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明細書 :DNAを伸長、固定する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3683246号 (P3683246)
公開番号 特開2004-125601 (P2004-125601A)
登録日 平成17年6月3日(2005.6.3)
発行日 平成17年8月17日(2005.8.17)
公開日 平成16年4月22日(2004.4.22)
発明の名称または考案の名称 DNAを伸長、固定する方法
国際特許分類 G01N  1/28      
C12N 15/09      
G01N 33/50      
FI G01N 1/28 J
G01N 33/50 P
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2002-289855 (P2002-289855)
出願日 平成14年10月2日(2002.10.2)
審査請求日 平成14年10月4日(2002.10.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501145295
【氏名又は名称】独立行政法人食品総合研究所
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】大谷 敏郎
【氏名】杉山 滋
【氏名】吉野 智之
【氏名】佐宗 めぐみ
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 特開2002-218976(JP,A)
特表2001-514759(JP,A)
特開2004-033043(JP,A)
特開2003-135062(JP,A)
特開2003-254965(JP,A)
調査した分野 G01N 1/28
C12N 15/09
G01N 33/50
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
DNAを雲母基板上に伸長固定する方法において、電荷を有しないアルキル基またはアリール基および1個以上3個以内のメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基を有するシラン化合物により表面を被覆した雲母基板上にDNA含有溶液を置き、DNAの末端を該被覆基板表面に付着させ、溶液の流れまたは気液界面の移動によりDNAを配向、伸長させることを特徴とするDNAを伸長、固定する方法。
【請求項2】
シラン化合物の有するアルキル基が炭素数1~4個の低級アルキル基であり、アリール基がフェニル基またはベンジル基であり、アルキル基を有するシラン化合物においてはアルキル基が1個以上3個以下でメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基が3個以下1個以上であり、またアリール基を有するシラン化合物においてはアリール基が1個以上2個以下でメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基が3個以下2個以上であることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法。
【請求項3】
アルキル基を有するシラン化合物がメトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシランまたはプロピルトリメトキシシランであり、アリール基を有するシラン化合物がフェニルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法。
【請求項4】
シラン化合物で被覆した雲母基板がシラン化合物の蒸気により雲母基板の表面を被服し、必要に応じて該被覆基板を加熱して固定したものであることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法。
【請求項5】
溶液の流れまたは気液界面の移動を起こす手段が、重力、遠心力、電気泳動またはポンプによる送液または吸い上げであることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はDNAを伸長、固定する方法に関し、詳しくはDNAを基板上に配向、伸長して固定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNAを直線状に引き延ばし基板上に固定することは、DNA上の遺伝子や特定塩基配列の位置を決定するために有用であり、生物学的・医学的に非常に重要な意味を持つ。
また、DNAは、ナノエレクトロニクスの分野においてもナノメートルレベルの自己組織化可能な配線材料として注目されており、DNAを基板上に配向させて固定することは、その基盤技術となる可能性が示唆されている。
最近、ナノメートルレベルの分解能を持つ原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope, AFM)や走査型近接場光プローブ顕微鏡(Scanning Near-field Optical/Atomic Force Microscope, SNOM/AFM )などを用いて、DNA や遺伝子の位置を高分解能で検出したり、ナノメートルレベルの操作を行うことが可能になっている。
これらの技術を基板上に固定されたDNAに適用するためには、原子レベルで平坦な表面が必要なため、多くの場合、劈開した雲母板が基板として使われている。
【0003】
劈開した雲母基板表面および溶液中のDNA分子の双方とも負電荷を有するため、そのままではDNAは雲母基板上には少量しか固定されない。そこで、従来は、DNAを雲母基板上に固定するために、基板表面をマグネシウムイオン(Mg2+)で処理したり、正電荷を有するアミノプロピルトリエトキシシラン(APS)などのシラン化合物を被覆するなどの手法(Langmuir 11 (1995), 655-659)がとられていた。また、DNA含有溶液の液滴を置き、遠心力によりDNAを引き伸ばして固定する方法(スピンコート法)も行われていた(Analytical Chemistry, 73 (2001), 5984-5991) 。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法ではMg2+処理またはAPS 被覆雲母基板表面とDNA分子の相互作用が強すぎるため、DNAは基板に屈曲した状態で固定されてしまい、直線状に伸長させることは困難であった。
また、スピンコート法では、DNAはある程度伸長されるが、固定位置が不定でかつ固定量が少ないため、DNAの位置を走査範囲の狭いAFM やSNOM/AFMにより捜すのは困難であるという問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、DNAを雲母基板上の広い範囲に渡って直線状に引き伸ばして固定する方法を提供することを目的とする。
請求項1記載の本発明は、DNAを雲母基板上に伸長固定する方法において、電荷を有しないアルキル基またはアリール基および1個以上3個以内のメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基を有するシラン化合物により表面を被覆した雲母基板上にDNA含有溶液を置き、DNAの末端を該被覆基板表面に付着させ、溶液の流れまたは気液界面の移動によりDNAを配向、伸長させることを特徴とするDNAを伸長、固定する方法である。
請求項2記載の本発明は、シラン化合物の有するアルキル基が炭素数1~4個の低級アルキル基であり、アリール基がフェニル基またはベンジル基であり、アルキル基を有するシラン化合物においてはアルキル基が1個以上3個以下でメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基が3個以下1個以上であり、またアリール基を有するシラン化合物においてはアリール基が1個以上2個以下でメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基が3個以下2個以上であることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法である。
請求項3記載の本発明は、アルキル基を有するシラン化合物がメトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシランまたはプロピルトリメトキシシランであり、アリール基を有するシラン化合物がフェニルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法である。
請求項4記載の本発明は、シラン化合物で被覆した雲母基板がシラン化合物の蒸気により雲母基板の表面を被服し、必要に応じて該被覆基板を加熱して固定したものであることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法である。
請求項5記載の本発明は、溶液の流れまたは気液界面の移動を起こす手段が、重力、遠心力、電気泳動またはポンプによる送液または吸い上げであることを特徴とする請求項1記載のDNAを伸長、固定する方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、DNAを基板上に配向、伸長して固定する方法である。本発明の対象とされるDNAに制限はなく、あらゆる生物のゲノムまたはプラスミド、ファージ(ウイルス)、人工染色体などのベクターに由来するものでよく、長さも限定されない。
DNAを分散させる溶液は、例えばTE緩衝液(10mM トリス、1mM EDTA、pH7~8)、トリス緩衝液、蒸留水などが用いられ、これらの中ではTE緩衝液が好ましい。
【0007】
雲母基板の表面を被覆するために用いるシラン化合物としては、アルキル基またはアリール基とメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基の合計が最大4個になるすべての組み合わせが可能である。詳しくは、炭素数1~4個の低級アルキル基(メチル基、エチル基など)またはアリール基(フェニル基、ベンジル基など)を有し、アルキル基を有するシラン化合物においてはアルキル基が1個以上3個以下でメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基が3個以下1個以上であり、またアリール基を有するシラン化合物においてはアリール基が1個以上2個以下でメトキシ基またはエトキシ基またはクロロ基が3個以下2個以上であるシラン化合物がある。なお、アリール基はアミノ基、ヒドロキシル基などの置換基を有していてもよい。具体的には、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、フェニルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
シラン化合物を雲母基板の表面に被覆する方法としては、例えばシラン化合物を蒸気法、すなわちシラン化合物の蒸気にて該基板を被覆し、必要に応じて加熱処理を施して強固に被覆させることができる。
【0008】
DNAを含む溶液の流れまたは気液界面の移動を起こす手段としては、例えば重力、遠心力、電気泳動、ポンプ(電動等の自動または手動)などによる送液や吸い上げが挙げられる。いずれの方法でもDNAを伸長することは可能であるが、ポンプによる一定速度での吸い上げ法が望ましい。
【0009】
以下に、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明によるDNAの伸長、固定の操作手順を示したフローチャートである。工程1にて雲母板を劈開して新鮮な劈開面を露出させ、工程2で劈開した雲母基板をシラン化合物の溶液とともに密閉容器中に置く。シラン化合物量は容器容積1Lあたり10~1000μLが適当である。また、容器中には窒素などの不活性ガスを充填しても良い。工程3で4℃~60℃にて1時間乃至1週間、好ましくは15~30℃にて4時間乃至6日間放置し、雲母基板表面をシラン化合物により被覆する。
【0010】
工程4で基板を容器から取り出し、必要に応じて60℃~120℃にて5分間乃至1時間程度、望ましくは100℃で15分間以上加熱する。これにより、雲母表面へシラン化合物を強固に被覆することができる。加熱処理をしない場合は速やかに容器から取り出し、その上にDNA溶液(5~20μL)を滴下する。
次の工程5で1~数分間放置する間に、DNAの末端とシラン化合物で被覆した基板表面との間の疎水性相互作用により、DNAの末端が疎水性シラン化合物で被覆した基板表面に付着する。
その後、工程6にて適当な吸引手段、例えばピペットまたはポンプにより緩やかに液滴を吸い上げて界面移動または水流を誘起し、DNAを基板上に伸長、固定する。
【0011】
図2~4は、実際に本発明の方法に基づいて雲母基板上に伸長、固定したDNAの蛍光顕微鏡写真である。それぞれ、メトキシトリメチルシラン(図2)、エトキシトリメチルシラン(図3)またはフェニルトリメトキシシラン(図4)により被覆した雲母基板を使用している。
基板へのシラン化合物の被覆は、図1に示した方法に従い、窒素充填容器中で16μL(容器容積1Lあたり)のシラン化合物を用いて行った。被覆反応の期間は1時間~7日間が適当で、好適には4時間~6日間である。フェニルトリメトキシシランの場合のみ、基板を110℃、20分間加熱し、強固なシラン化を行った。その後、λファージDNA溶液(濃度5μg/mL)を5μL滴下し、1分間放置した後、ピペットで吸い上げた。図に示したように、いずれのシラン化合物によって基板表面を被覆した場合にも、多量のDNAが伸長された状態で固定されていることがわかる。
その中でも被覆反応期間4日間のエトキシトリメチルシラン(図2)により被覆された雲母基板および被覆反応期間6日間で被覆した後、加熱により強化したフェニルトリメトキシシラン(図4)により被覆された雲母基板の場合に直線性が良いことがわかった。また、図には示さないが、これらシラン化合物被覆基板の表面荒さが1nm以下であり、伸長されたDNA1本がAFM 観察により観察可能なことがわかっている。
【0012】
このように伸長、固定されたDNA上の遺伝子を蛍光色素ないしは微小金粒子などにより標識すれば、AFM やSNOM/AFMによりその位置をナノメートルレベルで逐次決定して行くことが可能である。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、原子レベルで平坦な雲母基板上に直線状に引き伸ばしたDNAを多量に固定することができるので、AFM やSNOM/AFMによる遺伝子位置の決定や操作を簡便、かつ正確に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の操作手順の1態様を示すフローチャートである。
【図2】 本発明によりシラン化合物(エトキシトリメチルシラン)被覆雲母基板上に実際に伸長固定されたDNAを示す蛍光像である。
【図3】 本発明によりシラン化合物(メトキシトリメチルシラン)被覆雲母基板上に実際に伸長固定されたDNAを示す蛍光像である。
【図4】 本発明によりシラン化合物(フェニルトリメトキシシラン)被覆雲母基板上に実際に伸長固定されたDNAを示す蛍光像である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3