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明細書 :減速型中性子スペクトル測定器の減速材構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4670068号 (P4670068)
公開番号 特開2003-066181 (P2003-066181A)
登録日 平成23年1月28日(2011.1.28)
発行日 平成23年4月13日(2011.4.13)
公開日 平成15年3月5日(2003.3.5)
発明の名称または考案の名称 減速型中性子スペクトル測定器の減速材構造
国際特許分類 G21C  17/12        (2006.01)
G01T   3/00        (2006.01)
FI G21C 17/12 A
G01T 3/00 D
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2001-253812 (P2001-253812)
出願日 平成13年8月24日(2001.8.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年3月5日 (社)日本原子力学会発行の「日本原子力学会 2001年(第39回)春の年会要旨集」に発表
審査請求日 平成20年3月19日(2008.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】谷村 嘉彦
【氏名】三枝 純
【氏名】吉澤 道夫
【氏名】吉田 真
個別代理人の代理人 【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100092015、【弁理士】、【氏名又は名称】桜井 周矩
【識別番号】100093713、【弁理士】、【氏名又は名称】神田 藤博
【識別番号】100091063、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 英夫
【識別番号】100102727、【弁理士】、【氏名又は名称】細川 伸哉
【識別番号】100117813、【弁理士】、【氏名又は名称】深澤 憲広
【識別番号】100123548、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 晃二
審査官 【審査官】村川 雄一
参考文献・文献 特開平02-082188(JP,A)
特開昭61-269089(JP,A)
特開昭61-269090(JP,A)
特開平09-021881(JP,A)
特開平04-020893(JP,A)
特開2001-349951(JP,A)
調査した分野 G21C 17/00 - 17/14
G01T 1/00 - 7/12
特許請求の範囲 【請求項1】
中性子減速材中に、熱中性子吸収材と位置敏感型熱中性子検出器を配置した減速型中性子スペクトル測定器であって、
前記中性子減速材は、中性子減速材の中性子入射側に、水素密度が低く中性子の減速性能の低い物質からなる減速材を配し、中性子減速材の中性子入射とは反対側に、水素密度が高く中性子の減速性能の高い物質からなる減速材を配してなる、減速性能の異なる複数の種類の減速材からなることを特徴とする、減速型中性子スペクトル測定器
【請求項2】
前記水素密度が低く中性子の減速性能の低い物質はポリカーボネートであり、
前記水素密度が高く中性子の減速性能の高い物質はポリエチレンである、
請求項1に記載の減速型中性子スペクトル測定器
【請求項3】
前記熱中性子吸収材は、入射中性子エネルギーごとに中性子減速材中の熱中性子分布を計算して得られる、入射軸方向の熱中性子分布のピーク位置と径方向の熱中性子広がりとからなる熱中性子束分布形状に合致する形状を有する、請求項1又は2に記載の減速型中性子スペクトル測定器
【請求項4】
前記熱中性子吸収材は、中性子減速材の中性子入射側から、最も小さい直径の首部と、直径が漸次増加する肩部と、当該肩部の直径の増加率より低い増加率で直径が漸次増加する本体部と、からなる中空部を有する円柱形である、請求項1~3のいずれかに記載の減速型中性子スペクトル測定器
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、様々なエネルギーを持つ中性子が存在する放射線場において中性子エネルギー分布を測定する際に使用する減速型中性子スペクトル測定器の改良に関するものであり、中性子のエネルギーを減衰させる減速材の構造を工夫することにより、低エネルギー領域の中性子までエネルギーの測定を可能にしようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
減速型中性子スペクトル測定器とは図1に示すように減速材と熱中性子を検出した位置が測定できる位置敏感型熱中性子検出器で構成されている。測定器に入射した中性子は減速材の中を通り、次第にエネルギーを落とす。そして、最終的に熱中性子と呼ばれる非常にエネルギーの低い中性子となる。図中に示すようにこの熱中性子になる位置は入射したときの中性子エネルギーにより変化するため、どのような位置分布で熱中性子が存在するかを測定することにより入射した中性子のエネルギーが判る。そこで減速材の中心に、位置敏感型熱中性子検出器を設置して減速材中での熱中性子分布を測定できるような構造にしている。
【0003】
従来の減速型中性子スペクトル測定器は、図1に示すように一種類の減速材を用いており、中性子を減速する性能の違う物質を組み合わせることや、熱中性子を吸収する物質を減速材の中に入れるなどの工夫は行われていない。このため、従来の測定器では低エネルギー領域の中性子のエネルギーを測定することは困難なものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
減速材としてポリエチレンやパラフィンなどの中性子を減速させる性能の高い物質を用いた場合、エネルギーの比較的低い中性子に対して熱中性子に減速される位置の差は小さくなる。この差を利用してエネルギー分布を求めるので、低いエネルギー領域の中性子でエネルギー分布を求めるのが困難となる。
【0005】
また、測定器に入射した中性子は熱中性子にまで減速された後、減速材中を拡散する。そして、その拡散距離は比較的長い。この熱中性子の拡散は、入射中性子が熱中性子にまで減速された位置と、熱中性子検出器で検出される位置をばらつかせることとなる(拡散効果)。特に、熱中性子に減速される位置の差が小さい比較的低いエネルギーの中性子に対してこの拡散効果は顕著に現れる。このために低エネルギー領域の中性子に対してエネルギー分布の測定が困難になる。以上二つの課題を本発明により解決する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、減速材構造を工夫することにより、減速型中性子スペクトル測定器の低エネルギー領域の中性子に対するエネルギー測定性能を改善するものである。性能の改善にあたり、測定器に入射した低エネルギー領域の中性子が減速されて熱中性子になる位置の差を大きく拡げること、及び減速されて熱中性子となった中性子の減速材中での拡散効果を抑制することの二点を実現するような工夫を行った。
【0007】
具体的には低エネルギー領域の中性子において熱中性子にまで減速される位置の差を拡げるため、測定器の中性子入射面側に通常用いられるポリエチレンやパラフィン減速材よりも水素密度が低い(中性子の減速性能が低い)減速材を用いる。同時に高エネルギー領域の中性子に対する減速性能を確保するため、反対側の減速材にはポリエチレンやパラフィン等の水素密度が高い(中性子の減速性能が高い)物質を用いる。熱中性子の拡散効果に関しては、減速材中に熱中性子吸収材(カドミウム、ホウ素など)を設置することにより抑制する。
【0008】
熱中性子吸収材形状の決定に際して、あらかじめ減速材に入射した中性子が熱中性子に減速される位置の分布を入射する中性子のエネルギー毎に計算しておく。そして計算で求められた熱中性子の減速材中での入射軸方向及び径方向の分布形状より熱中性子吸収材の形状を決定する。
【0009】
即ち、本発明は、中性子減速材中に位置敏感型熱中性子検出器を配置した、様々なエネルギーを持つ中性子が存在する放射線場で中性子エネルギー分布を測定する減速型中性子スペクトル測定器において、前記減速材の中性子入射面側の一部を水素密度が低く、中性子の減速性能の低い物質に置き換えて、低エネルギー領域の中性子が熱中性子に変換される位置の差を拡大することにより、更に減速材中に熱中性子吸収材を配置して熱中性子の拡散を抑制することにより、熱中性子への変換位置を感度よく測定できることを特徴とする測定器の減速材構造である。
【0010】
【発明の実施の形態】
減速型中性子スペクトル測定器は図1に示すような円柱形の中性子減速材の中心に位置敏感型熱中性子検出器を配し、減速材中での熱中性子分布の測定を可能にしたものである。そして、測定器に入射する中性子のエネルギーにより減速材中における熱中性子分布の形状が変化することを利用して中性子エネルギーの測定を行う。
【0011】
本発明では、上記減速型中性子スペクトル測定器に関して、減速材構造の工夫を行うことにより、低エネルギー領域の中性子でのエネルギー測定性能を向上させる。減速材構造の工夫箇所は以下の二点である。
【0012】
ポリエチレンやパラフィンなど水素密度の高い物質では低エネルギー領域の中性子に対する減速性能の差が小さいために、入射中性子が熱中性子に減速される位置の差が小さくなり、結果として、測定される熱中性子分布の形状の変化が小さく、エネルギー測定が困難となる。
【0013】
この解決策としてポリカーボネートなどポリエチレン等と比べて水素密度の低い物質を減速材として用いて、低エネルギー領域の中性子に対する減速性能の差を拡げることが考えられる。ところが、減速材全体を水素密度の低いポリカーボネートのような物質に変えてしまうと、高エネルギー領域の中性子に対して十分な減速性能を得ることができなくなる。そこで、本発明の測定器では、ポリカーボネート減速材(中性子入射側)とポリエチレン減速材とを組み合わせることにより、高エネルギー領域の中性子に対する減速性能を確保しつつ、低エネルギー領域の中性子の減速性能の差を拡げるような減速材構造を実現した。
【0014】
減速されて熱中性子となった中性子は減速材中で比較的長い距離を拡散により移動し、熱中性子となった位置と熱中性子検出器で測定される位置をばらつかせてしまう拡散効果が起こる。そこで、減速材中に熱中性子吸収材を設置し、拡散による熱中性子を選択的に除去することにより、拡散効果を抑制する。これにより、拡散効果が顕著になる低エネルギー領域の中性子に対するエネルギー測定性能を向上させる。熱中性子吸収材の形状に関しては、あらかじめ減速材に入射した中性子が減速されて熱中性子となる位置を計算しておき、その結果より最適な形状を求める。
【0015】
【実施例】
中性子減速材として一般的によく用いられるポリエチレン減速材のみを用いた場合、つまり本発明による減速材構造の工夫を行わなかった場合について、何種類かのエネルギーの中性子を測定したときの測定器からの出力をシミュレーション計算した結果を図2に示す。エネルギーにより測定器出力の形状が異なっているほど、エネルギーの測定性能が高いということを表しているが、100keV以下のエネルギー領域では形状の差がほとんどなく、エネルギー測定性能が良くないことがわかる。
【0016】
そこで、図3に示すように100cmある減速材のうち、中性子入射側40cmの減速材をポリエチレンよりも水素密度が低く、中性子減速性能の低いポリカーボネートに置き換え、残りの60cmの減速材をポリエチレンとした。そして、減速材中に熱中性子吸収材(本発明の実施例ではカドミウムを用いた)を設置するなど、本発明による減速材構造の工夫を施した場合についてのシミュレーション計算を行った。
【0017】
熱中性子吸収用カドミウム板の形状に関しては以下の要領で決定した。あらかじめ、中性子が減速材中で減速され、どの位置で熱中性子となったかを様々な入射中性子エネルギーについて計算を行う。そして入射軸方向の熱中性子分布のピーク位置と径方向の熱中性子拡がりとの相関をとり、図4に示すようなグラフを作成する。グラフより減速材中に設置する熱中性子吸収用カドミウム板の形状を決定する。図5に示す本発明による工夫を施した測定器の出力の計算結果を見ると、本発明による減速材構造の工夫を行わなかった第2図の結果と比べて100keV以下の入射中性子エネルギーに対する熱中性子分布形状に差異が観測されている。このことから、本発明により低エネルギー領域の中性子に対するエネルギー測定性能が向上することがわかる。
【0018】
【発明の効果】
中性子入射側の一部の減速材をポリエチレンから水素密度が低く、中性子減速能の低い物質に変えることにより入射中性子のエネルギーによる減速材中における熱中性子束分布形状の差を拡げることができる。
【0019】
また、減速材中に熱中性子吸収材を減速材に中性子を入射したときの熱中性子束分布形状に応じた形状で設置することにより、位置情報の確度を低下させ、エネルギー測定性能を悪くする要因となる熱中性子の拡散を抑制できる。
【0020】
これらの構造により減速型中性子スペクトル測定器で大きく感度を低下させることなく熱中性子分布形状の中性子エネルギーによる差を大きくし、より低エネルギーの中性子にまでエネルギー測定性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の減速型中性子スペクトル測定器の構造を示す図である。
【図2】 従来の中性子減速材として単純なポリエチレン減速材を用いた場合の測定器出力の各エネルギーの中性子に対する計算結果を示す図である。
【図3】 本発明による減速材構造の工夫を行った減速型中性子スペクトル測定器の構造を示す図である。
【図4】 本発明の減速材中に設置する熱中性子吸収材形状の決定例を示す図である。
【図5】 本発明の減速材構造にした場合の減速型中性子スペクトル測定器出力の各エネルギーの中性子に対する計算結果を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図3】
4