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明細書 :萎凋細菌病抵抗性カーネーションの選抜に用いるオリゴヌクレオチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3855052号 (P3855052)
公開番号 特開2004-222532 (P2004-222532A)
登録日 平成18年9月22日(2006.9.22)
発行日 平成18年12月6日(2006.12.6)
公開日 平成16年8月12日(2004.8.12)
発明の名称または考案の名称 萎凋細菌病抵抗性カーネーションの選抜に用いるオリゴヌクレオチド
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  27/447       (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
G01N 27/26 315F
G01N 27/26 325E
G01N 33/50 P
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願2003-011119 (P2003-011119)
出願日 平成15年1月20日(2003.1.20)
審査請求日 平成15年1月20日(2003.1.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】小野崎 隆
【氏名】谷川 奈津
【氏名】池田 広
【氏名】柴田 道夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】小暮 道明
参考文献・文献 特開2003-265198(JP,A)
特開2003-250541(JP,A)
園芸学会雑誌 ,第71巻 別冊2 ,pp.100 - 101
特許請求の範囲 【請求項1】
配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
カーネーションより抽出したDNAを鋳型とし、請求項1記載のオリゴヌクレオチドと請求項2記載のオリゴヌクレオチド、請求項1記載のオリゴヌクレオチドと請求項5記載のオリゴヌクレオチド、請求項3記載のオリゴヌクレオチドと請求項5記載のオリゴヌクレオチド、請求項3記載のオリゴヌクレオチドと請求項2記載のオリゴヌクレオチド若しくは請求項4記載のオリゴヌクレオチドと請求項5記載のオリゴヌクレオチドの組み合わせでポリメラーゼ連鎖反応によるDNAの増幅を行い、得られた増幅産物を電気泳動分析し、特異的に増幅されるバンドを有する個体が萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーションであると識別する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の識別方法により、萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーション個体を選抜する方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーネーションの選抜に用いるオリゴヌクレオチドおよびその利用法に関し、詳しくは特定の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド並びに該オリゴヌクレオチドを用いるDNA分析によってカーネーション個体を識別する方法と該識別方法により育苗段階で萎凋細菌病抵抗性のカーネーション個体を選抜する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーネーション萎凋細菌病は、夏の高温期に発病が多発する立ち枯れ性の土壌伝染病害であり、日本の温暖地でのカーネーション栽培上最も被害が大きく、重要な病害とされている(非特許文献1および2)。
発病は、土壌中の病原細菌が定植時の断根や植えいたみなどによる根の傷口から侵入し、茎の導管内で増殖して水分通導を阻害するために起こる。被害株は急激に萎凋し、青枯れ症状を呈して枯死する。
本病原菌に対し卓効を示す防除薬剤はない。そのため、発病株を発見した場合は、直ちにこれを隣接株をも含めて除去して周辺株への伝播防止に努め、被害の拡大を防ぐことが行われてきた。このように、発生してからでは的確な防除法がないので、現場ではベンチ栽培、土壌消毒の徹底、無病苗の利用等によって発病の回避を図ってきた(非特許文献3)。
それにもかかわらず土壌消毒の不徹底などが原因で多発生が報告され、問題となっている。このような背景から、本病に対する抵抗性品種開発が強く望まれている。
抵抗性育種を進めるためには、抵抗性個体の効率的な選抜法の確立が不可欠である。そこで、本発明者らは浸根接種による抵抗性の簡易検定法を開発し、この方法を用いて実生の抵抗性を判定し、育種を行ってきた(非特許文献4)。
【0003】
しかし、この方法では検定に必要な数の挿し芽を得るために、約半年間は実生を生育させる必要があり、さらに抵抗性を判定するには、接種から3か月という時間を要する。また、大量の個体数を扱うには、大きな労力を必要とする。このため、育苗段階の幼苗時に萎凋細菌病抵抗性を有する個体を安定的、かつ効率的に選抜する方法の開発が望まれていた。
【0004】
【非特許文献1】
農業および園芸、48:696-700(1973)
【非特許文献2】
農業および園芸、55:801-802(1980)
【非特許文献3】
関東東海病害虫研究会年報、31:86-89(1984)
【非特許文献4】
農業および園芸、68:1213-1219(1993)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、育苗段階で萎凋細菌病抵抗性を有する個体を安定的、かつ効率的に選抜するために、萎凋細菌病抵抗性遺伝子マーカーを獲得し、それを用いた選抜方法を確立することである。
そこで、本発明者は任意の配列を持つ合成オリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、植物DNAを分析する方法を用い、萎凋細菌病抵抗性カーネーション選抜に有効な遺伝子マーカーの獲得に成功した。この遺伝子マーカーを用いることにより、育種過程で萎凋細菌病抵抗性個体を効率的に選抜できる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。
請求項2に記載の本発明は、配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。
請求項3に記載の本発明は、配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。
請求項4に記載の本発明は、配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。
請求項5に記載の本発明は、配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。
【0007】
請求項6に記載の本発明は、カーネーションより抽出したDNAを鋳型とし、請求項1記載のオリゴヌクレオチドと請求項2記載のオリゴヌクレオチド、請求項1記載のオリゴヌクレオチドと請求項5記載のオリゴヌクレオチド、請求項3記載のオリゴヌクレオチドと請求項5記載のオリゴヌクレオチド、請求項3記載のオリゴヌクレオチドと請求項2記載のオリゴヌクレオチド若しくは請求項4記載のオリゴヌクレオチドと請求項5記載のオリゴヌクレオチドの組み合わせでポリメラーゼ連鎖反応によるDNAの増幅を行い、得られた増幅産物を電気泳動分析し、特異的に増幅されるバンドを有する個体が萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーションであると識別する方法である。
請求項7に記載の本発明は、請求項6に記載の識別方法により、萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーション個体を選抜する方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
任意の配列を持つオリゴヌクレオチドを用いたPCRにより得られるDNA多型は、RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)とも言われ、用いるオリゴヌクレオチドの種類を変えることにより、容易に、かつ数多く得ることができ、このDNA多型を示すバンドそのものが遺伝子マーカーとなり得る。
この手法は、対象とする生物より抽出されたDNAを鋳型としてPCRによる増幅を行い、増幅されたDNAの分析により簡単に種々の生物におけるDNA多型を得る方法であり、これまで遺伝解析や品種・個体の識別、さらにはF種子の純度検定等に用いられてきた。
【0009】
本発明者らは、この手法を萎凋細菌病抵抗性カーネーションの選抜に利用するため、萎凋細菌病抵抗性カーネーションと、り病性カーネーションを交雑し、その後代から抵抗性の系統からり病性の系統までを含む抵抗性分離集団を得た。さらに、選抜に有効な遺伝子マーカーを得るため、これらの系統について465種類のランダムプライマー(12mer)を供試してDNA多型を示す合成オリゴヌクレオチドの検索を行った。すなわち、萎凋細菌病抵抗性カーネーションと、り病性カーネーションの交配は、自然交雑を防ぐために開花2~3日前に種子親の花蕾の除雄を行い、袋がけするとよい。除雄後4~7日目の成熟した雌ずいに花粉親の花粉を付着させるため人工授粉を行ったのち、再び袋がけする。その後、約2か月経過してから結実程度を調査し、採種を行う。得られた種子を市販の混合用土(メトロミックス350)等に播種し、発芽させる。発芽後約1か月経過してから、温室内栽培ベッドに定植して生育させる。
このようにして得られた抵抗性分離集団134系統について、萎凋細菌病の浸根接種による抵抗性検定を行う。抵抗性検定は通常2~3回行えば十分であるが、本発明者らは、カーネーションの産地の異なる病原細菌2菌株を用いて合計8回行った。このように多数回行うことにより、より精度の高い結果を得ることが可能である。
【0010】
浸根接種による抵抗性検定法は、次の通りである。
冷凍保存した萎凋細菌病菌を解凍し、PSA培地、次いでPS培地にて培養後、菌濃度が10CFU/mlオーダーになるように希釈して接種液とする。ここで、カーネーションの主な産地としては、長野県、愛知県、兵庫県、千葉県等が挙げられる。また、該カーネーションに係る萎凋細菌病菌は、学名をBurkholderia caryophylliといい、例えばisolate 1(農業環境技術研究所より入手した品種‘初霜’より分離した菌株)、isolate 2(千葉県農業総合研究センター暖地園芸研究所より入手した千葉県館山市の発病株由来の菌株)、isolate 3(千葉県農業総合研究センター暖地園芸研究所より入手した神奈川県秦野市の発病株由来の菌株)、isolate 4(兵庫県立淡路農業技術センターより入手した淡路島仮屋の発病株由来の菌株)、isolate 5(兵庫県立淡路農業技術センターより入手した淡路島安乎の発病株由来の菌株)、isolate 6(花き研究所生産利用部病害制御研究室より入手した兵庫県淡路島東浦の発病株由来の菌株)等があり、このうち2菌株以上を用いることが好ましい。
供試材料の挿し芽を発根培地(例えば、砂:パーライト=1:1)にて発根させ、発根苗の根部を接種液に室温条件で30分間浸漬して浸根接種を行う。接種後、苗を土壌消毒済みの検定ベッドに定植して、発病に好適な地温である30℃の維持に努め、接種から91日後(13週後)の発病率を調査する。
供試材料の葉からDNAを抽出し、465種類のランダムプライマー(12mer)を供試して、RAPD法で抵抗性に関与するマーカーバンドを探索した結果、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドWG44(配列表の配列番号2参照)によって得られる1043bpの増幅産物(RAPDのDNAバンド)が、萎凋細菌病抵抗性カーネーションの選抜に有効であることを究明した。
【0011】
RAPDマーカーは再現性にやや問題があると言われている。そこで、本発明者らは、上記のオリゴヌクレオチドWG44によって得られる1043bpの増幅産物の塩基配列を決定し、更に再現性が高く単一のバンドが得られるオリゴヌクレオチドプライマーの設計を行った。
即ち、上記の1043bpの増幅産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、目的の増幅DNA断片を切り出し、精製した。これを適当なベクターに連結し、大腸菌に形質転換を行った。ブルー・ホワイトセレクションにより約10個のコロニーをピックアップし、さらにそのDNAとプライマーWG44を用いたPCRにより増幅される断片の制限酵素処理を行い、バンドパターンの観察によって目的断片がインサートされていると思われるコロニーを選抜した。これを培養し、さらにプラスミドを分離精製した後、挿入断片1043bpの塩基配列を決定した(配列表の配列番号1参照)。
【0012】
この配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを基に設計してなるオリゴヌクレオチド、好ましくは全長15~25塩基、より好ましくは全長18~22塩基のオリゴヌクレオチドは、萎凋細菌病抵抗性カーネーションの選抜に用いることができる。なお、上述のオリゴヌクレオチドWG44(配列表の配列番号2参照)は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列の5´末端の一部の塩基配列からなり、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドから設計することができるものである。
そこで、本発明者らは、その塩基配列(配列表の配列番号1参照)を基に新たにオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。設計は、プライマー設計プログラム(primer 3、OLIGO、Primer Selection等)を用いて行うことができる。
その結果、本発明者らは、44-F80(配列表の配列番号3参照)、44-R758(配列表の配列番号4参照)、44-F2(配列表の配列番号5参照)、44-F51(配列表の配列番号6参照)及び44-R757(配列表の配列番号7参照)の5種類のオリゴヌクレオチドを設計することができた。
【0013】
前述のRAPDマーカーであるオリゴヌクレオチドWG44(配列表の配列番号2参照)、並びに、上記の5種類のオリゴヌクレオチド44-F80、44-R758、44-F2、44-F51及び44-R757の計6種類のオリゴヌクレオチドは、特定の組み合わせで用いることにより、萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーションの識別に用いることができる。
即ち、カーネーションより抽出したDNAを鋳型とし、WG44単独、又は、44-F80と44-R758、44-F80と44-R757、44-F2と44-R757、44-F2と44-R758若しくは44-F51と44-R757の組み合わせでポリメラーゼ連鎖反応によるDNAの増幅を行い、得られた増幅産物を電気泳動分析し、特異的に増幅されるバンドを有する個体が萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーションであると識別することができる。しかも、得られる増幅産物は、効率的に萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーション個体を選抜するためのマーカーとなりうるものである。
【0014】
特に、44-F80、44-R758、44-F2、44-F51及び44-R757の5種類のオリゴヌクレオチドを、44-F80と44-R758、44-F80と44-R757、44-F2と44-R757、44-F2と44-R758若しくは44-F51と44-R757の組み合わせでポリメラーゼ連鎖反応によるDNAの増幅を行い、得られた増幅産物を電気泳動分析すると、得られるDNA増幅産物は単一バンドとなり、RAPDマーカーであるプライマーWG44を用いた場合に比べ信頼性が増すとともに、DNAバンドの有無の識別が非常に容易になるので、好ましい。
【0015】
本発明者らは、上記5種類のオリゴヌクレオチドを、上記特定の組合せで用いた場合に萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーションを識別できることを確認した。即ち、後述の実施例に示すように、カーネーションより抽出したDNAを鋳型として、dNTPs、上述の各オリゴヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼを加えた反応液を作製し、PCRを実施した。増幅産物についてアガロースゲル中で電気泳動を行った結果、DNA増幅産物は単一バンドとなり、RAPDマーカーであるオリゴヌクレオチドWG44を用いた場合に比べ信頼性が増すとともに、DNAバンドの有無の識別が非常に容易になることが明らかとなった。
なお、本発明のオリゴヌクレオチドは、市販のDNA/RNA合成機を使用して合成することができる。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。
実施例1
萎凋細菌病抵抗性中間母本‘カーネーション農1号’と、り病性栽培品種‘プリティファボーレ’を交配親に選定して正逆の交配を行い、抵抗性分離集団を育成した。交配法は以下の通りである。
自然交雑を防ぐために開花2~3日前に種子親の花蕾の除雄を行い、袋がけした。除雄後4~7日目の成熟した雌ずいに花粉親の花粉を付着させる人工授粉を行い、再び袋がけした。約2か月後に結実程度を調査し、採種を行った。得られた種子は、市販の混合用土(商品名:メトロミックス350)を入れた98穴プラグトレーに播種し、室温条件下で発芽させ、約1か月後に温室内ベッドに定植して生育させた。
【0017】
このようにして得られた抵抗性分離集団134系統について、萎凋細菌病の浸根接種による抵抗性検定を、カーネーションの産地の異なる病原細菌2菌株(isolate 1及びisolate 4)を用いて合計8回行った。浸根接種による検定法は次の通りである。
冷凍保存した萎凋細菌病菌を解凍し、PSA培地(ジャガイモ300g相当のエキス,硝酸カルシウム0.5g,リン酸2ナトリウム2g,ポリペプトン5g,ショ糖15g,寒天16gを1000mlの蒸留水に溶かし、pH6.8に調整し、オートクレーブ後、固化させた培地)上に接種し、27℃で3日間培養する。繁殖した菌の一部を、3白金耳分採取し、PS液体培地(上記のPSA培地より寒天を除いた培地)中で培養する。27℃で3日間の振とう培養後、菌濃度が10CFU/mlオーダーになるように希釈して接種液とする。
供試材料の挿し芽を発根培地(砂:パーライト=1:1)に挿し、ミスト下で発根させる。30日後、発根苗の根を水道水で洗って発根培地を除去し、さらに根端を約1cm切除した後、根部を接種液に室温条件で30分間浸漬して浸根接種を行う。接種後、苗を土壌消毒済みの検定ベッドに定植して、発病に好適な地温である30℃の維持に努め、接種から91日後(13週後)の発病率を調査する。
【0018】
カーネーションの葉よりDNAを常法、例えばセチルトリメチルアンモニウム(CTAB)法[クローニングとシーケンス、p252、1989、農村文化社]により抽出し、このDNA20ngを鋳型として、800μMのdNTPs、3pmol オリゴヌクレオチドプライマーおよび0.25unit Ex TaqDNAポリメラーゼ(Takara社製)を加え、10μlの反応液を作製した。
PCR反応装置はTakara社製 PCR Thermal Cycler MPを用い、前処理94℃、30秒に続き、熱変性94℃30秒、アニーリング40℃1.5分、および伸長反応72℃2.5分を45サイクル、さらに72℃7分の温度処理の条件で実施した。
増幅産物は、1μg/mlのエチジウムブロミドを含む1.5%アガロースゲル中で電気泳動することにより、分析した。
【0019】
PCR増幅産物のうち抵抗性親‘カーネーション農1号’に特異的なものを検索し、さらにその中で後代の抵抗性系統に特異的なものを検索した。合計465種類のプライマーを用いて検索し、13種類のプライマーによる13個の増幅産物が抵抗性カーネーション選抜に有効である可能性があると判断された。
さらに、抵抗性分離集団における抵抗性の分離とこれら検索されたPCR増幅産物の有無の分離を検討したところ、プライマーWG44(配列番号2)による増幅産物1043bpのバンドが最も抵抗性遺伝子に密接に連鎖しており、抵抗性カーネーション選抜に有効であることが判明した(図1、図2)。
【0020】
図1は、各系統ごとに8回の接種試験の平均値を示したもので、この図から分かるように、抵抗性分離集団134系統におけるRAPDマーカーWG44-1043を有する群76系統の平均発病率は44.9%であり、該マーカーを有さない群58系統の平均発病率は80.6%であった。
図2は、PCR増幅産物の電気泳動の結果を示す。矢印は、プライマーWG44(配列番号2)を用いて、萎凋細菌病抵抗性カーネーション‘農1号’およびその後代の抵抗性個体に特異的に増幅される1043bpのバンドを示す。
【0021】
RAPD法で得られるマーカーは、再現性にやや問題がある。そこで、STS(Sequence Tagged Sites)化を行った。PCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離し、目的の増幅DNA断片を切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(Amarsham社)を用いて精製した。Ligation Kit(TaKaRa社製)を用いてpT7BlueTベクター(Novagen社)に連結し、大腸菌JM109系統に形質転換を行った。ブルー・ホワイトセレクションにより約10個のコロニーをピックアップし、さらにそのDNAとプライマーWG44を用いたPCRにより増幅される断片の制限酵素(Taq I)処理を行い、バンドパターンの観察によって目的断片がインサートされていると思われるコロニーを選抜した。
これをLB液体培地で振とう培養を行い、さらにQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社)によりプラスミドを分離精製した。その後、Applied Biosystems社製DNAシークエンサー377を用いて挿入断片1043bpの塩基配列を決定した(配列番号1)。
【0022】
得られた塩基配列情報を基にオリゴヌクレオチドプライマーをプライマー設計プログラム(Primer 3等)を用いて設計した。プライマーサイズは18~20塩基、プライマーTmは50℃、その他の条件はデフォルトとした。44-F80(配列番号3)、44-R758(配列番号4)、44-F2(配列番号5)、44-F51(配列番号6)、44-R757(配列番号7)の5種類を設計し合成した。
次に、DNA20ngを鋳型として、800μMのdNTPs、2種類の1.5pmolオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号3と4、配列番号3と7、配列番号5と7、配列番号5と4、配列番号6と7)および0.25unit Ex TaqDNAポリメラーゼ(Takara社製)を加え、10μlの反応液を作製した。PCR反応装置はTakara社製PCR Thermal Cycler MPを用い、前処理94℃30秒に続き、熱変性94℃30秒、アニーリング50℃30秒、および伸長反応72℃30秒を30サイクル、さらに72℃5分の温度処理の条件で実施した。増幅産物は、1μg/mlのエチジウムブロミドを含む1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行った。
【0023】
STS化した5つのプライマー組み合わせ(配列番号3と4、配列番号3と7、配列番号5と7、配列番号5と4、配列番号6と7)により得られる増幅産物は1本のバンドとなった。RAPDマーカーに比較してマーカーバンドを有する個体の判別が容易となり、信頼性が向上した。1例として配列番号3と4の組み合わせによるDNAバンドを示す(図3)。図中の矢印は、萎凋細菌病抵抗性カーネーション‘農1号’及びその後代の抵抗性個体に特異的に増幅されるバンド、すなわちプライマー44-F80(配列番号3)および44-R758(配列番号4)を用いて、萎凋細菌病抵抗性カーネーション‘農1号’および抵抗性を有する個体に特異的に増幅されるDNAバンドを示す。
これら5種類のSTSマーカーの有無は、WG44(配列番号2)による1043bpのRAPDバンドの有無と完全に一致した。したがって、これらの増幅産物が萎凋細菌病抵抗性カーネーションの選抜マーカーとして有効であることが示された。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、萎凋細菌病抵抗性カーネーションの育種において、育苗段階で、かつ病原菌を使用する抵抗性検定を行わずに、予備選抜を行うことができ、個体選抜の効率の向上、労力ならびに栽培面積の削減が可能である。
【0025】
【配列表】
JP0003855052B2_000002t.gifJP0003855052B2_000003t.gifJP0003855052B2_000004t.gifJP0003855052B2_000005t.gifJP0003855052B2_000006t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】 抵抗性分離集団134系統における平均発病率とRAPDマーカーWG44-1043の有無との関係を示す図である。
【符号の説明】
黒棒はマーカーあり、白棒はマーカーなしを示す。
【図2】 PCR増幅産物の電気泳動の結果を示す。
【符号の説明】
Nは‘農1号’を、Pは‘プリティファボーレ’を、1~5は発病率20%以下の抵抗性個体を、6~10は発病率90%以上の感受性個体を示す。
【図3】 PCR増幅産物の電気泳動の結果を示す。
【符号の説明】
Mは分子量マーカーを、Nは‘農1号’を、Pは‘プリティファボーレ’を、1~5は発病率20%以下の抵抗性個体を、6~10は発病率90%以上の感受性個体を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2