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明細書 :疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いた各種反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3845074号 (P3845074)
公開番号 特開2004-358301 (P2004-358301A)
登録日 平成18年8月25日(2006.8.25)
発行日 平成18年11月15日(2006.11.15)
公開日 平成16年12月24日(2004.12.24)
発明の名称または考案の名称 疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いた各種反応方法
国際特許分類 B01J  31/06        (2006.01)
C07C  51/09        (2006.01)
C07C  53/126       (2006.01)
C07C  63/04        (2006.01)
C07C 319/08        (2006.01)
C07C 321/04        (2006.01)
C07C 321/20        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/06 Z
C07C 51/09
C07C 53/126
C07C 63/04
C07C 319/08
C07C 321/04
C07C 321/20
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 3
全頁数 21
出願番号 特願2003-157036 (P2003-157036)
出願日 平成15年6月2日(2003.6.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 「Organic Letters,Vol.5,No.2」(2003年1月23日発行)第101-103ページに発表
特許法第30条第1項適用 日本化学会第83春季年会講演予稿集II(2003年3月3日発行)第1229ページに発表
審査請求日 平成15年6月2日(2003.6.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】眞鍋 敬
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開平09-216842(JP,A)
特開平03-275644(JP,A)
特開平05-213803(JP,A)
特開平08-269042(JP,A)
特開昭57-139033(JP,A)
特開昭63-014745(JP,A)
特開昭60-163831(JP,A)
特開2002-346392(JP,A)
特開2001-002600(JP,A)
特表平03-504983(JP,A)
MANABE, K. et al.,Dehydrative Esterification of Carboxylic Acids with Alcohols Catalyzed by Polymer-Supported Sulfonic,Adv. Synth. Catal.,2002年,Vol. 344, No. 3+4,p. 270-273
MIZOTA, T. et al.,Hydrolysis of Methyl Acetate and Sucrose in SO3H-Group-Containing Grafted Polymer Chains Prepared by,Ind. Eng. Chem. Res.,1994年,Vol. 33, No. 9,p. 2215-2219
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(I)
【化1】
JP0003845074B2_000029t.gif
(ただし、黒丸は架橋度0.110 %のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを表し、スルホン酸含有量は0.10.5 mmol/gである)で表される疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の存在下、水中で、次式(II
RCOSR'II
(ただし、RおよびR'は、同一または別異に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基を示す)で表されるチオエステル化合物を加熱処理して、次式(III
RCOOH (III
(ただし、Rは前記と同じ有機基を示す)で表されるカルボン酸と、次式(IV
'SH (IV
(ただし、R'は前記と同じ有機基を示す)で表されるチオール化合物を得ることを特徴とするチオエステルの水中加水分解反応方法。
【請求項2】
次式(I)
【化1】
JP0003845074B2_000030t.gif
(ただし、黒丸は架橋度0.110 %のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを表し、スルホン酸含有量は0.10.5 mmol/gである)で表される疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒と、次式(V)
1OH (V)
(ただし、R1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基を示す)で表されるアルコールの存在下、水中で、次式(VI
2SCOR3VI
(ただし、R2およびR3は、同一または別異に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基を示す)で表されるチオエステルを加熱処理し、次式(VII
1SR2VII
(ただし、R1およびR2は、前記と同じ有機基を示す)で表されるチオエーテルを得ることを特徴とするチオールの水中保護基交換反応方法。
【請求項3】
次式(I)
【化1】
JP0003845074B2_000031t.gif
(ただし、黒丸は架橋度0.110 %のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを表し、スルホン酸含有量は0.10.5 mmol/gである)で表される疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒と、次式(VIII
4CHO (VIII
(ただし、R4は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基からなる群より選択される有機基を示す)
で表されるアルデヒドの存在下、水中で、次式(IX
AcS(CH2nSAc (IX
(ただし、nは2~5の整数を示す)で表されるジチオエステルを加熱処理し、次式(X)
【化2】
JP0003845074B2_000032t.gif
(ただし、R4は、前記と同じ有機基を示し、nは前記と同じ整数を示す)で表されるジチオアセタールを得ることを特徴とするカルボニル化合物の水中ジチオアセタール化反応方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、水中でチオエステルを加水分解するための疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いた各種反応方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いたチオエステルの水中加水分解反応方法およびチオールの水中保護基交換反応方法並びにカルボニル化合物の水中ジチオアセタール化反応方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、環境や人体への配慮から、安価で安全な媒体として水が注目されている(非特許文献1および2)。とくに、有機反応を水中で行うことができれば、溶媒、基質、触媒等の乾燥が不要となり、反応工程の短縮やコスト削減につながるだけでなく、環境保全の観点からも利点が大きい。
【0003】
これまでにも水媒体中で有機反応を行うための触媒が数多く報告されている(例えば、非特許文献3~4)が、このような触媒の多くは、使用後の回収や再利用が困難であるという問題があった。
【0004】
一方、チオエステル化合物は、各種の求核試薬に対して高い反応性を示し、かつチオールやカルボン酸の保護基としても有用である(非特許文献5)ため、有機合成においてのみならず、生物学的にも重要な化合物群である。一般に、チオエステルの加水分解によるチオールやカルボン酸の合成は、塩基性条件下で行われるが、このような方法では、チオールの酸化によるジスルフィドの生成が起こりやすく、当量以上の試薬を要するという問題があった。また、酸触媒によるチオエステルの加水分解反応も知られているが、反応の活性化エネルギーが高い(非特許文献6~7)ため、6N HClのような強酸を過剰量使用しなければならないという問題があった(非特許文献8~10)。さらに、非水溶性のチオエステルを、有機溶媒を使用することなく、酸触媒により加水分解する方法は実現していなかった。
【0005】
したがって、これまでチオエステルの加水分解反応を水媒体中で行うことは困難と考えられていたのが実情である。チオエステルの加水分解反応を、収率高くかつ選択的に水中で行う方法が提供されれば、環境負荷が小さく、安価な方法として有用になると期待される。
【0006】
【特許文献1】
特開平11-244705
【特許文献2】
特願2001-075091
【非特許文献1】
Organic Synthesis in Water, Grieco, P.A., Ed.; Blackie Academic and Professional; London, 1998
【特許文献2】
Li, C.-J.; Chan. T.-H. Organic Reactions in Aqueous Media; John Wiley & Sons; New York, 1997
【非特許文献3】
Aqueous-Phase Organometallic Catalysis, Concepts and Applications; Cornils, B., Herrmann, W.A., Eds.; Wiley-VCH; Weinheim, 1998
【非特許文献4】
Kobayashi, S.; Manabe, K. Acc. Chem. Res. 2002, 35, 209
【非特許文献5】
Greene T. W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd ed.; John Wiley & Sons; New York, 1999
【非特許文献6】
Bruice, T.C. In Organic Sulphur Compounds; Kharasch, N. Ed; Pergamon Press; London, 1961; Vol. 1, p. 421 and references therein
【非特許文献7】
Iimura, S.; Manabe, K.; Kobayashi, S. Chem. Commun. 2002, 94
【非特許文献8】
Garbiras, B. J. et al. Synthesis 1999, 270
【非特許文献9】
Bergeron, RJ. et al. J. Med. Chem. 1999, 42, 95
【非特許文献10】
Effenberger, F. et al. Chem. Ber. 1989, 122, 553
【非特許文献11】
Kobayashi, S. Curr. Opin. Chem. Biol. 2000, 4, 338
【非特許文献12】
Ley, S. V. et al. J. Chem. Soc., Perkin Trans, 1, 2000, 3815
【非特許文献13】
Nagayama, S.; Kobayashi, S. Angew, Chem., Int. Ed. 2000, 39, 567
【非特許文献14】
Bergbreiter, D. E. et al. Tetrahedron Lett. 1997, 38, 7843
【非特許文献15】
Bergbreiter, D.E. et al. Macromolecules 1998, 31, 6053
【非特許文献16】
Chen. C.-W. et al. Chem. Commun. 1998, 831
【非特許文献17】
Danjo, H. et al. Tetrahedron 1999, 55, 14341
【非特許文献18】
Uozumi, Y. et al. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 2919
【非特許文献19】
Sakamoto, T. et al. Tetrahedron Lett. 2000, 41, 10009
【非特許文献20】
Yamada, Y. M. A. et al. Org. Lett. 2001, 3, 1837
【非特許文献21】
Masaki, Y. et al. Synlett 2001, 1311
【非特許文献22】
Manabe, K.; Mori, Y.; Kobayashi, S. Synlett 1999, 1401
【非特許文献23】
Manabe, K.; Kobayashi, S. Org. Lett. 1999, 1, 1965
【非特許文献24】
Manabe, K.; Mori, Y.; Kobayashi, S. Tetrahedron 2001, 57, 2537
【非特許文献25】
Manabe, K.; Sun, X.-M; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc. 2001, 124, 10101
【非特許文献26】
Kobayashi, S.; Iimura, S.; Manabe, K. Chem. Lett. 2002, 10
【非特許文献27】
Manabe, K.; Iimura, S.; Sun, X.-M.; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 11971
【非特許文献28】
Patney, H. K. Synth. Commun. 1993, 23, 1829
【非特許文献29】
Tam-Chang, S.-W.; Mason, J. C. Tetrahedron 1999, 55, 13333
【非特許文献30】
Manabe, K.; Iimura, S.; Sun, X.-M.; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 11971
【非特許文献31】
Ku, B.; Oh, D. Y. Synth. Commun. 1989, 19, 433
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解決し、水中において、高収率でチオエステルの加水分解を行うための水中加水分解反応用触媒を用いた各種反応方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
高分子固定化触媒は、従来より使用後の回収、再利用が容易な触媒系として注目されている(非特許文献11~12)。また、水中で効率的に作用する高分子固定化触媒の触媒活性には、高分子と有機基質の疎水性相互作用が重要な働きを示すと考えられている(例えば、非特許文献13~21)。
【0009】
この出願の発明者らは、以上のとおりの知見に基づき、チオエステルの高収率水中加水分解のための触媒を実現すべく鋭意研究を進め、本願発明に至ったものである。
【0010】
すなわち、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式(I)
【化1】
JP0003845074B2_000002t.gif(ただし、黒丸は架橋度0.110 %のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを表し、スルホン酸含有量は0.10.5 mmol/gである)で表される疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の存在下、水中で、次式(II
RCOSR'II
(ただし、RおよびR'は、同一または別異に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基を示す)で表されるチオエステル化合物を加水分解して、次式(III
RCOOH (III
(ただし、Rは前記と同じ有機基を示す)で表されるカルボン酸と、次式(IV
'SH (IV
(ただし、R'は前記と同じ有機基を示す)で表されるチオール化合物を得ることを特徴とするチオエステルの水中加水分解反応方法を提供する。
【0011】
この出願の発明は、第2には、次式(I)
【化1】
JP0003845074B2_000003t.gif(ただし、黒丸は架橋度0.110 %のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを表し、スルホン酸含有量は0.10.5 mmol/gである)で表される疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒と、次式(V)
1OH (V)
(ただし、R1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基を示す)で表されるアルコールの存在下、水中で、次式(VI
2SCOR3VI
(ただし、R2およびR3は、同一または別異に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基を示す)で表されるチオエステルを加熱処理し、次式(VII
1SR2VII
(ただし、R1およびR2は、前記と同じ有機基を示す)で表されるチオエーテルを得ることを特徴とするチオールの水中保護基交換反応方法を提供する。
【0012】
さらに、第3には、この出願の発明は、次式(I)
【化1】
JP0003845074B2_000004t.gif(ただし、黒丸は架橋度0.110 %のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを表し、スルホン酸含有量は0.10.5 mmol/gである)で表される疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒と、次式(VIII
4CHO (VIII
(ただし、R4は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基からなる群より選択される有機基を示す)
で表されるアルデヒドの存在下、水中で、次式(IX
AcS(CH2nSAc (IX
(ただし、nは2~5の整数を示す)で表されるジチオエステルを加熱処理し、次式(X)
【化2】
JP0003845074B2_000005t.gif(ただし、R4は、前記と同じ有機基を示し、nは前記と同じ整数を示す)で表されるジチオアセタールを得ることを特徴とするカルボニル化合物の水中ジチオアセタール化反応方法を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒は、次式(I)
【0021】
【化5】
JP0003845074B2_000006t.gif
【0022】
で表され、疎水性高分子(黒丸)固定化スルホン酸からなるものである。
【0023】
このとき、疎水性高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の各種のものが適用される。発明者らの研究によれば、とくにジビニルベンゼン架橋ポリスチレンが好ましく、これをスルホン化して得られるジビニルベンゼン架橋ポリスチレン固定化スルホン酸(以下、本明細書において、これをPS-SO3Hと呼ぶことがある)を触媒として用いることにより、高い収率でチオエステルの加水分解反応が進行することが確認されている。
【0024】
この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒において、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンの架橋度はとくに限定されないが、好ましくは、0.1~10 %とする。さらに、発明者らの研究によれば、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒におけるスルホン酸含有量は、触媒活性に直接影響を及ぼすことから、好ましくは、0.1~0.5 mmol/g(疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒重量に対して)とする。
【0025】
以上のとおりのこの出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒は、水に溶解せず、水中でほとんど膨潤もしないことから、使用後の回収が容易であり、再利用しても繰り返し高い触媒能を維持できる。
【0026】
このような疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒は、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを適当な有機溶媒に分散させ、これにクロロスルホン酸(HSO3Cl)を加え、冷却しながら攪拌することにより簡単に製造できる。また、このような疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の形状はとくに限定されず、粉末、ビーズ、ペレット等の形態が例示される。触媒活性を考慮すれば、比表面積を広くすることが望ましいことから、中でも粉末、粉末の造粒物、多孔質のビーズ等が好ましい。また、これらの平均粒径は、特に限定されないが、ろ過による回収のしやすさを考慮して、例えば、10~500 mesh(Tyler)とすることができる。
【0027】
以上のとおりのこの出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒は、次式(II)
RCOSR' (II)
で表されるチオエステル化合物の水中加水分解反応用触媒として有用なものである。すなわち、式(II)で表されるチオエステル化合物を前記の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の存在下、水中で加水分解反応することにより、次式(III)
RCOOH (III)
で表されるカルボン酸と、次式(IV)
R'SH (IV)
で表されるチオール化合物が高収率で得られるのである。
【0028】
これら式(II)~(III)において、RおよびR'は、各々、同一または別異に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基である。
【0029】
具体的には、RおよびR'としては、メチル、エチル、プロピルを始めとする炭素数1~20の直鎖状アルキル基、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等の分岐状アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル基、ビニル、アリル等のアルケニル基、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール基、フリル、イミダゾリル、チオフェン、ピロール、ピリジル等のヘテロ環基が例示される。これらの有機基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0032】
この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いたチオエステル化合物の水中加水分解反応、次式で表される。
【0033】
【化6】
JP0003845074B2_000007t.gif
【0034】
このようなチオエステルの水中加水分解反応は、有機溶媒を一切使用することなく、高収率で進行する。また、この出願の発明のチオエステルの水中加水分解反応方法では、反応基質や高分子固定化ブレンステッド酸触媒の濃度、反応温度、反応時間、反応系の雰囲気等はとくに限定されない。例えば、チオエステル化合物の濃度は0.1 mmol~1.0 mmolとすることができる。また、疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の濃度は、チオエステル化合物の濃度に対して1~50 mol%(チオエステル化合物1 molに対して疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒0.01 mol~0.5 mol)とすることができる。
【0035】
さらに、この出願の発明のチオエステルの水中加水分解反応方法において、反応温度は、室温~加熱還流温度とすることができる。また、反応は空気中で十分に進行することから、反応系の雰囲気もとくに限定されないが、好ましくは脱気下で行う。反応時間は、基質や触媒の濃度、反応温度等によっても変化するが、例えば1時間~200時間とすることができる。
【0036】
反応溶媒については、水系媒体であればよく、水に相溶性を有する有機溶媒を加えたものであってもよい。しかし、後述の実施例にも示されるように、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒は、有機溶媒を含まない純水中においてとくに高い触媒活性を示すことから、溶媒は純水とすることが好ましい。
【0037】
また、この出願の発明のチオエステルの水中加水分解反応では、光学活性チオエステルを基質とした場合に、ラセミ化することなく、収率および光学純度高くカルボン酸やチオールが得られる。したがって、この出願の発明のチオエステルの水中加水分解反応は、チオールやカルボン酸の脱保護反応として一般性が高く有用であるといえる。
【0038】
この出願の発明では、さらに、前記の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いたチオールの保護基交換反応をも提供する。すなわち、次式(VI)
2SCOR3 (VI)
で表されるチオエステルを、次式(V)
1OH (V)
で表されるアルコールの存在下、水中で加熱処理することにより、次式(VII)
1SR2 (VII)
で表されるチオエーテルを得ることができるのである。
【0039】
以上のとおりの式(V)~(VII)において、R1は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基であり、R2およびR3は、同一または別異に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、および置換基を有していてもよいヘテロ環基からなる群より選択される有機基を示す。具体的には、R1としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等のアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル基、ビニル、アリル等のアルケニル基、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール基、フリル、イミダゾリル、チオフェン、ピロール、ピリジル等のヘテロ環基、あるいは、さらにアリール基、アルコキシ基等の置換基を有するこれらの炭化水素基が例示される。中でもベンジル基や置換ベンジル基が好ましく例示される。また、R2およびR3としては、メチル、エチル、プロピルを始めとする炭素数1~20の直鎖状アルキル基、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等の分岐状アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル基、ビニル、アリル等のアルケニル基、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール基、フリル、イミダゾリル、チオフェン、ピロール、ピリジル等のヘテロ環基が例示される。これらの置換基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0040】
この出願の発明のチオエステルのチオールの保護基交換反応をまとめると、次式で表される。
【0041】
【化7】
JP0003845074B2_000008t.gif
【0042】
このようなチオールの保護基交換反応において、アルコールやチオエステル、高分子固定化ブレンステッド酸触媒の濃度、反応温度、反応時間等はとくに限定されない。例えば、アルコールの濃度をチオエステルに対して1.0~3.0当量とし、疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の濃度をチオエステルに対して1~20 mol%とすることができる。また、反応温度は、室温~加熱還流温度とすることができる。反応時間は、基質や触媒の濃度、反応温度等に応じて適宜変更できるが、例えば1時間~200時間とすることができる。
【0043】
以上のとおりのこの出願の発明のチオールの保護基交換反応では、同一反応系内で加水分解反応と脱水反応という、逆の反応が同時に高収率で進行することから、中間生成物であるチオールを分離、精製することなく、チオエステルをチオエーテルに変換できる。したがって、カルボニル化合物のジチオアセタール化を、悪臭を有するジチオールを使用することなく(代わりにほぼ無臭のジチオエステルを用いて)行うことも可能となる。
【0044】
このようなカルボニル化合物のジチオアセタール化反応方法は、具体的には、前記いずれかの疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒と、次式(VIII)
4CHO (VIII)
で表されるアルデヒドの存在下、水中で、次式(IX)
AcS(CH2nSAc (IX)
(ただし、nは2~5の整数を示す)
で表されるジチオエステルを加熱処理することにより進行し、次式(X)
【0045】
【化8】
JP0003845074B2_000009t.gif
【0046】
(ただし、R4は、前記と同じ有機基を示し、nは前記と同じ整数を示す)
で表されるジチオアセタールを与える。
【0047】
このとき、R4は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等のアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル基、ビニル、アリル等のアルケニル基、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール基、あるいは、さらにアリール基、アルコキシ基等の置換基を有するこれらの炭化水素基が例示される。
【0048】
この出願の発明のジチオアセタール化反応方法において、アルデヒドやジチオエステル、高分子固定化ブレンステッド酸触媒の濃度、反応温度、反応時間等はとくに限定されない。例えば、ジチオエステルの濃度をアルデヒドに対して1.0~3.0当量とし、疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の濃度をアルコールに対して1~20 mol%とすることができる。また、反応温度は、室温~加熱還流温度とすることができる。反応時間は、基質や触媒の濃度、反応温度等に応じて適宜変更できるが、例えば1時間~200時間とすることができる。
【0049】
このようにジチオエステルを用いてジチオアセタール化を行う方法は、これまで知られておらず、新規のジチオアセタール化反応方法である。
【0050】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0051】
【実施例】
以下の実施例において、得られた化合物の構造解析は、次の機器を用いて行った。
【0052】
NMR測定:JEOL JNM-LA300またはJNM-LA400スペクトロメーターを使用し、1H NMRの内部標準はテトラメチルシラン(δ= 0)、13C NMRの内部標準はCDCl3(δ= 77.0)とした。
【0053】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):SHIMADZU LC-10AT(液体クロマトグラフィー)、SHIMADZU SPD-10A(UV検出器)、およびSHIMADZU CR8Aクロマトパックを使用した。
【0054】
カラムクロマトグラフィー:シリカゲル60(Merck社)を用いた。
【0055】
薄層クロマトグラフィー(TLC):Wakogel B-5Fを用いた。
【0056】
化合物の同定結果は市販品または公知文献との比較により確認した。
<実施例1> 疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒(PS-SO3H)の調製
ポリスチレン(10.06g, 1 % ジビニルベンゼン架橋, 200~400 mesh)のジクロロメタン(150 mL)分散液に、0℃でクロロスルホン酸(0.37 mL)のジクロロメタン(20 mL)溶液をゆっくりと加え、6時間振盪した。さらに、THF/水(5/1, 60 mL)を加え、室温にて1時間振盪した後、一晩静置した。
【0057】
得られた樹脂をグラスフィルターに回収し、水、水/THF、THF、およびジクロロメタンで洗浄した後、真空乾燥して疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒(PS-SO3H)を得た。
【0058】
元素分析の結果(実測値:S, 1.48 %)から、スルホン酸含有量は、0.462 mmol/gと推定される。
<実施例2> 各種ブレンステッド酸触媒を用いたチオエステルの加水分解反応次式(A)に示されるチオラウリル酸ドデシルの水中加水分解反応を、各種のブレンステッド酸触媒の存在下で実施した。
【0059】
【化9】
JP0003845074B2_000010t.gif
【0060】
得られた生成物の収率を表1に示した。
【0061】
【表1】
JP0003845074B2_000011t.gif
【0062】
表1より、実施例1で調製されたPS-SO3Hを触媒として用いることにより、チオエステルの水中加水分解反応が進行することが確認された(反応8)。
【0063】
しかし、触媒を用いない場合やその他のブレンステッド酸触媒を用いた場合には、加熱還流下で24時間反応した後(反応2~6)や、3N H2SO4を添加して触媒量を900 mol%とした場合(反応5)、さらには、6N HClを加えて触媒量を3600 mol%とした場合(反応6)のいずれにおいても、反応は進行しなかった。
【0064】
また、水中における有機反応用触媒として有用な界面活性剤型ブレンステッド酸触媒(非特許文献22~27)も、活性を示さなかった(反応7)。
【0065】
さらに、市販のスルホン化架橋ポリスチレン(DOWEX 50W-X2)を用いた場合には、水中で膨潤し、全く効果を示さなかった(反応9)。同様に、市販の高分子固定化スルホン酸(Nafion-H)(スルホン酸含有量0.930 mmol/g)を用いた場合にも、反応は進行しなかった(反応10)。
【0066】
以上より、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いることにより、従来のブレンステッド酸触媒や高分子固定化スルホン酸触媒では進行しなかったチオエステルの水中加水分解反応が進行することが確認された。
<比較例1> 各種水系溶媒におけるチオエステルの水中加水分解反応
実施例2の反応を、溶媒を水/1,4-ジオキサン(1/1)および水/トルエン(1/1)として行ったところ、各々の反応収率は、21 %および33 %となった。
【0067】
これより、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いたチオエステルの水中加水分解反応においては、水が溶媒として最適であることが確認された。
<実施例3> 各種チオエステルの水中加水分解反応
実施例1で調製された疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒(PS-SO3H)を用いて、次式(B)に従い、各種のチオエステルおよびジチオエステルの加水分解反応を行った。
【0068】
【化10】
JP0003845074B2_000012t.gif
【0069】
(1)チオラウリル酸ドデシル
チオラウリル酸ドデシル(96.3 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.5 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、72時間加熱還流下で攪拌した。
【0070】
室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(10g SiO2)により精製して、ヘキサン溶出分からジスルフィド(2 %)を含むドデカンチオール(48.2 mg, 95%)を、AcOEt溶出分からラウリル酸(47.8 mg, 95 %)を得た。
【0071】
得られたドデカンチオールおよびラウリル酸の同定結果を表2に示した。
【0072】
【表2】
JP0003845074B2_000013t.gif
【0073】
(2) チオラウリル酸エチル
チオラウリル酸エチル(61.3 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.4 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、36時間加熱還流下で攪拌した。
【0074】
室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(5 g SiO2)により精製して、AcOEt溶出分からラウリル酸(46.5 mg, 93 %)を得た。
【0075】
得られたラウリル酸の同定結果は、反応1(1)で得られたものと一致した。
(3) チオラウリル酸tert-ブチル
チオラウリル酸tert-ブチル(68.2 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.4 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合、攪拌し、168時間加熱還流して反応させた。
【0076】
室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(2 g SiO2)により精製して、AcOEt溶出分からラウリル酸(50.1 mg, quant.)を得た。
【0077】
得られたラウリル酸の同定結果は、反応1(1)で得られたものと一致した。
(4) チオラウリル酸フェニル
チオラウリル酸フェニル(73.1 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.6 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、24時間加熱還流下で攪拌して反応させた。
【0078】
室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去した後、薄層クロマトグラフィーにより精製してラウリル酸(48.9 mg, 98 %)を得た。
【0079】
得られたラウリル酸の同定結果は、反応1(1)で得られたものと一致した。
(5) 3-フェニルチオプロピオン酸エチル
3-フェニルチオプロピオン酸エチル(48.6 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.1 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、24時間加熱還流下で攪拌して反応させた。
【0080】
室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去した後、薄層クロマトグラフィーにより精製して3-フェニルプロピオン酸(ヒドロケイ皮酸)(31.8 mg, 85 %)を得た。
【0081】
得られたヒドロケイ皮酸の同定結果を表3に示した。
【0082】
【表3】
JP0003845074B2_000014t.gif
【0083】
(6) チオケイ皮酸エチル
チオケイ皮酸エチル(48.2 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.3 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合、攪拌し、168時間加熱還流して反応させた。
【0084】
室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去した後、薄層クロマトグラフィーにより精製してケイ皮酸(33.3 mg, 90 %)を得た。
【0085】
得られたケイ皮酸の同定結果を表4に示した。
【0086】
【表4】
JP0003845074B2_000015t.gif
【0087】
(7) チオ酢酸ドデシル
(a) チオ酢酸ドデシル(62.0 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.3 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、24時間加熱還流下で攪拌して反応させた。
【0088】
室温まで冷却した後、反応を飽和NaHCO3水溶液で停止させ、高分子をろ過して水と酢酸エチルで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去したところ、ドデカンチオール(51.4 mg, quant.)を得た。
【0089】
得られたドデンカンチオールの同定結果は、実施例3(1)で得られたものと一致した。
【0090】
(b) さらに、チオ酢酸ドデシル(61.3 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(10.8 mg, 0.005 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合、攪拌し、48時間加熱還流下で攪拌した。
【0091】
室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去したところ、ドデカンチオール(51.1 mg,
quant.)を得た。
【0092】
得られたドデンカンチオールの同定結果は、実施例3(1)で得られたものと一致した。
【0093】
室温まで冷却した後、反応を飽和NaHCO3水溶液で停止させ、高分子をろ過して水と酢酸エチルで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去して、ベンジルメルカプタン(24.8 mg, 80 %)を得た。
【0094】
得られたベンジルメルカプタンの同定結果を表5に示した。
【0095】
【表5】
JP0003845074B2_000016t.gif
【0096】
なお、ベンジルメルカプタンの収率は80 %と低下したが、これはベンジルメルカプタンが非常に不安定な化合物であるためである。
(9) チオ酢酸3-フェニルプロピル
チオ酢酸3-フェニルプロピル(48.3 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.2 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中、24時間加熱還流下で攪拌した。
【0097】
反応溶液を室温まで冷却した後、高分子をろ過して水とジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去して、3-フェニルプロパン-1-チオール(40.0 mg, quant.)を得た。
【0098】
得られた3-フェニルプロパン-1-チオールの同定結果を表6に示した。
【0099】
【表6】
JP0003845074B2_000017t.gif
【0100】
(10) チオ安息香酸ドデシル
チオ安息香酸ドデシル(76.6 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(108.2 mg, 0.050 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、168時間加熱還流下で攪拌した。
【0101】
反応溶液を室温まで冷却した後、高分子をろ過して水とジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(5 g SiO2)により精製して、ジスルフィド(5 %)を含有するドデカンチオール(45.3 mg, 89 %)をヘキサン流出分から得た。
【0102】
得られた同定結果は実施例3(1)のものと一致した。
(11) ジチオエステル
1,2-ベンゼンジメタンチオール ジアセテート(63.8 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.1 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合、攪拌し、24時間加熱還流して反応させた。
【0103】
反応溶液を室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水とジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を除去して、ベンゼンジメタンチオール(24.8 mg, 80 %)を得た。
【0104】
得られたベンゼンジメタンチオールの同定結果を表7に示した。(非特許文献28)
【0105】
【表7】
JP0003845074B2_000018t.gif
【0106】
以上(1)~(11)の反応について、収率を表8に示した。
【0107】
【表8】
JP0003845074B2_000019t.gif
【0108】
表8より、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いることにより、各種のチオエステルの水中加水分解反応が収率高く進行することが示された。
<実施例4> 疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒の回収と再利用
チオ酢酸ドデシル(245.2 mg, 1.0 mmol)とPS-SO3H(216.7 mg, 0.10 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、24時間加熱還流下で攪拌した。
【0109】
反応溶液を室温まで冷却した後、高分子をグラスフィルターでろ過し、水とエーテルで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を除去して、ドデカンチオール(204 mg, quant.)を得た。
【0110】
得られたドデカンチオールの同定結果は、実施例3反応1(1)のものと一致した。
【0111】
さらに、回収されたPS-SO3Hを真空下で乾燥し、同じ反応に繰り返し使用したところ、触媒活性を失うことなく、数回使用できることが確認された。
<実施例5> 光学活性チオエステルの水中加水分解反応
(R)-(-)-2-フェニルチオプロピオン酸エチル(48.5 mg, 0.25 mmol)とPS-SO3H(54.5 mg, 0.025 mmol)を脱気した水(1.5 mL)中で混合し、72時間加熱還流下で攪拌した。
【0112】
反応溶液を室温まで冷却した後、高分子をろ過し、水とジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を除去した後、薄層クロマトグラフィーにより精製して(R)-(-)-2-フェニルプロピオン酸(27.8 mg, 74 %)を得た。
【0113】
同定結果を表9に示した。
【0114】
【表9】
JP0003845074B2_000020t.gif
【0115】
また、HPLCにより、生成物の光学純度を得た(93 % ee. Daicel Chiralcel OD, ヘキサン/i-PrOH/HCO2H = 98/2/1)。
<比較例2> 塩基性条件下における光学活性チオエステルの水中加水分解反応 (R)-(-)-2-フェニルチオプロピオン酸エチル(97 %ee)の加水分解反応を、NaOMe/MeOH(室温、2時間)、NaOH/H2O/1,4-ジオキサン(室温、10時間)、LiOH/H2O/THF(室温、30時間)およびBa(OH)2/H2O/THF(室温、72時間)の各塩基性条件下で行ったところ、各々、95 %(メチルエステル、46 %ee)、97 %(33% ee)、89 %(27 %ee)、および81 %(36 %ee)の収率が得られた。
【0116】
実施例5および比較例2より、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いることにより、光学活性チオエステルの加水分解反応が、収率および選択性(光学純度)高く進行することが確認された。
<実施例6> チオールの水中保護基交換反応
次式(C)に従い、各種チオールの保護基交換反応を行った。
【0117】
【化11】
JP0003845074B2_000021t.gif
【0118】
(1)ドデカンチオール
チオ酢酸ドデシル(122.8 mg, 0.50 mmol)、トリフェニルメタノール(130.6 mg, 0.50 mmol)およびPS-SO3H(108.5 mg, 0.050 mmol)を、脱気した水(3.0 mL)中で混合し、加熱還流下で48時間攪拌した。
【0119】
反応溶液を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液と食塩水を加えて反応を停止させた後、高分子をろ過し、水と酢酸エチルで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を除去して、薄層クロマトグラフィーにより精製した。ドデシルトリフェニルメチルスルフィド(202.8 mg, 91 %)を得た。(非特許文献29)
同定結果を表10に示した。
【0120】
【表10】
JP0003845074B2_000022t.gif
【0121】
(2) ドデカンチオール
チオ酢酸ドデシル(61.3 mg, 0.25 mmol)、ベンズヒドロール(92.2 mg, 0.50 mmol)およびPS-SO3H(54.4 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、加熱還流下で48時間攪拌した。
【0122】
反応溶液を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液と食塩水を加えて反応を停止させた後、高分子をろ過し、水と酢酸エチルで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を除去して、薄層クロマトグラフィーにより精製した結果、ベンズヒドリルドデシルスルフィド(82.8 mg, 90 %)を得た。(非特許文献30)
同定結果を表11に示した。
【0123】
【表11】
JP0003845074B2_000023t.gif
【0124】
(3) ドデカンチオール
チオ酢酸ドデシル(61.7 mg, 0.25 mmol)、4-メトキシベンジルアルコール(70.6 mg, 0.51 mmol)およびPS-SO3H(54.3 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、加熱還流下で48時間攪拌した。
【0125】
反応溶液を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液と食塩水を加えて反応を停止させた後、高分子をろ過し、水と酢酸エチルで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を除去して、薄層クロマトグラフィーにより精製したところ、ドデシル4-メトキシベンジルスルフィド(56.9 mg, 71 %)を得た。(非特許文献30)
同定結果を表12に示した。
【0126】
【表12】
JP0003845074B2_000024t.gif
【0127】
(4) ベンジルメルカプタン
チオ酢酸ベンジル(42.1 mg, 0.25 mmol)、トリフェニルメタノール(65.4 mg, 0.25 mmol)およびPS-SO3H(54.0 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、加熱還流下で24時間攪拌した。
【0128】
反応溶液を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液と食塩水を加えて反応を停止させた後、高分子をろ過し、水と酢酸エチルで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥した後、溶媒を除去して薄層クロマトグラフィーにより精製し、ベンジルトリフェニルメチルスルフィド(80.4 mg, 88 %)を得た。(非特許文献30)
同定結果を表13に示した。
【0129】
【表13】
JP0003845074B2_000025t.gif
【0130】
以上(1)~(4)で得られた生成物の収率を表14に示した。
【0131】
【表14】
JP0003845074B2_000026t.gif
【0132】
表14より、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いることによりチオールの保護基交換反応が水中で収率高く進行することが示された。
<実施例7> ベンズアルデヒドのジチオアセタール化反応
次式(D)に従い、ベンズアルデヒドのジチオアセタール化反応を行った。
【0133】
【化12】
JP0003845074B2_000027t.gif
【0134】
ベンズアルデヒド(26.7 mg, 0.25 mmol)、1,3-プロパンジチオール ジアセテート(53.0 mg, 0.276 mmol)およびPS-SO3H(54.2 mg, 0.025 mmol)を、脱気した水(1.5 mL)中で混合し、加熱還流下で24時間攪拌した。
【0135】
反応溶液を室温まで冷却し、高分子をろ過し、水とジクロロメタンで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を除去して、薄層クロマトグラフィーにより精製したところ、2-フェニル-1,3-ジチアン(48.0 mg, 98 %)を得た。(非特許文献31)
同定結果を表15に示した。
【0136】
【表15】
JP0003845074B2_000028t.gif
【0137】
以上より、この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いることによりカルボニル化合物のチオアセタール化反応が水中で収率高く進行することが示された。
【0138】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、純水中でチオエステルを加水分解するための疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いた各種反応方法が提供される。この出願の発明の疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒は、従来のブレンステッド酸触媒や界面活性剤型ブレンステッド酸触媒よりも高い触媒活性を示す。また、使用後の回収も容易であり、複数回の再利用後も高い触媒活性が維持される点で有用性が高い。
【0139】
このような疎水性高分子固定化ブレンステッド酸触媒を用いることにより、チオエステルから、中間生成物のチオールを単離することなくチオエーテルを簡便にワンポットで得ること(チオールの水中保護基交換反応)が可能となる上、悪臭を放つジチオールの代わりにジチオエステルを用いてジチオアセタールを得ること(カルボニル化合物の水中ジチオアセタール化反応)も可能となる。したがって、新たな有機反応への展開も期待される。