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明細書 :DNAの伸長固定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3749887号 (P3749887)
公開番号 特開2004-121096 (P2004-121096A)
登録日 平成17年12月9日(2005.12.9)
発行日 平成18年3月1日(2006.3.1)
公開日 平成16年4月22日(2004.4.22)
発明の名称または考案の名称 DNAの伸長固定方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 A
G01N 33/53 M
G01N 37/00 102
C12M 1/00 A
C12N 15/00 F
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願2002-289848 (P2002-289848)
出願日 平成14年10月2日(2002.10.2)
審査請求日 平成14年10月4日(2002.10.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501145295
【氏名又は名称】独立行政法人食品総合研究所
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】大谷 敏郎
【氏名】杉山 滋
【氏名】吉野 智之
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】光本 美奈子
参考文献・文献 特表平9-509057(JP,A)
Michalet, et al.,Science,1997年,Vol.277,p.1518-1523
中尾秀信、他,第50回高分子討論会 高分子学会予稿集,2001年,Vol.50, No.12,p.3068
中尾秀信、他,第63回分析化学討論会講演要旨集,2002年 5月10日,63,p.112
調査した分野 C12Q 1/00-1/70
C12M 1/00-1/42
C12N 15/00-15/90
G01N 33/00-33/98
G01N 37/00
JICSTファイル(JOIS)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
溶液中のDNAを溶液の流れまたは気液界面の移動により基板上に配向固定する方法において、基板上に高さ1μm以下10nm以上の段差を設け、前記段差と交差する方向にDNA溶液を流すか、または気液界面を移動させることにより、DNAの末端を段差面に付着させ、溶液の流れまたは気液界面の表面張力によりDNAを配向、伸長させることを特徴とするDNAの伸長固定方法。
【請求項2】
段差が、直線、円弧、方形または円形の凹みの形状をなして形成されていることを特徴とする請求項1記載のDNAの伸長固定方法。
【請求項3】
溶液の流れまたは気液界面の移動を起こす手段が、重力、遠心力、電気泳動またはポンプによる送液あるいは吸い上げであることを特徴とする請求項1記載のDNAの伸長固定方法。
【請求項4】
基板が、雲母板、ガラス板、シリコン板およびサファイア板のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のDNAの伸長固定方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はDNAの伸長固定方法に関し、詳しくはDNAを基板上に配向、伸長して固定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNA上の遺伝子の位置を決定することは、遺伝子機能の解析や病原遺伝子・有用遺伝子の探索などにおいて非常に重要な意味を持つ。最近、ナノメートルレベルの分解能を持つ原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope, AFM)や走査型近接場光プローブ顕微鏡(Scanning Near-field Optical/Atomic Force Microscope, SNOM/AFM)などを用いて、正確に遺伝子位置を決定することが可能になっている。
しかし、これらの方法を適用するためには、対象となるDNAを直線状に引き延ばすことが必要になる。また、AFM やSNOM/AFMは、観察範囲が数十μmと比較的狭いため、基板上の特定位置にDNAを固定することも必要である。従来、DNAを基板上に伸長固定するためには、基板をDNA溶液に浸した後、一定速でゆっくりと引き上げ、その時に起きる気液界面の移動によりDNAを伸長固定する方法(Science 277 (1997) p.1518-1523、特表平9-509057号)が一般的に用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法ではDNAは基板の全面に分散して固定されてしまい、固定されたDNAの位置をAFM やSNOM/AFMにより走査しながら捜す必要があった。さらに、SNOM/AFMでは、DNAは基板の片面だけに固定される必要があるが、従来の方法では両面にDNAが固定され、測定時のノイズとなっていた。
また、試料作成に要するDNA溶液の量も数mLという大量が必要であるという問題点もあった。
そこで、本発明は、大量のDNA溶液を要せず、DNAを基板上の特定位置に直線状に引き伸ばして固定する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、溶液中のDNAを溶液の流れまたは気液界面の移動により基板上に配向固定する方法において、基板上に高さ1μm以下10nm以上の段差を設け、前記段差と交差する方向にDNA溶液を流すか、または気液界面を移動させることにより、DNAの末端を段差面に付着させ、溶液の流れまたは気液界面の表面張力によりDNAを配向、伸長させることを特徴とするDNAの伸長固定方法である。
請求項2記載の本発明は、段差が、直線、円弧、方形または円形の凹みの形状をなして形成されていることを特徴とする請求項1記載のDNAの伸長固定方法である。
請求項3記載の本発明は、溶液の流れまたは気液界面の移動を起こす手段が、重力、遠心力、電気泳動またはポンプによる送液あるいは吸い上げであることを特徴とする請求項1記載のDNAの伸長固定方法である。
請求項4記載の本発明は、基板が、雲母板、ガラス板、シリコン板およびサファイア板のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のDNAの伸長固定方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、DNAを基板上に配向、伸長して固定する方法である。本発明の対象とされるDNAに制限はなく、あらゆる生物のゲノムまたはプラスミド、ファージ(ウイルス)、人工染色体などのベクターに由来するものでよく、長さも限定されない。
DNAを懸濁する溶液としては、例えばTE緩衝液(10mM トリス、1mM EDTA、pH7~8)、トリス緩衝液、蒸留水 などが用いられ、これらの中ではTE緩衝液が好ましい。
【0006】
次に、基板に関しては、特に限定されないが、雲母板、ガラス板、シリコン板、サファイア板などが好適である。
基板には、段差が設けてあり、その高さは1μm以下10nm以上、好ましくは0.5μm以下50nm以上である。段差の形状については任意であるが、例えば直線、円弧、方形または円形の凹みが好適であり、そのサイズは10μmから1mmの範囲が適当である。
【0007】
DNAを含む溶液の流れまたは気液界面の移動を起こす手段としては、例えば重力、遠心力、電気泳動、ポンプ(電動等の自動または手動)などによる送液や吸い上げが挙げられる。いずれの方法でもDNAを伸長することは可能であるが、遠心力またはポンプによる方法が望ましい。
【0008】
以下に、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明によるDNA伸長固定の原理を示した模式図である。図に示されるように、DNAは溶液中ではランダムコイル状(1)に丸まっている。DNAは溶液の流れに従って移動し、基板上に設けた段差(2)を通過するときにある確率で末端部分が段差(2)に付着する。
末端が段差に付着したランダムコイル状DNA(3)は、水流の力により引き伸ばされて直線状(4)になり、DNA分子自身が持つ極性や電荷のため基板面に付着し、(5)のように基板面に固定される。
【0009】
図2は、実際に本原理に基づいて基板上に伸長固定したDNAの蛍光顕微鏡写真である。基板上に段差を作成するには、基板の材質を考慮して適切な手段を採用すればよく、例えば雲母板の場合は雲母を劈開することによって段差を形成することができる。1例を示すと、雲母を劈開して高さ400nm程度の段差を作成することができた。
【0010】
次に、雲母板に段差を形成した基板を用いてDNAを該基板上に配向、伸長して固定する方法について説明する。
雲母板をMgCl2 処理することにより雲母板上に正電荷を有するMg+ イオンを吸着させて、DNAの付着を容易にした後、その中心に5μLの蛍光色素(YOYO-1) で染色したλファージDNA溶液(濃度5μg/mL)を滴下し、5000rpmで回転させた。DNA溶液は回転にともなう遠心力により中心から外縁部へと押し流され、その時起きる水流により、図1の原理に基づきDNAが段差部に伸長固定された。
図3では、AFM により個別のDNAを観察した結果を立体で表示した。図2では、DNA1本を確認することはできないが、図3では、AFM によって雲母基板上の段差部に本発明の方法により伸長固定された1本1本のDNAの形状像が確認された。また、段差部分に対し、DNAが一方向に配向して直線状に固定されていることがわかる。
【0011】
このように伸長固定されたDNA上の遺伝子を蛍光色素ないしは微小金粒子などにより標識すれば、AFM やSNOM/AFMにより、その位置をナノメートルレベルで逐次決定して行くことが可能になる。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、DNAを基板上の片面の特定位置に直線状に引き伸ばして固定することができるので、AFM やSNOM/AFMによる遺伝子位置の詳細な決定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)~(e)は本発明の原理を示す模式図である。
【符号の説明】
1 溶液中のランダムコイル状DNA
2 基板上に作成した段差
3 末端が段差に付着したランダムコイル状DNA
4 水流により直線状に伸ばされたDNA
5 基板面に直線状に固定されたDNA
【図2】 本発明により実際に伸長固定されたDNAを示す蛍光像である。
【図3】 基板の段差部に伸長固定されたDNAのAFM 観察像である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2