TOP > 国内特許検索 > 樹皮油吸着材の処理方法 > 明細書

明細書 :樹皮油吸着材の処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3858071号 (P3858071)
公開番号 特開2004-000933 (P2004-000933A)
登録日 平成18年9月29日(2006.9.29)
発行日 平成18年12月13日(2006.12.13)
公開日 平成16年1月8日(2004.1.8)
発明の名称または考案の名称 樹皮油吸着材の処理方法
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
C05F   3/00        (2006.01)
C05F  11/00        (2006.01)
B01J  20/24        (2006.01)
FI B09B 3/00 ZBPA
C05F 3/00
C05F 11/00
B01J 20/24 ZABB
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願2003-096674 (P2003-096674)
出願日 平成15年3月31日(2003.3.31)
優先権出願番号 2002097014
優先日 平成14年3月29日(2002.3.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年3月18日(2004.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591224788
【氏名又は名称】大分県
発明者または考案者 【氏名】齊藤 雅樹
【氏名】小倉 秀
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】金 公彦
参考文献・文献 特開平11-293277(JP,A)
特開平07-275830(JP,A)
特開平08-117594(JP,A)
特開平05-339088(JP,A)
特開2000-239086(JP,A)
特開2002-113449(JP,A)
特表平09-505060(JP,A)
特開平10-094702(JP,A)
特開昭61-000284(JP,A)
特開2003-094020(JP,A)
特開2002-316147(JP,A)
特開2001-139938(JP,A)
調査した分野 B09B 1/00- 5/00
B01J 20/00-20/34
特許請求の範囲 【請求項1】
生分解性の外包材に樹皮分としてその粉末、細片および繊維状体のうちの1種以上を内包させた樹皮油吸着材に油を吸着させた後の処理方法であって、油を吸着させた樹皮油吸着材を、土壌微生物による樹皮の発酵分解性の環境に投入し、樹皮油吸着材に吸着した油を樹皮分よりも優先して分解処理することを特徴とする樹皮油吸着材の処理方法。
【請求項2】
樹皮油吸着材は、樹皮分とともに、パーライト、パーミキュライト等の鉱物もしくはその発泡体の粉末または小片が生分解性の外包材に内包されたものであることを特徴とする請求項1の処理方法。
【請求項3】
生分解性の外包材はコットン不織布であることを特徴とする請求項1または2の処理方法。
【請求項4】
樹皮の発酵分解性の環境は、樹皮分が畜糞と混合されて堆肥化される環境であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの処理方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、樹皮油吸着材の処理方法である。さらに詳しくは、この出願の発明は、杉皮等の樹皮分を重油等の油の吸着に利用した樹皮油吸着材において、吸着させた油を簡便な手段で効率的に分解処理することのできる、新しい樹皮油吸着材の処理方法に関るものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
油による土壌や海面の汚染は生態系に多大な影響を及ぼす環境問題であり、その対策としての各種の浄化手法が提案されている。
【0003】
様々な浄化手法の中でも、物理的な油回収法は、環境への二次的影響が小さいことや安全性が高いことから好ましい方法であると考えられている。
【0004】
一般に、これらの方法において用いられる油吸着材やオイルフェンス(ブーム)は、ポリプロピレンなどの合成樹脂や合成繊維からなるものであるが、回収後の処理が容易であることから、樹皮、綿、藁などの天然繊維が用いられることも少なくない。
【0005】
だが、天然繊維を油吸着に用いる方法は、その吸着回収の効率において満足できるものでなく、実際の場面でもその適用については本格的にはあまり具体化されていないのが実情である。
【0006】
一方、回収された汚染油を、微生物で分解した環境を修復する試みが世界的に行われている。この微生物による油の処理は、従来、広く行われてきた焼却処分に比べて環境に対する負荷が小さいことから、今後望ましい方法であると考えられている。しかしながら、この方法の場合には、油の分解処理の完了までに、数年という長い時間が必要であるといった問題が残されている。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、油の吸着効率やその取扱い性、回収性が良好であって、しかも、吸着した油の分解処理を短期間で完了することのできる新しい方策を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、生分解性の外包材に樹皮分としてその粉末、細片および繊維状体のうちの1種以上を内包させた樹皮油吸着材に油を吸着させた後の処理方法であって、油を吸着させた樹皮油吸着材を、土壌微生物による樹皮の発酵分解性の環境に投入し、樹皮油吸着材に吸着した油を樹皮分よりも優先して分解処理することを特徴とする樹皮油吸着材の処理方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第2には、樹皮油吸着材は、樹皮分とともに、パーライト、パーミキュライト等の鉱物もしくはその発泡体の粉末または小片が生分解性の外包材に内包されたものであることを特徴とする上記の処理方法を、第3には、生分解性の外包材はコットン不織布であることを特徴とする処理方法を提供する。
【0010】
そして、この出願の発明は、第4には、樹皮の発酵分解性の環境は、樹皮分が畜糞と混合されて堆肥化される環境であることを特徴とする上記の処理方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について説明する。
【0012】
この出願の発明において処理の対象とされるのは、海面等から回収された重油等の油を吸着した樹皮油吸着材である。これまでにも樹皮を油の吸着材にすることは各種試みられているが、ほとんど具体化されていない。このような現状において、この出願の発明者らは、樹皮を利用した新規な油吸着材をすでに提案しているが、この出願の発明では、この新規に提案された樹皮油吸着材がベースになっている。
【0013】
新しい樹皮油吸着材は、その特徴として、第1には樹皮の粉末、細片、あるいは繊維状体もしくはそれらの1種以上の混合物を吸着成分としている。そして第2には、これらの油吸着のための樹皮分を、生分解性で、透液性(透水性)の外包材に内包させていることである。
【0014】
たとえばこの場合の樹皮としては、林産資源の加工過程で生じる杉皮等が利用でき、また生分解性の外包材としては、天然繊維、たとえばコットン(綿)等の不織布や織布、網状体等が考慮される。いずれも天然産物であることから環境への負荷が小さく、取扱いも容易である。
【0015】
このような樹皮分を外包材に内包させた樹皮油吸着材には、たとえば海面や湖沼、河川の水面等に適用するのに有効であるように、これらに浮力を与えるため、パーライト、パーミキュライト等の鉱物もしくはその発泡体の粉末や小片、あるいはガラスバルーン等を内包させてもよい。
【0016】
さらには、撥水剤を添加してもよいし、樹皮分に撥水処理しておいてもよい。
【0017】
この出願の発明は、たとえば以上のような樹皮油吸着材に油を吸着させた後に、微生物の作用によって油を分解し、ひいては吸着材の外包材と樹皮分をも発酵分解させてしまうことを特徴としている。
【0018】
この場合の微生物としては、樹皮を発酵分解する作用のある各種のものであってよい。これらは土壌中に通常に生息しているものでよい。たとえば従来より、樹皮と牛糞とを混合して、土壌微生物により発酵処理し、堆肥とすることがよく知られているが、この出願の発明においては、このような発酵分解の環境を利用することができる。
【0019】
この出願の発明である樹皮油吸着材の処理方法の具体的な手順を以下に例示する。
【0020】
まず、樹皮と畜糞(窒素源)からなる混合物に対して、攪拌を伴う酸素供給および水分添加を行うことで、土壌中の微生物によって発酵が促されている発酵槽を用意する。樹皮としては、例えば杉樹皮などが用いられる。窒素源としては、例えば、牛糞などの動物の糞尿が用いられる。また、微生物としては、土壌にもともと生息する微生物である土壌菌が用いられる。このとき、発酵熱により発酵槽内部の温度は60~70℃にまで上昇する。
【0021】
この時点で、発酵槽の内部に、油を吸着した樹皮油吸着材を投入することで、吸着した油を樹皮分よりも優先して分解させることが可能となる。樹皮中に含まれるリグニンは、土壌微生物にとって分解が困難な物質であるが、発酵槽内部のような分解を促進する環境を構築することで、微生物はリグニンを分解することに慣れることになる。リグニンを分解することに慣れた微生物に、リグニンと類似する構造を備え、かつ、分子量が比較的小さい重油などの鉱物油を与えると、リグニンよりも鉱物油の方を好んで分解するようになる。したがって、このような環境に、油を吸着した樹皮油吸着材を投入することで、吸着した油を優先して分解させることが可能となる。
【0022】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【0023】
【実施例】
<実施例1>
まず、コットン不織布(日清紡:オイコス、約60g/m2のもの)に杉樹皮分とパーライト(大石物産)とを体積比50:1の割合で内包させた油吸着材(45×45cm、マット型、乾燥自重約200g)に、ASTM基準に基づいて、15分吸油、30秒油切りの仕様で、C重油およびA重油の各々を800g吸着させて二つのサンプルを作成した。吸着の効率、回収率は良好である。杉樹皮の土壌微生物による堆肥物(ぶんご有機肥料(株):大分県竹田市)10kgをコンクリート基礎上に盛ることで発酵槽を用意し、この中に、前記のとおりの二つのサンプルを埋設した。
【0024】
1ヶ月を経過した後において、C重油を吸着したサンプルの場合には、油吸着材を構成するコットン不織布や乾燥樹皮は分解され、周囲の樹皮堆肥と同化して原形をとどめず、また、油については目視や臭気感知や指の感触などでは痕跡を確認することが不可能な程度まで分解されていた。その場所に油吸着材を置いたことは、唯一分解しない物質であるパーライトが集中して分布しているために判別できる状態であった。一方、A重油を吸着したサンプルの場合には、分解の進行がC重油吸着のサンプルよりも遅く、1ヶ月後では、油吸着材の外側を構成するコットン不織布が一部原形をとどめていた。しかしながら、2ヶ月後には全く原形をとどめていなかった。また、油分の残存は検知されなかった。
【0025】
なお、サンプル埋設による以上の例においては、上記発酵槽の温度は堆肥物発酵時の温度とされる60℃~70℃に保たれていた。
【0026】
以上のとおり、従来の微生物による分解方法においては、分解に1年以上の期間が必要であるのに対し、この出願の発明である生分解性油吸着材の処理方法においては、短期間での油の分解が実現可能であることがわかった。
【0027】
<実施例2>
実施例1と同様の油吸着材(15×15cm、マット型)8枚に600gのC重油を吸着させ、実施例の堆肥物とともに、全体量12kg(油分濃度50000ppm)として産業用生ゴミ処理装置(エコアップ製つちカエルT-25S)に投入し、装置最下部から空気を供給し、攪拌(1回転/分)した。
【0028】
2週間後には油分が2000ppm以下にまで分解され、4週間後には実質的に検出されず、油吸着材の杉樹皮分がコットン不織布の残存も確認されなかった。
【0029】
以上の期間について生菌数を評価したところ、好気性好熱菌数、好熱性常温菌数がともに1×107~1×108(cfu/g・wet・weight)の高い範囲にあることが確認された。温度は70℃前後で安定していた。
【0030】
もちろん以上の例に限定されることはなく、その細部について、様々な形態をとりうることが考慮されるべきであることは言うまでもない。
【0031】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、吸着した油の分解処理を短期間で完了することを実現する樹皮油吸着剤の処理方法が提供される。
【0032】
この出願の発明である生分解性油吸着剤の処理方法は、従来の焼却による処理と比較して、環境負荷が極めて小さい。さらには、完全に熱処理を実施する必要がなく、用いられる原材料も安価であることから、コストパフォーマンスにも優れた手法であることから、その実用化が強く期待される。