乃至3のいずれかに記載の凍結保護物質の調製方法。
【請求項5】
ルろ過クロマトグラフィーによる精製工程において、塩化ナトリウムを含むリン酸カリウム緩衝液で溶出させる請求項1乃至4のいずれかに記載の凍結保護物質の調製方法。
【請求項6】
水性クロマトグラフィーによる精製工程において、リン酸カリウム緩衝液と硫酸アンモニウムにより、硫酸アンモニウムの濃度勾配溶出法で活性画分を溶出させる請求項1乃至5のいずれかに記載の凍結保護物質の調製方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、代謝系酵素などのタンパク質の凍結変性を防止することができる凍結保護物質の調製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質や細胞、微生物、あるいは動物臓器等を長期間にわたって保存するためには、これらを凍結する手段が採られている。しかしながら、一般に、タンパク質を凍結させるとその高次構造が変化すること(以下、この変化を「凍結変性」と記載する)が知られており、凍結変性が起こるとそのタンパク質は失活し、融解後に本来の機能を回復できない。
【0003】
従来、このようなタンパク質の凍結変性を防止する方策としては、グルコース、ショ糖、トレハロース、ソルビトールなどの糖類や、グリセリンや、アルブミンなどを添加することが知られており、これらを添加することにより、凍結時にタンパク質の凍結変性を防止し、融解後にそのタンパク質の本来の機能を回復させることができる。このため、これらの物質の溶液は、例えば、血液、臓器、酵素などの保存液として用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、糖類、グリセリン、アルブミンなどの添加によって凍結変性防止効果を得るためには、これらの物質を非常に高い濃度で添加しなければならない。例えば、糖類の場合には、濃度10~30%となる程度に添加する必要がある。そして、糖類などを高濃度で添加した溶液は、タンパク質の代謝機能を維持させることが困難であるため、保護したタンパク質を好適に使用するためには、融解させた後にその糖類を透析などをして取り除かなければならないという欠点がある。
【0005】
また、凍結変性を防止する物質としてジメチルスルホキシドも用いられているが、ジメチルスルホキシドはタンパク質や細胞の代謝に対して毒性を有することが知られており、好ましくはない。
【0006】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、従来の凍結保護物質に代わるものとして、比較的低濃度で使用することができ、代謝系酵素などのタンパク質の凍結変性を簡便かつ確実に防止することができる凍結保護物質を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願は、前記の課題を解決するものとして、以下の(1)~(9)の発明を提供する。
(1)パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)を、20~40℃で前培養した後、5℃~18℃、10~96時間低温培養し、低温培養後の菌体内の物質を、硫酸アンモニウムで塩析し、硫酸アンモニウムでの塩析後の画分を、第4級アンモニウム基を有する陰イオン交換クロマトグラフィーにかけて活性画分を溶出させ、溶出された活性画分を吸着クロマトグラフィーにかけてさらに活性画分を溶出させ、溶出された活性画分をゲルろ過クロマトグラフィーにかけてさらに活性画分を溶出させ、溶出された活性画分を疎水性クロマトグラフィーにかけてさらに活性画分を溶出させ、溶出された活性画分を分取して、分子量29000Da(ゲル濾過クロマトグラフィーによる測定、及びSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による測定)の単量体からなる凍結保護物質を精製することにより得られる凍結保護物質を、0.01~1μg/mlの濃度に調製することを特徴とする凍結保護物質の調製方法。
(2)前記発明(1)において、塩析を、飽和度60~80%の硫酸アンモニウムによって行う凍結保護物質の調製方法。
(3)前記発明(1)又は(2)において、陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製工程においてリン酸カリウム緩衝液と塩化ナトリウムにより、塩化ナトリウムの濃度勾配溶出法で活性画分を溶出させる凍結保護物質の調製方法。
(4)前記発明(1)乃至(3)のいずれかにおいて、吸着クロマトグラフィーによる精製工程においてリン酸カリウム緩衝液の濃度勾配溶出法で活性画分を溶出させる凍結保護物質の調製方法。
(5)前記発明(1)乃至(4)のいずれかにおいて、ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製工程において塩化ナトリウムを含むリン酸カリウム緩衝液で溶出させる凍結保護物質の調製方法。
(6)前記発明(1)乃至(5)のいずれかにおいて、疎水性クロマトグラフィーによる精製工程においてリン酸カリウム緩衝液と硫酸アンモニウムにより、硫酸アンモニウムの濃度勾配溶出法で活性画分を溶出させる凍結保護物質の調製方法。
【0009】
以下、これらの発明について、発明の実施形態を詳しく説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
発明(1)及び(2)の凍結保護物質は、Erwinia herbicola(新菌株名 Pantoea agglomeransとも言う)が低温ストレス下において産生する物質(タンパク質分子)である。Pantoea agglomeransは、低温環境下の土壌または水中から単離された微生物である。
【0011】
Erwinia herbicola(新菌株名 Pantoea agglomeransとも言う)は氷核細菌であって、財団法人発酵研究所に保存されており、そのカタログから容易に入手できる(例えば、Erwinia herbicola IFO12686等)。
【0015】
この発明における凍結保護物質は、前記のとおりの微生物が菌体内に産生するタンパク質であって(Pantoea agglomerans由来のものは分子量約29,000Da)、少量で各種タンパク質、特に、乳酸デヒドロゲナーゼ、エノラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ムタロターゼなどの代謝系酵素の凍結変性を防止する効果を有する。
【0016】
なお、この出願の発明者らは、氷核活性物質の製法(特開平2-76595号公報)を既に出願しているが、この氷核活性物質は氷結晶となる物質であり、菌体外に分泌されるものであって、この発明における凍結保護物質とは全く異なるものである。
【0017】
この発明における凍結保護物質は、発明(1)、(2)の方法により調製することができる。すなわち、発明(1)、(2)調製方法は、前記の微生物を30℃以下の低温で培養することにより凍結保護物質の発現を誘導させ、その培養物中から凍結保護物質を取得することを特徴とする。
【0018】
微生物を培養するための培地は公知のものを適宜選択すれば良く、例えば、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、ペプトン、大豆粉末、トウモロコシ粉末、カゼイン、セリン、アラニン、グリシン、ロイシン、リジン、スレオニン、チロシン、グルタミン酸などが窒素源として用いられ、これに、ビタミンB1、ビタミンB2、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン成分や、ショ糖、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、マルトース、澱粉などを適宜選択して調製することができる。これらの中でも、酵母エキス、アラニン、セリンを窒素源として含有し、硫酸カリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム7水和物を無機塩類として含有し、ショ糖を炭素源として含有する培地が好ましい。
【0019】
また、培地のpHは通常6~8程度に調整することが好ましい。pH値がこの範囲から大きく外れると、微生物の生育が低下すると共に凍結保護物質の凍結保護活性も低下する。
【0020】
微生物を培養する条件は、例えば、通常、20℃~40℃、好ましくは25℃~35℃で、8時間~24時間、好ましくは12時間程度培養した後、低温ショックをかけた状態で低温培養する。低温培養は、温度条件として0℃~30℃、好ましくは5℃~18℃、さらに好ましくは10℃~15℃、培養時間として10時間~96時間、好ましくは24~72時間の範囲で行うことができる。
【0021】
より好ましい培養条件は、約30℃、12時間程度で培養した後、菌体を15分以内のうちに約12℃まで急冷し、約12℃下で48時間程度で低温培養する。この条件によって最も効率よく、かつ保護活性の高い凍結保護物質が生産される。
【0022】
この発明における凍結保護物質は、上記条件で培養した後、公知の分離操作を組み合わせることによって菌体内から単離精製することができる。例えば、尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒沈殿法、透析、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0023】
例えば、具体的には、低温培養後の菌体を超音波処理やダイノミル等で破砕し、遠心分離によって不溶物を取り除き、その上清を飽和度40~90%、好ましくは飽和度40~80%、より好ましくは飽和度60~80%の硫酸アンモニウムによって塩析することにより、目的とする凍結保護物質が含まれた画分が沈殿する。
【0024】
上記塩析によって得られた画分を凍結保護物質として用いてもよいが、さらに必要に応じて、この画分を各種のクロマトグラフィー処理で精製してもよい。
例えば、第4級アンモニウム基を有する陰イオン交換クロマトグラフィーに、所定速度(例えば、流速2.0 ml/分)で目的とする凍結保護物質を含む画分を負荷し、0.2~0.4mol/l(モル/リットル)の塩化ナトリウムで溶出させることにより、部分精製された凍結保護物質を得ることができる。
【0025】
この発明(1)、(2)の調製方法は、菌体を利用するものであるため、大型設備、広い敷地、エネルギーなどを必要とせず、工業的製造に適するものである。
【0027】
なお、発明(1)および(2)の凍結保護物質は、耐熱性を有しているため、熱処理による簡易精製が可能であることの他に、加熱殺菌が可能であるという利点を有している。生物材料の場合には、無菌状態であることや、プロテアーゼ、DNA分解酵素等を含まないこが要求されるためである。
【0028】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、これらの発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、得られた凍結保護物質の凍結保護活性はC. Linらの方法(C.Lin and M.F.Thomashow; Biochemical and Biophysical Research Communications, 183, 1103-1108, 1992)に従って測定した。すなわち、低温感受性酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ溶液(150μg/ml)0.02 mlと試料(1,000μg/ml)0.08 mlを混合し、プログラムフリーザーを用いて毎分1℃の速度で温度を下げて-20℃で24時間凍結させた後、同じ速度で融解した。その溶液60μlに80 mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.5)、100 mM塩化カリウム、2 mMピルビン酸、0.3 mM NADHからなる反応液3 mlを添加した後、分光光度計を用いて波長340 nmにおける吸光度の1分間の減少量(ΔA)を測定し、以下に示す計算式に基づいて、その試料の凍結保護活性を百分率で表した。なお、試料のかわりに緩衝液を添加したものの酵素活性を測定し、それぞれ凍結前後のブランクとした。
【0029】
【式1】
JP0004334719B2_000002t.gif【0030】
すなわち、活性100%とは、凍結後の乳酸デヒドロゲナーゼ活性が凍結前の活性に保たれている状態であり、逆に活性0%とは、凍結後の活性が、凍結後のブランクの活性と同じ状態まで低下した状態を表す。
【0031】
【実施例】
実施例1:菌体の培養
50ml三角フラスコ中に市販のTrypticasa Soy Broth(TSB培地、pH7.0、Becton Dickinson and Company製)を10 ml入れ121℃で20分間殺菌して冷却した後、そこに菌株としてPantoea agglomeransを一白金耳分植菌し、18℃、24時間振とう培養し前培養液とした。次いで、500 ml三角フラスコ中に、市販の酵母エキス30g、DL-セリン2 g、DL-アラニン2 g、硫酸カリウム8.6 g、塩化カリウム1.4 g、硫酸マグネシウム7水和物1.4 g、ショ糖10 gを1000 mlの蒸留水に溶解させた培地を100 ml入れ、121℃で20分間殺菌して冷却した後、これに前培養液を1 ml(1.0×108細胞)植菌し、30℃、12時間培養した。その後、低温培養として、12℃に冷却し、さらに48時間培養した。培養終了後、この培養液を超音波破砕器(19.9 KHz)で破砕し、さらに遠心分離機にて50,000rpmで遠心分離して膜成分などを除去した。この上澄み液にストレプトマイシン硫酸塩を添加して核酸成分を沈澱させ、遠心分離で除去した。さらに、この上澄み液を10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で透析し、遠心分離に付し、その上澄み液を取り出して無細胞抽出液を得た。
実施例2:凍結保護物質の精製
1. 硫酸アンモニウム60~80%処理
実施例1で得られた無細胞抽出液に、硫酸アンモニウムを60%飽和になるように添加し、析出した沈殿物を遠心分離により除き、得られた上清に再度硫酸アンモニウムを80%飽和になるように添加し、遠心分離により沈殿物を得た。
2. スーパーQトヨパールによる精製
沈殿物を、第4級アンモニウム基を有する陰イオン交換クロマトグラフィー (カラム:2.6 cm×20 cm)にかけ、10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)とNaClにより、1 M NaClの濃度勾配溶出法で溶出させて得られた活性画分を集めた。
3. ヒドロキシアパタイトによる精製
活性画分を吸着クロマトグラフィー(カラム:1.6 cm×20 cm)にかけ、10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)から500 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)への濃度勾配溶出法で溶出させて得られた活性画分を集めた。
4. スーパーロース12による精製
活性画分をゲルろ過クロマトグラフィー(カラム:1.6 cm×60 cm)にかけ、0.15 M NaClを含む10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で溶出させて得られた活性画分を集めた。
5. フェニルトヨパール による精製
最後に、活性画分を疎水性クロマトグラフィー(カラム:0.32 cm×5 cm)にかけ、10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)と硫酸アンモニウムにより、55%硫酸アンモニウムの濃度勾配溶出法で溶出させて得られた活性画分を分取して精製凍結保護物質を得た。
【0032】
なお、実施例1とこの実施例2に準じた方法でその他低温微生物の凍結保護物質を調製し、30℃で培養した場合と、さらに低温培養した場合の凍結保護活性を前記C. Linらの方法で測定した。結果は表1に示したとおりである。この表1から明らかなように、30℃で培養した後、さらに低温培養(12℃)することによって、凍結保護活性が高まることが確認された。
【0033】
また、実施例2に示す1~5のステップにおける試料の総タンパク質量、凍結保護活性は、表2に示したとおりであった。
【0034】
【表1】
JP0004334719B2_000003t.gif【0035】
【表2】
JP0004334719B2_000004t.gif【0036】
実施例3:凍結保護物質の分子量測定
実施例2で精製した凍結保護物質をスーパーロース12を担体に用いたゲルろ過クロマトグラフィーにかけ、検量線から分子量を求めた。結果は図1-Aに示したとおりであり、得られた凍結保護物質の分子量は約29,000Daであった。また、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果(図1-B)から推定される分子量も約29,000Daであったことから、この凍結保護物質は、分子量29,000Daの単量体であることが確認された。
実施例4:他の凍結保護材との保護活性の比較
実施例2で精製した凍結保護物質を各濃度(0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000 μg/ml)に調製し、C.Linらの凍結保護活性の測定方法に準じて酵素の残存活性を測定した。なお、他の凍結保護材と比較するため、牛血清アルブミン(BSA)およびショ糖についても同様に凍結保護効果を調べた。
【0037】
結果は図2に示したとおりである。この図2から明らかなように、凍結保護活性を持つことで知られるBSAで、0.1μg/ml、スクロースで10μg/mlで、活性が消失するのに対して、この発明の凍結保護物質は0.001μg/mlでも凍結保護活性を維持していた。また、BSAより105倍も低い濃度で100%の凍結保護活性を示したことから、極少量での使用が可能であることが判明した。
実施例5:酵素試薬の安定化
実施例2で精製した凍結保護物質を用いて、低温感受性酵素として知られる乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、NAD+依存型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(iCDH)、NADP+依存型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(riCDH)の安定化を実施した。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)に対する残存活性確認は、C. Linらの測定方法に準じて行った。また、その他の酵素の残存活性確認についても、それぞれの酵素活性測定に適した反応液を使用し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の測定方法に準じて行った。
【0038】
結果は表3に示したとおりである。この表3から明らかなように、上記酵素試薬に対して、1 ng/mlの濃度のこの発明の凍結保護物質を添加することで、高い保護活性があり、少量でも酵素試薬の安定化に十分有効であることが判明した。
【0039】
以上のことから、この発明の凍結保護物質は、試薬以外にも酵素やタンパク質を含む診断薬・医薬品等の凍結保存時の安定性向上に有効であることが確認された。
【0040】
【表3】
JP0004334719B2_000005t.gif【0041】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、比較的低濃度の添加量で代謝系酵素などのタンパク質の凍結変性を防止することのできる、微生物由来の凍結保護物質が提供される。また、この凍結保護物質を用いることによって、タンパク質や細胞、臓器、微生物等の生物材料を安定に凍結保存する方法や、生理活性等を維持した状態で安定に凍結保存されたタンパク質や各種の生物材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aはこの発明の凍結保護物質(○)のゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量を示したグラフであり、BはSDS-PAGEによる電気泳動像である。
【図2】各種凍結保護物質の各濃度における凍結保護活性を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1