TOP > 国内特許検索 > 果糖二糖類及び果糖二糖類合成酵素の製造法 > 明細書

明細書 :果糖二糖類及び果糖二糖類合成酵素の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3870264号 (P3870264)
公開番号 特開2004-242565 (P2004-242565A)
登録日 平成18年10月27日(2006.10.27)
発行日 平成19年1月17日(2007.1.17)
公開日 平成16年9月2日(2004.9.2)
発明の名称または考案の名称 果糖二糖類及び果糖二糖類合成酵素の製造法
国際特許分類 C12P  19/12        (2006.01)
C12N   9/00        (2006.01)
C12R   1/06        (2006.01)
FI C12P 19/12
C12N 9/00
C12P 19/12
C12R 1:06
請求項の数または発明の数 4
微生物の受託番号 FERM P-18691
全頁数 7
出願番号 特願2003-035091 (P2003-035091)
出願日 平成15年2月13日(2003.2.13)
審査請求日 平成15年2月13日(2003.2.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】斎藤 勝一
【氏名】小田 有二
【氏名】山内 宏昭
【氏名】中司 啓二
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
【識別番号】100118898、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 立昌
審査官 【審査官】坂崎 恵美子
参考文献・文献 特開平09-154594(JP,A)
特開平08-283284(JP,A)
調査した分野 C12P 19/12
C12N 9/00
C12R 1/06
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
イネ科植物の葉,茎,藁に微生物由来酵素を作用させ、果糖二糖類を製造する方法であって
記微生物としてアルスロバクター・エスピーB25を用い、レバンオース合成酵素を生成させ、該レバンオース合成酵素によってレバンオースを製造することを特徴とする果糖二糖類の製造方法。
【請求項2】
上記イネ科植物がライグラス類,ライ麦,ライ小麦又は小麦であることを特徴とする請求項1記載の果糖二糖類の製造方法。
【請求項3】
イネ科植物の葉,茎,藁に微生物を生育させ、果糖二糖類合成酵素を製造する方法であって、
上記微生物としてアルスロバクター・エスピーB25を用い、レバンオース合成酵素を生成することを特徴とする果糖二糖類合成酵素の製造方法。
【請求項4】
上記イネ科植物がライグラス類,ライ麦,ライ小麦又は小麦であることを特徴とする請求項3記載の果糖二糖類合成酵素の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、果糖二糖類及び果糖二糖類合成酵素の製造法に関し、さらに詳しくは、ライグラスなどの植物基質を原料とした果糖からなる直鎖状の二糖類レバンビオースの製造方法及びその合成酵素の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
果糖からなる直鎖状二糖レバンビオース及び環状二糖ジフルクトース・ジアンヒドリドIVは、レバンと呼ばれる果糖が多数重合した多糖類を原料基質として微生物酵素により生成される。これらの果糖二糖類は、蔗糖の約半分の甘味を有し、カルシウム吸収促進効果、腸内菌層の改善、整腸作用を有する機能性食品素材として有望な糖類である(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。そのためこれら果糖二糖類をレバンより合成する酵素の開発が進められている。
【0003】
レバンビオース合成酵素を産生する微生物として、バシルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)(例えば、非特許文献2参照)、シードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(例えば、非特許文献3参照)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus) (例えば、特許文献2参照)、ストレプトマイセス・sp(Streptomyces sp)(例えば、非特許文献3参照)、及びストレプトマイセス・エクスフォリアタスストレプトマイセス・エクスフォリアタス(Streptomyces exfoliatus)(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0004】
ジフルクトース・ジアンヒドリドIV合成酵素を産生する微生物としては、アルスロバクター・ウレアファキエンス(Arthrobacter ureafaciens )(例えば、非特許文献4~6参照)、アルスロバクター・エスピー (例えば、非特許文献7参照)、及びアルスロバクター・ニコチノヴォランス(Arthrobacter nicotinovorans)(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0005】
また、これら微生物より果糖二糖類合成酵素の遺伝子を単離し、大腸菌や酵母などで遺伝子組み換え手法により大量に製造することも行われている(例えば、特許文献5,6参照)
【0006】
一方、原料となるレバンは、セラチア属細菌などの作用により蔗糖より発酵生産され、蔗糖からのレバンの高収率化の技術が開示されている(例えば、特許文献参照)。しかし、(1)定法による蔗糖生産、(2)微生物発酵によるレバン生産、(3)果糖二糖類合成酵素の生産、(4)果糖二糖類の生産と、多数の工程が必要であり、またこの場合のレバンの対蔗糖収率はおよそ20%程度であることから、コスト面、効率面からこれら果糖二糖類の製造技術の確立には至っていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】
特開2000-204042号公報
【特許文献2】
特開昭48-99385号公報
【特許文献3】
特開平5-244974号公報
【特許文献4】
特開平9-154594号公報
【特許文献5】
特開平11-69978号公報
【特許文献6】
特開2002-17366号公報
【特許文献7】
特開2002-17390号公報
【非特許文献1】
K.Saitoら、Biosci.Biotechnol.Biochem.64,1321-1327(2000)
【非特許文献2】
YamamotoS.ら、Agric.Biol.Chem.49(2),343-350,1985
【非特許文献3】
MurakamiH.ら、Agric.Biol.Chem. 54(9),2247-2256,1990
【非特許文献4】
K.Tanakaら、J.Biochem.90,1545-1548(1981))
【非特許文献5】
K.Tanakaら、J.Biochem.94,1569-1578(1983)
【非特許文献6】
K.Tanakaら、J.Biochem.97,1679-1688(1985)
【非特許文献7】
村上洋ら、科学と工業、67(9),365-370(1993)
【0008】
また一方、イネ科植物の葉、茎あるいはそれらを乾燥した藁中には、一分子のブドウ糖に数分子の果糖が繋がったフラクタンが存在することが知られている。フラクタンは、レバンより果糖の重合数がかなり少なく、またブドウ糖の付加という点でレバンと化学構造が若干異なるものの、これを果糖二糖類製造に活用することが可能であれば、果糖二糖類のコスト削減、工程簡略化が可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微生物発酵法によるレバンの合成に代わる安価かつ簡便な原料を用いることによる直鎖状の果糖二糖類であるレバンビオースの製造方法及びその合成酵素の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが鋭意研究した結果、イネ科植物の葉、茎あるいはそれらを乾燥した藁中には、一分子のブドウ糖に数分子の果糖が繋がったフラクタンが存在することが知られているが、このフラクタンは、レバンより果糖の重合数がかなり少なく、またブドウ糖の付加という点でレバンと化学構造が若干異なるものの、基質としてレバンビオース合成酵素を作用させることにより直鎖状の果糖二糖類であるレバンビオースを合成することを見出し、上記目的が達成される本発明を完成させた。なお、本発明は文部科学省の科学技術振興調整費による委託業務として、独立行政法人 農業技術研究機構が実施した「好アルカリ発酵微生物の機能解析とその利用」の成果をもとに発明、出願に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、微生物酵素を用いた果糖二糖類の製造において、イネ科植物の葉、茎あるいは藁を原料として用いることに特徴を有し、さらに詳しくは、原料となるイネ科植物の葉、茎あるいは藁に直接レバンビオース合成酵素を接触させ酵素反応を行うか、原料に水を加え煮沸後、微生物由来のレバンビオース合成酵素を添加し反応することにより、水溶液中にレバンビオースが遊離し以降の精製が容易となるレバンビオースの製造方法である。また、本発明は、レバンビオース合成酵素の添加に代えて、レバンビオース合成酵素の生産菌を添加し培養することにより、容易にレバンビオース合成酵素が生産できるレバンビオース合成酵素の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のイネ科植物の葉、茎とは、ライグラス、ライ麦、ライ小麦、小麦、エンバク、ハトムギ、オーチャードグラスなどイネ科植物由来のものであればいずれでもよく、特にライグラスが好ましい。またそれらイネ科植物の葉、茎、子実などを乾燥させた状態の藁、あるいはさらに加工した残渣であるふすまについてを単一または複数の混合物として用いるものも含む。このイネ科植物の葉、茎、あるいは藁に、水、緩衝液、微生物由来の果糖二糖類合成酵素以外の酵素などあらゆる水溶液を添加した液体あるいは懸濁状態、または幾分水分を含む固体状態などの状態すべてを包括し、そして殺菌、滅菌、加熱の有無によらず、イネ科植物の葉、茎あるいは藁を原料とするものであればよい。
【0013】
レバンビオース合成酵素は、目的とするレバンビオースをわずかでも生成する微生物が生産する酵素であれば、クローン化酵素、非クローン化酵素などの如何を問わず用いることができる。更に詳しくは、微生物を培養培地あるいは培養基材の成分及びその含量、容量、温度、湿度、pH、通気性等の環境条件の如何を問わず、培養後の培養液をレバンと接触し反応させることによりレバンビオースを生じる液体を指す。この際、培養液には菌体を含んでもよく、またレバンと接触させて以降、その含量、容量、温度、湿度、pH、通気性等の環境条件の組み合わせのうち少なくとも一つの条件で生じていればこれを言う。この培養液を基に、濃縮や凍結乾燥、固定化、精製などを行った如何なる状態も包括する。また、当該酵素の製造に用いる微生物も細菌、酵母、カビなどいずれの微生物も用いることができる。
【0014】
レバンビオースの製造は、上記イネ科植物原料と微生物由来のレバンビオース合成酵素を接触させ酵素反応することにより行う。酵素反応は、原料に直接レバンビオース合成酵素を接触させる方法、原料に水または緩衝液などの水溶液を加え煮沸後、微生物由来のレバンビオース合成酵素を添加する方法など如何なる形態でもよく、結果として原料あるいは原料包括物がレバンビオース合成酵素と接触すればよい。原料と酵素添加量の割合は原料の種類等を考慮し最適な量を添加すればよく、およそ固体原料1重量に対し、酵素液20容を添加するのが適当である。反応開始後、一定時間恒温することにより目的とするレバンビオースを生じるが、恒温の際の、形状、温度、pH、時間などの条件は果糖二糖類を生じる条件であればいずれでもよいが、溶液の状態で、温度20-60℃、pH5-8、24-72時間の範囲でそれぞれ行うのが望ましい。
【0015】
レバンビオース合成酵素の製造は、レバンビオース合成酵素を産生する微生物を上記イネ科植物原料を培養基質とし培養することにより行う。培養は、植物原料単独あるいはその他添加物を加えた混合状態の培地に当該微生物を接種し行う。この際の培地の形状は、液体、固体を問わず、また、培養の際の容量、温度、pH、通気、培養時間などの条件は、レバンビオース合成酵素を生じた状態の培養液が得られればいずれでもよいが、好ましくは液体で温度30-50℃、pH5-8、24-72時間の範囲内でそれぞれ行うのが望ましい。
【0016】
本発明の特徴は、農業生産において副生物として大量に産生するイネ科植物の葉、茎あるいは藁を原料に、機能性食品素材として有望な直鎖状の果糖二糖類であるレバンビオースを製造することに特徴がある。また、レバンビオース合成酵素についても比較的扱いが容易な微生物を由来とし、かつ、その製造方法についても上記植物原料で行うことが可能な点に特徴がある。
【0017】
恒温後の反応液又は培養液からのレバンビオースの回収・精製には通常用いられる常法に従って行うことができ、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、活性炭カラムクロマトグラフィー、凍結乾燥等により行うことができる
【0018】
また、生成物がレバンビオースであることの確認は薄層クロマトグラフィー(薄層板:シリカゲル、展開溶媒:n-ブタノール/2-プロパノール/水/酢酸=7/5/4/2)によって行うことができる。まず生成物のRf値がレバンビオースに一致すること、および生成物の塩酸分解物を展開すると果糖に一致することから確認される。さらに液体高速クロマトグラフィー、マススペクトル又はNMRスペクトルからも確認できる。
【0019】
レバンビオース合成酵素の直接的な基質となるイネ科植物原料中の成分の詳細は不明であるが、少なくとも果糖が3分子以上連なったフラクタンを基質としていると推察される。
【0020】
【実施例】
次に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1] ライグラスについては茎葉、ライ麦、ライ小麦、小麦については茎部分を乾燥させた藁を採取し、およそ1-2 cmに裁断した。裁断した原料100 gに10 mM燐酸ナトリウム緩衝液(pH6)1Lを加え、100℃、10分間煮沸処理した。この懸濁液を酵素反応の基質溶液とした。
【0021】
一方、レバンビオース合成酵素の生産にはアルスロバクター・エスピーB25(Arhtrobacter sp. B25)(FERM P-18691)を、斜面培地(1L当たりポリペプトン5g、肉エキス5g、グルコース10g、塩化ナトリウム3g、寒天15g、pH7.2)上に培養し、その培養物の1白金耳を、100mLの本培養培地(1L当たり、レバン10g、NH4 NO3 2.0g、MgSO4 ・7H2O 0.5g、KCl 0.5g、KH2 PO4 0.5g、FeSO4 ・7H2 O 0.01g、酵母エキス0.2g、CaCO3 20g、pH7.0)を収容した500mL容三角フラスコに植菌し、30℃で48時間振とう培養した。この培養液を遠心分離し菌体除去後、上澄みを酵素液とした。
【0022】
以上の基質溶液に酵素液1Lを足し40℃で恒温を行った。24時間後、各酵素反応液を高速液体クロマトグラフィーの分析(カラム:YMC-Pack ODS-AQ、溶離液:水、カラム温度:室温、検出:RI)に供しレバンビオースの分析を行った結果、図1からわかる通り、特にライグラスを基質とした時にレバンビオースの生成が確認でき、初発乾物重量に対する収量としておよそ0.5-1%生成していた。他の基質についても微量ではあるが生成が確認できた。
【0023】
[実施例2] 実施例1と同様におよそ1-2 cmに裁断したライグラス、ライ麦、ライ小麦、小麦の藁、各10 gに10 mM燐酸ナトリウム緩衝液(pH6)100mLを加え、121℃、10分間滅菌処理した。
【0024】
実施例1と同様の微生物を斜面培地で生育後、滅菌処理した各サンプルに1白金耳分接種し30℃で48時間振とう培養した。この培養液を遠心分離し菌体除去後、上澄みを酵素液とし、培養中の酵素活性を測定した。酵素活性は、レバン(セラチア製)を0.1M燐酸ナトリウム緩衝液中2%(w/v)となるよう溶解した基質溶液と上記酵素液の等量を混合し、37℃、30分間恒温後、沸騰水中5分間で反応を停止し、液中のレバンビオース量を実施例1に記載の高速液体クロマトグラフィーにより定量した。酵素活性は、1分間に1μmolのレバンビオースを生成する時の酵素量を1unitと定義した。図2からわかるように、各培養基質で酵素の生産が確認でき、特にライグラスを用いたときにレバンを用いた時に対しさほど遜色なく酵素の生産が可能であることが確認できた。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明により、果糖二糖類の従来の原料であるレバンに代わり、イネ科植物の葉、茎あるいは藁を原料に、機能性食品素材として有望な直鎖状の果糖二糖類であるレバンビオースを製造することが可能となった。これにより、従来、蔗糖より微生物発酵により生産されかつその収率が低かったレバンに比べ、藁などは農業生産において副生物として産生することから安価かつ効率的にレバンビオースを製造することができ、また、これら副生物の新たな処理法の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 イネ科植物サンプルを酵素基質とした時のレバンビオースの生成量を示すグラフである。
【図2】 イネ科植物サンプルを培養基質とした時のレバンビオース合成酵素の酵素活性を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1