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明細書 :超短光パルス信号の分散補償方法およびその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4027858号 (P4027858)
公開番号 特開2005-025103 (P2005-025103A)
登録日 平成19年10月19日(2007.10.19)
発行日 平成19年12月26日(2007.12.26)
公開日 平成17年1月27日(2005.1.27)
発明の名称または考案の名称 超短光パルス信号の分散補償方法およびその装置
国際特許分類 G02B  26/00        (2006.01)
H04B  10/02        (2006.01)
H04B  10/18        (2006.01)
FI G02B 26/00
H04B 9/00 M
請求項の数または発明の数 13
全頁数 12
出願番号 特願2003-270383 (P2003-270383)
出願日 平成15年7月2日(2003.7.2)
審査請求日 平成17年6月3日(2005.6.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小西 毅
【氏名】伊東 一良
【氏名】一岡 芳樹
【氏名】尾下 善紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】早川 貴之
参考文献・文献 特開2003-315697(JP,A)
特開平11-331078(JP,A)
特開2001-251246(JP,A)
特開2003-028724(JP,A)
調査した分野 G02B 26/00
H04B 10/02
H04B 10/18
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
超短光パルス信号を、該超短光パルス信号に含まれる各波長の時間的変化を表す2次元空間光スペクトログラムに光のみを用いて展開し、該2次元空間光スペクトログラムを2次元変調デバイスにて直接変調し、再び光パルス信号に変換する超短光パルス信号の分散補償方法であって、信号光と空間的に分離したトリガーパルスを第1のシリンドリカルレンズにより、光-光スイッチとして動作する非線形光学結晶に入射させ、前記信号光をX軸方向に空間分離して切り出し、該切り出された信号光を第2のシリンドリカルレンズによりコリメートした後、分散素子を用いて、Y軸方向に波長毎に分解し、分散した光パルス信号を、能動光学デバイスを用いず、全受動的に、かつ瞬時に補償することを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項2】
請求項1記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記超短光パルス信号が分散量が未知の超短光パルス信号であることを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項3】
請求項1記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記超短光パルス信号が波長が多重化した超短光パルス信号であることを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項4】
請求項1記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、分散した超短光パルス信号内の任意の時間遅延をもつ波長成分を、決められた空間位置に自動的に展開することを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項5】
請求項1記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記トリガーパルスが離散化したトリプルパルスであることを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項6】
請求項1記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記トリガーパルスが連続したパルス列であることを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項7】
請求項4にて展開した空間分布を受動光学素子により分散補償可能にすることを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項8】
請求項記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記受動光学素子として回折型シリンドリカルレンズ対を用いることを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項9】
請求項記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記回折型シリンドリカルレンズを、電気的、磁気的、機械的に移動させることにより、分散補償量を可変とすることを特徴とする超短光パルス信号の分散補償方法。
【請求項10】
超短光パルス信号を、該超短光パルス信号に含まれる各波長の時間的変化を表す2次元空間スペクトログラムに光のみを用いて展開し、該2次元空間スペクトログラムを2次元変調デバイスにて直接変調し、再び超短光パルス信号に変換する超短光パルス信号の分散補償装置であって、信号光と空間的に分離したトリガーパルスを第1のシリンドリカルレンズにより、光-光スイッチとして動作する非線形光学結晶に入射させる手段と、該入射させた信号光とトリガーパルスを前記信号光をX軸方向に空間分離して切り出し、該切り出された信号光を第2のシリンドリカルレンズによりコリメートした後、分散素子を用いて、Y軸方向に波長毎に分解する手段と、分散した超短光パルス信号を、能動光学デバイスを用いずに、全受動的に補償する手段を具備することを特徴とする超短光パルス信号の分散補償装置。
【請求項11】
請求項10記載の超短光パルス信号の分散補償装置において、分散量が未知の超短光パルス信号を、能動光学デバイスを用いずに瞬時に補償する手段を具備することを特徴とする超短光パルス信号の分散補償装置。
【請求項12】
請求項10記載の超短光パルス信号の分散補償装置において、波長多重化した超短光パルス信号の分散を全受動的に補償する手段を具備することを特徴とする超短光パルス信号の分散補償装置。
【請求項13】
請求項10記載の超短光パルス信号の分散補償装置において、分散した超短光パルス信号内の任意の時間遅延を持つ波長成分を、決められた空間位置に自動的に展開する手段を具備することを特徴とする超短光パルス信号の分散補償装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の伝送系において、光ファイバー伝送路で発生する分散を補償する方法及びその装置に係り、特に、分散した光パルスを、光パルスに含まれる各波長の時間的変化を表す2次元スペクトログラムに光のみを用いて展開し、2次元分散補償デバイスにて直接分散補償し、再び超短光パルスに変換し伝送する技術において、分散量が未知の超短光パルスに対しても、全受動的かつ瞬時に分散補償を行うことができる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光ファイバーを用いた情報通信網の発展により、我々の生活において大容量・高速通信が身近なものになってきた。最近では、この大容量・高速通信を利用して、映画のリアルタイム配信も可能になってきた。しかし、ストレスを感じないほど高速なインターネット通信や、映画の配信をはじめとして遠隔教育や遠隔医療といった分野までを含むマルチメディア通信を可能にするためには、さらなる通信容量の増大が必要になる。例えば、2010年頃には、家庭で150Mbps、オフィスで10Gbps、また幹線系ではTbpsからPbpsレベルの超高速バックボーンネットワークが必要になると予想されている。
【0003】
通信容量の増大のためには、信号密度の向上と変調速度の向上が必要になる。そこで、信号密度の向上のために、光時分割多重方法(OTDM)や波長分割多重方式(WDM)などの研究が盛んに行われている。また、変調速度向上のために、光-光スイッチを用いた研究が行われている。しかし、これらの技術を単に進歩させるのみで通信容量を増大させるためには、膨大な装置とコストが必要になり、また精密に制御することが非常に困難になる。
【0004】
そこで、通信容量増大のためのブレークスルーとして、OTDMとWDMの性質を併せ持つ超短光パルスを光源とした技術が、下記非特許文献1にて公開されている。超短光パルスは、帯域の広い波長成分の重畳により形成されるため膨大な波長資源を有し、またその時間幅が非常に短いため高密度な時間信号を形成することが可能となる。
【0005】
しかし、超短光パルスは、帯域の広い波長成分から形成されるため、光ファイバー等の伝送路を伝播することにより「分散」と呼ばれる新たな問題が発生する。これは、光ファイバー中では波長により伝播する速度が異なるため、ある距離を伝播した場合は、波長毎に到着時間が異なってしまうという現象を指す。つまり、分散していない超短光パルスの場合、含まれる波長成分が全て中心となる基準時間で揃っているが、分散した超短光パルスの場合、各波長が基準時間からずれ、ある波長成分は基準時間よりも前に、ある波長成分は基準時間よりも後ろに存在するという状態になる。
【0006】
これにより、超短光パルスの信号波形が崩れてしまい、長距離伝送が困難になる。また、この分散の影響は、超短光パルスを用いた場合だけでなく、波長多重した信号においても問題となる。この場合、各波長信号間で時間的なずれが生じ、タイミング誤差の原因となる。
【0007】
そこで、超短光パルスの信号波形や波長多重信号の時間ずれを元に戻すために、「分散補償」システムが用いられてきた。その分散補償システムでは、各波長成分の時間的なずれを補正し、超短光パルスのパルス波形を元に戻すための操作が行われる。
【0008】
一般的な分散補償システムでは、回折格子対やプリズム対などの分散素子を用いる。そして、光パルスを波長毎に分解し、波長毎に必要な時間補償を行い、再び光パルス信号に戻すことにより分散補償を行う。
【0009】
これら従来のシステムにおいては、光パルスが経由した経路が既知であり、その分散量が事前に分かっている場合の光パルス信号や、分散補償量を高速に変化させる必要がない場合に対し分散補償を行うことが可能である。
【0010】
なお、超短光パルス信号の変換や信号処理に関する先行技術として以下のよう特許文献1~4が開示されている。また、光ファイバを通るときに生じる光の色分散を補償する装置として、特許文献5が開示されている。

【特許文献1】特開平11-46304号公報(第3-5頁 図1)
【特許文献2】特許第3018173号公報(第2-3頁 図1)
【特許文献3】特開2000-275689号公報(第3-4頁 図1)
【特許文献4】特開2002-72270号公報(第3-4頁 図1)
【特許文献5】特表2002-514323号公報(図13)
【非特許文献1】T.Morioka,K.Mori,and M.Saruwatari,“More than 100-wavelength-channel picosecond optical pulse generation from single laser source using supercontinuum in optical fibers”,Electron.Lett.29,862-864(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記した従来の技術では、光パルスが経由した経路が未知で、分散量が未知の光パルス信号に対しては、まず、その分散量を測定する必要があり、また光パルス信号の記録や機械的な操作を用いていたため瞬時の分散補償を行うことが不可能であった。
【0012】
本発明は、上記状況に鑑み、分散量が未知の光パルス信号に対して、機械的・能動的な操作を用いない、処理を全受動化したリアルタイム分散補償を行う方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕超短光パルス信号を、この超短光パルス信号に含まれる各波長の時間的変化を表す2次元空間光スペクトログラムに光のみを用いて展開し、この2次元空間光スペクトログラムを2次元変調デバイスにて直接変調し、再び光パルス信号に変換する超短光パルス信号の分散補償方法であって、信号光と空間的に分離したトリガーパルスを第1のシリンドリカルレンズにより、光-光スイッチとして動作する非線形光学結晶に入射させ、前記信号光をX軸方向に空間分離して切り出し、この切り出された信号光を第2のシリンドリカルレンズによりコリメートした後、分散素子を用いて、Y軸方向に波長毎に分解し、分散した光パルス信号を、能動光学デバイスを用いず、全受動的に、かつ瞬時に補償することを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記〔1〕記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記超短光パルス信号が分散量が未知の超短光パルス信号であることを特徴とする。
【0015】
〔3〕上記〔1〕記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記超短光パルス信号が波長が多重化した超短光パルス信号であることを特徴とする。
【0016】
〔4〕上記〔1〕記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、分散した超短光パルス信号内の任意の時間遅延をもつ波長成分を、決められた空間位置に自動的に展開することを特徴とする。
【0017】
〔5〕上記〔1〕記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記トリガーパルスが離散化したトリプルパルスであることを特徴とする。
【0018】
〔6〕上記〔1〕記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記トリガーパルスが連続したパルス列であることを特徴とする。
【0019】
超短光パルス信号の分散補償方法において、上記〔4〕にて展開した空間分布を受動光学素子により分散補償可能にすることを特徴とする。
【0020】
〕上記〔〕記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記受動光学素子として回折型シリンドリカルレンズ対を用いることを特徴とする。
【0021】
〕上記〔〕記載の超短光パルス信号の分散補償方法において、前記回折型シリンドリカルレンズを、電気的、磁気的、機械的に移動させることにより、分散補償量を可変とすることを特徴とする。
【0022】
10〕超短光パルス信号を、この超短光パルス信号に含まれる各波長の時間的変化を表す2次元空間スペクトログラムに光のみを用いて展開し、該2次元空間スペクトログラムを2次元変調デバイスにて直接変調し、再び超短光パルス信号に変換する超短光パルス信号の分散補償装置であって、信号光と空間的に分離したトリガーパルスを第1のシリンドリカルレンズにより、光-光スイッチとして動作する非線形光学結晶に入射させる手段と、この入射させた信号光とトリガーパルスを前記信号光をX軸方向に空間分離して切り出し、この切り出された信号光を第2のシリンドリカルレンズによりコリメートした後、分散素子を用いて、Y軸方向に波長毎に分解する手段と、分散した超短光パルス信号を、能動光学デバイスを用いずに、全受動的に補償する手段を具備することを特徴とする。
【0023】
11〕上記〔10〕記載の超短光パルス信号の分散補償装置において、分散量が未知の超短光パルス信号を、能動光学デバイスを用いずに瞬時に補償する手段を具備することを特徴とする。
【0024】
12〕上記〔10〕記載の超短光パルス信号の分散補償装置において、波長多重化した超短光パルス信号の分散を全受動的に補償する手段を具備することを特徴とする。
【0025】
13〕上記〔10〕記載の超短光パルス信号の分散補償装置において、分散した超短光パルス信号内の任意の時間遅延を持つ波長成分を、決められた空間位置に自動的に展開する手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、分散した光パルス信号の、機械的・能動的な操作を一切用いない、処理を全受動化したリアルタイム分散補償が可能となる。
【0027】
特に、超短光パルスによる高速・大容量伝送に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
光パルス信号を、該光パルス信号に含まれる各波長の時間的変化を表す2次元空間光スペクトログラムに光のみを用いて展開し、この2次元空間光スペクトログラムを2次元変調デバイスにて直接変調し、再び光パルス信号に変換する超短光パルス信号の分散補償にあたって、分散した光パルス信号を、能動光学デバイスを用いずに、受動光学素子のみで、全受動的に、かつ瞬時に補償する。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0030】
本発明では、分散量が未知の光パルスの分散補償を行うために、まず光パルスの時間信号成分を空間信号成分として展開する。つまり、空間面上の1つの軸に沿って光パルス信号の時間波形が展開される。そして展開した空間信号を、空間面上のもう一つの軸に沿って含まれる波長成分毎に分解する。つまり、展開した2次元空間分布上のある一点は、光パルス信号内のある時間におけるある波長成分に対応することになる。この展開した2次元空間分布が光スペクトログラムと呼ばれる。この時、前記した空間面上の1つの軸に沿って時間波形が展開されるが、その空間分布はまたその方向に沿った時間ずれ量に相当する分だけ実際に基準時間となる基準面に対し時間がずれた分布となる。基準時間からずれた光パルス内の各波長成分は、時間ずれ量に相当する空間位置に自動的にマッピングされていくため、その位置に時間補償を行う素子を配置することにより時間補償を行うことが可能となる。よって機械的・能動的な操作を一切用いない、処理を全受動化したリアルタイム分散補償を行うことが可能となる。
【0031】
以下、詳細に説明する。
【0032】
本発明にかかる分散補償システムは、以下に示すように、大きく3つのサブシステムから構成される。
【0033】
図1は本発明にかかる超短光パルス信号の分散補償の概要を示す模式図である。
【0034】
第1のサブシステム101では、超短光パルス信号102,102′を2次元空間光スペクトログラム112に展開する。ここで、104は超短光パルス信号102が伝搬される光ファイバー伝送路、105は光学システムである。
【0035】
ここでは、伝送信号である超短光パルス信号102を時間-波長の2次元空間光スペクトログラム112に展開する。つまり、時間をX軸、波長をY軸とする平面に展開する。X軸の中心よりずれた分が時間ずれ量となり、その時間ずれ量に相当する空間位置に自動的にマッピングされる。
【0036】
第2のサブシステム111では、波長成分毎に必要となる時間補償を空間的に行う。
【0037】
すなわち、(a)時間をX軸、波長をY軸とする平面に展開した2次元光スペクトログラム112を、(b)時間補償を行う受動光学素子(ここでは、後述する位相補償板を示しているが、後述する回折型シリンドリカルレンズ対であってもよい)113を配置することにより、(c)時間補償を行った分布スペクトログラム114を生成させる。
【0038】
第3のサブシステム121では、時間補償した分布スペクトログラム114を再び超短光パルス信号123に変換する。ここで、124は光学システム、125は超短光パルス信号123,123′が伝搬される光ファイバー伝送路である。
【0039】
以下、3つのサブシステムにおける実施の形態、および分散補償の方法について詳細に説明する。
〔第1のサブシステム〕
第1のサブシステム101では、超短光パルス信号102に含まれる各波長成分の時間波形を水平方向(X軸方向)に沿った空間分布として展開し、そして含まれる波長成分毎に鉛直方向(Y軸方向)に並べることにより超短光パルス信号102の光スペクトログラム112を得る。
【0040】
図2はその概念図である。中心となる基準時間は用いるトリガー信号により決定され、超短光パルス信号102内の基準となる時間内(t=0)の波長成分が、2次元空間分布面における(x=0)の位置のY軸上に展開され、他の成分では例えば(t=-τ1 )の波長成分が(x=-x1 )の位置に、(t=τ1 )の波長成分が(x=x1 )の位置のY軸方向に沿って展開される。また、この展開した2次元空間分布の(x=-x1 )上の位置に存在する分布は、X軸・Y軸が含まれる面を基準として、z1 =-τ1 ×cに相当する分だけ遅延しており、逆に(x=x1 )上の位置に存在する分布は、z1 =τ1 ×cに相当する分だけ進んだ時空間プロファイルを持つ分布として展開される。
【0041】
図3はこの信号変換を実現する光学システムの模式図である。
【0042】
ここでは説明を簡単にするため、分散した超短光パルス信号102のうち、任意の3つの時間で切り出したトリプルパルスを信号として用いる。そのそれぞれのパルスをSP1、SP2、SP3とする。これに対し、トリガーとなるパルスとしてもトリプルパルスを用意し、そのそれぞれのトリガーパルスをTP1、TP2、TP3とする。この時、TP1、TP2、TP3はSP1、SP2、SP3とそれぞれ時間的に同期しているとし、またTP1、TP2、TP3は空間的に分離されている。そして、第1のシリンドリカルレンズ11により、SP1、SP2、SP3およびTP1、TP2、TP3は共にX軸方向に集束され、集束光として非線形光学結晶12に入射する。非線形光学結晶12は、2つの超短光パルスが同時に結晶に入射した時のみ物理的特性が変化する材料であり、また光の速度で応答可能であるため、超高速光-光スイッチとして動作する。
【0043】
よって、非線形光学結晶12内において、トリガーパルスTP1、TP2、TP3に同期した超短光パルス信号成分のみが非線形光学結晶12から切り出される。
【0044】
本発明においては、TP1によりSP1が、TP2によりSP2が、またTP3によりSP3が切り出される。この時、TP1、TP2、TP3は空間的に分離されているため、切り出されたSP1、SP2、SP3もまた空間的に分離されて非線形光学結晶12から出射する。その後第2のシリンドリカルレンズ13にてコリメートすることにより、超短光パルスの時系列な信号成分がX軸方向に沿った空間分布に置き換えられて展開される。また、切り出された各信号成分は、TP1、TP2、TP3のそれぞれでの相対的な時間差を保持しているため、X軸方向に沿って展開された空間分布はまた実際にそれぞれの時間に対応する時間差を保持した時空間プロファイルとなる。その後、分散素子14を用いてY軸方向に沿って波長毎に分解し、第3のシリンドリカルレンズ15にて再びコリメートすることにより、超短光パルスに含まれる各波長成分の時間波形は水平方向(X軸方向)に沿った空間分布として、そして含まれる波長成分毎に鉛直方向(Y軸方向)に並べることにより超短光パルス信号の光スペクトログラムを得ることが可能となる。
【0045】
今、TP1とSP1、TP2とSP2、またTP3とSP3が時間的に同期していると仮定したが、未知の超短光パルス信号に対しても、TP1、TP2、TP3それぞれに同期する信号成分が空間的に分離されて切り出される。
【0046】
また、説明においてトリガーパルスは、図4(a)に示すような、離散化したトリプルパルスであるとしたが、図4(b)に示すような連続したパルス列を用いることにより、全ての時間成分を空間分布に変換することが可能となる。
【0047】
また、図2に示すように、超短光パルス信号102内の任意の波長成分は、その波長成分がもつ時間遅延に相当する位置に自動的にマッピングされるため、任意の分散した超短光パルス信号102を2次元空間分布に自動的に変換することが可能となる。
〔第2のサブシステム〕
第2のサブシステム111では、展開した光スペクトログラム112に対し時間補償を行うことにより、超短光パルスの分散補償を行う。
【0048】
第1のサブシステム101において、トリガーパルスの時間遅延量、および空間分散量はあらかじめ設定可能であるため、展開した空間分布上のある任意の点に存在する波長成分とその時間差は既知のものとなる。例えば、図2を例に取れば、(x=x1 )の位置に展開された分布は、超短光パルス信号内において(t=τ1 )の時間遅延を持つ時間信号成分であり、実際にz1 =τ1 ×cに相当する分だけ進んだ分布である。すなわち、(x=x1 )の位置に展開される信号は、一意的に同じ時間差を持っていることになる。よって、その位置にその時間差(z1 =τ1 ×c)を補償する素子を置くことにより、時間補償を行うことが可能となる。
【0049】
時間差を補償する方法として大きく分けて2つの方法が挙げられる。
(時間補償方法I)
超短光パルス信号の時間波形を空間分布に展開する際、図4(a)に示すように、離散的に展開した場合は、その時間差を補償する受動光学素子(位相補償手段)としての位相補償板25を置くだけで能動光学デバイスを用いることなく補償可能となる。なお、21は超高速ゲート、22は第1のレンズ、23は第2のレンズである。
(時間補償方法II)
また、図4(b)に示すように、連続的に展開した場合は、受動光学素子(位相補償手段)としての回折型シリンドリカルレンズ対30を利用する。
【0050】
図5は図4(b)に示す分散補償の様子を示す図である。
【0051】
超短光パルスはそのパルス幅が非常に短いため、空間的にAに示すようなシート状であると考えることができる。この超短光パルスが回折型シリンドリカルレンズ31に入射する。このレンズ31上の各点〔P1 (1),P1 (2),P1 (3)…P1 (n)〕に入射した光はレンズ31により偏向されB点に向けて集光される。その後B点から再び発散し、回折型シリンドリカルレンズ31と対称に配置した回折型シリンドリカルレンズ32にて回折型シリンドリカルレンズ31への入射光と平行になるように偏向される。この時、レンズ31上の各点〔P1 (1),P1 (2),P1 (3)…P1 (n)〕からB点を通り、レンズ32上の各点〔P2 (1),P2 (2),P2 (3)…P2 (n)〕までにおいて距離差が生じる。超短光パルスはシート状であるため、この距離差により超短光パルスの波面に傾きが生じる。この傾きを利用し、時間補償を行う。連続的に展開した分布は波面が傾いているため、回折型シリンドリカルレンズ対31,32を利用することにより、その波面の傾きを補償することが可能となる。これにより時間補償を行うことが可能となる。
【0052】
また、上記した受動光学素子(ここでは、回折型シリンドリカルレンズ31,32)を、電気的、磁気的、機械的に移動させることにより、分散補償量を可変にすることができる。
〔第3のサブシステム〕
第3のサブシステム121では、分散補償した分布を再び伝送可能な超短光パルス信号に変換する。
【0053】
超短光パルスへの再変換は、第2のサブシステム111で時間補償した分布を光学システム124で集光して光ファイバー125へ入射させるのみで実行可能である。
【0054】
上記したように、本発明によれば、分散量が未知の超短光パルス信号の分散補償を行うため3ステップを以下のように施す。
【0055】
第1ステップは、伝送信号である超短光パルス信号を時間-波長の2次元空間光スペクトログラムに展開する。つまり、時間をX軸、波長をY軸とする平面に展開する。X軸の中心よりずれた分が時間ずれ量となり、時間ずれ量に相当する空間位置に自動的にマッピングされる。
【0056】
第2ステップは、展開された光スペクトログラムに対して時間補償を行う受動光学素子を配置する。位置ずれ基準点(一番遅れている信号)に対して厚みの大きい受動光学素子(例えばガラス)を通過させることで時間補償する。
【0057】
第2ステップの基準時間からの時間ずれ量の補償は、回折型シリンドリカルレンズや位相板で実現される。
【0058】
第3ステップは、時間補償された光分布を光信号に変換する。
【0059】
これにより、機械的・能動的な操作を一切用いない、処理を全受動化したリアルタイム分散補償が可能となる。特に、超短光パルスによる高速・大容量伝送に有効である。
【0060】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明にかかる超短光パルス信号の分散補償により、超短光パルスの光ネットワークシステムへの導入が容易になり、光ネットワークシステムの通信容量を格段に増大させることが可能になる。これにより、生活を取り巻くネットワーク環境がよりブロードバンド化され、現在の技術では困難であるテレビ電話などのマルチメディア通信を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明にかかる超短光パルス信号の分散補償の概要を示す模式図である。
【図2】本発明にかかる超短光パルス信号の光スペクトログラムを得る概念図である。
【図3】本発明にかかる信号変換を実現する光学システムの模式図である。
【図4】本発明にかかるパルス列の全ての時間成分を空間分布に変換する様子を示す模式図である。
【図5】本発明にかかる超短光パルス信号の分散補償の様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0063】
第1のシリンドリカルレンズ
12 非線形光学結晶
13 第2のシリンドリカルレンズ
14 分散素子
15 第3のシリンドリカルレンズ
21 超高速ゲート
22 第1のレンズ
23 第2のレンズ
25 位相補償板
30 回折型シリンドリカルレンズ対
31,32 回折型シリンドリカルレンズ
101 第1のサブシステム
102,102′ 超短光パルス信号
104,125 光ファイバー伝送路
105,124 光学システム
111 第2のサブシステム
112 展開した2次元空間光スペクトログラム
113 受動光学素子
114 時間補償を行った分布スペクトログラム
121 第3のサブシステム
123,123′ 変換された超短光パルス信号
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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