TOP > 国内特許検索 > 魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造方法 > 明細書

明細書 :魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3598094号 (P3598094)
公開番号 特開2003-199524 (P2003-199524A)
登録日 平成16年9月17日(2004.9.17)
発行日 平成16年12月8日(2004.12.8)
公開日 平成15年7月15日(2003.7.15)
発明の名称または考案の名称 魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造方法
国際特許分類 A23L  1/238     
FI A23L 1/238 B
A23L 1/238 104Z
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2001-401600 (P2001-401600)
出願日 平成13年12月28日(2001.12.28)
審査請求日 平成14年2月5日(2002.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591224788
【氏名又は名称】大分県
発明者または考案者 【氏名】山本 展久
個別代理人の代理人 【識別番号】100085327、【弁理士】、【氏名又は名称】梶原 克彦
審査官 【審査官】内田 淳子
参考文献・文献 特開平11-346705(JP,A)
特開平11-155524(JP,A)
特開昭59-118059(JP,A)
水産資材便覧,北海水産新聞社,1972年12月15日,第120-121頁
調査した分野 A23L 1/238
特許請求の範囲 【請求項1】
魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造工程において、
油分を分離除去する加熱工程を含み、該工程は仕込み工程後であって搾る工程の前であり、35℃以上でタンパク質分解酵素の至適温度下で行うことを特徴とする、
魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は魚介類を主原料とする醤油様調味料(本明細書では特に断らない限り「魚醤油」という)の製造方法に関する。
更に詳しくは、効率的に油分の分離(除去)を行うことができる魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
魚醤油とは海産魚介類を使用した伝統的な醤油様調味料であり、日本では「しょっつる」(秋田地方)や「いしる・いしり」(石川地方)などが知られている。魚醤油の一般的な製造方法は、原料魚介類を塩と共に漬け込み、数ヶ月~数年間分解・熟成させ、その後、火入れ、濾過、精製、殺菌等の工程を行うものである。
【0003】
ところで、原料である魚には、種類の違いや季節によって差異はあるものの、多くの油分が含まれている。この油分は魚醤油や魚醤油もろみ(原料を分解させたもの)から取り除かれるが、その除去が不十分であると、製品である魚醤油に油臭さや生臭さのような異臭が残存したり、清澄化ができずに製品価値が低下する。
通常、この油分は、分解(自己消化、酵素処理も含む)後 、濾過後、もしくは火入れ後のいずれかで取り除かれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、分解後や濾過後では、未分解のタンパク質などの作用により油分がエマルジョン化しており、その分離は非常に困難である。しかも、エマルジョン化した状態で火入れすると、油臭さが魚醤油に残って品質が低下する。
【0005】
特に通常1年から数年間を要する製造期間を数ヶ月に短縮した速醸法では、ミンチ状にした魚肉を酵素等と反応させるため、可溶化した未分解のタンパク質が増加し、また脂肪分も可溶化しやすくなるのでエマルジョン化が顕著である。
【0006】
また火入れ後の最終段階で、合成樹脂等の吸着剤を用いて油分を除去する方法が考えられるが、そのような後処理を行えば魚醤油特有の旨味などの有用成分の消失も懸念される。
このように魚体由来の油分に関する問題点は非常に多く、油分の除去を効率良く行うことが高品質の魚醤油製造に欠くことのできないものとなっている。
【0007】
そこで、本発明者は上記事情に鑑み、魚体由来の油分を効率的に除去すべく、鋭意研究を進めた結果、製造工程において、油分を分離する加熱工程を行うことが、油分を効率良く除去できる極めて有効な手段であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(発明の目的)
本発明の目的は、効率的に油分の分離(除去)を行うことができる魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造工程において、
油分を分離除去する加熱工程を含み、該工程は仕込み工程後であって搾る工程の前であり、35℃以上でタンパク質分解酵素の至適温度下で行うことを特徴とする、
魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造工程において、油分を分離する加熱工程を行うことによって、効率的に油分を分離(除去)できる。
この理由は定かではないが、加熱工程を経ることで、物理的に油分がエマルジョン状態を保持できなくなり、油分層と分解液層とに容易に分離したものと思われる。
【0014】
魚介類原料の一つとして魚類を挙げることできるが、魚類は海水魚または淡水魚を問わない。
【0015】
油分を分離する加熱工程は、仕込み工程後であって搾る工程の前であることが好ましい。
また、火入れを行う場合は、火入れを行う前に油分を分離する加熱工程を行うことが好ましい。火入れする前に油分を分離しないと、火入れによって油分層から分解液層に油臭さが移り、油臭さが製品後の魚醤油に残るからである。
また実験によれば、仕込み工程後であって搾る工程の前のできるだけ後期に、油分を分離する加熱工程を行えば、原料に対する魚醤油の回収率が上がることを確認した。
【0016】
油分を分離する加熱工程は、35℃以上で所定期間行うことが好ましい。
加熱をする期間は温度によって左右され、温度が低ければ加熱期間を長くし、温度が高ければ加熱期間を短くすることができる。
例えば温度が35℃であれば、加熱期間は少なくとも約3週間は要し、温度が50℃であれば、加熱期間は少なくとも約2週間で良い。なお、この温度と加熱時間に限定されるものではない。
ただし、加熱する温度が高すぎると、あるいは加熱する期間が長すぎると、過加熱による焦げ臭が発生する恐れがあり、好ましくない。
【0017】
また、原料の分解時に、必要に応じて魚介類原料にタンパク質分解酵素を添加することもできる。
酵素処理を行うことで、魚肉の分解反応を円滑に進行させることができる。これにより、歩留まりが向上し、品質の安定化が図れる。
【0018】
更に、タンパク質分解酵素の至適温度下で、油分を分離する加熱工程を行うことによって、油分がより分離しやすくなることを確認した。
この理由は定かではないが、タンパク質分解酵素の至適温度で油分を分離する加熱工程を行うことにより、未分解のタンパク質が効率良く分解して、油分のエマルジョン崩壊が起こるため、油分がより分離しやすくなったものと思われる。
【0019】
使用する酵素の種類は、特に限定するものではなく、市販されているものを好適に使用することができる。
【0020】
なお、原料の仕込み工程は、例えば以下のようにして行う。
まず、主原料である魚介類をすり潰し、塩を加える。すり潰すことで、魚介類原料の接触面積が大きくなり、分解反応が早くなる。また、すり潰すことで、魚介類原料と塩が良く混じり、臭みの原因である嫌気発酵を防止できる。
【0021】
すり潰した魚介類原料に塩を添加した後は、塩分濃度に偏りが生じないように均一に攪拌する。塩分濃度に偏りがあると、塩分濃度の低い部分に腐敗菌が増殖し、異味異臭の原因となり、最悪の場合には魚醤油自体が腐敗するので、好ましくない。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
魚醤油の製造工程において、油分を分離する加熱工程に要する温度及び期間について、以下の通り、検討を行った。
魚を水洗して表面に付着したぬめり(粘着成分)を除去し、頭・胴・内臓を含む魚体すべてをミンチ状にすり潰した。
なお、材料として鮎を用いた。これについては、後述する実施例についても同様である。
【0024】
次いで、魚肉ミンチ85重量部に対して塩を15重量部の割合で加え、全体量が約2800重量部になるように調製した。塩を添加した後は、塩分濃度に偏りが生じないように均一に攪拌した。この魚肉ミンチにタンパク質分解酵素を添加し、その混合物を700重量部ずつパッキン付きポットに分注した。そして、30℃、35℃、40℃、50℃の恒温槽に入れ、分解を開始した。
【0025】
開始日を0日目として、毎日一回、28日間経時的にサンプリングし、ソックスレー抽出法で油分の含有量を測定した。サンプリング方法は、以下のとおりとした。
【0026】
即ち、分解開始後、表面に浮遊した油分をスポイトで吸い取って除去し、油分除去後の魚醤油もろみを良く攪拌してサンプリングした。サンプリングした魚醤油もろみの油分の含有量を測定し、魚醤油における油分含有率(重量%)を求めた。
図1に経過日数と油分含有率(重量%)の関係をグラフに示す。
【0027】
図1から明らかなとおり、35℃、40℃、50℃共に約10日間で油分の分離が顕著となり、約20日間ほどで約14重量%あった油分を約4~5重量%程まで除去できた。つまり、平均して全油分の約75%が除去できた。一方、30℃では油分離は起きなかった。
【0028】
以上の実験結果から、少なくとも35℃以上の温度で3週間保持することで、油分のほとんどが除去できることが確認できた。
【0029】
[実施例2]
魚を水洗して表面に付着したぬめり(粘着成分)を除去し、頭・胴・内臓を含む魚体すべてをミンチ状にすり潰した。この魚肉ミンチ85重量部に対し、塩15重量部を加え、塩分濃度に偏りがないように良く攪拌した。この魚肉ミンチにタンパク質分解酵素を添加し、パッキン付きのガラスポットに入れた。
【0030】
次いで、30℃の恒温槽の中で時々攪拌しながら分解反応を開始した。そして、70日目に恒温槽の温度を50℃とし、その後50℃のまま14日間分解を続け、84日目に分解終了とした。
【0031】
分解終了後の原料は、油分が表面に浮き、以下のような四層に分離した。最下層(重いもの)から、▲1▼骨・ひれなど固形物層、▲2▼分解液層(目的とする魚醤油)、▲3▼未分解の浮遊物層、▲4▼表面の油分層であった。
表面の油分はすくい取ることにより、簡単に除去できた。
【0032】
油分が容易に分離した理由は定かではないが、50℃と高温域にすることで物理的に油分がエマルジョン状態を保持できなくなり、油分層と分解液層が容易に分離したものと思われる。
また、本実施例で使用したタンパク質分解酵素は、中性域で至適温度が約50℃である。したがって、分解時の温度をタンパク質分解酵素の至適温度である50℃に保つ(油分を分離する加熱工程をタンパク質分解酵素の至適温度である50℃下で行う)ことで、未分解のタンパク質が効率的に分解して、油分のエマルジョンの崩壊が起こり、油分がより分離しやすくなったものと思われる。
【0033】
油分を除去した残りの層を粗めのガーゼ状の布を用い、一昼夜かけてあら濾過を行った。この濾過によって、分解しなかった骨やひれなどを除去した。更に、濾紙を用いて未分解物を濾過した。この濾過の段階でも新たな油分の発生はなく、上記した分解終了後に油分が完全に表面に浮上したことが確認できた。
【0034】
得られた濾液は、通常の殻醤油(小麦、大豆を原料とする醤油)と同様な火入れを行った。火入れ条件は85℃、15分間(85℃に達してからの経過時間)である。火入れ後、再び濾紙を用いて濾過し、濾液として目的物である魚醤油を得た。原料の推定水分に対する魚醤油の収率は90%であった。
【0035】
以上のように、火入れ前に油分を取り除いたことで、油臭さが魚醤油に残留することを防止できた。これにより、油臭さのない非常にすっきりとした味と香りを有する清澄な魚醤油を得た。
【0036】
[実施例3]
実施例2と同様に、ミンチ状にすり潰した魚肉ミンチ85重量部に対し、塩15重量部を加え、塩分濃度に偏りがないように良く攪拌した。この魚肉ミンチにタンパク質分解酵素を添加し、パッキン付きのガラスポットに入れた。
【0037】
次いで、50℃の恒温槽の中で時々攪拌しながら分解反応を開始した。そして、14日目に恒温槽の温度を30℃として70日間分解を続け、84日目に分解終了とした。
その後、実施例1と同様な処理を行って、油分を取り除き、目的物である魚醤油を得た。
【0038】
得られた魚醤油は、実施例2と同様、油臭さのない非常にすっきりとした味と香りを有し、清澄な液であった。原料の推定水分に対する魚醤油の収率は70%であった。
【0039】
以上説明した実施例から分かるように、魚醤油の製造工程において、油分を分離する加熱工程を行うことで、効率的に油分の分離ができることが明らかになった。
【0040】
また、分解反応の前期に温度を50℃とした実施例3については、魚醤油の収率が70%であったが、分解反応の後期に温度を50℃とした実施例2では、収率が90%と高い値を示した。即ち、仕込み工程後であって搾る工程の前のできるだけ後期に、油分を分離する加熱工程を行えば、原料に対する魚醤油の回収率が上がることを確認した。
【0041】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、魚介類を主原料とする醤油様調味料の製造工程において、油分を分離する加熱工程を行うことによって、効率的に油分の分離を行うことができる。これにより、油臭さが魚醤油に残存することなく、非常にすっきりとした味と香りを有する清澄な魚醤油を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】経過日数と油分含有率(重量%)の関係を示すグラフ。
図面
【図1】
0