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明細書 :コメのミネラル組成を改質した食品素材及びその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3621991号 (P3621991)
公開番号 特開2004-033115 (P2004-033115A)
登録日 平成16年12月3日(2004.12.3)
発行日 平成17年2月23日(2005.2.23)
公開日 平成16年2月5日(2004.2.5)
発明の名称または考案の名称 コメのミネラル組成を改質した食品素材及びその製造法
国際特許分類 A23L  1/10      
A23L  1/304     
FI A23L 1/10 A
A23L 1/304
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2002-195392 (P2002-195392)
出願日 平成14年7月4日(2002.7.4)
審査請求日 平成14年7月4日(2002.7.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】堀野 俊郎
【氏名】野方 洋一
【氏名】安井 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】鈴木 恵理子
参考文献・文献 特開2002-142692(JP,A)
特開平10-262582(JP,A)
調査した分野 A23L 1/10
A23L 1/304
特許請求の範囲 【請求項1】
原料米にマグネシウムを富化することによって、当該原料米のカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比を2.0~3.5の範囲としてなる、ミネラル組成を改質した食品素材。
【請求項2】
原料米にマグネシウム及びナトリウムを富化することによって、当該原料米のカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比を2.0~3.5の範囲としてなる、ミネラル組成を改質した食品素材。
【請求項3】
原料米が、籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米又は精白米である請求項1又は2記載の食品素材。
【請求項4】
濃度が0.02%(重量/容量)以上かつ2.0%(重量/容量)以下である塩化マグネシウムを含む水溶液に原料米を浸漬することを特徴とする請求項1記載の食品素材の製造法。
【請求項5】
濃度が0.02%(重量/容量)以上かつ2.0%(重量/容量)以下である塩化マグネシウム及び濃度が0.1%(重量/容量)以上かつ10.0%(重量/容量)以下である塩化ナトリウムを含む水溶液に原料米を浸積することを特徴とする請求項2記載の食品素材の製造法。
【請求項6】
原料米が、籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米又は精白米である請求項4又は5記載の食品素材の製造法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原料米のミネラル組成を改質した食品素材及びその製造法に関し、詳しくは籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米もしくは精白米から選ばれる原料米中のマグネシウム含量を減少させることなく、当該原料米のカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比を高めてミネラル組成を改質し、食味を改善した食品素材およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、玄米、分づき米、胚芽米もしくは精白米等を炊飯する際に、あらかじめ水に浸積しておくと、炊飯米がより軟らかくなり、呈味性も増して食味がより好ましい状態になるとされ、伝統的な調理技術として広く行なわれている。
また最近、胚芽保有率が十分に高い原料米に関しては、適切な液温及びpHの水溶液に一定時間浸積しておくことで生理的な発芽状態に到り、内在する酵素が作用して、内在グルタミン酸が抑制性の神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸へ急速大量に変換され、栄養特性が改善されることも明らかにされている(特許第2590423号)。
【0003】
ところで、コメには栄養機能性を有する成分が多数含まれており、ミネラルもその一つである。例えばマグネシウムは玄米100g中に約110mg(マグネシウム元素量で表記。以下同様とする)、胚芽米中には約50mg、精白米には約30mgが含まれ、日本人の栄養摂取において重要なマグネシウム源となっている。
これに関連することであるが、成人男子の体内には平均してカルシウム約1,160g、カリウム約150g、ナトリウム約63g、マグネシウム約25gが存在している。
このうちマグネシウムは、人体内に存在する酵素のうち少なくとも325種以上の活性化にあたり、アデノシン三リン酸(ATP)と共役することで補酵素(賦活成分)として機能していることが知られている。
【0004】
この他、DNA及びRNAの合成にも寄与し、細胞内外のカリウム・ナトリウム・カルシウム濃度差の調節に関与し、骨や歯の形成にも貢献するなど、極めて広範囲に分布し作用している。
さらに重要視されるのは、マグネシウムは脳神経系や筋肉の伸縮における情報伝達に不可欠なものであり、この意味で特別、かつ別格の栄養機能成分であることである。
このため、マグネシウムの摂取不足による欠乏症状は、高血圧・動脈硬化・糖尿病、心臓病・心筋梗塞・脳梗塞、あるいは筋肉痛・ホルモン性疾患・不整脈・突然死、さらには骨粗鬆症・尿路結石等として、実に様々な形で表面化することが知られている。
【0005】
とりわけ、頭脳労働が急増した現代人にとっては、脳神経系疲労・慢性的頭痛・肩腰痛・四肢運動障害等の知的疲労形態の症状も深刻な問題となっている。
こうした症状の多くは日々緩慢に進行するところから、「生活習慣病(成人病)」とも総称されている(糸川嘉則・斉藤昇編著、マグネシウム-成人病との関係、光生館、1995)。
厚生労働省が勧告する「日本人の栄養所要量」では、マグネシウムの成人1日当たり目標摂取量は300mgとされているが、この数字から、成人体内には80余日分のマグネシウムしか貯蔵されていない計算になる。
実態として、日本人成人男子平均のマグネシウム摂取量は約200mgで、約100mgの不足とみられているが、カルシウムやカリウムに比べて、はるかに短期間で欠乏状態に陥りやすいので、日常の食生活の中で十分に摂取できるよう、よく配慮された食品素材の開発とその利用が望まれている。
【0006】
ここで、日本人の主食であるコメのミネラルにつき、さらに詳しく検討する。
日本産の玄米には、人の栄養に不可欠の数種以上のミネラルが含まれており、その主要なものは、玄米100g当たり(玄米水分14.5%換算。以下同様)で、カリウムが約220mg、マグネシウムが約110mg、カルシウムが約10mg、ナトリウムは通常は0mg内外となっている。
これらのうちでは、とりわけ高含量であるカリウムとマグネシウムにつき、その化学的な相互関係を表すため「化学当量」を用いて説明する。
まず、カリウム含量を、その1化学当量である39.1で除して、カリウムの化学当量(単位:mEq/100g)を求める。マグネシウム含量も、その1化学当量である12.16で除して、マグネシウムの化学当量(単位:同前)を求める。
次に、Mg・mEq/100gをK・mEq/100gで除して、Mg/K・mEq比を得る(以下、この比を「Mg/K化学当量比」と表記する)。
【0007】
Mg/K化学当量比は、米・小麦・大麦等の穀物種ごとに一定の範囲に収束する傾向にあり、玄米の場合、いくつかの品種群の平均値でみると1.39~1.73にあることが報告されている(堀野ら、日本作物学会紀事61巻1号、P28-33、1992)。
これをさらに詳しく見ると、例えば食味が極めて優れるとされるコシヒカリ系の品種群は、食味が標準的とされる日本晴等の品種群に比べて、カリウムが約20mg少ないが、マグネシウムは約10mg多いという特徴があり、これをMg/K化学当量比でみると、食味の標準的な品種群が1.49(標準偏差0.13)であるのに対し、コシヒカリ群は1.73(標準偏差0.08)と高まっている。
【0008】
なお、コメのカルシウム含量は食味への影響が小さいことも知られている(堀野俊郎・岡本正弘、農水省中国農業試験場研究報告、第10号、P1-15、1992)。
後出の第1表に示すが、玄米を水に浸積した場合にも、これらのミネラル含量には溶出の影響が表れ、24時間後にはカリウム(K元素量)で約30mg、マグネシウム(同)は約5mgが水相へ移行して、Mg/K化学当量比が変動する。
同様の現象は早刈り緑色米、分づき米、胚芽米、精白米でもみられる。ここで、早刈り緑色米とは、通常の収穫適期よりもおよそ10日以上早い時期に刈り取られるもので、米粒の多くが緑色を呈するコメのことである。
【0009】
即ち、一般に行われているコメの水洗、研ぎ、浸積は、ご飯をより軟らかく炊きあげる目的のほか、食味の点で好ましくないとされるカリウムの溶出を促す効果もある。
しかし、この際にマグネシウムの溶出も随伴していることは、上述のとおり、人の栄養上、特に考慮されるべき重要事項と考えられる。
【0010】
発芽玄米等の製造においては、糠や胚芽等を多く保有する籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米等を原料に用いるので、そのミネラル含量は精白米よりは豊富であるものの、発芽処理のため、これら原料米を水浸積する際に一定量のマグネシウムが失われている。
このマグネシウムの溶出・流亡は、上述の「栄養所要量」に照らして、決して好ましいことではなく、この観点からするマグネシウムの溶出防止対策の必要性は知られておらず、当然ながら産業的対策もなされていなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、コメを原料とし、そのミネラル組成を栄養的により好ましく改質し、併せて食味を向上させた食品素材とその製造法を提供することである。
本発明者らは、上述の問題点を考慮し、水溶液に浸積する際の工夫によって、原料米のミネラル組成をより好ましく改質できることを知るとともに、この操作により、玄米や分づき米から炊きあげたご飯に特有の「玄米臭」も同時に除去できるため、食味をも向上させた食品素材を得ることに成功し、併せてその製造法を完成した。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨を説明する。
請求項1は、原料米にマグネシウムを富化することによって、当該原料米のカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比を2.0~3.5の範囲としてなる、ミネラル組成を改質した食品素材である。
請求項2は、原料米にマグネシウム及びナトリウムを富化することによって、当該原料米のカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比を2.0~3.5の範囲としてなる、ミネラル組成を改質した食品素材である。
請求項3は、原料米が、籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米又は精白米である請求項1又は2記載の食品素材である。
請求項4は、濃度が0.02%(重量/容量)以上かつ2.0%(重量/容量)以下である塩化マグネシウムを含む水溶液に原料米を浸漬することを特徴とする請求項1記載の食品素材の製造法である。
請求項5は、濃度が0.02%(重量/容量)以上かつ2.0%(重量/容量)以下である塩化マグネシウム及び濃度が0.1%(重量/容量)以上かつ10.0%(重量/容量)以下である塩化ナトリウムを含む水溶液に原料米を浸積することを特徴とする請求項2記載の食品素材の製造法である。
請求項6は、原料米が、籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米又は精白米である請求項4又は5記載の食品素材の製造法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるコメは、品種を限定しないが、食用に提供することを目的にするので、品種の特性や栽培上の理由等で不快な食味を呈することとなった原料米、あるいはインデイカ種のごとく品種の特性として苦渋味を呈する原料は避けることが望ましい。
【0014】
以下に、コメを原料とする本発明の食品素材及びその製造法について詳しく説明する。
請求項1記載の食品素材は、原料米にマグネシウムを富化することによって、当該原料米のカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比(Mg/K化学当量比)を2.0~3.5の範囲としてなる、ミネラル組成を改質した食品素材である。
請求項2記載の食品素材は、原料米にマグネシウム及びナトリウムを富化することによって、当該原料米のカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比を2.0~3.5の範囲としてなる、ミネラル組成を改質した食品素材である。
【0015】
このようにミネラル組成を改質した食品素材は、請求項4以下に記載したように、所定濃度の塩化マグネシウムを含む溶液もしくは所定濃度の塩化マグネシウムと塩化ナトリウムを含む溶液に原料米を浸漬することにより得られる。
まず、原料米として籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米及び精白米から選ばれる少なくとも1種のコメを選択し、食用に適するように精選したものを用意する。
籾米の場合は、そのまま浸積工程へ回してもよいが、浸積作業やその後の乾燥・調製作業等に手間どるので、好ましくは籾すりしてから用いるとよい。
【0016】
次に、塩化マグネシウムを含む水溶液を用いて上記食品素材を製造する方法について説明する。
所定濃度の塩化マグネシウムを含む水溶液の調製法は、特に制限されることはないが、例えば食品添加用の塩化マグネシウム含有物、塩化マグネシウム含有水などの他、好ましくは粉末ニガリ又は水ニガリ、より好ましくは塩田製法により硫酸カルシウム及び塩化カリウムの含有比率を原海水における含有比率よりも少なくした精製ニガリを用いる。
上記材料を用いて塩化マグネシウム濃度が0.02%(重量/容量、以下同様)~2.0%、好ましくは0.15%~0.45%の水溶液を調製する。
【0017】
この水溶液100リットルにつき原料米100kg以下、好ましくは90~60kgを浸積し、一般生菌数の増加を抑制するため液温を29℃以下、好ましくは17℃以下に保ち、静置して1~48時間、好ましくは3~8時間の浸積を行う。なお、水溶液には、殺菌のため適量のエタノールや次亜塩素酸ナトリウム等を加えたり、pH調整のためリン酸や有機酸を加えることができる。
この操作により、通常、原料米中のカリウムは水相へ溶出され、水相のマグネシウムは原料米へ富化される。
例えば24時間浸積後には、カリウムは約40mg減となる一方で、マグネシウムは約10mg増となり、Mg/K化学当量比は原料米で1.81であったものが2.43へ上昇する。
【0018】
このようにして、本発明が課題とする、原料米に比べて高いマグネシウム含量、かつ高いMg/K化学当量比の状態にミネラル組成を改質した食品素材が得られる。
また、3時間以上、好ましくは5時間以上、水溶液に浸積すると、玄米や分づき米を炊飯した際に感じられる特有の玄米臭も併せて低減させることができ、本発明の課題を解決した食品素材が得られる。
【0019】
なお、原料米の浸積用水溶液として塩化ナトリウムのみを溶解させたものを用いる場合には、原料米のカリウム溶出が一層促進されて24時間後に約60mg減となり、その影響でMg/K化学当量比は2.27に上昇するものの、マグネシウムの溶出も促進されて同24時間後には13mg減となる。
このため、この形態の食品素材は、本発明の課題を解決することができない。
さらに従来、近畿地方等の一部には、コメを精選する際に得られる青米や屑米を、適当濃度の食塩水に浸積してから雑炊等に炊きあげる「いるご飯」あるいは「ゆるご飯」と呼び慣わされる伝統食品があるが、これも、この形態に属し、本発明の課題を解決することができない事例の一つである。
【0020】
次に、本発明の課題を解決するもう一つの形態を例示する。
まず、上記濃度の塩化マグネシウム水溶液に、さらに食品添加用の塩化ナトリウム含有物、塩化ナトリウム含有水もしくは海塩又は岩塩等の食塩を用いて塩化ナトリウムを添加し、その濃度を0.1%~10.0%、好ましくは0.5%~3.0%とした混合水溶液を作成する。この場合、所要量のニガリをあらかじめ含有させた食塩を用いることもできる。なお、海水を約2倍に希釈して上記濃度範囲内としたものも、本発明に利用することが可能である。この場合も、水溶液には、殺菌のため適量のエタノールや次亜塩素酸ナトリウム等を加えたり、pH調整のためリン酸や有機酸を加えることができる。
【0021】
このようにして調製した所定濃度のマグネシウムとナトリウムを含む混合水溶液に、上述の如くして原料米を浸積すると、原料米のカリウムは前例に比べて一層溶出が促進され、24時間浸積後に約58mg減となる。
一方、原料米へのマグネシウム富化量は5時間浸積後に、最も好ましくて約10mgとなる。しかし、浸漬時間がこれより短時間あるいは長時間では、やや好ましくなくなり、例えば24時間浸積後には約1mg増にすぎず、原料米とほぼ同水準に止どまる。
【0022】
塩化マグネシウムと塩化ナトリウムを併用して、原料米を浸漬するための水溶液を調製した場合は、浸積時間は1~24時間、好ましくは3~8時間の範囲内においてマグネシウムがより増加し、Mg/K化学当量比は原料米の1.81より上昇して2.20~2.52に高まり、本発明の課題を解決できる。
また、前例同様、3時間以上、好ましくは5時間以上浸積する場合には、玄米等を炊飯した際に感じられる、特有の玄米臭をも同時に低減させた食品素材が得られる。
【0023】
なお、この例において、原料米へ富化されるナトリウム量は浸積時間と共に増加し、24時間浸積後には約200mgにまで達する。
7名の試食者による試食試験によれば、食品素材中のナトリウム含量が約75mg以下では、試食者全員が塩化ナトリウムに由来する何らの呈味性も感知できないが、約75~125mgの範囲では、試食者のうち5名が弱い甘味を感知し、約125mg以上になると、試食者全員が明瞭な塩味を覚える。
すなわち、ここで得られる食品素材は、富化される塩化ナトリウム量の増加に伴って甘味もしくは塩味が強められるので、この作用を利用してマグネシウムを富化し、併せて塩化ナトリウムに由来する弱甘味や塩味を付与した食品素材を得ることができる。
【0024】
このようにして得られる食品素材は、必要に応じて水もしくは上述の0.02~2.0%の濃度範囲の塩化マグネシウム溶液による洗浄処理を付加することもできる。
さらに、公知のように、コメは含水率を15%以下にすることで、一般生菌数や耐熱性芽胞細菌数の増加を抑制することが可能であり、乾燥処理によって食品素材の保存性を高めることに役立つので、ステンレス製ざる等の適当な器具、容器を用いる水切り処理、温風や冷風等を用いる乾燥処理を付加することがより好ましい。
また、乾燥処理を行った場合、粉砕処理や膨化処理の付加が容易になり、形態の異なった食品素材の提供が可能となる。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、対照玄米は、広島県産のコシヒカリ玄米(水分含量14.5%に調整)とし、その一部を比較米各群及び試験米各群の原料米としても用いた。
【0026】
比較例1
本例の比較米第1群7種は、各々脱イオン水1リットルに上記の原料玄米の各々1kgを投入し、第1表に示した設定時間の通りに浸積した。その後、ステンレス製ざるに揚げて水切りし、4℃の低温室内で通風乾燥して含水率を約14.5%に調製した。
このようにして対照玄米及び比較米第1群を調製後、各々30gを粉砕して、米粉1.000gを秤り取った。
【0027】
これを1%塩酸溶液100mlに投入し、よく振とうしてミネラルを抽出し、適宜希釈して原子吸光光度計(HITACHI Z8200 型)により、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)の各含量を測定し、その結果は原料米100g中のmgとして第1表に示した。以下において、原子吸光法で測定した食品素材中のミネラルは、元素記号でK、Mg、Naと表記し、各々の含量は元素量mg/100gで記載した。
なお、カルシウム(Ca)含量も測定したが、その結果は本発明の課題との関連が希薄であったので、以下の各表には記載しなかった。
【0028】
表から明らかなように、比較米第1群のK及びMg含量は、対照玄米に比べ、水浸積によって明らかに減少し、浸積時間が長くなるほど減少度を増した。Mg/K化学当量比は1.81~2.01で、多くは2.0未満であった。
この結果、本群においては、一部にMg/K化学当量比が2.01に達した例が見られたものの、すべてにおいてMgが減少したため、本発明の課題を解決する食品素材は得られなかった。
【0029】
【表1】
第1表 比較米第1群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
JP0003621991B2_000002t.gif
【0030】
比較例2
本例の比較米第2群7種は、各々脱イオン水1リットルに塩化ナトリウム20gを溶解させて用いた他は、比較米第1群と同様にして調製し、化学分析も同様にして実施した。結果を第2表に示す。
本群のK及びMg含量も、水浸積によって明らかに減じ、比較米第1群より一層減少した。また、浸積時間が長くなるほど、その度合いを増し、特にKの減少が顕著であった。
Mg/K化学当量比は1.92~2.27で、2.0を越すものも見られたが、本群においてもMgが減少したことから、本発明の課題を解決する食品素材は得られなかった。
【0031】
【表2】
第2表 比較米第2群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
JP0003621991B2_000003t.gif
【0032】
実施例1
本例の試験米第1群7種は、各々脱イオン水1リットルにつき塩化マグネシウム1.5gを溶解させて用いた他は、比較米第1群と同様にして調製し、化学分析も同様にして実施した。結果を第3表に示す。
なお、塩化マグネシウム源としては、塩田製法で得られた精製ニガリ(トーフ用粉末ニガリ、株式会社天塩製、塩化マグネシウム含量51%。他に硫酸マグネシウム3.4%、塩化ナトリウム2.6%、塩化カリウム0.5%、及び結晶水約42.5%を含有)を使用した。
【0033】
表から明らかなように、本群では、対照玄米及び比較米第1群に比べてK含量が明らかに減じ、さらに浸積時間が長くなるにしたがって一層減少した。これに対し、Mg含量は、浸積時間の長短にかかわらず約10mg増となった。
すなわち本群では、Kを減じる一方で、浸積時間1時間以上においてMgを明確に増加させ、Mg/K化学当量比は、原料米の1.81より上昇して2.00~2.43に高められ、本発明の課題を解決した食品素材が得られた。
【0034】
【表3】
第3表 試験米第1群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
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【0035】
実施例2
本例の試験米第2群7種は、各々脱イオン水1リットルにつき塩化ナトリウム20g及び塩化マグネシウム1.5gを溶解させて用いた他は、比較米第1群と同様にして調製し、化学分析も同様にして実施した。結果を第4表に示す。
【0036】
表から明らかなように、本群のK含量も、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウム混合水溶液への浸積によって明らかに減じ、浸積時間が長くなるにしたがって一層減少し、その減少度合いは試験米第1群よりもさらに大きかった。
すなわち本群では、浸積時間1時間以上においてKを減じ、浸積時間が1~24時間、好ましくは3~8時間の範囲内においてMgがより増加し、よってMg/K化学当量比は、原料米の1.81より上昇して2.20~2.52に高められ、本発明の課題を解決した食品素材が得られた。
【0037】
【表4】
第4表 試験米第2群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
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【0038】
比較例3
本例の試験米第3群7種は、比較米第2群に準じ、塩化ナトリウム濃度を0.1~5.0%間の7段階とした水溶液に原料玄米を5時間浸積した。
この本群7種を化学分析して得られたK、Mg、Na含量を第5表に、炊飯して試食した結果を第6表に示す。
なお、試食試験の結果は、玄米臭、甘味及び塩味について「無、微、弱、中、有、強」の6段階で評価し、試食者7名の平均値で示した。
【0039】
【表5】
第5表 試験米第3群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
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【0040】
【表6】
第6表 試験米第3群の炊飯米の試食結果
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【0041】
本群では、塩化ナトリウム水溶液に5時間浸積した結果、K含量が約10~30mg余が減少し、液中塩化ナトリウム濃度とは反比例の傾向を示した。
また、Mg含量も各濃度において約5mg減となり、比較米第2群でも見られた通り、Mg富化という観点からは塩化ナトリウム水溶液への浸積は好ましくなく、Mg/K化学当量比も、原料米の1.81に対し、1.90~2.04に止まって、本発明の課題を解決した食品素材は得られなかった。
【0042】
また、本群の炊飯米の試食結果は第6表の通りであるが、対照玄米において特有の玄米臭を明瞭に感じたのに対し、本群7種では、7名の試食者のうち5名が玄米臭を感知せず、この浸積条件は、前例同様、玄米臭の除去の面で好ましい効果をもたらした。
次に、甘味評価は、対照玄米で「微」、本群中の塩化ナトリウム0.1%区及び同0.2%区でも「微」であった。
しかし、同0.5%区では「弱」、さらに同1.0%区では「中」、同2.0%区~5.0%区では明瞭に「有」と判定された。
さらに、塩味については、対照玄米で「無」であり、本群においても、塩化ナトリウム水溶液に浸積したにもかかわらず、塩化ナトリウム0.1%区~1.0%区で「無」であった。
しかし、同2.0%区では「弱」、同3.0%区では「有」、同5.0%区では明瞭に「強」と判定された。
すなわち、塩化ナトリウムに関しては、濃度約1.5%を境界として、それ以下では塩味を感じることはまれであり、それ以上では塩味を明瞭に感じるという傾向が特徴的であった。
これを食品素材中のNa含量でみると、約75mg以下ではほとんど甘味を認めず、約75~125mgでは甘味を感じ、約125mg以上では甘味及び塩味を明瞭に感じたことを意味する。
これらの効果を利用して「甘味単独」もしくは「甘味及び塩味」を付与した食品素材を得ることができる。
【0043】
実施例3
本例の試験米第4群7種は、試験米第1群に準じ、塩化マグネシウム濃度を0.075~0.60%間の7段階とした水溶液に玄米を5時間浸積して得たもので、原子吸光法により化学分析して得たK、Mg、Na含量を第7表に、炊飯して試食した結果を第8表に示す。
なお、試食試験の結果は、玄米臭、甘味及び塩味について「無、微、弱、中、有、強」の6段階で評価し、試食者7名の平均値で示した。
【0044】
【表7】
第7表 試験米第4群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
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【0045】
【表8】
第8表 試験米第4群の炊飯米の試食結果
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【0046】
本群のK含量は、塩化マグネシウム水溶液への浸積で平均約20mg減少したが、液中塩化マグネシウム濃度には影響されていなかった。
一方、Mg含量は液中塩化マグネシウム濃度に比例して増加し、Mg富化という観点から見れば、塩化マグネシウム濃度は高いほど好ましく、液中濃度0.150%~0.600%に5時間浸積した場合、Mg/K化学当量比は、原料米の1.81より上昇し、2.17~2.50に高められ、本発明の課題を解決した食品素材が得られた。
【0047】
また、本群の炊飯米の試食結果は第8表に示した通りである。この表から明らかなように、対照玄米において、広く一般に問題とされる玄米や分づき米を炊飯した際に特有の「玄米臭」、すなわち嚥下直後に感じられる弱い「胸やけ感」と鼻腔に抜ける「戻り臭」を明瞭に感じたのに対し、本群7種では7名の試食者うち6名が玄米臭を感知せず、本浸積条件は、食味の面でも従来に例を見ない明らかに好ましい効果をもたらした。
次に、甘味評価は、対照玄米で「微」、本群中の塩化マグネシウム0.075%区においても「微」と判断された。
しかし、同0.15%区~0.225%区で甘味が「弱」、さらに同0.30%区~0.60%区では明瞭に甘味が「有」と判定され、本来は苦渋味を有するはずの塩化マグネシウムであるが、適切な濃度の稀薄溶液に浸積した場合には、甘味を呈することが認められた。
ただし0.60%区では、塩化マグネシウムに由来する特有の苦渋味も共存して「有」となり、従ってその添加量には味覚的上限があって0.15%~0.45%の範囲で製造された食品素材が好ましかった。
【0048】
比較例4
本例の比較米第3群5種、すなわち籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米及び精白米につき、原子吸光法により化学分析して得たK、Mg、Na含量及びその化学当量を第9表に示した。
表から明らかなように、そのMg/K化学当量比は、最も低い精白米で1.15、最も高い玄米で1.81であり、いずれも本発明の課題を解決したものではなかった。
【0049】
【表9】
第9表 比較米第3群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
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【0050】
実施例4
本例の試験米第5群5種、すなわち籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米及び精白米を原料米とし、当該原料米を塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを溶解させた水溶液に浸積してMg及びNaを富化し、当該原料米に含まれるカリウムの化学当量に対するマグネシウムの化学当量の比を、比較米第3群の1.15~1.81から2.0~3.5の範囲へ高めてミネラル組成を改質し、及び食味を改善した食品素材の製造法を示す。
なお、籾米については、そのままで浸積することもできるが、通常は籾すり工程を経て、玄米のかたちで用いるとよい。
【0051】
まず、塩田製法で得られた精製ニガリ(トーフ用粉末ニガリ、株式会社天塩製、塩化マグネシウム含量51%、硫酸マグネシウム3.4%、塩化ナトリウム2.6%、塩化カリウム0.5%及び結晶水約42.5%を含有)、及び食品添加物である塩化ナトリウムの所要量を水に溶解して、塩化マグネシウム濃度が0.375%、及び塩化ナトリウム濃度が2.0%の浸積用水溶液を調製した。
次に、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米及び精白米の各々1kgを、上記の水溶液各々1リットルに投入して5時間浸積した。
水溶液の温度は、異臭の原因となり易い一般生菌数及び食中毒の原因となる耐熱性芽胞細菌のバチルス属バクテリア等の増加を抑える目的で17℃以下に保った。
この操作により、原料米カリウムの水相への溶出と、水相マグネシウムの原料米への富化を図った。
【0052】
浸積終了後は、原料米をステンレス製ざるへ移して水切りし、次いで8℃の低温室内で送風しながら乾燥させ、水分含量を約14.5%に調整した。
かくして得られた食品素材のK、Mg、Na含量を前記と同様の方法で測定した。結果を第10表に示した。
表から明らかなように、試験米第5群の玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米及び精白米は、いずれも浸積前に比べて浸積後のK含量が減、Mg含量及びNa含量は増加し、Mg/K化学当量比は比較米第3群の1.15~1.81に比べ、本群では2.0~3.06へ、各々、高められていることが確かめられた。
この方法により、Mg含量を増加させ、Mg/K化学当量比を高め、乾燥により取り扱い性が良好となり、しかも一般生菌数及び耐熱性バクテリア類の増加が抑えられて安全性が向上し、併せて食味も良好に改善された、コメのミネラル組成を改質した食品素材が製造された。
【0053】
【表10】
第10表 比較米第5群のミネラル含量及び化学当量とMg/K化学当量比
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【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、籾米、玄米、早刈り緑色米、分づき米、胚芽米及び精白米の中から選ばれる1種以上を原料米とし、当該原料米のマグネシウム含量、もしくはマグネシウム含量とナトリウム含量を富化することによって、当該原料米のMg/K化学当量比を2.0~3.5の範囲としてなる、ミネラル組成を改質した食品素材が提供される。
【0055】
さらに、本発明によれば、上記原料米を適当な濃度の塩化マグネシウム水溶液、もしくは塩化マグネシウムと塩化ナトリウムの水溶液に浸積することにより、マグネシウム含量を高め、当該原料米のMg/K化学当量比を2.0~3.5に高めた、ミネラル組成を改質した食品素材の製造法が提供される。
【0056】
本発明に係る食品素材は、比較対照の原料米より高マグネシウム含量であり、また対照玄米に比べて玄米臭が低減されて食味が良好であり、栄養上も好ましく改善された食品素材として、広く一般に提供できる。
また、本発明の食品素材は、生体内においてきわめて多数の酵素を賦活するなど、生理機能面で、近年、特に重要視されている栄養成分のマグネシウムが富化されていることが大きな特徴の一つであり、これを日常食に用いることで、頭脳や神経系の疲労回復、及び生活習慣病等の予防あるいは治療等に貢献できる。