TOP > 国内特許検索 > 線虫害抑制用組成物および線虫害の抑制法 > 明細書

明細書 :線虫害抑制用組成物および線虫害の抑制法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3557454号 (P3557454)
公開番号 特開2001-010916 (P2001-010916A)
登録日 平成16年5月28日(2004.5.28)
発行日 平成16年8月25日(2004.8.25)
公開日 平成13年1月16日(2001.1.16)
発明の名称または考案の名称 線虫害抑制用組成物および線虫害の抑制法
国際特許分類 A01N 63/00      
A01N 37/44      
FI A01N 63/00 F
A01N 37/44
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願平11-189274 (P1999-189274)
出願日 平成11年7月2日(1999.7.2)
審査請求日 平成14年1月16日(2002.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】皆 川 望
【氏名】水久保 隆 之
個別代理人の代理人 【識別番号】100064285、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 一雄
【識別番号】100067079、【弁理士】、【氏名又は名称】小野寺 捷洋
【識別番号】100091487、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 行孝
【識別番号】100107342、【弁理士】、【氏名又は名称】横田 修孝
審査官 【審査官】吉住 和之
参考文献・文献 特開平7-206619(JP,A)
Phytopathology,1984年,Vol.74,p.55-60
調査した分野 A01N 63/00
A01N 37/44
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
パスツーリア属細菌とアミノ酸とを含んでなる、線虫害抑制用組成物。
【請求項2】
アミノ酸が、メチオニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、もしくはエチオニン、またはこれら全部もしくは一部の混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
パスツーリア属細菌を、アミノ酸1kgあたり1×1010~1×1012の割合で含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
パスツーリア属細菌とアミノ酸とを土壌に散布することを含む、線虫害を抑制する方法。
【請求項5】
土壌1リットルあたり、パスツーリア属細菌を3×10~1×10個、アミノ酸を100~300mg散布する、請求項4に記載の方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、植物に寄生しその生育を妨げる線虫による植物被害の抑制のための組成物およびこのような線虫による被害を抑制する方法に関し、更に詳細には、線虫に寄生するパスツーリア属細菌を用いた線虫害抑制用組成物および線虫害抑制法に関する。
【0002】
背景技術
線虫に寄生するパスツーリア属細菌(Pasteuria sp.)を用いて植物加害線虫による作物の被害を軽減しうることは、例えば、Phytopathology, Vol.74, pp.55-60 (1984)に記載されている。
【0003】
しかしながら、パスツーリア属細菌は線虫の絶対寄生菌であり、人工培地による大量増殖ができないことから、安価に有効量を得ることは困難である。パスツーリア属細菌を極めて大量に施用すると、土壌中に高密度で生息する線虫の移動分散ステージ(発育初期段階の幼虫)を減少させることができるが、実施は経済的に困難である。
【0004】
また、多量に施用すると線虫が死亡するだけでパスツーリア属細菌の増殖は起こらない。少ない量のパスツーリア属細菌を用いて線虫による作物被害を効果的に軽減するために、現在は、必要最少量を圃場に施用し、比較的低密度で生息する線虫の増殖ステージ(雌成虫)に寄生させて線虫の増殖(産卵数)を抑制すると同時に、併せて、線虫の体内でパスツーリア属細菌を増殖させて、圃場における細菌密度を高めていく方法が取られている。このため、施用から線虫駆除の効果が得られるまで12ヶ月以上の期間を要し、施用してから短期間に線虫被害の抑制効果を期待することはできなかった。
【0005】
一方、アミノ酸もしくはメチオニンが、線虫の寄生による作物の被害を抑制することは、Ann. Rev. Phytpathol., Vol.4, pp.349-368 (1966) やNematologica, Vol.17, pp.495-500 (1971) 等に記載されている。
【0006】
しかし、アミノ酸、例えば、メチオニンは、有機合成農薬と比較して高価であり、しかも従来の知見では多くの施用量を必要としていた。また、線虫による作物被害を抑制する施用量と作物に薬害を発生する量に大きな差が認められないこともあって、線虫害の抑制に使用できなかった。
【0007】
また、有機リン系殺虫剤およびカーバメート系殺虫剤とパスツーリア属細菌を組み合わせることが特開昭62-29506号および特開昭62-195315号に開示されている。
【0008】
しかし、即効性がある農薬は人畜毒性が高いため、あるいは環境負荷が大きいため、広範には使用し得ない。また、これらの農薬は、本来は防除対象としない土壌に生息する多様な生物にまで影響を与える。この結果、農薬の施用は、土壌生物相の密度と多様性を低下させ、元来、環境が有する物質循環等の機能の低下や生物相の不安定化に伴う線虫害の多発傾向を生じさせる。このため、農薬の連用を余儀なくされて、農薬依存の農業生産技術から脱却できないという問題を有していた。
【0009】
【発明の概要】
本発明者らは、今般、パスツーリア属細菌とアミノ酸とを併用することによって、線虫による植物被害が飛躍的に軽減されることを見いだした。
【0010】
本発明は、植物に寄生しその生育を妨げる線虫による被害を抑制するための組成物の提供、およびそのような線虫による被害を抑制する方法の提供をその目的とする。
【0011】
本発明による線虫害抑制用組成物は、パスツーリア属細菌とアミノ酸とを含んでなるものである。
【0012】
本発明による線虫害を抑制する方法は、パスツーリア属細菌とアミノ酸とを土壌に散布することを含んでなるものである。
【0013】
【発明の具体的説明】
本明細書において「パスツーリア属細菌」は、植物の生育を妨げる線虫(具体的には、植物に寄生し植物の生育を妨げる線虫)に寄生するものから選択できる。例えば、ネコブセンチュウに寄生するパスツーリア・ペネトランス(Pasteuria penetrans)、シストセンチュウに寄生するパスツーリア・ニシザワエ(Pasteuria nishizawae)等が挙げられる。
【0014】
パスツーリア属細菌は同種のものを用いても、異種のものを組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本明細書において「アミノ酸」はメチオニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、およびバリンのような天然アミノ酸、エチオニンのような人工アミノ酸、並びにこれら全部または一部の混合物であることができる。メチオニン、フェニルアラニンおよびバリンが好ましい。
【0016】
本発明による組成物および方法によれば、植物の生育を妨げる線虫(具体的には、植物に寄生し植物の生育を妨げる線虫)による植物の被害を抑制できる。抑制できる線虫害は使用するパスツーリア属細菌が寄生する線虫の種類に依存して決定できる。例えば、パスツーリア・ペネトランスを有効成分として用いた場合にはネコブセンチュウによる被害の抑制に用いることができる。また、パスツーリア・ニシザワエを有効成分として用いた場合にはシストセンチュウによる被害の抑制に用いることができる。
【0017】
本発明による組成物および方法において、有効成分としてのパスツーリア属細菌を組み合わせて用いた場合には、使用したパスツーリア属細菌に依存して数種の線虫害を同時に抑制できる。
【0018】
本発明による組成物および方法によれば、土壌中の植物の生育を妨げる線虫を駆除する事ができる。本明細書の「線虫害抑制用組成物」および「線虫害抑制法」は、それぞれ、線虫駆除用組成物および線虫の駆除法を含む意味で用いられるものとする。
【0019】
本発明による組成物および方法によれば、土壌に病害線虫が繁殖することを未然に防ぐことができ、線虫による植物被害を未然に予防することもできる。本明細書の「線虫害抑制用組成物」および「線虫害抑制法」は、それぞれ、線虫害の予防剤および線虫害の予防法を含む意味で用いられる。
【0020】
本発明による組成物中のパスツーリア属細菌の密度は、アミノ酸1kgあたり1×1010~1×1012が好ましく、特に好ましくは2×1011以上である。
【0021】
パスツーリア属細菌およびアミノ酸は、土壌1リットルに対してそれぞれ、3×10~1×10個、100~300mgの量散布する事が好ましく、特に好ましくは、約5×10個、約150mg以上である。
【0022】
本発明による線虫害抑制用組成物は優れた線虫害抑制作用を示す。このため、パスツーリア属細菌とメチオニンを従来と比べ大幅に少ない量で使用でき、しかも従来と同等かそれ以上の線虫害抑制効果を達成できる。
【0023】
また、従来はパスツーリア属細菌を土壌中に散布してから長期間経過しなければ線虫害抑制効果が得られなかったが、パスツーリア属細菌とアミノ酸を併用することにより短期間で線虫害抑制効果を得ることができる。
【0024】
更に、本発明の組成物および方法によれば、土壌中の生物多様性を維持しつつ植物加害線虫による被害を抑制し、農業生産を向上させることができる。
【0025】
【実施例】
本発明を更に下記実施例により具体的に説明する。
【0026】
実施例:ネコブセンチュウ被害の抑制効果
パスツーリア・ペネトランス 1×10個/gを含む水和剤((株)ネマテック社製)およびメチオニン(住友化学工業(株)社製)の所定量を混合して、必要とするパスツーリア菌とメチオニンを含有する混合剤を調製した。サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)に汚染された1リットルの土壌に、N、P、KOをそれぞれ15%含む化成肥料を2gを混合し、ポリエチレン袋に入れた。この土壌に、100mlの水に表1に記載の所定量になるように混合剤を懸濁させて、この液の全量を注いだ。
【0027】
この土壌を25℃で1週間保存した後に一部を取り出し、サツマイモネコブセンチュウ密度(ベルマン・ロート法、25℃、72時間)、自由生活性線虫密度(同前)、糸状菌密度(ローズベンガル培地、pH6.8、25℃、48時間)、細菌密度(YPDA培地、pH7.2、25℃、48時間)を測定した。残りの土壌は1/1万アールの大きさのポットに詰め、トマト苗(品種:プリッツ)2本を定植してガラス温室内で栽培した。
【0028】
2ケ月後にトマトを掘取り、ネコブ寄生度および茎葉重を調査した。各区3連で実施した。ガラス温室内の平均気温は23℃であった。ネコブ寄生度は、トマトの根にサツマイモネコブセンチュウの寄生によるコブの見られない場合を0とし、トマトのほとんどの根にコブが連なっている状態を4とする、0から4の5段階とした。
【0029】
比較例
パスツーリア菌とアミノ酸の併用の比較として、パスツーリア菌単独施用、メチオニン単独施用、ダゾメット剤(アグロ・カネショウ(株)社製)施用および無施用を行った。なお、ダゾメット剤を施用した直後はトマトに薬害が生ずることが知られているため、ダゾメット剤を施用した土壌は、ポットに詰めてさらに1週間放置した後にトマト苗を定植した。
【0030】
結果の平均値を表1に示す。
【表1】
JP0003557454B2_000002t.gif【0031】
パスツーリア菌とメチオニンを併用することによって、それぞれを単独に施用する場合の半分から1/3の施用量で、サツマイモネコブセンチュウによるトマトの被害(ネコブ寄生度および茎葉重)を同等あるいはそれ以下のレベルに低下させることができた。ダゾメット剤を施用した場合では、ネコブ寄生度は小さくなるが、サツマイモネコブセンチュウだけでなく、自由生活性線虫および糸状菌の密度が明らかに低下し、多くの土壌生物が影響を受けた。