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明細書 :ポリ(チオアリーレン)化合物の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3145324号 (P3145324)
公開番号 特開平10-182823 (P1998-182823A)
登録日 平成13年1月5日(2001.1.5)
発行日 平成13年3月12日(2001.3.12)
公開日 平成10年7月7日(1998.7.7)
発明の名称または考案の名称 ポリ(チオアリーレン)化合物の製造法
国際特許分類 C08G 75/02      
FI C08G 75/02
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願平08-351642 (P1996-351642)
出願日 平成8年12月27日(1996.12.27)
審査請求日 平成11年10月27日(1999.10.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】土田 英俊
【氏名】山元 公寿
【氏名】宮武 健治
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】藤本 保
参考文献・文献 特開 平5-239213(JP,A)
特開 平5-320344(JP,A)
調査した分野 C08G 75/00 - 75/12
特許請求の範囲 【請求項1】
式〔1〕
【化1】
JP0003145324B2_000002t.gif(ただし、R1ないしR8の各々は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基を示し、互いに同じであっても異なった種類であってもよいが、少なくとも1つがハロゲン原子で、Xは、酸素原子、または硫黄原子を示し、nは、2以上の整数で重合度を示すで表されるポリ(チオアリーレン)化合物の製造法であって、式〔2〕
【化2】
JP0003145324B2_000003t.gif(R1ないしR8の各々、X、並びにnは前記のものを示し、9はアルキル基、またはアリール基を、Y-は、アニオンを示すで表されるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を脱アルキルまたは脱アリール化反応させることを特徴とするポリ(チオアリーレン)化合物の製造法。

【請求項2】
1ないしR8の全てが同一のハロゲン原子である請求項1のポリ(チオアリーレン)化合物の製造法。

【請求項3】
1ないしR8の全てがフッ素原子である請求項1のポリ(チオアリーレン)化合物の製造法。

【請求項4】
還元剤または求核性試薬、もしくは電解還元により脱アルキルまたは脱アリール化反応させる請求項1ないし3のいずれかのポリ(チオアリーレン)化合物の製造法。

【請求項5】
請求項1ないし4の製造法において、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物は、次式〔3〕
【化3】
JP0003145324B2_000004t.gif(R1ないしR8の各々は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基を示し、互いに同じであっても異なった種類であってもよいが、少なくとも1つがハロゲン原子で、R9は、アルキル基、またはアリール基を、Xは、酸素原子または硫黄原子を示す)で表されるアリールスルホキシド化合物を、酸、または酸無水物を用いて重合させて得られたものであるポリ(チオアリーレン)化合物の製造法。

【請求項6】
請求項1ないし4の製造法において、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物は、次式〔4〕
【化4】
JP0003145324B2_000005t.gif(R1ないしR8の各々は、は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を示し、互いに同じであっても異なった種類であってもよいが、少なくとも1つがハロゲン原子で、R9は、アルキル基、またはアリール基を、Xは、酸素原子、または硫黄原子を示す)で表わされるアリールスルフィド化合物を、酸化重合させて得られたものであるポリ(チオアリーレン)化合物の製造法。

【請求項7】
請求項6における酸化重合は、酸化剤および/または触媒の存在下での酸化重合、もしくは電解酸化による酸化重合であるポリ(チオアリーレン)化合物の製造法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ポリ(チオアリーレン)化合物の製造法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、溶媒可溶性のポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を前駆体とする高分子量のポリ(チオアリーレン)化合物の製造法に関するものである。

【10】

【化8】
JP0003145324B2_000008t.gif【0011】(R1ないしR8の各々は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基を示し、互いに同じであっても異なった種類であってもよいが、少なくとも1つがハロゲン原子で、R9は、アルキル基、またはアリール基を、Xは、酸素原子または硫黄原子を示す)で表されるアリールスルホキシド化合物を、酸、または酸無水物を用いて重合させて製造することや、または次式〔4〕

【12】

【化9】
JP0003145324B2_000009t.gif【0013】(R1ないしR8の各々は、は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基を示し、互いに同じであっても異なった種類であってもよいが、少なくとも1つがハロゲン原子で、R9は、アルキル基、またはアリール基を、Xは、酸素原子、または硫黄原子を示す)で表わされるアリールスルフィド化合物を、酸化重合させて製造する方法をも提供する。すなわち、この発明の発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、アリールスルホキシド化合物の縮合重合、あるいはアリールスルフィド化合物の酸化重合により得られるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を経由して直鎖構造の高分子量のポリ(チオアリーレン)化合物が生成することを見いだし、発明を完成するに至ったものである。

【14】
上記のとおりのポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を用いてのこの発明の製造方法においては、反応は常温常圧下という温和な条件下で進行し、高収率で希望するポリ(チオアリーレン)化合物を得ることができる。

【15】

【発明の実施の形態】以下、この発明の技術的構成について詳しく説明する。まず、前記式〔1〕、〔2〕、〔3〕および〔4〕中のR1 ないしR8 についてそれぞれの具体例を例示すると、たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子のハロゲン原子;水素原子:メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、などのアルコキシ基を挙げることができる。アルキル基およびアルコキシ基については、反応を阻害しない限り任意の置換基を有していてもよい。また、R1 ないしR8 の一つ以上、特に全てがフッ素原子である化合物が例示される。フッ素原子置換のポリ(チオアリーレン)化合物は撥水性、耐熱性、低摩擦性、酸素親和性、高屈折率などの諸特性において注目されるものである。

【16】
式〔1〕、〔2〕、〔3〕および〔4〕中のXは、酸素原子、または硫黄原子であり、これが存在することにより重合反応の際、結合するベンゼン環パラ位の親電子試薬に対する反応性が増加し、高分子量体の生成となる。式〔2〕、〔3〕および〔4〕における、R9 については、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、などのアルキル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、などのアリール基が例示される。好ましくは低級アルキル基、特にメチル基が例として挙げられる。

【17】
式〔2〕中のY- のアニオンについて具体例を例示すると、たとえば、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、などのハロゲンアニオン;酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、メタン硫酸アニオン、トリフルオロメタン硫酸アニオン、パークロレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ヘキサクロロアンチモネートアニオン等が示される。ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物の合成および安定性の点からは、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、メタン硫酸アニオン、トリフルオロメタン硫酸アニオン、パークロレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン等が好ましく、特にトリフルオロメタン硫酸アニオンが最も好ましい。

【18】
そこで、次に、この発明の式〔1〕で表されるポリ(チオアリーレン)化合物の製造のための前駆体である式〔2〕で表されるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物についてその製造方法を説明する。式〔2〕で表されるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物は、前記式〔3〕で表されるアリールスルホキシド化合物の縮重合により製造される。この重縮合は、酸または酸無水物との反応により進行する。この場合の酸としては、公知の酸化合物が利用可能である。重合活性種の失活を抑制するためのもの、および重合生成物であるポリ(アリーレンスルホニウム)化合物の対イオンとなるものである。プロトン酸、もしくはプロトン供与性物質の共存により一部がプロトン酸に変化する物質であって、公知の有機酸、無機酸またはそれらの混合物もしくは複合体が用いられる。具体的には、たとえば、塩酸、臭化水素酸、青酸などの非酸素酸、硫酸、リン酸、塩素酸、臭素酸、硝酸、炭酸、硼酸、モリブデン酸、インポリ酸、ヘテロポリ酸、などの無機オキソ酸、硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロトン残留ヘテロポリ酸、モノメチル硫酸、トリフルオロメタン硫酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸などの1価、もしくは多価のカルボン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのハロゲン置換カルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸などの1価、もしくは多価のスルホン酸、五塩化アンチモン、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛、塩化銅、塩化鉄などのルイス酸などを挙げることができる。

【19】
また、上記の該当する酸無水物が示される。なかでも、安定性の高い強酸性のプロトン酸が好ましく、特にトリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸、テトラフルオロほう酸等が好ましく用いられる。なお、これらの酸または酸無水物は、1種単独で用いてもよい2種以上を混合もしくは複合して組み合わせてもよい。また、有機溶剤で希釈して反応を行ってもよい。

【2】

【従来の技術とその課題】従来より、ポリ(チオフェニレン)を始めとするポリ(チオアリーレン)化合物の製造法が提案されている。この方法では、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物をN-メチルピロリドンなどの非プロトン性極性有機溶媒中で重縮合させている。しかしながら、この従来の方法は芳香族求核置換反応であって、(1)200℃以上の高温、10気圧以上の高圧という過酷な条件での反応である。(2)高分子量体が得られない、(3)副生するアルカリ金属塩の混入が避けられない、などの問題点が指摘されている。さらに、フッ素原子を有する芳香族化合物をモノマーとした場合には、枝分かれや架橋構造となることが知られており、直鎖構造のフッ素原子置換ポリ(チオアリーレン)化合物、特にポリ(チオパーフルオロフェニレン)の合成は困難であった。

【20】
重合の進行と共に水の発生を伴う場合は、脱水剤の存在下で重合を行うことが望ましい。通常、好適に使用できる脱水剤として、五酸化リン、無機酸、たとえば、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸などを挙げることができる。このほか、重合反応に影響を与えないものであれば問題はなく、無水硫酸ナトリウム、塩化カリウムなどを用いてもよい。これらの中でも、特に、五酸化リンが最も好適である。

【21】
上記の酸または酸無水物、並びに脱水剤の使用割合については、通常は、前記のアリールスルホキシド化合物に対しての比として、酸または酸無水物/アリールスルホキシド化合物(モル比)が0.1~50程度でよく、より好ましくは0.15~10程度である。また脱水剤/アリールスルホキシド化合物(モル比)も同様である。

【22】
式〔2〕で表されるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物は、式〔4〕で表されるアリールスルフィド化合物を酸化して前記の式〔3〕として縮重合させるか、あるいは式〔4〕で表されるアリールスルフィド化合物を酸化重合させることによって製造することができる。酸化重合反応については、酸化剤を用いてもよいし、触媒を用いてもよく、さらには電解酸化であってもよい。酸化剤としては、前記アリールスルフィド化合物を酸化することの出来る能力を有し、かつ、重合反応の進行を妨害しないものであれば特に制限はない。

【23】
反応に適用可能な酸化剤の具体例としては、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、1,4-ジフェノキノン、テトラメチルジフェノキノン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、塩化チオニル、等の有機酸化剤、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、四酢酸鉛、三酢酸タリウム、セリウム(IV)、アセチルアセトナト、五酸化バナジウム等を挙げることができる。なかでも、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、クロラニル、プロマニル、五酸化バナジウムが好適である。

【24】
なお、これらの酸化剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記の酸化剤の量は、使用する反応原料、溶媒の種類、酸化剤の種類等により異なるので一様に規定することはできないが、通常、前記アリールスルフィド化合物について、モル比で0.1~50程度であり、好ましくは0.5~5程度である。

【25】
この値が0.5未満であると、重合速度が遅くなり、ポリマーの収率の低下も見られる。一方、50を超えるとそれに見合った効果が見られなくなる。また、前記の式〔4〕で表されるアリールスルフィド化合物は、酸素酸化触媒を添加して攪拌することで、酸素酸化重合により前記ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を生成する。

【26】
酸化重合触媒としては、前記アリールスルフィド化合物を酸化するとのできる能力を有し、かつ、重合反応の進行を阻害しないものであれば特に制限はない。有機金属化合物、金属錯体等であってもよく、その場合にも配位子、対イオンに制限はなく、なかでも、セリウム(IV)、アセチルアセトン、ポルフィリンなどの塩が好ましい。

【27】
これら金属化合物を例示すると、たとえば、硝酸セリウムアンモニウムなどのセリウム化合物、バナジルアセチルアセナト、バナジルテトラフェニルポルフィリン、バナジウムアセチルアセナトなどのバナジウム化合物、酸化モリブデンアセチルアセナト、酸化モリブデンなどの酸化モリブデン化合物などである。なかでも、硝酸セリウムアンモニウム、バナジルアセチルアセナト、バナジウムアセチルアセナト、バナジウムテトラフェニルポルフィリンなどが好適に用いられる。

【28】
また、これら酸化重合触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合もしくは複合するなどの組み合わせで用いてもよい。この酸化重合触媒を使用する場合、たとえば窒素雰囲気下等の酸素の全く存在しない系では進行せず、酸素の存在が必要である。従って、通常酸素分圧が高いほど好ましいが、大気下であれば十分であり、さらに、減圧下であってもある程度酸素が存在すれば反応は進行する。

【29】
酸化重合触媒の量は、通常は、前記アリールスルフィド化合物とのモル比として0.0001~0.1程度でよい。この値が0.0001未満であると重合速度が遅くなる。一方、5を超えると、触媒のコストが高くなり経済上不利になる。なお、酸化剤を用いての反応、および酸化触媒を用いての反応のいずれの場合も、重合反応系には酸を添加するのが望ましい。この場合の酸としては、たとえば過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、塩酸、硫酸、臭化水素、ヨウ化水素等が例示される。

【3】
そこで、この出願の発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、従来法の欠点を解消し、常温常圧という温和な条件下で、直鎖構造の高分子量の、ポリ(チオパーフルオロフェニレン)を始めとするポリ(チオアリーレン)化合物を製造することのできる新しい方法を提供することを目的としている。

【30】
また、酸化重合は、電解酸化によっても可能である。支持電解質としては、公知の有機酸、無機酸またはこれらの混合物もしくは複合体の塩であってよい。具体例を挙げれば、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化リチウム、テトラエチルアンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ヘキサフルオリン酸塩など、特に過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラブチルアンモニウム塩等が好ましく用いられる。

【31】
これらの支持電解質は、1種単独で用いてもよいし2種以上を混合もしくは複合して組み合わせてもよい。また、溶媒に可溶で生成する前記ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物と反応しないものであればよい。電解方法には制限はなく、定電位、定電流のどちらでもよく、前記アリールアルキルスルフィド化合物を酸化できればよい。

【32】
この場合にも、前記同様の酸を反応系に添加しておくことが好ましい。使用する電極については特に制限はなく、白金、金、銀、炭素等の任意のものでよく、特に白金が好ましく用いられる。電極の形状についても、棒状、板状、網状など、特に制限はない。また、電極の使用形態は特に制限はなく、一枚で用いてもよく、何枚重ねて用いてもよい。必要に応じて、補強剤を用いてもよい。

【33】
使用する参照電極についても特に制限はなく、使用しなくてもよいが、Ag/AgCl、飽和カロメル電極などを使用することもできる。また、以上のいずれの縮重合反応、並びに酸化重合反応においても適宜に溶媒を用いることができる。たとえば、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、などの炭化水素溶媒:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロフルオロメタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、などのハロゲン化炭化水素溶媒;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、などの含窒素溶媒が挙げられる。このほか一般にフリーデルクラフツ反応やカチオン重合などに使用される溶媒も適宜に選択して好適に使用できる。

【34】
なお、これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。反応させるモノマーが液体であれば溶媒無しで直接反応させてもよい。反応時間は用いる反応原料の種類やその使用割合、反応温度、溶媒の条件によって著しく異なるが、通常、0.5~100時間程度であり、好ましくは1~50時間である。

【35】
反応方法としては、特に制限はなく、連続式、半連続式、回分式の反応層を用いて行う。回分式を用いる場合には、反応系を攪拌して行うことが望ましい。重合反応系を構成するに当たって、式〔3〕のアリールスルホキシド化合物や、式〔4〕のアリールスルフィド化合物などのモノマーと、酸、酸化剤、触媒や溶剤、などの配合の順序、方法については特に制限はなく、それぞれを同時にあるいは種々の順序、様式で段階的に配合することも可能である。

【36】
反応の温度は、通常は、-50℃~150℃程度であり、好ましくは0℃~50℃である。反応圧力は特に制限はなく、必要に応じて加圧・減圧してもよい。通常、常圧もしくは反応系の自圧で好適に行うことが出来る。もっとも、必要により、重合反応に支障のない希釈ガスなどとの混合ガスを用いて加圧下に行うこともできる。

【37】
いずれにしても極めて温和な条件下での重合方法によって式〔2〕で表される前記ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物が、たとえば重合度2~1000、粘度0.05~3程度のものとして製造される。このようにして得られたこの発明の前記式〔2〕で表されるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物は、R9 を脱離(脱アルキルまたは脱アリール化反応)することにより、前記式〔1〕で表されるこの発明のポリ(チオアリーレン)化合物へ変換する。

【38】
還元剤、あるいは求核性試薬などの脱アルキルまたは脱アリール化試薬と反応させることによりR9 が脱離する。この場合の還元剤の具体例としては、たとえば、アスコルビン酸、ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、亜ニチオン酸ナトリウム、ヒドラジンなどが挙げられる。また求核性試薬としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、などのアルカリ金属塩;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、などのアンモニウム塩;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、メチルピリジン、キノリン、などのアミン化合物が挙げられる。なかでもピリジン、キノリンが最も好ましく用いられる。

【39】
また電気的に還元を行っても良い。還元剤、あるいは求核性試薬は、脱離させるR9 に対して等モル以上必要である。等モル以下の場合には、脱離反応は不完全となる。脱アルキルまたは脱アリール化反応には適宜に溶媒を使用してもよい。溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロフルオロメタン、などのハロゲン化炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレンなどのハロゲン化芳香族溶媒が挙げられる。

【4】

【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、次式〔1〕

【40】
これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。脱アルキル、脱アリール化試薬が液体であれば溶媒無しで直接反応させてもよい。反応温度は使用する試薬によって一様ではないが、通常、0~250℃であり、好ましくは100~200℃である。反応の圧力および酸素分圧などにも特に制限はなく、通常、常圧もしくは反応系の自圧で好適に行うことができる。

【41】
反応時間も、試薬の種類や濃度、反応温度、圧力、溶媒等の条件によって著しく異なるが、通常0.5~100時間程度であり、好ましくは2~20時間である。反応を構成するにあたって、前記ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物、脱アルキル化試薬、溶媒の配合の順序、方法については特に制限はなく、それぞれを同時にあるいは種々の順序、様式で段階的に配合することも可能である。

【42】
反応方法としては、特に制限はなく、連続式、半連続式、回分式の反応層を用いて行う。回分式を用いる場合には、反応系を攪拌して行うことが望ましい。以上のような脱アルキル、脱アリール化反応によって、溶液中に、あるいは沈殿物として目的とするポリ(チオアリーレン)化合物を得ることができる。この場合、生成ポリ(チオアリーレン)化合物の重合度は、出発物質の前記ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物の重合度と同じであり、たとえば重合度1000の高分子量直鎖ポリ(チオアリーレン)化合物を得ることができる。

【43】
後処理は生成したポリ(チオアリーレン)化合物により若干異なるが、公知の方法に準じて行うことができる。この後処理の一例を挙げれば、以下の通りである。すなわち、脱アルキルまたは脱アリール化反応が必要な程度に進行したならば、反応混合液を大過剰の10%塩酸酸性メタノール溶液中に加え、目的とするポリ(チオアリーレン)化合物を沈澱させる。沈澱したポリマーは通常の濾過などの分離操作によって、液体から分離する。この分離したポリマーは、必要に応じて適当な溶媒を用いて溶解・沈澱・分離・洗浄などの操作を繰り返したのち乾燥し、生成したポリマーとして回収する。

【44】
なお、ポリマーを溶解する溶媒としては、たとえば、トリクロロエタン、1-クロロナフタレン、N-メチルピロリドンなどが好適に用いられる。また、沈澱液、および洗浄液としては、通常、水、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、およびこれらの混合液が用いられ、特にメタノールが最も好適に用いられる。

【45】
以上の方法によって得られたこの発明のポリ(チオアリーレン)化合物、なかでもフッ素原子置換ポリ(チオアリーレン)化合物は、耐熱性、耐薬品性、剛性、強度、耐衝撃性、耐摩擦性に優れている。従来法に較べ架橋構造や枝分かれ構造がなく、高分子量体であるため、加工性にも優れている。また、アルカリ金属塩などの不純物の混入がないため、高い絶縁性を有している。これらの特性は、電気・電子部品や自動車の車軸などに好適に利用することができる。溶媒キャスト法による成膜も可能で、酸素富化膜としても利用できる。

【46】
以下、実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。

【47】

【実施例】
実施例1 ポリ(チオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン)の合成
大気下、10mlのトリフルオロメタン硫酸中で4-メチルスルフィニル-2,3,5,6,2′,3′,5′,6′-オクタフルオロジフェニルスルフィド0.008molと五酸化リン0.004molを混合し、室温下2日間攪拌した。反応溶液をエーテル中に滴下すると、白色の沈澱が得られた。精製のため沈澱を濾過後、エーテルで洗浄し乾燥することにより、ポリ(メチルスルホニオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレンチオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレントリフルオロメタン硫酸塩)を収率100%で得た。

【48】
この前駆体ポリマーをピリジン50mlに溶解し、室温下で30分間攪拌後、120℃で一晩反応させた。反応溶液を500mlの10%塩酸酸性メタノールに滴下すると、白色粉末の沈澱が得られた。精製のため沈澱を濾過後、メタノールで洗浄し乾燥することにより、ポリ(チオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン)を収率100%で得た。

【49】
反応式を示すと次のとおりである。

【5】

【化6】
JP0003145324B2_000006t.gif【0006】(R1ないしR8の各々は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基を示し、互いに同じであっても異なった種類であってもよいが、少なくとも1つがハロゲン原子で、Xは、酸素原子または硫黄原子を示し、nは、2以上の整数で重合度を示すで表されるポリ(チオアリーレン)化合物の製造法であって、式〔2〕

【50】

【化10】
JP0003145324B2_000010t.gif【0051】分析結果を以下に示す。

【52】

【表1】
JP0003145324B2_000011t.gif【0053】実施例2 ポリ(チオ-2,6-フルオロ-1,4-フェニレン)の合成
大気下、10mlのトリフルオロメタン硫酸中に4-メチルスルフィニル-3,5,2’,6’-テトラフルオロジフェニルスルフィド0.01molを溶解し、10℃で24時間攪拌した。反応溶液をエーテル中に滴下すると、白色の沈殿が得られた。精製のため沈殿を濾過後、エーテルで洗浄し乾燥することにより、ポリ(メチルスルホニオ-2,6-フルオロ-1,4-フェニレンチオ-2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレントリフルオロメタン硫酸塩)を収率100%で得た。

【54】
この前駆体ポリマーをキノリン50mlに溶解し、室温下で30分間攪拌後、180℃で20時間反応させた。反応溶液を500mlの10%塩酸酸性メタノールに滴下すると、白色粉末の沈澱が得られた。精製のため沈澱を濾過後、メタノールで洗浄し乾燥することにより、次式で表されるポリ(チオ-2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン)を収率100%で得た。

【55】

【化11】
JP0003145324B2_000012t.gif【0056】分析結果を以下に示す。

【57】

【表2】
JP0003145324B2_000013t.gif【0058】実施例3 ポリ(チオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレンオキシ-1,4-フェニレン)の合成
大気下、10mlのメタン硫酸中に4-メチルスルフィニル-2,3,5,6-テトラフルオロジフェニルエーテル0.007molを溶解し、室温下で10時間攪拌した。反応溶液をエーテル中に滴下すると、白色の沈澱が得られた。精製のため沈澱を濾過後、エーテルで洗浄し乾燥することにより、ポリ(メチルスルホニオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレンオキシ-1,4-フェニレン メタン硫酸塩)を収率100%で得た。

【59】
この前駆体ポリマーをピリジン50mlに溶解し、室温下で30分間攪拌後、120℃で20時間反応させた。反応溶液を500mlの10%塩酸酸性メタノールに滴下すると、白色粉末の沈澱が得られた。精製のため沈澱を濾過後、メタノールで洗浄し乾燥することにより、次式で表されるポリ(チオ-2、3、5、6-テトラフルオロ-1,4-フェニレンオキシ-1,4-フェニレン)を収率100%で得た。

【60】

【化12】
JP0003145324B2_000014t.gif【0061】分析結果を以下に示す。

【62】

【表3】
JP0003145324B2_000015t.gif【0063】実施例4 ポリ(チオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン)の合成
酸素下、10mlのトリフルオロメタン硫酸中でメチルスルフェニル-2,3,5,6,2’,5’,6’-オクタフルオロジフェニルスルフィド0.01molと五酸化リン0.02molおよび硝酸セリウムアンモニウム0.0004molを混合し、室温下1日間攪拌した。反応溶液をエーテル中に滴下すると、白色の沈殿が得られた。精製のため沈殿を濾過後、エーテルで洗浄し乾燥することにより、ポリ(メチルスルホニオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレンチオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン トリフルオロメタン硫酸塩)を収率96%で得た。この前駆体ポリマーをピリジン60mlに溶解し、室温下30分攪拌後、120℃で一晩反応させた。反応溶液を600mlの10%塩酸酸性メタノールに滴下すると、白色粉末の沈澱が得られた。精製のため沈澱を濾過後、メタノールで洗浄し乾燥することにより、ポリ(チオ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン)を収率100%で得た。

【64】

【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を前駆体とするこの発明の方法により、直鎖構造の高分子量ポリ(チオアリーレン)化合物が生成する。特にフッ素原子置換ポリ(チオアリーレン)化合物は、耐熱性、耐薬品性、耐摩擦性、酸素透過性、高屈折率などの優れた特性を示す。

【7】

【化7】
JP0003145324B2_000007t.gif【0008】(R1ないしR8の各々、X並びにnは前記のものを示し、9はアルキル基、またはアリール基を、Y-は、アニオンを示すで表されるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を脱アルキルまたは脱アリール化反応させることを特徴とするポリ(チオアリーレン)化合物の製造法を提供する。

【9】
そしてまた、この出願の発明は、前記の式〔2〕で表されるポリ(アリーレンスルホニウム塩)化合物を、次式〔3〕