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明細書 :プロセスの状態類似事例検索方法及び状態予測方法、並びにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4307129号 (P4307129)
公開番号 特開2004-310492 (P2004-310492A)
登録日 平成21年5月15日(2009.5.15)
発行日 平成21年8月5日(2009.8.5)
公開日 平成16年11月4日(2004.11.4)
発明の名称または考案の名称 プロセスの状態類似事例検索方法及び状態予測方法、並びにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
国際特許分類 G05B  23/02        (2006.01)
FI G05B 23/02 301V
G05B 23/02 R
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2003-103809 (P2003-103809)
出願日 平成15年4月8日(2003.4.8)
審査請求日 平成17年10月24日(2005.10.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】大貝 晴俊
【氏名】伊藤 雅浩
【氏名】松崎 眞六
【氏名】内田 健康
【氏名】秋月 影雄
【氏名】大舘 尚記
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】植村 森平
参考文献・文献 特開2003-058248(JP,A)
特開2001-178463(JP,A)
特開2002-133026(JP,A)
特開平05-204991(JP,A)
特開平08-335110(JP,A)
特開平10-154056(JP,A)
特開2001-265779(JP,A)
特開2001-255929(JP,A)
特開平08-221113(JP,A)
調査した分野 G05B 23/02
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のプロセス変数それぞれの測定値からなるプロセスデータが、格納時刻及び格納した順番を示す格納番号とともに一定周期の時刻ごとに格納された時系列データベースから、指定した時刻のプロセス状態と類似した過去のプロセスの状態類似事例を検索する方法であって、
(イ)前記複数のプロセス変数それぞれについて、指定した時刻Tkから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータ、前記時系列データベースから抽出する工程と、
(ロ)前記抽出した一連のプロセスデータを入力データとして、該入力データそれぞれの値であるデータ値Xiを、予め与えた上下限値Ximax,Ximinを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化した入力データ値Ixiを算出して、量子化した入力データを得る工程と、
(ハ)該量子化した入力データ、及び、指定した時刻時系列データベースの格納番号の両方又はいずれか一方を合わせて検索用テーブルに格納する工程と、からなる一連の工程を、前記指定した時刻Tkを変えて繰り返して、量子化した過去の入力データからなる検索用テーブルを作成する工程と、
複数のプロセス変数それぞれについて、別途指定した特定時刻Tsから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータを前記時系列データベースから抽出する工程と、
前記抽出した一連のプロセスデータそれぞれの値であるデータ値Xsiを、予め与えた上下限値Xsimax,Xsiminを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化したデータ値Ixsiを算出して、量子化した特定時刻Tsの入力データを得る工程と、
前記量子化した特定時刻Tsの入力データを、前記検索用テーブルのキーとして、検索用テーブルに含む量子化した過去の入力データと、対応するデータ値ごとに照合して差異を類似度として算出し、該類似度に基づいて特定時刻Tsの入力データと類似の入力データを探索し、該類似の入力データから類似事例の格納番号又は格納時刻を求める工程と、
該類似事例の格納番号又は格納時刻に基づいて、前記時系列データベースから類似するプロセスデータを抽出する工程と、からなることを特徴とするプロセスの状態類似事例検索方法。
【請求項2】
前記時系列データベースが高炉プロセスを対象とし、前記プロセス変数値を溶銑温度、微粉炭吹き込み量、ソリューションロスカーボン、熱流比、装入ピッチ、Si量、熱風温度、炉頂温度、熱負荷から少なくとも1つ以上選択することを特徴とする請求項1に記載のプロセスの状態類似事例検索方法。
【請求項3】
複数のプロセス変数それぞれの測定値からなるプロセスデータが、格納時刻及び格納した順番を示す格納番号とともに一定周期の時刻ごとに格納された時系列データベースから、指定した時刻のプロセス状態と類似した過去のプロセスの状態類似事例を検索する方法であって、
(イ)前記複数のプロセス変数それぞれについて、指定した時刻Tkから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータ、前記時系列データベースから抽出する工程と、
(ロ)前記抽出した一連のプロセスデータを入力データとして、該入力データそれぞれの値であるデータ値Xiを、予め与えた上下限値Ximax,Ximinを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化した入力データ値Ixiを算出して、量子化した入力データを得る工程と、
(ハ)該量子化した入力データ、及び、指定した時刻時系列データベースの格納番号の両方又はいずれか一方を合わせて検索用テーブルに格納する工程と、からなる一連の工程を、前記指定した時刻Tkを変えて繰り返して、量子化した過去の入力データからなる検索用テーブルを作成する工程と、
複数のプロセス変数それぞれについて、別途指定した特定時刻Tsから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータを前記時系列データベースから抽出する工程と、
前記抽出した一連のプロセスデータそれぞれの値であるデータ値Xsiを、予め与えた上下限値Xsimax,Xsiminを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化したデータ値Ixsiを算出して、量子化した特定時刻Tsの入力データを得る工程と、
前記量子化した特定時刻Tsの入力データを、前記検索用テーブルのキーとして、検索用テーブルに含む量子化した過去の入力データと、対応するデータ値ごとに照合して差異を類似度として算出し、該類似度に基づいて特定時刻Tsの入力データと類似の入力データを探索し、該類似の入力データから類似事例の格納番号又は格納時刻を求める工程と、
前記類似事例の格納番号又は格納時刻基づいて類似時点を得て、該類似時点から所定の時間ΔTのプロセスデータを前記時系列データベースから入手して、前記、指定した特定時刻Tsから所定の時間ΔT後の将来状態として得る工程と、を具備することを特徴とするプロセスの状態予測方法。
【請求項4】
前記時系列データベースが高炉プロセスを対象とし、前記プロセス変数値を溶銑温度、微粉炭吹き込み量、ソリューションロスカーボン、熱流比、装入ピッチ、Si量、熱風温度、炉頂温度、熱負荷から少なくとも1つ以上選択することを特徴とする請求項3に記載のプロセスの状態予測方法。
【請求項5】
前記プロセスの将来状態を表示するとともに、その際予測の確からしさとして前記類似度基準に対応した信頼度を付けて表示する工程をさらに具備することを特徴とする請求項3又は4に記載のプロセスの状態予測方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のプロセスの状態類似事例検索方法の工程、又は請求項3~5のいずれか1項に記載のプロセスの状態予測方法の工程での各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉等のプロセスの操業中、その操業状態と類似の過去事例を検索するプロセスの状態類似事例検索方法及び状態予測方法、並びにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高炉等のプロセスの操業において異常状態が発生すると、人手により過去の事例を探して対応する行為が行われていた。成功例、失敗例を問わず過去の知見を将来の操業改善に活用することは重要であるが、従来は蓄積されたデータを十分に生かす手段がなく、人間の記憶に頼るのが一般的であった。そのため、個人の経験の違いにより意見の異なるアクションとなってしまう問題があった。
【0003】
これに対し、事例ベース推論技術がいくつかの分野で利用されている。特許文献1では過去の問題解決事例に基づいて現在の問題解決を行う事例ベース推論を適用する技術が提案されている。また、特許文献2では事例ベース推論のための表形式のエディタを提案し専門化の知識の体系化を支援する技術が提案されている。また、浄水場プロセスの排水量予測システムや濁度予測システムとして特許文献3、4では複数の事例を集約して代表事例を作成して事例ベースを構築しプロセスの予測を行う技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平3-132826号公報
【特許文献2】
特開平7-271588号公報
【特許文献3】
特開2001-288782号公報
【特許文献4】
特開2002-119956号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が対象とするプロセスは、高炉等の複雑、非線形かつ非定常なプロセスである。このようなプロセスを対称とする数学モデルは開発されてはいるが、未だ十分ではない。そのため、過去の操業知見や過去の事例を知識ベース、事例ベースとして構築し利用しているが、知識の収集、事例ベースの構築やその更新に労力を費やしているのが実状である。そして、更新が十分でないと検索や予測の精度が低下するという問題もあった。
【0006】
また、特許文献3、4に開示された方法では、事例を集約しているため、現在時点と類似な時点の特定ができないという課題があった。
【0007】
また、予測のための事例ベースを複数の事例から事前に作成する必要があることからその更新が課題である。事例の学習部も提案されているが、恒久的な性能維持には問題が残る。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、高炉等の複雑、非線形かつ非定常なプロセスの過去事例を高速、高精度に検索し、また将来予測を的確に実施可能で、かつ更新の不要なオンライン予測手法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明による状態類似事例検索方法は、複数のプロセス変数それぞれの測定値からなるプロセスデータが、格納時刻及び格納した順番を示す格納番号とともに一定周期の時刻ごとに格納された時系列データベースから、指定した時刻のプロセス状態と類似した過去のプロセスの状態類似事例を検索する方法であって、
(イ)前記複数のプロセス変数それぞれについて、指定した時刻Tkから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータ、前記時系列データベースから抽出する工程と、
(ロ)前記抽出した一連のプロセスデータを入力データとして、該入力データそれぞれの値であるデータ値Xiを、予め与えた上下限値Ximax,Ximinを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化した入力データ値Ixiを算出して、量子化した入力データを得る工程と、
(ハ)該量子化した入力データ、及び、指定した時刻時系列データベースの格納番号の両方又はいずれか一方を合わせて検索用テーブルに格納する工程と、からなる一連の工程を、前記指定した時刻Tkを変えて繰り返して、量子化した過去の入力データからなる検索用テーブルを作成する工程と、
複数のプロセス変数それぞれについて、別途指定した特定時刻Tsから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータを前記時系列データベースから抽出する工程と、
前記抽出した一連のプロセスデータそれぞれの値であるデータ値Xsiを、予め与えた上下限値Xsimax,Xsiminを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化したデータ値Ixsiを算出して、量子化した特定時刻Tsの入力データを得る工程と、
前記量子化した特定時刻Tsの入力データを、前記検索用テーブルのキーとして、検索用テーブルに含む量子化した過去の入力データと、対応するデータ値ごとに照合して差異を類似度として算出し、該類似度に基づいて特定時刻Tsの入力データと類似の入力データを探索し、該類似の入力データから類似事例の格納番号又は格納時刻を求める工程と、
該類似事例の格納番号又は格納時刻に基づいて、前記時系列データベースから類似するプロセスデータを抽出する工程と、からなることにしたものである。
【0010】
本発明によるプロセスの状態予測方法は、複数のプロセス変数それぞれの測定値からなるプロセスデータが、格納時刻及び格納した順番を示す格納番号とともに一定周期の時刻ごとに格納された時系列データベースから、指定した時刻のプロセス状態と類似した過去のプロセスの状態類似事例を検索する方法であって、
(イ)前記複数のプロセス変数それぞれについて、指定した時刻Tkから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータ、前記時系列データベースから抽出する工程と、
(ロ)前記抽出した一連のプロセスデータを入力データとして、該入力データそれぞれの値であるデータ値Xiを、予め与えた上下限値Ximax,Ximinを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化した入力データ値Ixiを算出して、量子化した入力データを得る工程と、
(ハ)該量子化した入力データ、及び、指定した時刻時系列データベースの格納番号の両方又はいずれか一方を合わせて検索用テーブルに格納する工程と、からなる一連の工程を、前記指定した時刻Tkを変えて繰り返して、量子化した過去の入力データからなる検索用テーブルを作成する工程と、
複数のプロセス変数それぞれについて、別途指定した特定時刻Tsから所定の点数mだけ過去時点までの一連のプロセスデータを前記時系列データベースから抽出する工程と、
前記抽出した一連のプロセスデータそれぞれの値であるデータ値Xsiを、予め与えた上下限値Xsimax,Xsiminを用いて規格化し、次に所定の量子化数を掛けた後に整数化することにより量子化したデータ値Ixsiを算出して、量子化した特定時刻Tsの入力データを得る工程と、
前記量子化した特定時刻Tsの入力データを、前記検索用テーブルのキーとして、検索用テーブルに含む量子化した過去の入力データと、対応するデータ値ごとに照合して差異を類似度として算出し、該類似度に基づいて特定時刻Tsの入力データと類似の入力データを探索し、該類似の入力データから類似事例の格納番号又は格納時刻を求める工程と、
前記類似事例の格納番号又は格納時刻基づいて類似時点を得て、該類似時点から所定の時間ΔTのプロセスデータを前記時系列データベースから入手して、前記、指定した特定時刻Tsから所定の時間ΔT後の将来状態として得る工程と、を具備することにしたものである。
【0011】
また、本発明によるプロセスの状態類似事例検索方法及び状態予測方法の他の特徴とするところは、時系列データベースが高炉プロセスを対象とし、前記プロセス変数値を溶銑温度、微粉炭吹き込み量、ソリューションロスカーボン、熱流比、装入ピッチ、Si量、熱風温度、炉頂温度、熱負荷から少なくとも1つ以上選択するものである。
【0012】
また、本発明によるプロセスの状態予測方法の他の特徴とするところは、プロセスの将来状態を表示するとともに、その際予測の確からしさとして前記類似度基準に対応した信頼度を付けて表示する工程をさらに具備するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプロセスの状態類似事例検索方法及び状態予測方法、並びにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の好適な実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、プロセスの類似事例検索方法の実施に使用する装置の構成を示すブロック図である。図1の10は高炉プロセスであり、温度、圧力、成分、位置等を計測する各種のセンサが複数設置されている。
【0015】
図1の20は高炉プロセスの計測・制御装置であり、高炉プロセス10から計測した各種のプロセス情報の時系列データをプロセスの操業オペレータに提示し、必要に応じてオペレータの介在のもとプロセスの制御操作を行っている。
【0016】
図1の30はプロセス時系列データベースであり、計測・制御装置20により計測した各種のプロセスデータが一定時刻毎に格納される。実際にはプロセスデータの種類によって格納周期が異なるが、ここでは一定周期で格納されているものとする。一定でない場合には、短周期のデータに合わせて、長周期のデータは値をホールドすることにより短周期のデータに変換することができる。
【0017】
図2にプロセス時系列データベース30のデータ格納形式を示す。格納されているプロセス変数は、溶銑温度、微粉炭吹き込み量(PCR)、ソリューションロスカーボン(SLC)、熱流比、装入ピッチ、Si量、熱風温度(Tf)、炉頂ガス温度、熱負荷(Qloss)等である。格納番号は、時系列データの格納した順番を示す番号である。格納DATEは、時系列データを格納した時刻であり、年月日時分秒で表現したものである。
【0018】
図1の40は検索用テーブル作成部であり、類似事例検索に用いる検索用テーブル50をプロセス時系列データベース30から作成する。検索用テーブル50は、入力変数として、いくつかのプロセス変数の計測値や計測値から計算するプロセス状態値のある時点の値とそこから過去数時点の値を量子化したものを用いる。入力変数の量子化は、入力変数値を1からNの値(Nは設定値で、例えば25)に変換して行う。
【0019】
高炉プロセスの場合は、溶銑温度、微粉炭吹き込み量、ソリューションロスカーボン、熱流比、装入ピッチ、Si量、熱風温度、炉頂ガス温度、熱負荷の9変数について、各時点とその過去2時刻のデータを入力変数としており、各々の変数値を、例えば1から25の値に量子化して検索用テーブル50のindex部を作成している。検索用テーブル50の検索される変数として、その時点の日付時刻、又は対応するデータベースの格納番号を記録している。
【0020】
図3に検索用テーブル50の例を示す。ここでは、入力変数は27変数(9プロセス変数、3時刻分)、量子化数25の場合を示す。検索変数は、DB(データベース)格納番号又はDB格納DATEである。図3のinput_1からinput_27は入力変数で、夫々溶銑温度、微粉炭吹き込み量、ソリューションロスカーボン等の9変数に関するその時点(t)、1時刻前(t-1)、2時刻前(t-2)の量子化されたものである。
【0021】
図4に検索用テーブル50の作成手順を示す。手順41では、プロセス時系列データベース30を時系列順にアクセスして、プロセス時系列データベース30から所定の入力変数のデータ値、格納時刻、又は格納番号を収集する。
【0022】
手順42では、入力変数のデータ値の量子化を行う。入力データをXiとし、予め与えたその上下限の値がXimax,Ximin、量子化数をnとすれば、Xiの量子化値Ixiは
Ixi = 整数化(N*(Xi-Ximin)/( Ximax-Ximin) +1) (1)
(i=1~27)
によって計算される。整数化は、小数点以下切り捨ての意味である。量子化に用いた入力変数の上下限値の例を図5に示す。
【0023】
手順43では、検索用テーブル50に27個の量子化された入力データ値と格納時刻、或いは格納番号を設定する。
【0024】
プロセス時系列データベース30の所定の格納番号又は格納時刻まで図4の各手順41~43を繰り返す。
【0025】
図1に説明を戻して、図1の60は類似事例検索部であり、検索用テーブル50を用いて類似事例の検索を行う。現在時刻のプロセス状態と類似時点を検索するために、現在時刻のプロセスデータを計測・制御装置20から取り込み、図6に示す手順で類似事例を検索する。手順61では、計測・制御装置20から類似事例検索したい現在時点のプロセスデータを入手する。
【0026】
手順62では、入手したプロセスデータから検索用テーブル50の入力データを選択し、先に説明した量子化を行い、検索用テーブル50の27の入力値を作成する。
【0027】
手順63では、検索用テーブル50と選択した入力データの照合を行う。照合は、単純な方法として検索用テーブル50を上から順番に下まで照合する。照合するものがあればその格納されているDB格納番号又はDB格納DATEを照合した数だけ記録する。この場合は、事例の類似度を0と設定する。検索用テーブル50に入力データとマッチするものがなければ、再度入力データの近傍1を探索する。近傍データは、まず各入力データの量子化データ値の前後(+1、-1)まで探索する。
【0028】
例えば、溶銑温度の量子化データが13であれば12~14の範囲のデータが照合範囲となる。各入力変数について範囲を前後に拡大して探索しすべてを満足するものを探し、あればそのDB格納番号或いはDB格納DATEを類似時点として記録する。この場合は、類似度は1となる。同様に探索するものがなければ次の近傍2を探索し、照合するものがあれば、同様に類似時点を記録し、類似度を2とする。設定された近傍kまで探索し、照合するものがなければ類似事例なしとする。
【0029】
手順64では、検索用テーブル50から検索された複数の類似時点のDB格納番号又はDB格納DATEを順番に時系列データベース30から類似プロセスデータを抽出して、画面やファイルに出力する。図1の70は類似事例表示部であり、その検索結果を表示する。
【0030】
図7に高炉の類似事例検索の結果例を示す。溶銑温度、装入ピッチ、微粉炭吹き込み量、ソリューションロスカーボンの現在時点と類似時点の対応を示す。上段が現在事例、下段が類似事例である。これらの結果から、現在の事例の前後と類似検索された事例の前後はかなり似た傾向を示しており、類似事例検索が良好に機能していることが確認される。
【0031】
以上述べた手法によれば、検索用テーブル50の更新は大変容易である。オンラインで逐次実施することも可能であるが、更新用のデータがプロセス時系列データベース30に一定量蓄積された時点で、そのデータを使って、図4の手順で検索用テーブル50に値を追記することが可能である。また、操業変化により利用が出来なくなったある時点以前のデータを検索用テーブル50から削除することも、その年月日と時刻、或いはその時点に対応する格納番号のデータを削除することにより容易に行うことができる。
【0032】
また、プロセスの現在状態に類似な事象を検索するだけでなく、時系列データベースの特定時点に類似な事象を検索することも可能である。
【0033】
また、検索用テーブル50にない入力状態に対応する検索は、検索用テーブル50の近傍検索により、精度は多少低下するものの実施することが可能である。
【0034】
図8は、プロセスの将来状態予測方法の実施に使用する装置の構成を示すブロック図である。以下では、図1等と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。65は状態予測部であり、図1と同じ方法にて将来状態予測をしたい時点と類似の過去事例を検索用テーブル50を検索して、類似時刻を検索し、その将来事例を用いて将来状態を予測する。その手順を図9で説明する。手順61では、計測・制御装置20から現在時点のプロセスデータを入手する。
【0035】
手順62では、入手したプロセスデータから検索用テーブル50の入力データを選択し、量子化を行い、検索用テーブル50の入力データを作成する。
【0036】
手順63では、検索用テーブル50に入力データを設定して、格納されている類似時点を複数点得る。このときの類似度をIRをする。
【0037】
手順94では、類似時点から設定された将来予測時刻、例えば8時間先までのDB格納時刻をキーとして時系列データベース30からそのプロセスデータを逐次入手する。また複数の類似点において同じ操作を繰り返し複数組の将来状態予測値を得ることができる。複数の類似点における個々の将来予測グラフ、及びそれらの平均化したグラフ、また変動範囲を画面に表示させる。また、表示にあたって、事例の類似度に対応した信頼度も一緒に表示する。例えば、類似度0の場合は信頼度が高い(H)とし、類似度1の場合は信頼度がやや高い(SH)とし、類似度2の場合は信頼度が普通(M)とし、類似度3の場合は信頼度が注意(L)として表示する。図8の75は将来状態表示部であり、それらの将来状態予測を表示する。
【0038】
図10に高炉の将来予測結果を示す。2時間先の溶銑温度の実績値と予測値がよく対応しており、本手法の有効性を示している。
【0039】
(その他の実施の形態)
図1、8に示す装置はコンピュータにより実現可能であり、コンピュータに対し、前記実施の形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU或いはMPU)に格納されたプログラムに従って各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
【0040】
また、この場合、前記ソフトウェアのプログラムコード自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体は本発明を構成する。そのプログラムコードの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネット等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体(光ファイバ等の有線回線や無線回線等)を用いることができる。
【0041】
さらに、前記プログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上の如く詳述した本発明によれば、複雑、非線形かつ非定常なプロセスの類似事例を高速に検索することができ、また、時系列データベースがあれば本発明の手法によりシステマチックに類似検索装置の更新を行うことができる。このことによって類似検索装置の性能を常に高い精度に維持することができる。また、このことによってプロセスの状態予測の性能を常に高い精度に維持することができる。さらにプロセスの将来状態予測を精度よく行うことは、今後の操業アクションを決定のための重要なガイダンスとなり、操業の安定化に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】プロセスの類似事例検索方法の実施に使用する装置の構成を示すブロック図である。
【図2】プロセス時系列データベースのデータ格納形式の例を示す図である。
【図3】検索用テーブルの例を説明する図である。
【図4】検索用テーブルの作成手順を説明するフローチャートである。
【図5】入力変数の量子化に用いる上下限値を説明する図である。
【図6】類似事例の検索手順を説明するフローチャートである。
【図7】類似検索結果の例を説明する図である。
【図8】プロセスの将来状態予測方法の実施に使用する装置の構成を示すブロック図である。
【図9】状態予測手順を説明するフローチャートである。
【図10】将来状態予測結果の例を説明する図である。
【符号の説明】
10 高炉プロセス
20 計測・制御装置
30 プロセス時系列データベース
40 検索用多次元テーブル作成部
50 検索用多次元テーブル
60 類似事例検索部
65 状態予測部
70 類似事例表示部
75 将来状態表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9