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明細書 :マルチプライマーPCR法による病原生物検出法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3449961号 (P3449961)
公開番号 特開2001-231575 (P2001-231575A)
登録日 平成15年7月11日(2003.7.11)
発行日 平成15年9月22日(2003.9.22)
公開日 平成13年8月28日(2001.8.28)
発明の名称または考案の名称 マルチプライマーPCR法による病原生物検出法
国際特許分類 C12N 15/09      
C12Q  1/04      
C12Q  1/68      
FI C12Q 1/04
C12Q 1/68
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2000-049760 (P2000-049760)
出願日 平成12年2月25日(2000.2.25)
審査請求日 平成12年2月25日(2000.2.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】畠山 吉則
【氏名】早坂 昭二
【氏名】米村 真之
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】三原 健治
参考文献・文献 特開 平8-252099(JP,A)
日本蚕糸学雑誌,Vol.66,No.4(1997),p.242-252
Adstracts of the General Meeting of the American Society for Microbiology,Vol.94th(1994),p.529
調査した分野 C12N 15/00 - 15/90
C12Q 1/00 - 1/70
特許請求の範囲 【請求項1】
被検動物体内に存在する核酸を鋳型とし、検出しようとする複数種の微胞子虫それぞれのゲノムDNAの部分領域を増幅し得る少なくとも2種のプライマーペアを含む混合プライマーを用いて増幅処理を行うことを含む、該被検動物体内の該複数種の微胞子虫を同時に検出し得る方法であって、該混合プライマーが、下記(i)~(iv):
(i)配列番号1で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、
(ii)配列番号3で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号4で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、
(iii)配列番号5で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号6で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、並びに
(iv)配列番号7で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、からなる群より選択される少なくとも2種のプライマーペアを含む、前記方法。

【請求項2】
検出しようとする前記複数種の微胞子虫が、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDからなる群より選択される少なくとも2種の微胞子虫である請求項1記載の方法。

【請求項3】
検出しようとする前記複数種の微胞子虫が、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDである請求項2記載の方法。

【請求項4】
被検動物体内に存在する核酸を鋳型とし、配列番号1~8で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含む混合プライマーを用いて増幅処理を行うことを含む、該被検動物体内の該複数種の微胞子虫を同時に検出し得る方法。

【請求項5】
前記被検動物が昆虫である請求項1記載の方法。

【請求項6】
昆虫がカイコガ(Bombix mori)である請求項5記載の方法

【請求項7】
(i)配列番号1で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(ii)配列番号3で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号4で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(iii)配列番号5で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号6で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、並びに(iv)配列番号7で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペアからなる群より選択される少なくとも2種のプライマーペアを含む、微胞子虫検出用プライマーセット

【請求項8】
配列番号1~8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む請求項記載の微胞子虫検出用プライマーセット。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、動物に感染した病原生物の検出方法に関し、より詳細には、動物に感染した微胞子虫、又は昆虫に感染した昆虫病原生物のPCRによる検出方法に関する。

【0002】

【従来の技術】現在、動物に対する病原生物としては、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、原生動物など、様々なものが知られている。上記病原生物の一種である微胞子虫類(Microsporida)は、Microspora(微胞子虫門)に属する原虫であり、原生生物から哺乳動物まで広範な動物細胞に寄生することが知られている。また、寄生した微胞子虫は、その宿主において様々な病害を惹き起こすことが知られている。例えば、微胞子虫の一種であるノセマ・ボンビシス(Nosema bombycis)は主として蚕に寄生し、微粒子病を惹き起こす。従って、蚕等の有用動物に微胞子虫が感染しているかどうかをできるだけ迅速に検定する必要がある。

【0003】
従来、一般に、病原が判定できない感染症の場合に病原生物を検出するためには、その症状から病原生物を予想し、それぞれを検出するための検査を個別に行っていた。従って、一個体につき複数の検査を行う必要があったが、このような検査の方法としては、検出対象である病原に対する抗体を用いる方法、病原菌の菌体を培養する方法等が主に用いられるため、大量の個体を検査するためには多くの時間を必要とした。

【0004】
特に、蚕に感染する微胞子虫の検定は、各微胞子虫の胞子に反応する特異的な抗体を用いる方法によって行われるため、熟練の技師が検定を行う必要があった。また、胞子が未形成の場合には検出することができず、さらに感染量の少ない卵の検定は非常に困難であった。そこで、熟練者でなくても簡便に微胞子虫を検出できる方法が開発されれば便利である。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、操作が簡単で、視覚的に検出でき、さらに一回の操作で行うことができる微胞子虫の検出方法を提供することにある。

【0006】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、マルチプライマーPCR法において検出対象となる複数の病原生物それぞれに特異的な複数のプライマーペアを用いることにより、これらの病原生物を同時に検出することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。

【0007】
すなわち、本発明は、被検動物体内に存在する核酸を鋳型とし、検出しようとする複数種の微胞子虫それぞれのゲノムDNAの部分領域を増幅し得る少なくとも2種のプライマーペアを含む混合プライマーを用いて増幅処理を行うことを含む、該被検動物体内の該複数種の微胞子虫を同時に検出し得る方法を提供する。この本発明の方法を、以下「第1の本発明の方法」という。

【0008】
上記方法において、検出しようとする前記複数種の微胞子虫は、好ましくは、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDからなる群より選択される少なくとも2種の微胞子虫であり、より好ましくは、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDである。

【0009】
前記混合プライマーは、好ましくは、(i)配列番号1で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(ii)配列番号3で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号4で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(iii)配列番号5で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号6で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、並びに(iv)配列番号7で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペアからなる群より選択される少なくとも2種のプライマーペアを含み、より好ましくは、配列番号1~8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。また、前記被検動物は昆虫であることが好ましい。

【0010】
さらに、本発明は、被検昆虫体内に存在する核酸を鋳型とし、検出しようとする複数種の昆虫病原生物それぞれのゲノムDNAの部分領域を増幅し得る少なくとも2種のプライマーペアを含む混合プライマーを用いて増幅処理を行うことを含む、該被検昆虫体内の該複数種の昆虫病原生物を同時に検出し得る方法を提供する。この本発明の方法を、以下「第2の本発明の方法」という。

【0011】
上記方法において、前記昆虫病原生物が微胞子虫であることが好ましい。この場合において、検出しようとする前記複数種の微胞子虫は、好ましくは、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDからなる群より選択される少なくとも2種の微胞子虫であり、より好ましくは、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDである。

【0012】
前記混合プライマーは、好ましくは、(i)配列番号1で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(ii)配列番号3で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号4で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(iii)配列番号5で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号6で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、並びに(iv)配列番号7で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペアからなる群より選択される少なくとも2種のプライマーペアを含み、より好ましくは、配列番号1~8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。

【0013】
さらに、本発明は、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDのゲノムDNAの部分領域を増幅し得るプライマーペアからなる群より選択される少なくとも2種のプライマーペアを含む、微胞子虫検出用プライマーセットを提供する。

【0014】
上記プライマーセットは、好ましくは、(i)配列番号1で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(ii)配列番号3で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号4で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、(iii)配列番号5で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号6で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、並びに(iv)配列番号7で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド及び配列番号8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなるプライマーペアからなる群より選択される少なくとも2種のプライマーペアを含み、より好ましくは、配列番号1~8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。

【0015】

【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
〔第1の本発明の方法〕本発明は、被検動物体内に存在する複数種の微胞子虫を同時に検出し得る方法に関し、この検出は、該被検動物体内に存在する核酸を鋳型とし、検出しようとする複数種の微胞子虫それぞれのゲノムDNAの部分領域を増幅し得るプライマーペアを含む混合プライマーを用いて増幅処理を行うことにより実施することができる。ここで、該混合プライマーは少なくとも2種のプライマーペアを含む。

【0016】
第1の本発明の方法において、検出しようとする前記複数種の微胞子虫は、微胞子虫門(Microspora)に属する原生生物であればよく、特に限定されないが、好ましくは微胞子虫類(Microsporida)に属する原生生物、より好ましくは、ノセマ・ボンビシス(Nosema bombycis)、バイリモルファsp. M11(Vairimorphasp. M11)、バイリモルファsp. M12(Vairimorpha sp. M12)、バイリモルファ・ネカトリクス(Vairimorpha necatrix)及びプレイストフォラsp. PSD(Pleistophora sp. PSD)からなる群より選択される少なくとも2種の微胞子虫、最も好ましくは、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp.M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDである。前記ノセマ・ボンビシスには、強毒系統及び弱毒系統の両方が含まれる。

【0017】
第1の本発明の方法において使用する混合プライマーに含まれるプライマーは、検出対象とする複数の微胞子虫由来のDNAを、相互に配列比較することによって設計することができる。配列比較に用いるDNAの領域は、いずれの遺伝子であってもよく、特に限定されないが、例えば、ミトコンドリア熱ショックタンパク質70(HSP70)遺伝子、ペプチド延長因子1α遺伝子、小サブユニットrRNA遺伝子等が挙げられる。配列比較に用いるDNAの塩基配列は公知のものであってもよく、例えば、GenBank等のデータベースから取得することができる。当業者であれば、データベースに登録された配列の中から、検出対象とする微胞子虫の種類に応じて適切な配列を検索し、容易に取得することができる。このようにして取得される塩基配列としては、例えば、下記表1に示されるものを挙げることができる。

【0018】

【表1】
JP0003449961B2_000002t.gif【0019】上記のような配列比較に基いて、検出対象とする各微胞子虫に対するプライマーを設計するには、まず、取得した複数の塩基配列のアライメントをとる。アライメントは、解析ソフトウェア、例えば、クラスタルX(ClustalX、フリーウエア)を用いてとることができる。その際のソフトウェアのパラメータは、全て初期値のままであってもよく、また、必要に応じて変更してもよい。このようなパラメータの変更は、当業者であれば容易に行うことができる。次に、このようなアライメント(配列比較の結果)に基き、以下の基準:(1)原則として1種の微胞子虫につき1種類の増幅産物が形成されるようにする;(2)プライマーを混合したときに、混在しているプライマーどうしが目的外の部位を増幅しないように設計する(目的外の部位を増幅してしまう場合にはプライマー配列を変更する);(3)増幅する目的配列は必ずしも同じ遺伝子である必要はなく、生物ごとに異なってもよい;(4)増幅される産物が電気泳動で分離できるようにプライマーを設計する;に従って、プライマーとして適切な配列を選択することができる。この際に、各プライマーの塩基数は特に限定されないが、好ましくは15塩基以上、より好ましくは20塩基以上とする。

【0020】
また、各プライマーペアにより増幅されるDNA断片のサイズは、通常の電気泳動により検出され得る範囲であればよく、特に限定されないが、好ましくは100塩基~3000塩基、より好ましくは100塩基~2000塩基とする。ここで、各プライマーペアにより増幅されるDNA断片のサイズを、電気泳動により各DNA断片のバンドが相互に明確に分離される程度に分散させておくと、上記方法により各微胞子虫の同時検出だけでなく、同定をも行うことができる。ただし、このような同定は、必ずしも検出対象とする微胞子虫の全てを区別するものでなくてもよい。すなわち、区別する必要のない微胞子虫の間では、それぞれに由来する増幅断片のサイズが、電気泳動により明確に分離される程度に異なっていなくてもよい。上述のようにして設計されるプライマーの塩基配列は特定の配列に限定されるものではないが、例えば、下記の表2に示される塩基配列を含むものが挙げられる。

【0021】

【表2】
JP0003449961B2_000003t.gif【0022】上記表2において、NBEF35F及びNBEF957Rは、ノセマ・ボンビシス延長因子1α遺伝子配列に基いて設計したプライマーであり、ノセマ・ボンビシスの弱毒系統及び強毒系統の両方を検出することができる。M11-96F及びM11-822Rは、バイリモルファsp. M11の小サブユニットrRNA遺伝子配列に基いて設計したプライマーであり、バイリモルファsp. M11のみを検出することができる。V70-176F及びV70-1898Rは、バイリモルファsp. M12のHSP70遺伝子配列に基いて設計したプライマーであり、バイリモルファsp. M12及びバイリモルファ・ネカトリクス(外国種)を検出することができる。PSDF1は、微胞子虫小サブユニットrRNA遺伝子の共通配列に基いて設計したプライマーであり、PSDR450は、プレイストフォラsp. PSDの小サブユニットrRNA遺伝子配列に基いて設計したプライマーである。PSDF1及びPSDR450は、プレイストフォラsp. PSDのみを検出することができる。なお、各プライマーの名称の最後の数字は、そのプライマーの設計の基礎とした配列における、各プライマーの3’末端塩基の塩基番号を示している。これらのプライマーは特異性が非常に高いため、その検出対象として示したもの以外の微胞子虫及び他の病原生物には反応しない。また、上記のようにして設計したオリゴヌクレオチド(プライマー)は、当業者に公知の方法、例えば化学合成等により容易に作製することができる。

【0023】
第1の本発明の方法において使用する混合プライマーは、検出対象とする微胞子虫の種類に応じて、以上のようにして設計される2種以上のプライマーペアを含む。例えば、上記表2に記載したプライマーを用いる場合には、検出対象とする微胞子虫の種類に応じて、全プライマーペアのうちの2種以上を混合して混合プライマーとすることができるが、好ましくは、これらのプライマーの全てを混合して混合プライマーとする。

【0024】
第1の本発明の方法において用いる増幅処理は特に限定されないが、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。ここで、該増幅処理に用いる鋳型は被検動物体内に存在する核酸であり、好ましくはDNAである。このような核酸は、当業者に公知の方法により被検動物から抽出することができる。プライマーとしては、上述の混合プライマーを用いる。鋳型及びプライマーの他、増幅処理に必要な試薬、処理条件等は、当業者であれば適切に設定することができる。例えば、PCRを行う場合には、鋳型及びプライマーの他に、Tris-HCl、KCl、MgCl2、各dNTP、Taq DNAポリメラーゼ等の試薬類を混合してPCR反応液とすることができ、このような試薬類はPCR用キットとしても市販されている。次いで、このようにして調製したPCR反応液を、サーマルサイクラー等の装置に投入し、温度サイクル反応を行うことによって増幅処理を行うことができる。

【0025】
増幅処理により得られる増幅産物の検出は、該産物のサイズ(塩基長)によって分離することのできる公知の方法、好ましくはアガロースゲル電気泳動等の電気泳動法により行うことができる。このような方法により、増幅処理に使用した各プライマーペアから予測されるサイズの増幅断片が検出されるか否かを調べることができ、これにより、被検動物体内に存在する核酸が上記混合プライマーによって増幅されるか否かを調べることができる。ここで、プライマーペアからの増幅断片のサイズの予測は、当業者であれば容易に行うことができる。上述のように、上記混合プライマーに含まれる各プライマーペアが、相互に異なるサイズのDNA断片を与えるものであれば、微胞子虫の検出のみならず、その同定(各種微胞子虫の特異的検出)をも行うことができる。例えば、表2に記載の各プライマーペアから予測される増幅断片の塩基長は、NBEF35F及びNBEF957Rについては943塩基、M11-96F及びM11-822Rについては752塩基、V70-176F及びV70-1898Rについては1750塩基、PSDF1及びPSDR450については450塩基である。

【0026】
第1の本発明の方法を適用することのできる動物、すなわち前記被験動物は、微胞子虫が感染しうる動物であればよく、特に限定されないが、好ましくは哺乳類、魚類又は昆虫類に属する動物、より好ましくはカイコガ(Bombix mori)である。また、被検動物はいかなる成長段階にあるものでもよく、卵であってもよいが、好ましくは成虫又は卵、より好ましくは成虫の段階である。本発明の方法においては、被検動物から核酸を取得する必要があるが、上記のような被検動物からの核酸抽出は、液体窒素を用いる摩砕及びフェノール法等の当業者に公知の方法により行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。前記被検動物がヒトである場合には、被験者からの組織、細胞等から当業者に公知の方法により核酸試料を得ることができる。

【0027】
〔第2の本発明の方法〕本発明はまた、被検昆虫体内に存在する複数種の昆虫病原生物を同時に検出する方法に関し、この検出は、該被検昆虫体内に存在する核酸を鋳型とし、検出しようとする複数種の昆虫病原生物それぞれのゲノムの部分領域を増幅し得るプライマーペアを含む混合プライマーを用いて増幅処理を行うことによって実施することができる。ここで、該混合プライマーは少なくとも2種のプライマーペアを含む。

【0028】
第2の本発明の方法において、検出しようとする前記複数種の昆虫病原生物は、昆虫体内に入り込んで何らかの疾患、障害等の病的状態を引き起こすものであればよく、特に限定されない。このような昆虫病原生物としては、例えば、ウイルス、クラミジア、マイコプラスマ、細菌、真菌、リケッチア、原生動物(原虫)、寄生虫等が挙げられるが、好ましくはカイコガ体内に入り込む病原生物、より好ましくは微胞子虫である。微胞子虫としては、微胞子虫門(Microspora)に属する原生生物であればよく、特に限定されないが、好ましくは微胞子虫類(Microsporida)に属する原生生物、より好ましくは、ノセマ・ボンビシス(Nosemabombycis)、バイリモルファsp. M11(Vairimorpha sp. M11)、バイリモルファsp. M12(Vairimorpha sp. M12)、バイリモルファ・ネカトリクス(Vairimorpha necatrix)、プレイストフォラsp. PSD(Pleistophora sp. PSD)等が挙げられる。前記ノセマ・ボンビシスには、強毒系統及び弱毒系統の両方が含まれる。

【0029】
第2の本発明の方法において使用する混合プライマーに含まれるプライマーは、検出対象とする複数の昆虫病原生物由来のDNA又はRNAを、相互に配列比較することによって設計することができる。配列比較に用いるDNA又はRNAの塩基配列は公知のものであってもよく、例えば、GenBank等のデータベースから取得することができる。当業者であれば、データベースに登録された配列の中から、検出対象とする昆虫病原生物の種類に応じて適切な配列を検索し、容易に取得することができる。検出対象が微胞子虫である場合には、このようにして取得される塩基配列としては、例えば、上記表1に示されるものを挙げることができる。

【0030】
上記のような配列比較に基くプライマーの設計は、第1の本発明の方法について述べた手法に従って、同様に行うことができる。検出対象が微胞子虫である場合には、このようにして設計されるプライマーとしては、例えば、上記表2に示されるものを挙げることができる。

【0031】
第2の本発明の方法において使用する混合プライマーは、検出対象とする昆虫病原生物の種類に応じて、以上のようにして設計される2種以上のプライマーペアを含む。例えば、検出対象が微胞子虫である場合において、上記表2に記載したプライマーを用いる場合には、検出対象とする微胞子虫の種類に応じて、全プライマーペアのうちの2種以上を混合して混合プライマーとすることができるが、好ましくは、これらのプライマーの全てを混合して混合プライマーとする。

【0032】
第2の本発明の方法において用いる増幅処理及び該増幅処理により得られる増幅産物の検出は、第1の本発明の方法について述べた手法に従って、同様に行うことができる。また、ゲノムRNAを有する昆虫病原生物を検出対象とする場合には、通常のPCRに代えてRT-PCRを行うことができる。このRT-PCRは、鋳型であるRNAからリバースプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを取得し、RNアーゼを用いてRNAを分解した後に、該一本鎖cDNAを鋳型として通常のPCRを行うことにより二本鎖cDNAを取得する手法である。ここで、逆転写酵素としては、モロニーマウス白血病ウイルス由来の逆転写酵素などの公知のものを用いることができる。その他、RT-PCRにおいて用いる試薬、反応条件等は、当業者であれば容易に選択及び設定できる。

【0033】
第2の本発明の方法を適用することのできる動物、すなわち前記被験昆虫は、特に限定されないが、好ましくはカイコガ(Bombix mori)である。また、前記被検昆虫はいかなる成長段階にあるものでもよく、卵であってもよいが、好ましくは成虫又は卵、より好ましくは成虫の段階である。第2の本発明の方法においては、被検昆虫から核酸を取得する必要があるが、上記のような被検昆虫からの核酸抽出は、液体窒素を用いる摩砕及びフェノール法等の当業者に公知の方法により行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。

【0034】
〔本発明のプライマーセット〕本発明はまた、本発明の方法を使用するためのプライマーセット、すなわち、ノセマ・ボンビシス、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス及びプレイストフォラsp. PSDのゲノムDNAの部分領域を増幅し得るプライマーペアからなる群より選択される少なくとも2種のプライマーペアを含む、微胞子虫検出用プライマーセットに関し、好ましくは、該プライマーペアの全てを含む。

【0035】
本発明のプライマーセットに含まれる上記プライマーペアは、上述のように設計し、調製することができる。また、こうして調製されるプライマーペアの具体例は、上記表2に示したとおりである。従って、本発明のプライマーセットは、好ましくは、上記表2に記載のプライマーセットのうちの少なくとも2種類を含み、より好ましくは、その全て(配列番号1~8で表わされる塩基配列を含むオリゴヌクレオチド)を含む。

【0036】
さらに、本発明の方法に使用するプライマー以外の試薬類を本発明のプライマーセットに加えて、微胞子虫検出用キットとすることもできる。このような試薬類としては、Tris-HCl、EDTA、SDS、プロテイナーゼK、RNaseA、フェノール、酢酸ナトリウム、エタノール等のDNA抽出用試薬、Tris-HCl、KCl、MgCl2、各種dNTP、Taq DNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、TEバッファー、40%スクロースDye、アガロースゲル等の電気泳動用試薬などが挙げられるが、これらに限定されない。

【0037】

【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
〔実施例1〕検出用プライマーの設計及び調製
データベースに登録されている、種々の微胞子虫由来のヌクレオチド配列を比較し、検出対象となる各微胞子虫にのみ特異的な領域を数カ所ずつ選択した。ここで、配列比較に使用したヌクレオチド配列は、下記の表3に記載したとおりであり、これらの配列の比較は、解析ソフトウェアであるクラスタルX(ClustalX、フリーウエア)を用いて行った。該ソフトウェアのパラメータは、全て初期値のままとした。また、配列比較した比較図の一部を図1に示した。

【0038】

【表3】
JP0003449961B2_000004t.gif【0039】次に、選択した各領域をプライマーにした場合にPCRによって増幅される産物の大きさを推定し、これらの増幅産物が混在していても電気泳動によって分離・識別が可能となるような大きさの産物を増幅する配列の組み合わせを選定し、下記表4に示すプライマーを設計した。これらのプライマーは、常法に従って合成した。

【0040】

【表4】
JP0003449961B2_000005t.gif【0041】〔調製例1〕PCR用の鋳型として使用するためのDNA試料の調製
(1)各微胞子虫の感染したカイコガ及び未感染カイコガからのDNA抽出
微胞子虫の感染したカイコガ又は未感染カイコガ一個体を乳鉢に取り、液体窒素を加えて摩砕した。得られた粉末を50ml容遠心チューブに取り、32mM Tris-HCl(pH8.0)、8mM EDTA (pH8.0)、3.2% SDS、32μg/ml Proteinase K、160μg/ml RNase Aの反応系において、37℃で1時間反応させた。反応後、フェノール抽出を行い、1/10量の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)を加え、2倍量のエタノールを加えてDNAを回収した。

【0042】
(2)各微胞子虫の胞子からのDNA抽出
1.5ml容チューブに胞子10mgを取り、STEバッファー(10mM Tris-HCl pH8.0, 1mM EDTA pH8.0,10mM NaCl)で洗浄した。その後、胞子に50mgのグラスビーズ(SIGMA社、G-8772)及び200μlのSTEバッファーを加え、ボルテックスを用いて30秒間破砕処理した。処理後、95℃で5分間の熱処理を行い、150μlの上清を回収した。回収した上清に1/10量の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)及び2.5倍量の99.5%エタノールを加え、エタノール沈澱を行った。遠心(10000×g、4℃、10分間)した後、70%エタノールを用いてリンスし、回収した沈澱を20μlのTEバッファー中に懸濁した。

【0043】
〔実施例2〕各微胞子虫検出用プライマーの特異性実験
実施例1で調製した各プライマ-を用い、各プライマーが増幅対象とする微胞子虫胞子からのDNA試料を鋳型としてPCRを行い、目的産物の増幅を確認した。また、これらのプライマーが目的とする微胞子虫以外の微胞子虫のゲノムを鋳型にした場合に増幅産物を形成するか否かを確かめるために、それぞれのプライマーをその検出対象以外の微胞子虫からのDNA試料と混合し、PCRを行った。さらに、これらのプライマーが、カイコガゲノム由来のDNA断片を増幅するか否かを調べた。

【0044】
すなわち、ノセマ・ボンビシス強毒系統(微粒子病病原)及び弱毒系統、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス(外国種)、プレイストフォラsp. PSD、並びにノセマ・フルナカリス(外国種)からの各DNA試料並びにカイコガからのDNA試料と、上記表4に記載の4種の各プライマーペアとの全ての組み合わせにおいてPCRを行った。

【0045】
PCR反応液は、終濃度で10mM Tris-HCl (pH8.9)、50mM KCl、1.5mM MgCl2、0.2mM 各dNTP、2.5Unit Taq DNAポリメラーゼ (Sawady テクノロジー社製)、各0.5μMの相同プライマー及び相補プライマーを含み、さらに10ngの鋳型DNAを含む計100μlの溶液とした。PCRは、アステックPC800サーマルサイクラーを用い、94℃で2分の熱処理後、94℃で30秒-55℃で30秒-72℃で30秒の反応を35サイクルという条件で行った。

【0046】
PCR後の反応液2.5μlを採取し、等量のTEバッファー及び1μlの40%スクロースDye(0.03%BPB、50mM EDTA、pH8.0、40%スクロース)を加えて電気泳動用試料とした。電気泳動は2%アガロースゲル(Sigma社、Type-II medium EEO A-6877)及び電気泳動装置Mupid 21(コスモバイオ社)を用い、100Vで30分間行った。

【0047】
電気泳動の結果を図2に示す。図2において、パネルAは、ノセマ・ボンビシス強毒系統及び弱毒系統を検出対象とするプライマーNBEF35F及びNBEF957Rを用いたPCRの結果を示し、パネルBは、バイリモルファsp. M11を検出対象とするプライマーM11-96F及びM11-822Rを用いたPCRの結果を示し、パネルCは、バイリモルファsp. M12及びバイリモルファ・ネカトリクスを検出対象とするプライマーV70-176F及びV70-1898Rを用いたPCRの結果を示し、パネルDは、プレイストフォラsp. PSDを検出対象とするプライマーPSDF1及びPSDR450を用いたPCRの結果を示す。

【0048】
これらの結果によれば、各プライマーは目的とする微胞子虫からのDNA試料を鋳型にした場合にのみ特異的な産物を増幅し、他の微胞子虫からのDNA試料を鋳型にした場合には産物の増幅が認められなかった。さらに、いずれのプライマーを用いた場合にも、カイコガゲノム由来の増幅産物は検出されなかった。

【0049】
〔実施例3〕混合プライマーによる微胞子虫の検出
各微胞子虫に特異的なプライマーを複数種混合させ、目的の遺伝子以外の部位を増幅するか否かを調べた。また、このような混合プライマーが、宿主であるカイコガゲノム由来のDNA断片を増幅するか否かを調べた。すなわち、ノセマ・ボンビシス強毒系統(微粒子病病原)及び弱毒系統、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス(外国種)、並びにプレイストフォラsp. PSDからの各DNA試料並びにカイコガからのDNA試料を鋳型とし、上記表4に記載の4種のプライマーペアを混合した混合プライマーを用いてPCRを行った。

【0050】
PCR反応液は、終濃度で10mM Tris-HCl (pH8.9)、50mM KCl、1.5mM MgCl2、0.2mM 各dNTP、2.5Unit Taq DNAポリメラーゼ (Sawady テクノロジー社製)、各0.5μMのプライマーを含み、さらに10ngの鋳型DNAを含む計100μlの溶液とした。PCRは、アステックPC800サーマルサイクラーを用い、94℃で2分の熱処理後、94℃で30秒-55℃で30秒-72℃で30秒の反応を35サイクルという条件で行った。

【0051】
PCR後の反応液2.5μlを採取し、等量のTEバッファー及び1μlの40%スクロースDye(0.03%BPB、50mM EDTA、pH8.0、40%スクロース)を加えて電気泳動用試料とした。電気泳動は2%アガロースゲル(Sigma社、Type-II medium EEO A-6877)及び電気泳動装置Mupid 21(コスモバイオ社)を用い、100Vで30分間行った。

【0052】
電気泳動の結果を図3に示す。図3において、左側の4つの矢印は、そこに示されているとおり、それぞれNB(Nosema bombycis)を検出するプライマー(NBEF35F及びNBEF957R)、M11(Vairimorpha sp. M11)を検出するプライマー(M11-96F及びM11-822R)、M12(Vairimorpha sp. M12)を検出するプライマー(V70-176F及びV70-1898R)、及びPSD(Pleistophora sp. PSD)を検出するプライマー(PSDF1及びPSDR450)により増幅されるPCR産物の推定泳動度を示す。図3によれば、各プライマーは予想される大きさの産物を増幅し、それ以外の産物の増幅は確認されなかった。また、上記混合プライマーは、カイコガゲノム由来のDNA断片を増幅しなかった。

【0053】
〔実施例4〕宿主に感染した状態での各微胞子虫の検出・判別実験
宿主に感染した状態でも微胞子虫が検出できるか否かを調べるために、微胞子虫に感染したカイコガ成虫からのDNA試料を鋳型として、PCRを行った。すなわち、ノセマ・ボンビシス強毒系統(微粒子病病原)及び弱毒系統、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、バイリモルファ・ネカトリクス(外国種)、並びにプレイストフォラsp. PSDをそれぞれ感染させた各カイコガ成虫からの各DNA試料を鋳型とする以外は、実施例3と同様にPCRを行った。

【0054】
電気泳動の結果を図4に示す。図4によれば、上記のPCRの結果は、各微胞子虫の胞子からのDNA試料を鋳型として用いた場合との差を示さなかった。従って、上記のような混合プライマーを用いるマルチプライマーPCRにより、微胞子虫に感染したカイコガからのDNA試料から、各微胞子虫を判別可能な形で検出することができることが分かった。

【0055】
〔実施例5〕微胞子虫感染時期による影響
カイコガの成長段階によって検出精度に影響がでるか否かを検討した。すなわち、ノセマ・ボンビシス強毒系統(微粒子病病原)及び弱毒系統、バイリモルファsp. M11、バイリモルファsp. M12、並びにプレイストフォラsp. PSDをそれぞれ感染させたカイコガ(1齢、2齢、3齢、4齢及び5齢サナギ、並びに成虫)からの各DNA試料を鋳型とする以外は、実施例3と同様にPCRを行った。その結果、カイコガの成長は検出結果には直接影響しないことが明らかとなった。

【0056】
〔実施例6〕混合プライマーの目的外生物に対する反応
表4に記載の全プライマーを含む混合プライマーが微胞子虫以外の生物であって、微胞子虫と同じ環境で生育しうるもののゲノム由来のDNA断片を増幅するか否かを調べるため、カイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)、白きょう病菌ボーベリア・バシアナ(B. bassiana)、バチルス・チューリンゲンシス(B. thuringiensis)、及び大腸菌(E. coli)から調製したDNA試料を鋳型とする以外は実施例3と同様にPCRを行った。

【0057】
これらの結果のうち、ボーベリア・バシアナ及びバチルス・チューリンゲンシスについての結果を図5に示す。図5からわかるように、上記混合プライマーはこれら2種の生物由来のDNA断片を増幅しなかった。また、BmNPV及び大腸菌に由来するDNA断片も増幅されなかった。

【0058】
〔実施例7〕微胞子虫が共感染していた場合の微胞子虫の検出及び識別
検出対象となっている微胞子虫が2種類感染していた場合でも、カイコガ成虫からこれらの微胞子虫を識別できる形で検出できるか否かを調べた。すなわち、ノセマ・ボンビシスからのDNA試料及びプレイストフォラsp. PSDからのDNA試料を混合して鋳型とする以外は実施例3と同様にPCRを行った。この際に、これらのDNA試料のそれぞれを鋳型とする別々のPCRを行った後にPCR産物を混合して電気泳動を行う実験と、これらのDNA試料の混合物にさらにカイコガからのDNA試料を添加したものを鋳型とする実験を同時に行った。その結果を図6に示す。図6からわかるように、感染している二種類の微胞子虫に特異的な産物がそれぞれ増幅され、電気泳動によって二種類の微胞子虫の感染が確認された。

【0059】

【発明の効果】本発明により、一個体につき一本のチューブを使用した一回の検査のみで複数の病原を検出することができる。また、各病原生物ごとに異なる大きさのDNA断片が増幅されるように設定することにより、病原の同定も容易に行うことができる。さらに、本発明は、農業分野以外に、医療現場で緊急診断に用いることも可能である。さらに、この検出方法では、病原体の種類を一種類に限定する必要がないため、ウイルスとバクテリアなど異生物集団の比較も可能である。

【0060】
蚕微粒子病の検定の場合には、増殖状態や感染量に依存せずに微胞子虫を検出できるため、従来困難であった胞子を形成していない状態での検出も行うことができ、さらに卵の検定も容易に行える。また、検定が形質に依存しないため、微胞子虫と他の病原菌を見誤ることがない。

【0061】

【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> Director-General of National Institute of Sericultural
and Entomological Science
Japan Science and Technology Corporation
<120> Method for Identifying Pathogenic organisms using
multi-primer PCR
<130> P99-0623
<160> 8
<170> PatentIn Ver. 2.0
<210> 1
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 1
tggcgctgtt gataagagat t 21
<210> 2
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 2
aatttagcaa cacaagcctt at 22
<210> 3
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 3
tactttattt aatgtacatt tgaaaa 26
<210> 4
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 4
ctcgaattag aaaattctct caa 23
<210> 5
<211> 28
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 5
caaatgacag ggaaagaaat aagttcca 28
<210> 6
<211> 27
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 6
ttaaatattt tgtgctatag cttactc 27
<210> 7
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 7
caccaggttg attctgcctg acg 23
<210> 8
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Primer
<400> 8
gctccgcctc tctttccgtc tcc 23

【0062】

【配列表フリーテキスト】配列番号1~8:プライマー
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図1】
4
【図2】
5