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明細書 :透明酸化イットリウム焼結体の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第2939535号 (P2939535)
公開番号 特開平10-273364 (P1998-273364A)
登録日 平成11年6月18日(1999.6.18)
発行日 平成11年8月25日(1999.8.25)
公開日 平成10年10月13日(1998.10.13)
発明の名称または考案の名称 透明酸化イットリウム焼結体の製造法
国際特許分類 C04B 35/50      
FI C04B 35/50
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平09-094670 (P1997-094670)
出願日 平成9年3月28日(1997.3.28)
審査請求日 平成9年3月28日(1997.3.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591030983
【氏名又は名称】科学技術庁無機材質研究所長
発明者または考案者 【氏名】池上 隆康
【氏名】斎藤 紀子
【氏名】スリカンス バラナシ
審査官 【審査官】深草 祐一
参考文献・文献 特開 平9-315865(JP,A)
特開 平6-211573(JP,A)
特開 昭63-201061(JP,A)
調査した分野 C04B 35/50
特許請求の範囲 【請求項1】
熱分解で酸化イットリウム粉末となるイットリウム化合物あるいは一次粒子の平均粒径が0.5μm以下の酸化イットリウム粉末と、酸化イットリウムに対して100ppmから4%の範囲の熱分解で酸化カルシウムになるカルシウム化合物あるいは酸化カルシウム粉末を混合し、得られた粉末状混合物から成形体を作成し、該成形体を1400℃から2000℃の範囲で、窒素ガスの分圧を制限した雰囲気で焼成することを特徴とする透明酸化イットリウム焼結体の製造法。

【請求項2】
熱分解で酸化イットリウム粉末となるイットリウム化合物あるいは一次粒子の平均粒径が0.5μm以下の酸化イットリウム粉末と、酸化イットリウムに対して200ppmから10%の範囲の熱分解で酸化ジルコニウムとなるジルコニウム化合物あるいは一次粒子の粒径が1μm以下の酸化ジルコニウム粉末を混合し、得られた粉末状混合物から成形体を作成し、該成形体を1400℃から2000℃の範囲で、窒素ガスの分圧を制限した雰囲気で焼成することを特徴とする透明酸化イットリウム焼結体の製造法。

【請求項3】
酸化カルシウムまたは酸化ジルコニウムと化合して低融点物質となる化合物を添加する請求項1又は請求項2記載の透明酸化イットリウム焼結体の製造法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種放電灯用発光管、超高温用透明炉心管、レーザーホスト材料等に利用が期待されている酸化イットリウム透明焼結体の製造法に関する。

【02】

【従来技術】酸化イットリウムの結晶構造は、光学的に等方的で複屈折がない立方晶であるので、粒界における光の散乱は原理的に無視できる。このため、焼結体のような多結晶体でも、気孔や介在物を完全に取り除くことができると、単結晶と同等の透明性を有する光学材料になりうる。また、融点が約2400℃と高いので、高温材料としても期待されている。しかしながら、融点が高いことは一般に高い温度で焼結するか、焼成と同時に加圧する必要があることを意味する。このため、従来の普通焼結法では、2200℃以上という非常に高い温度で焼成して酸化イットリウム透明焼結体を製造していた。また、焼成中に加圧するホットプレスやHIPの場合、1500℃でも透明化できるが、作業性が悪く大量生産に不向きで、生産コストが非常に高くなるという欠点があった。

【03】
勿論、添加物の緻密化促進効果を利用した透明焼結体の製造法も検討されてきた。この場合、添加物として次の2つの条件を満足する必要がある。第1の条件は、焼成後でも酸化イットリウムに完全に固溶し、かつ光を吸収しない物質であるか、添加物で第2相を形成する場合は、光学的に酸化イットリウムに近い物性を有する物質であること。第2の条件として、焼結の後期段階の緻密化を促進する物質であること。これらの条件を満足する物質として、酸化トリウムが報告されている。しかしながら、この場合でも、透明焼結体を得るために2000℃以上という高温で焼成する必要があった。また、酸化トリウムは僅かではあるが放射性のある物質で、取扱いや使用できる分野が限られるという欠点があった。これらの従来技術の欠点は、市販の酸化イットリウム粉末を利用したことに由来する。すなわち、酸化イットリウム粉末は微細であるとその吸湿性が無視できなくなるので、市販の酸化イットリウム粉末は、流通の間に進行する吸湿を防止するために一般的に大きい。その結果、市販の酸化イットリウム粉末は焼結性が悪く、該粉末を用いて透明焼結体を製造するには、焼結温度を高くする必要があった。

【04】
最近、本発明者らは適切に調製した炭酸イットリウムを仮焼して得た酸化イットリウム粉末は極めて焼結性が良いことを発見した。この発見を基に、添加物を利用することなく焼成温度が1600℃でも透明化できる酸化イットリウム焼結体製造プロセスを開発し、特許として出願(整理番号 9652701)した。この方法は、実験室規模の少量生産では透明性に優れた焼結体を得ることができる。しかしながら、工業的規模で大量生産する場合、良好な透明性の焼結体を製造するには炭酸イットリウムの熟成を厳密に制御する必要がある。実際にはそのような厳密な制御は難しく、透明焼結体製造の歩留まりが悪いという欠点があった。

【05】

【発明が解決しようとする課題】上記の如き従来技術の問題点に鑑み、本発明者は、市販の通常の粉末よりも微細な易焼結性イットリウム酸化物粉末の焼結性をさらに添加物で促進することで歩留まりよく透明な焼結体を得るべく種々検討した結果、本発明を完成したもので、本発明の目的は、従来の製造方法よりも低コストで、しかも製造条件の厳密な制御が要求されることなく酸化イットリウム透明焼結体を製造する方法を提供する。

【06】

【課題を解決するための手段】本願請求項1の発明の要旨は、熱分解で酸化イットリウム粉末となるイットリウム化合物あるいは一次粒子の平均粒径が0.5μm以下の酸化イットリウム粉末と、酸化イットリウムに対して100ppmから4%の範囲の熱分解で酸化カルシウムになるカルシウム化合物あるいは酸化カルシウム粉末を混合し、得られた粉末状混合物から成形体を作成し、該成形体を1400℃から2000℃の範囲で、窒素ガスの分圧を制限した雰囲気で焼成することを特徴とする透明酸化イットリウム焼結体の製造法であり、請求項2の発明の要旨は、熱分解で酸化イットリウム粉末となるイットリウム化合物あるいは一次粒子の平均粒径が0.5μm以下の酸化イットリウム粉末と、酸化イットリウムに対して200ppmから10%の範囲の熱分解で酸化ジルコニウムとなるジルコニウム化合物あるいは一次粒子の粒径が1μm以下の酸化ジルコニウム粉末を混合し、得られた粉末状混合物から成形体を作成し、該成形体を1400℃から2000℃の範囲で、窒素ガスの分圧を制限した雰囲気で焼成することを特徴とする透明酸化イットリウム焼結体の製造法である。そして、これらの発明において、酸化カルシウムまたは酸化ジルコニウムと化合して低融点物質となる化合物を添加することによって焼結体の透明性をさらに向上させることができた。

【07】

【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
(A)酸化イットリウム粉末の製造
この発明に用いる酸化イットリウムを生成するイットリウム化合物は、水酸化イットリウム、炭酸イットリウム、蓚酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム等が例示される。仮焼後に酸化イットリウム粉末となるイットリウム化合物であるならば、特にその種類に制限はない。これらの中で、水酸化イットリウム、炭酸イットリウム、蓚酸イットリウムを仮焼して得た酸化イットリウム粉末の凝集粒子は非常に脆弱で、成形の際に粒子を均一に充填できるので特に好ましい。それ以外の化合物であっても、仮焼後に酸化イットリウム粉末の一次粒子の粒径が0.5μm以下であれば、塩の種類や仮焼温度等に特に限定されない。一般に、強固な凝集粒子は実質上一次粒子として振るまう。例えば、硫酸イットリウムや硝酸イットリウム等を通常の方法で仮焼すると、大きくて強固な凝集粒子を生成する。この場合、仮焼して得た粉末の凝集粒子をボールミル等で粉砕する必要がある。この発明に用いる酸化イットリウム粉末は、粒径が0.5μm以下であれば、市販の粉末でよい。また、上で例示した各種イットリウム化合物を仮焼して得ても良い。

【08】
(B)添加物の効果
この発明に用いる熱分解で酸化カルシウムとなるカルシウムの化合物として、水酸化カルシウムや炭酸カルシウムが例示される。仮焼後に酸化カルシウムに変化する化合物であるならば、その種類に特に制限はない。酸化イットリウムに対して100ppm以上の酸化カルシウムとなるカルシウム化合物を添加すると酸化イットリウムは透光性を発現する。1000ppmから2%の範囲の添加で極めて透光性の良い焼結体を得ることができるので特に好ましい。添加量が2%を越えると添加効果は低下し4%以上を添加すると該添加効果は消失する。この発明で使用する酸化カルシウム粉末は、金属カルシウムを燃焼して得てもよい。また、カルシウム化合物を熱分解・仮焼して酸化カルシウム粉末を得てもよい。酸化カルシウムは大気中の水蒸気と容易に反応して水酸化カルシウムになる。該水酸化物は仮焼あるいは焼成時に熱分解して微細な酸化カルシウムに変化するので、添加時の酸化カルシウムは比較的大きくてもよい。この発明で用いる熱分解により酸化ジルコニウム粉末を生成するジルコニウム化合物としてオキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等が例示される。仮焼により酸化ジルコニウムに変化する化合物であるならば、その種類に特に制限はない。

【09】
本発明で使用する酸化ジルコニウム粉末は、上記のジルコニウム化合物を仮焼して得る。酸化イットリウム中のジルコニウムイオンの拡散係数は小さいので、使用する酸化ジルコニウム粉末の粒径が1μm以上になると、焼結後でも未反応の酸化ジルコニウム粒子が残る。これは光の散乱源となるので好ましくない。酸化イットリウムへの酸化ジルコニウムの固溶量は非常に大きい。そのため、酸化イットリウムの焼結を促進するには、酸化カルシウムに比べて多量の酸化ジルコニウムを添加する必要がある。透明な酸化イットリウム焼結体を得るには、酸化イットリウムに対して200ppm以上の酸化ジルコニウム粉末あるいは酸化ジルコニウムとなるジルコニウム化合物を添加する必要がある。500ppmから3%の範囲の酸化ジルコニウムに相当するジルコニウム化合物を添加すると極めて透光性の良い焼結体を得ることができる。該添加量が3%を越えると添加効果は次第に低下し、10%以上になると添加効果は消失する。この発明において、請求項1と請求項2で限定される量の酸化カルシウムや酸化ジルコニウムは予め不純物として存在していても、最終的に存在するそれらの量が請求項の条件を満足するならば、好ましい結果が得られる。また、それらが請求項1や請求項2で限定される範囲内の量であれば、共存していてもよい。

【10】
本発明の酸化カルシウムや酸化ジルコニウムと化合して低融点物質となる化合物とは、酸化珪素や酸化硼素、酸化ナトリウム等のアルカリ金属の酸化物または仮焼して酸化珪素や酸化硼素、アルカリ金属の酸化物になる化合物で代表される化合物をいう。これらの物質が存在すると、酸化カルシウムや酸化ジルコニウムと反応してガラスなどの低融点物質を生成し酸化イットリウムの焼結性を促進する。結果として透明性は向上する。該化合物が透明性を向上させる効果は、該化合物と酸化カルシウムや酸化ジルコニウムと共存する場合に発現する。これらの化合物は酸化イットリウムに対して10ppmでも十分に酸化イットリウムの焼結性を促進する。しかしながら、その焼結体の高温強度を低下させる原因となるので、実用的には、該化合物は重量%として1%以下に制限する必要がある。これらの化合物は、添加物として新たに加えるものばかりでなく、不純物としてあらかじめ酸化イットリウムやカルシウム化合物、ジルコニウム化合物などに存在していたものでも、本発明の効果を発揮する。本発明では、酸化カルシウム粉末や酸化ジルコニウム粉末、酸化珪素粉末等を混合したあとや、あるいは、イットリウム化合物やカルシウム化合物、ジルコニウム化合物、珪素化合物等を混合し仮焼したあとで、ボールミル等で十分に混合すると、酸化イットリウム粉末と添加粉末が均一に混合するので好ましい。

【11】
(C)仮焼
本発明では粉末状混合物より成形体を得る前に、予め粉末状混合物を必要に応じて仮焼する。即ち、酸化物粉末のみの組み合わせ以外の方法で原料を調合する場合、適当な温度で仮焼して予め酸化物粉末にする必要がある。仮焼温度が低いと、熱分解により生成した酸化物粉末の結晶子は極めて微細で、酸化物粉末の充填性が悪い。そのような粉末を成形して得た圧粉体中の密度は微細領域毎に異なる。充填密度の疎らなところは、焼結途中で大きな空孔となる。そのような空孔は実質上焼結で取り除くことはできない。検討の結果、700℃以上で仮焼すると、充填で問題となる微細な粉末は実質上無くなる。該化合物の酸化物への熱分解温度が700℃よりも高い場合、該化合物の熱分解温度以上で仮焼すると、熱分解直後に発生する極めて微細な酸化物の核は仮焼中に成長して、充填を阻害する微細粒子は消失する。一方、仮焼温度が1300℃以上になると、仮焼段階で酸化物粉末の粒成長が進み、焼結性が低下するので好ましくない。酸化物粉末のみを用いる場合、酸化物粉末を混合したのちに仮焼することは必ずしも必要でない。しかしながら、酸化物粉末の製造履歴によっては仮焼する方が好ましいことがある。仮焼は、単に焼結性の良い酸化物粉末を得るために行う。このため、焼成時のように雰囲気ガスが焼結体に残ることはないので、仮焼雰囲気は特に制限されない。

【12】
(D)成形
成型法として、乾式成形や鋳込み成形、押し出し成形などがある。成形体の密度分布が広くない限り、この発明の効果が成形方法により制限を受けることはない。
(E)焼成
非常に焼結性の良い酸化イットリウム粉末に酸化カルシウムや酸化ジルコニウムを添加してさらに焼結性を改善すると、焼結温度が1400℃以下でもほぼ理論密度まで緻密化した焼結体を製造できる。しかしながら焼結温度がそのように低いと粒成長が不十分で、実際の焼結体の透光性は低い。このため本課題を解決するためには1400℃以上で焼結する必要がある。勿論、焼成温度が高くなるほど粒成長は進み、透光性は増す。しかしながら、1600℃以上になると焼成温度の上昇の割には、透光性が改善される割合は小さくなる。以上の理由で、ここでの発明は1600℃以上で焼成することが好ましい。一方、焼成温度が2000℃以上になると、焼結温度に関して従来法との有為差が無くなる。

【13】
(F)焼成雰囲気
酸化イットリウム中を実質的に拡散しない窒素原子やアルゴン原子などの原子半径の大きい不活性ガスを多量に含む雰囲気で焼成すると、それらのガスは焼結体中に気泡として残るので好ましくない。これらのガスの中で、窒素ガス以外のガスは大気中に殆ど含まれていないので、工業的に問題になることはない。窒素ガスは大気中の8割を占めるので、雰囲気中の窒素ガス量を減らす工夫が必要である。勿論、雰囲気中の窒素ガス量が少ないほど緻密化には好ましい。それ故、大気を水素ガスあるいは酸素ガスで置換するか、大気を追い出して真空雰囲気にすることが好ましい。しかしながら、透明焼結体を製造する実際のプロセスでは、緻密化を阻害するガスを雰囲気ガスから完全に除去する必要はなく、約1/3気圧以下に制限すれば好ましい結果を得ることができる。

【14】

【実施例及び比較例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明の効果はこれらに制限されることはない。
実施例1
市販の微細酸化イットリウム粉末(比表面積が14M2/g)10gをエチルアルコールに分散する。マグネチックスターラーで撹拌しているこの分散液に、エチルアルコールに分散した平均粒径が0.5μmの酸化カルシウム粉末を酸化イットリウムに対して0.3%加える。撹拌しながら加熱してエチルアルコールを蒸発させる。乾燥体をアルミナ乳鉢で軽くほぐして、金型を用いて30MPaで一次成形してから、200MPaで静水圧プレスし、成形体を作成する。該成形体を真空電気炉に入れて、10-5トール以上の高真空になったのち、1700℃まで10℃/minの速度で昇温し、その温度に1時間保持する。その後、15℃/minの速度で冷却し、炉内が室温近くになってから試料を取り出す。水を用いたアルキメデス法で焼結体の密度を測定したところ、理論密度に非常に近い値を得た。また、波長が500nmの光に対する厚さが1mmの焼結体の直線透過率は約40%であった。
比較例1
酸化カルシウム粉末を加えることなく実施例1の手順にしたがい無添加酸化イットリウム粉末の圧粉体を作成し、焼結する。得られた試料の相対密度は理論密度の98%で、焼結体は乳白色であった。

【15】
実施例2
20gの硝酸イットリウムを300mlの蒸留水に溶解したのち、ヒーター付きのマグネチックスターラーで撹拌しながら約90℃に加熱する。この溶液に1規定のアンモニア水をpHが8になるまで滴下して3時間保持する。ろ過、洗浄後、室温で乾燥する。アルミナ乳鉢で軽くほぐして、その粉末の5gをエチルアルコールに分散する。マグネチックスターラーで撹拌しているこの分散液に、エチルアルコールに分散した平均粒径が0.5μmの酸化カルシウム粉末を酸化イットリウムに対して0.3%加える。撹拌しながら加熱してエチルアルコールを蒸発させる。乾燥体をアルミナ乳鉢で軽くほぐして、アルミナボートに入れ管状電気炉で酸素気流中、1100℃、4時間仮焼する。そののち仮焼粉をアルミナ乳鉢で軽くほぐしたのち、金型を用いて30MPaで一次成形してから、200MPaで静水圧プレスし、成形体を作成する。該成形体を真空電気炉に入れて、10-5トール以上の高真空になったのち、1700℃まで10℃/minの速度で昇温し、その温度に1時間保持する。その後、15℃/minの速度で冷却し、炉内が室温近くになってから試料を取り出す。水を用いたアルキメデス法で焼結体の密度を測定したところ、非常に理論密度に近い値を得た。また、波長が500nmの光に対する厚さが1mmの焼結体の直線透過率は約40%であった。

【16】
実施例3
15gの硝酸イットリウムと0.1gの硝酸カルシウムを100mlの蒸留水に溶解したのち、2モル/lの炭酸水素アンモニウム水溶液を加えてpHを5に調製し沈澱を生成させる。得られた沈澱を良く撹拌しながら1日養生したのち、ろ過する。ろ過した沈澱を蒸留水に分散してからろ過することを4回繰り返して洗浄したのち、室温で乾燥する。乾燥体をアルミナ乳鉢で軽くほぐしたのち、アルミナボートに入れて管状電気炉で1100℃、4時間酸素気流中で仮焼する。仮焼粉を実施例1の方法で成形し、焼結する。得られた焼結体の嵩密度はほぼ理論密度に近く、波長が500nmの光に対する厚さが1mmの焼結体の直線透過率は約60%であった。
比較例2
硝酸カルシウムを加えることなく実施例2の方法で酸化イットリウム焼結体を製造した。波長が500nmの光に対する厚さが1mmのこの焼結体の直線透過率は20%であった。

【17】
実施例4
実施例1や実施例2の方法で、酸化カルシウム粉末の代わりに粒径が27nmの市販の酸化ジルコニウム粉末を酸化イットリウム粉末に対して1%を加えて処理する。水を用いてアルキメデス法で焼結体の密度を測定したところ、非常に理論密度に近い値を得た。波長が500nmの光に対する厚さが1mmの焼結体の直線透過率はそれぞれ40%と50%であった。

【18】
実施例5
実施例3の方法で、0.1gの硝酸カルシウムの代わりに0.2gのオキシ塩化ジルコニウムを用いて硝酸イットリウムとの混合水溶液から炭酸塩を生成し、熟成し、ろ過し、仮焼し、成形する。該成形体を酸素気流中で1650℃、4時間焼成する。得られた焼結体の嵩密度は理論密度に近く、波長が500nmの光に対する厚さが1mmの焼結体の直線透過率は約45%であった。

【19】
実施例6
0.3%の酸化カルシウムばかりでなく100ppmの酸化珪素を同時に添加して実施例1の方法で透明焼結体を作成する。厚さが1mmの焼結体の波長が500nmの光に対する直線透過率は約50%で、実施例1の方法で製造した透明焼結体よりも透光度はよかった。

【20】

【発明の効果】以上述べたように、本発明の方法は従来方法のような厳密な条件を必要とすることなく透明酸化イットリウム焼結体がえられ、また、この焼結体は上記実施例に示されているように、酸化カルシウム或いは酸化ジルコニウムを添加しない場合に比して優れた光透過性を有する。