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明細書 :血液循環補助装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3018161号 (P3018161)
公開番号 特開平10-337325 (P1998-337325A)
登録日 平成12年1月7日(2000.1.7)
発行日 平成12年3月13日(2000.3.13)
公開日 平成10年12月22日(1998.12.22)
発明の名称または考案の名称 血液循環補助装置
国際特許分類 A61M  1/12      
A61M  1/14      
A61M 25/00      
FI A61M 1/12 500
A61M 1/14
A61M 25/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 4
出願番号 特願平09-150563 (P1997-150563)
出願日 平成9年6月9日(1997.6.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1997年6月 発行の「ARTIFICIAL ORGANS,Volume21,Number6」に発表
審査請求日 平成9年6月9日(1997.6.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012648
【氏名又は名称】広島大学長
発明者または考案者 【氏名】渡 正伸
【氏名】福永 信太郎
【氏名】末田 泰二郎
【氏名】松浦 雄一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】稲村 正義
参考文献・文献 特開 平5-161715(JP,A)
特開 平5-161714(JP,A)
特開 平4-200474(JP,A)
特開 平3-198864(JP,A)
調査した分野 A61M 1/10 - 1/14
A61M 25/00
特許請求の範囲 【請求項1】
カテーテル本体と、前記カテーテル本体の外周部に形成され大動脈に挿入されて膨脹および収縮するバルーン部とを具備し、
前記カテーテル本体はその一方の端部において送血孔を形成し、前記カテーテル本体の軸方向に延在し前記送血孔と連通する第1の送血路と、前記バルーン部と連通し前記バルーン部の膨脹または収縮のために気体の導入および排出を行う前記カテーテル本体の軸方向に延在する送脱気路とを有し、
前記カテーテル本体はさらに前記カテーテル本体から分岐した側管を有し、前記側管は前記第1の送血路から分岐し前記側管内で軸方向に延在する第2の送血路有するバルーンカテーテル。

【請求項2】
前記送血路は他方の端部においてPCPS連結ポートと連通し、前記送脱気部はIABPドライビングユニット連結ポートと連通する請求項1記載のバルーンカテーテル

【請求項3】
前記送血路は逆流防止弁を有する請求項1または請求項2に記載のバルーンカテーテル

【請求項4】
前記送脱気路と前記送血路が同心状に形成されている請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル

【請求項5】
前記送脱気路は前記送血路と並列して形成されている請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル

【請求項6】
前記バルーン部は前記送血孔に隣接して設けられている請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は血液循環補助装置に関するもので、詳しくは循環補助用送血路を内蔵した大動脈内バルーンカテーテルに関するものである。

【0002】

【従来の技術】急性心筋梗塞による心原性ショック、人工心肺離脱困難例、開心術後低心拍出症候群、および救急医療における種々の心不全に対する循環補助法として大動脈内バルーンパンピング(Intra Aortic Balloon Pumping)(以下IABPという)は既に一般化しており、心臓の後負荷を減少し、冠動脈血流を増加させて心機能回復に寄与する。しかし、IABPのみでは心機能の回復が困難な重症例も多く、近年、このような重症例に対してIABPと同時に、経皮的心肺補助装置(Percutaneous Cardio Pulmonary Support )(以下PCPSという)を併用することで治療成績の改善が得られつつある。ここで、PCPSとは遠心ポンプ、人工肺、そして脱血路と送血路から構成されるユニットで、脱血した血液に対しガス交換を行い送血路へ送血する簡便な心肺補助装置である。

【0003】
従来、このようなIABPとPCPSとを併用した場合は、優れた循環補助効果を発揮するが、一方、心不全が改善した後の長期予後の観点からは、低酸素脳症という後遺障害が新たな問題として残ってくる場合が多く問題であった。IABPとPCPSを併用した循環補助中において、PCPSにより充分に酸素加された血液が従来の大腿動脈送血では脳を循環しにくいのが低酸素脳症発症の原因の一つではないかと考えられる。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は、前記従来の治療方法における低酸素脳症発症の問題に鑑みてなされたもので、低酸素脳症という後遺障害の発生を防止することのできる大動脈内バルーンカテーテルを提供することを目的とする。

【0005】
IABPとPCPSを併用した循環補助法は、優れた循環補助効果を有するが、脳保護の観点から鑑みると低酸素脳症の予防効果に関しては満足すべき成果が得られていない。

【0006】
本発明はPCPSにより充分に酸素加された血液を有効に脳に循環させるための装置を提供するものである。そのため、本発明は大動脈内バルーンカテーテルにPCPS等の循環補助装置の送血路を内蔵させ、バルーンの先端に送血孔を設けた装置である。IABPとPCPSを併用する際には,このカテーテル1つでIABPカテーテルとPCPSの送血路を代用でき、さらに人工肺で充分に酸素加された血液を弓部大動脈に送り込むことが可能となり、酸素含量の多い動脈血で脳循環を保持することで優れた脳保護効果が得られる装置を提供するものである。さらには,冠動脈にも充分な酸素加血で灌流させ、心機能の回復もさらに改善される装置を提供するものである。

【0007】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のバルーンカテーテルは、カテーテル本体と、該カテーテル本体の外周部に形成され、大動脈に挿入されて膨脹および収縮するバルーン部とを具備し、該カテーテル本体はその一方の端部において送血孔を形成し、カテーテル本体の軸方向に延在し送血孔と連通する送血路を有し、さらに、バルーン部と連通しバルーン部の膨脹または収縮のために気体の導入および排出を行うカテーテル本体の軸方向に延在する送脱気路とを有するバルーンカテーテルである。

【0008】
さらに、このバルーンカテーテルの送血路は、他方の端部においてPCPS連結ポートと連通し、送脱気部はIABPドライビングユニット連結ポートと連通している。また、このバルーンカテーテルの送血路は、逆流防止弁を有することができ、さらに、カテーテル本体は側管を有し、送血路は該側管内へ分岐する構造を有することができるものである。

【0009】
送脱気路は送血路の周囲に同心状に形成することもでき、または送血路と並列に形成することもできる。また、バルーン部は送血孔に隣接して設けることができる。

【0010】

【発明の実施の形態】急性心筋梗塞に起因する心原性ショック、人工心肺からの離脱困難、開心術後低心拍出症候群、および救急医療における種々の心不全等に対してIABPとPCPSを併用した循環補助法を施行する際、主に脳保護の立場からIABP駆動と同時に脳循環を良好に保持することが重要となる。本発明のカテーテルは、PCPSにより供給される酸素飽和度の高い動脈血を弓部大動脈に送血することを可能とし、良好な脳保護効果を発揮する。冠循環に対しても同様の効果をもたらし心機能の回復に貢献する。本発明の実施の態様を以下に図面を参照して説明する。

【0011】
図1に本発明のバルーンカテーテルを示す。基本構造は通常のIABPカテーテルとほぼ同様であるが、カテーテル内に送血路を有することに特徴があり以下の構成を有する。

【0012】
本実施の態様のバルーンカテーテルは、その一部が大動脈に挿入されるカテーテル本体1と、このカテーテル本体1の外周部に形成されカテーテル本体1と共に大動脈に挿入されてIABPの制御により膨脹および収縮するバルーン部2を具備する。カテーテルの先端部はカテーテルの誘導部として機能すると共に送血孔3が形成され、送血孔3からは例えば弓部大動脈などの動脈中にPCPS等の循環補助装置(図示せず)からの酸素飽和度の高い動脈血が供給される。このため、該カテーテル本体1は、一方の端部が大動脈への送血孔3と連通し、他方の端部がPCPS連結ポート4と連通し、上記送血孔3へ酸素飽和度の高い動脈血を動脈に送る送血路5を有する。さらに、該カテーテル本体1は、一方がバルーン部2と連通し他方がIABPドライビングユニット(図示せず)への連結ポート6と連通して、IABPの制御によりバルーン部2を膨脹または収縮させるための気体の導入および排出に使用される送脱気路7とを有する。

【0013】
カテーテル本体1はある程度可撓性を有する材料により形成されることが望ましく、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレートを用いて形成されるが、より好ましくはポリウレタンである。

【0014】
PCPSから供給される酸素飽和度の高い動脈血が送血路5を通り送血孔3から大動脈に送られるが、十分な量の酸素付加血液を送るためには、送血路5の内径はできるだけ大きく形成することが望ましい。血管中に挿入されるカテーテル本体および送脱気路7との構造上の関係から、送血路5の内径は5mm~7mmとするのが好ましい。

【0015】
送血路5および送脱気路7の断面構造の一例を図1の10および11に示す。10および11は例えば図1のx-x´における断面を示す図である。10は送血路5と送脱気路7を同心状に形成した例である。断面構造10の例では送血路5を中心部に配置しているが、逆に送脱気路7を中心部に配置することも可能である。11は送血路5と送脱気路7を並列させた例である。10においては内管と外管は適切な支持構造(図示せず)により互いに固定されている。なお、本発明がかかる形状に限定されるものでないことはいうまでもない。

【0016】
バルーン部2は、例えば膜厚100~200μ程度の薄膜により構成されるが、その材質はある程度の可塑性と硬度を有し生体に対し化学的に安定で、しかも機械的疲労特性に優れた材質である必要から、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーンゴムなどが用いられ、より好ましくはポリウレタンである。バルーン部2の外径は膨脹したときに12mm~17mmであることがが好ましく、長さは200mm~300mmであることが好ましい。バルーン部2はIABPドライビングユニットにより送脱気路7中の気体を介して制御され、心臓の拍動に合わせて膨脹および収縮する。カテーテル本体1とバルーン部2は例えば熱融着あるいは樹脂による接着により行われる。

【0017】
送血路5の所定の位置、例えばPCPS連結ポート4の近くに、血液の逆流防止弁8を配置することができる。例えば、PCPSとIABPを同時に使用した状態からIABPのみの使用に切り換えるような場合に動脈からPCPS側に血液が逆流するのを防止するためである。逆流防止弁の替わりに送血路5を閉止する手段を配置することも可能であるが、逆流防止弁を利用すれば特に外部からの操作を必要としない点で有利である。

【0018】
また、大腿動脈の刺入部以下の虚血防止を目的に、カテーテル本体1の本幹から患者の体外に配置される位置に側管9を設け、例えば大腿動脈に側管9を刺入し側管9の血流でバル-ンカテーテル刺入部以下の大腿動脈の循環が保持できるようにすることもできる。側管9を流れる血液の流量は弓部大動脈への流量より少なくて良いので、側管9の内径を送血路5の内径より小さくすることにより流量を制御できる。通常の使用においては、送血路5の内径5mm~7mmに対し、側管9の内径は1mm~1.5mmとするのが望ましい。側管9はカテーテル本体1と同様の材料で形成され、カテーテル本体1とは例えば熱融着されあるいは接着樹脂を用いて接着される。

【0019】
上記構成により、PCS連結ポート4にPCPS等の循環補助装置の送血路を連結して稼動させることで、カテーテル本体1の先端の送血孔3から弓部大動脈に送血が可能となる。IABPも同時に稼動できる。そして本発明は従来のIABPカテーテルとPCPS用送血路の両者の機能を代行可能である。

【0020】
本発明はPCPSの人工肺で充分に酸素加された血液を弓部大動脈に送り込むことを可能とし、酸素含量の多い動脈血で脳循環を保持し優れた脳保護効果が得られる。さらには冠動脈も充分な酸素加血で灌流されるため、心機能の回復もさらに改善される。

【0021】
また、本発明においてはカテーテル本体1の本幹に設けられた側管9を利用し、刺入部以下の大腿動脈の循環を確保することが可能である。

【0022】
本発明のバルーンカテーテルは、特に、急性心筋梗塞に起因する心原性ショック、人工心肺からの離脱困難、開心術後低心拍出症候群、および救急医療における種々の心不全等に対してIABPとPCPSを併用した循環補助法を施行する場合、IABPカテーテル及びPCPSの送血路として同時に使用可能なカテーテルで、心肺機能回復と共に低酸素脳症の回避を目的として使用する循環補助用送血路を内蔵した大動脈内バルーンカテーテルとしても使用することができる。ここに記載された本発明の実施の態様は単なる一例であり、本発明のバルーンカテーテルは本発明の技術的範囲を逸脱せずに多様に変形することが可能であることはいうまでもない。

【0023】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るバルーンカテーテルによれば、次のような効果を奏する。IABPとPCPSの併用に際してはそれぞれのカテーテルを刺入する必要があったが、本発明により1つのカテーテルで両者を稼動することが可能となり、生体に与える侵襲も軽減される。

【0024】
IABPとPCPSの併用効果に加え、脳循環や冠循環に酸素飽和度の高い動脈血を供給できるため、脳保護効果や心機能の回復が良好である。即ち、脳や心臓に近い弓部大動脈に、PCPSからの酸素飽和度の高い動脈血を直接供給できるため、脳保護効果が高く、心機能の回復もさらに改善される。
図面
【図1】
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