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明細書 :樹皮と網からなる油吸着材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3697468号 (P3697468)
公開番号 特開2000-233182 (P2000-233182A)
登録日 平成17年7月15日(2005.7.15)
発行日 平成17年9月21日(2005.9.21)
公開日 平成12年8月29日(2000.8.29)
発明の名称または考案の名称 樹皮と網からなる油吸着材
国際特許分類 C02F  1/40      
C02F  1/28      
C09K  3/32      
E02B 15/04      
FI C02F 1/40 E
C02F 1/28 N
C09K 3/32 K
C09K 3/32 X
E02B 15/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願平11-078257 (P1999-078257)
出願日 平成11年2月15日(1999.2.15)
審査請求日 平成13年10月1日(2001.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591224788
【氏名又は名称】大分県
発明者または考案者 【氏名】齊藤 雅樹
【氏名】大内 成司
審査官 【審査官】増田 亮子
参考文献・文献 英国特許出願公開第01210690(GB,A)
実開昭61-150099(JP,U)
実開昭49-036128(JP,U)
実開昭49-062928(JP,U)
特開昭52-076287(JP,A)
調査した分野 C02F 1/40
E02B 15/04-15/10
特許請求の範囲 【請求項1】
水面に浮遊する油を包囲および吸収および付着する目的で用いる、長さ数mmから数cmの樹皮を充填した網状の外部カバーから成る油吸着材で、外部カバーの下部に網を結合し、その網の最下部にロープを設置し、油を包囲した後にロープを引いて網を巾着状に絞ることにより、包囲した油が網に覆われ、全体を水面上に引き上げる際に油とムース化油と固形物を一網打尽に回収可能にすることを特徴とする油吸着材。
【請求項2】
請求項1記載の油吸着材の外部カバーの上部に網を結合し、その網にロープを付属させ、水面上に引き上げる際にロープを引き絞ることにより、包囲した油とムース化油と固形物が上方からこぼれ落ちるのを防止することを特徴とする油吸着材。
【請求項3】
請求項1の油吸着材を平たいシート状に加工し、キルティングを施したもの。
【請求項4】
請求項1の油吸着材を円柱状に加工したもの。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水面に浮遊する油を包囲および吸収および付着する油吸着材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油の流出は重大な環境汚染の原因となるので、水面に浮遊する油を収集したり分解したりする様々な方法が提案され、使用されている。大きく分けて、流出直後の水面で油を燃焼させる方法、界面活性剤で油を分散させる等の化学的方法、微生物により油を分解する生物学的方法、油吸着材や油水分離器などで油を回収する物理的方法などがある。物理的回収を容易にするために油を包囲するオイルフェンス(ブーム)や油固化剤などを用いる場合もある。
【0003】
一般的に、タンカー事故などで水面に流出した油は、粘度が高いほど回収が困難とされている。粘度の低いガソリンや軽油はそもそも、水面上から蒸発するので回収を要しない場合が多い。また、粘度の低いあるいは中程度の油は、界面活性剤で処理出来るほか、各種の油吸着材で比較的容易に回収することが可能である。一方、粘度の高い重油など、中でもC重油はそれ自体が界面活性剤や油吸着材での処理が困難である上、平成9年1月のナホトカ号事故でも顕著だったように、漂流中に水分を含んで粘度が更に上がり、ムース化油と言われるチョコレートムースのような軟らかい固形状に変質し、処理や回収を一層困難にし、柄杓などの手作業中心の回収方法を取らざるを得ないことが知られている。
【0004】
上記の処理および回収方法のうち、物理的方法は環境への二次的影響の小ささや安全性から好ましいとされる油回収方法である。一般に油吸着材やオイルフェンス(ブーム)はポリプロピレンなどの合成樹脂や化学繊維から成るが、回収後の燃焼が容易な天然繊維、例えば綿や藁が用いられる場合もある。
【0005】
油吸着材は不織布状のシートや粉末を布あるいは紙製の袋に充填した構造のものが中心であるため、粘度の高い油が目に詰まって内部へ油が通過するのを妨げ、表面にのみ油が付着され、内部まで浸透せずに本来の機能が発揮できない場合が多い。
【0006】
樹皮については微細に粉砕されたものを水面に散布し、油を吸着した後に回収する例があるが、粉末状の樹皮が油の吸着前あるいは吸着後に散逸して、回収の効率が悪くなる場合があった。
【0007】
また、樹皮を外部カバーの中に充填して使用する例があるが、外部カバーとして多孔質の紙や布など目の細かいものを用いると、前述の例と同様に油が目に詰まって内部へ油が通過するのを妨げる問題があり、また、目の粗いものを用いると粉末状の樹皮が目から大量にこぼれ落ちて機能を損ねる、という欠点があった。
【0008】
また、オイルフェンス(ブーム)などで一旦、包囲した油は、ポンプや油吸着材などの別の資機材を用いて陸上や船上に回収せねばならず、二度手間となっている。特に、粘度の高いムース化油などはポンプや油吸着材が使えず、柄杓で汲み上げねばならないため、回収の作業効率が著しく低いという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
外部カバーの中に充填された樹皮は、樹皮単体に比べて回収時の取り扱いが容易であるが、粉末状の樹皮がこぼれ落ちることなく、かつ油(特に粘度の高い油)の通過を妨げない目の粗さを持った外部カバーを有するものはこれまで見出されていない。
【0010】
また、オイルフェンス(ブーム)として包囲した油を他の資機材を用いずに陸上や船上に回収する方法がないため、二度手間となっている。
【0011】
本発明では、様々な形状に加工が可能でかつ取り扱いの容易な外部カバーに充填された樹皮とこの油吸着材の上下面などに更に網を取り付ける構造とし、回収作業が比較的難しい高い粘度の油でも包囲および吸収および付着することおよび包囲したムース化油や固形のゴミなどを一網打尽に回収することが可能な油吸着材を得ることを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
杉などの樹皮を木本体から離脱させる際には通常、長さ数mm以下の粉末状のものから数十cm程度の繊維状のものまで種々の形状のものが生ずる。従来は、均質化などの目的から長さがまちまちの樹皮を一旦、粉砕して微細な粉末状にした後に油吸着材に用いていたため、前述の外部カバーの問題を生じていた。本発明では、生じる樹皮の内、長さ数mmから数cmのものを選別して使用することにより、粘度の高い油の通過を妨げない目の大きさを持つ網状の外部カバーに充填しても、樹皮が大量にこぼれ落ちて機能を損ねることのない状態を実現する。
【0013】
この選別に際し、目的の長さを有する樹皮の割合を高めるために、剥離した樹皮にある程度の衝撃や圧力を与えて短く加工することも可能である。
【0014】
また、樹皮の水中での親油性および疎水性を高め、油吸着材としての機能を強化するために、樹皮に予め撥水剤を混入するなどの撥水加工を施すことも可能である。また、吸収および付着した油を長時間保持するために、少量の合成樹脂を添加することも可能である。また、吸収および付着する油の種類を増やすなど機能を拡張するために少量の鳥類の羽根を添加することも可能である。
【0015】
外部カバーは、対象とする油の粘度により最適な目の大きさが異なるが、例えば1mmから1cm程度のものを用いると重油などの粘度の高い油の通過を妨げず、かつ樹皮が大量にこぼれ落ちることもなく、目的の用途に適している。
【0016】
この外部カバーの材質は、特に油の包囲および吸収および付着の機能を大きく左右するものではなく、取り扱い時に破損しない程度の強度を持ち、本体が沈降してしまわない程度に軽いものであれば、安価なポリエチレン製の網や使用済みの漁網などでも構わないが、樹皮の使用後の燃焼処理が容易である利点を損なわないためにも、同様の利点を持つ綿などの天然素材を用いることが望ましい。なお、樹皮の見かけの比重は杉の場合で乾燥状態で0.03から0.1、浸水後で0.1から0.3程度であり、金属性の重い網などを用いない限り本体が沈降することは無い。
【0017】
この外部カバーと樹皮から成る油吸着材は、それ単体でオイルフェンス(ブーム)として水面に浮遊する油を囲い込み、油の回収を容易にする目的で使用することが出来る。
【0018】
また、それ単体で包囲した油を陸上あるいは船上に回収する目的で、この外部カバーの下部あるいは上部と下部の双方に更に網を結合する構造にしている
【0019】
【発明の実施の形態】
図1に示すでは、平たいシート形状の網から成る外部シート1に樹皮2が充填されている。また、樹皮が内部で移動しないように適当な間隔で糸によるキルティング3を施している。また、両端部に展張作業あるいは回収作業に使用するロープ4を有する。
【0020】
図2に示すでは、円柱状の網から成る外部カバーに樹皮が充填されている。樹皮が内部で移動しないように適当な間隔で外部カバーと同様の材質の隔壁5を設けてある。この隔壁は図1の例のようなキルティングで代用することも出来る。また、図1の例の平たいシート形状のものを丸めて円柱状にした後、外周部分を適当な間隔で糸で固定することにより、図2の例と同等のものを得ることも可能である。この中央部あるいは外周部に展張作業あるいは回収作業に使用するロープ4を有する。このロープ4には浮遊および沈降具合を調節するために重りや浮きを設置することが可能である。
【0021】
図1の例図2の例は、ある程度の波浪中で、油の周囲に展張することで油を包囲するオイルフェンス(ブーム)の役割を果たすことが出来る。また、自身が油を吸収および付着するので、少量の油であれば本品のみで油を回収することが可能である。
【0022】
図3に示す実施例1は、図2の例の外部カバーの下部に更に網6を結合したものである。網6の最下部にロープ7を設置している。このロープ7には沈降具合を調節するために鉄などの重りを設置することが可能である。図2の例と同様にオイルフェンス(ブーム)として油を包囲した後、ロープ7を引き、巾着状に網6を絞ると、包囲した油は網6に覆われた状態となる。この後、全体を水面上に引き上げると、粘度の非常に高いムース化油や固形のゴミなどを一網打尽に回収することが可能である。
【0023】
図4に示す実施例2は、実施例1の外部カバーの上部にも網8を結合し、上部下部の双方に網を有する構造にしたものである。実施例1の用法で水面上に引き上げた際に上側の網8に付属するロープ9を引き絞ることにより、包囲したムース化油や固形物が上方からこぼれ落ちるのを防止することが可能である。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0025】
本発明では、生じる樹皮の内、長さ数mmから数cmのものを選別して使用しているので、樹皮が大量にこぼれ落ちて機能を損ねることのなく、安定した油吸着機能を維持することが出来る。
【0026】
また、目の粗い網状の外部カバーに充填することが出来るので、細かい網目が油の通過を妨げて油の吸着に支障をきたすことがなく、これまで回収が困難とされたC重油やムース化油のような粘度の高い油の包囲および吸収および付着に用いることが出来る。
【0027】
これにより、大量に発生するものの従来は大半が燃焼か埋立によって処理され、産業廃棄物として厄介な存在であった樹皮(特に杉)が有効活用できるため、環境保全の観点から望ましい上、世界各地で安定供給が可能である。
【0028】
特に、廃棄物を原料とするために従来の新品の石油製品である油吸着材に比べ、はるかに安価であり、事業者の負担とならず大量の備蓄が可能である。また、油流出事故で直接の被害者となりやすい漁民や地元民が、自衛のために備蓄することもコスト面から難しいことではなく、対策上、最も重要とされる事故直後の初期の対応が彼ら沿岸民によって可能となるため、効果は計り知れない。
【0029】
また、外部カバーの上下面などに更に網を取り付ける構造にしており、オイルフェンス(ブーム)として用いて包囲した油を、ポンプや柄杓などの資機材を使用することなく、下部の網で巾着状に絞込み、上部の網で散逸を防ぐことによって、粘度の高いムース化油や固形のゴミなどを一網打尽に回収することが出来るため、回収の作業効率を著しく向上させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を平たいシート形状で実現する場合の網を設置する前の状態である。
【図2】 本発明を円柱形状で実現する場合の網を設置する前の状態である。
【図3】 包囲後の油を水面上に容易に移動するために、本発明を円柱形状で実現したもの(下部に網を結合したもの)である(実施例1)。
【図4】 包囲後の油を水面上に移動する際、上部から油がこぼれ落ちるのを防ぐために、本発明を円柱形状で実現したものの上部にさらに網を結合したものである(実施例2)。
【符号の説明】
1 外部カバー
2 樹皮
3 キルティング
4 ロープ
5 隔壁
6 網
7 ロープ
8 網
9 ロープ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3