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明細書 :アレーアンテナの較正方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3138728号 (P3138728)
公開番号 特開平10-335921 (P1998-335921A)
登録日 平成12年12月15日(2000.12.15)
発行日 平成13年2月26日(2001.2.26)
公開日 平成10年12月18日(1998.12.18)
発明の名称または考案の名称 アレーアンテナの較正方法
国際特許分類 H01Q  3/26      
G01R 29/10      
FI H01Q 3/26 Z
G01R 29/10
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願平09-157397 (P1997-157397)
出願日 平成9年5月30日(1997.5.30)
審査請求日 平成9年5月30日(1997.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391027413
【氏名又は名称】郵政省通信総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】三浦 龍
【氏名】松本 泰
審査官 【審査官】浜野 友茂
参考文献・文献 特開 平8-222933(JP,A)
調査した分野 H01Q 3/26 - 3/42
G01R 29/10
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間所定の励振分布以外に振幅および位相不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、
既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信し、上記各系統毎に、受信信号が取り出せる出力ポートをもつ場合、上記各系統の受信信号出力に、所定のディジタル信号処理演算を行って出力することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を得ることを特徴とするアレーアンテナの較正方法。

【請求項2】
複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間所定の励振分布以外に振幅および位相不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、
知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、各系統の信号強度に比例し、かつ位相基準となる特定の系統の信号に同相化するための平均的な重みを各系統毎に演算し、この重みに上記所定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力する、
ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法。

【請求項3】
複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、
同時に複数の方向にビームを向けるための第1の空間離散フーリエ変換回路を備え、
既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、第1の空間離散フーリエ変換回路から出力される各ビームの信号強度に比例し、かつ位相基準となるある所定のビームの信号に同相化するための平均的な重みを各ビーム毎に演算し、この重みに第2の空間離散フーリエ変換回路での演算を行うことにより、各ビームに対応した重みから各アンテナ素子に接続された系統に対応した重みに変換し、この重みに上記所定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力する、
ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法。

【請求項4】
複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、
同時に複数の方向にビームを向けるための第1の空間離散フーリエ変換を行う空間離散フーリエ変換回路を備え、
既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、第1の空間離散フーリエ変換で出力される各ビームの信号強度に比例し、かつ位相基準となるある所定のビームの信号に同相化するための平均的な重みを各ビーム毎に演算し、この重みに第2の空間離散フーリエ変換を行うことにより、各ビームに対応した重みから各アンテナ素子に接続された系統に対応した重みに変換し、この重みに上記所定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力するとともに、
上記第1の空間離散フーリエ変換と、上記第2の空間離散フーリエ変換とを行う各回路を同一の空間離散フーリエ変換回路に設け、交互にスイッチで切り換えながら共用するようにした、
ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法。

【請求項5】
請求項4に記載のアレーアンテナの較正方法において、
同時に複数の方向にビームを向けるための空間離散フーリエ変換回路と、
上記空間離散フーリエ変換回路からの出力信号に対し、各出力信号の信号強度に比例し、かつ位相基準となるある所定の信号に同相化するための平均的な重みを演算し上記各信号に乗算して、その乗算した結果を各信号間で合成して受信信号を出力するビーム形成回路とを備え、
既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間において、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を出力するための、空間離散フーリエ変換回路から出力される各ビーム、または上記各系統の信号の強度に比例し、かつ位相基準となるある所定の信号に同相化するための平均的な重みを各信号毎に演算する回路を、上記受信信号を出力するビーム形成回路と交互にスイッチで切り換えながら共用することを特徴とするアレーアンテナの較正方法。

【請求項6】
複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、
それらの不均一性を相殺させる係数を出力する回路と、
各系統毎に準同期検波を行うための局部発振器の振幅と位相を調節できる補正回路とを備えある既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、その不均一性を相殺させるための係数を各系統毎に互いに直交する2つの成分からなるベクトルで表現し、そのベクトルに比例したベクトルを上記局部発振器の初期ベクトルとなるように上記振幅・位相の補正回路を設定することにより、上記単一の信号の近傍にある周波数帯にあって任意の方向から到来する通信信号に対して、各系統間において存在する振幅と位相の上記不均一性を相殺する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアレーアンテナの較正方法。

【請求項7】
複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、
ある既知の方向から到来する任意の変調方式で単一の信号を受信した場合、その出力された不均一性を相殺させるための係数を各系統毎に互いに直交する2つの成分からなるベクトルで表現し、上記ベクトルが各系統間で同一となるように、各系統の局部発振器の振幅と位相を、上記ベクトルに基づいてフィードバック制御することにより、上記単一の信号の近傍に特定の周波数帯にあって任意の方向から到来する通信信号に対して、各系統間において存在する振幅と位相の上記不均一性を実時間で相殺する請求項1に記載のアレーアンテナの較正方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、アンテナの近傍または遠隔から受信した各アンテナ素子の入力信号を、所定のディジタル信号処理演算を行うことにより、所定の励振分布以外に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための係数を得るアレーアンテナの較正方法に関する。

【0002】

【従来の技術】第1の従来例として、”Digital Beamforming for Radar System,MICROWAVEJOURNAL,JAN,1989,p121~p136”に記載されているように、受信アンテナ装置内部にアレーアンテナ較正用の無変調信号源を備え、この較正用信号をアレーアンテナの各アンテナ素子の近傍の給電線に、予め正確な特性がわかっている方向性結合器を経由して注入し、各系統の信号を検波してそれぞれの振幅及び位相の不均一性を測定する方法が開発されている。

【0003】
また、第2の従来例として、”「フェイズドアレイアンテナの素子振幅位相測定法」,電子通信学会誌,’82/5,Vol.J65-DNo.5,p555~p560”に記載されているように、遠方から到来する一定振幅の信号を受信し、アレーアンテナの各アンテナ素子に対応した各系統の位相を1つずつ回転させ、その時のアレーアンテナの全アンテナ素子の合成出力電力を測定し、その軌跡から各系統における振幅と位相の不均一性を検出する方法が開発されている。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】第1の従来例は、十分品質のよい較正用の信号を用いることができるため、精度の高いアンテナの較正ができるという特徴を有するが、較正信号発生用の信号源とその信号を各アンテナ素子の給電線に注入するためのアンテナ素子数分の線路及び方向性結合器など、較正用の高周波部品を予めアンテナ内あるいはアンテナの近傍に装備する必要があり、ハードウェアとしての負担が重い。また、アンテナ素子や反射鏡自体とアンテナ素子から方向性結合器までの線路における振幅・位相の不均一性は検出することができないという問題点があった。

【0005】
第2の従来例は、アンテナ較正用の特別な高周波部品を装備しなくてもアンテナの較正が可能で、アンテナ素子や反射鏡自体を含む全線路における振幅・位相の不均一性を検出できるという特徴を有するが、アンテナ素子が多い場合、各アンテナ素子毎に位相を回転させて合成電力を測定する必要があるため、測定に時間がかかることがあり、また、1アンテナ素子当たりの信号電力が弱い場合、較正精度が十分確保できなくなる恐れがあるという問題点があった。

【0006】
また、第1及び第2の従来例とも、較正専用に周波数を設けるか、あるいは通信を中断して較正を行うための時間を設ける必要があるという問題点があった。

【0007】
本発明は、以上の問題点を解決し、較正用の特別な高周波回路を装備することなく、遠方界より到来する較正用の無変調信号または変調された通信信号を用いて、ディジタル集積回路において、アンテナ素子や反射鏡自体を含むアレーアンテナの各系統の高周波帯あるいは中間周波帯の部分に存在する、所定の励振分布以外の振幅と位相の不均一性を相殺するための係数を高速かつ精度良く検出し、これを用いて通信開始前に、あるいは通信中に実時間で、所定の励振分布以外に存在する各系統間の振幅と位相の不均一性を相殺することができるアレーアンテナの較正方法を得ることを目的とする。

【0008】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信し、上記各系統毎に、受信信号が取り出せる出力ポートをもつ場合、上記各系統の受信信号出力に、所定のディジタル信号処理演算を行って出力することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を得ることを特徴とするアレーアンテナの較正方法を提供する。

【0009】
また、請求項2に記載の発明は、複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、各系統の信号強度に比例し、かつ位相基準となる特定の系統の信号に同相化するための平均的な重みを各系統毎に演算し、この重みに上記所定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力する、ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法を提供する。

【0010】
また、請求項3に記載の発明は、複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、同時に複数の方向にビームを向けるための第1の空間離散フーリエ変換回路を備え、既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、第1の空間離散フーリエ変換回路から出力される各ビームの信号強度に比例し、かつ位相基準となるある所定のビームの信号に同相化するための平均的な重みを各ビーム毎に演算し、この重みに第2の空間離散フーリエ変換回路での演算を行うことにより、各ビームに対応した重みから各アンテナ素子に接続された系統に対応した重みに変換し、この重みに上記所定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力する、ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法を提供する。

【0011】
請求項4に記載の発明は、複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、同時に複数の方向にビームを向けるための第1の空間離散フーリエ変換を行う空間離散フーリエ変換回路を備え、既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、第1の空間離散フーリエ変換で出力される各ビームの信号強度に比例し、かつ位相基準となるある所定のビームの信号に同相化するための平均的な重みを各ビーム毎に演算し、この重みに第2の空間離散フーリエ変換を行うことにより、各ビームに対応した重みから各アンテナ素子に接続された系統に対応した重みに変換し、この重みに上記所定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力するとともに、上記第1の空間離散フーリエ変換と、上記第2の空間離散フーリエ変換とを行う各回路を同一の空間離散フーリエ変換回路に設け、交互にスイッチで切り換えながら共用するようにした、ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法を提供する。

【0012】
また、請求項5に記載の発明は、上記の請求項4に記載の発明の構成に加えて、同時に複数の方向にビームを向けるための空間離散フーリエ変換回路と、上記空間離散フーリエ変換回路からの出力信号に対し、各出力信号の信号強度に比例し、かつ位相基準となるある所定の信号に同相化するための平均的な重みを演算し上記各信号に乗算して、その乗算した結果を各信号間で合成して受信信号を出力するビーム形成回路とを備え、既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間において、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正係数を出力するための、空間離散フーリエ変換回路から出力される各ビーム、または上記各系統の信号の強度に比例し、かつ位相基準となるある所定の信号に同相化するための平均的な重みを各信号毎に演算する回路を、上記受信信号を出力するビーム形成回路と交互にスイッチで切り換えながら共用することを特徴とするアレーアンテナの較正方法を提供する。

【0013】
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の構成に加えて、複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、それらの不均一性を相殺させる係数を出力する回路と、各系統毎に準同期検波を行うための局部発振器の振幅と位相を調節できる補正回路とを備え、ある既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信した場合、その不均一性を相殺させるための係数を各系統毎に互いに直交する2つの成分からなるベクトルで表現し、そのベクトルに比例したベクトルを上記局部発振器の初期ベクトルとなるように上記振幅・位相の補正回路を設定することにより、上記単一の信号の近傍にある周波数帯にあって任意の方向から到来する通信信号に対して、各系統間において存在する振幅と位相の上記不均一性を相殺する、ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法を提供する。

【0014】
さらに、請求項7に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の構成に加えて、複数の受信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、ある既知の方向から到来する任意の変調方式で単一の信号を受信した場合、その出力された不均一性を相殺させるための係数を各系統毎に互いに直交する2つの成分からなるベクトルで表現し、上記ベクトルが各系統間で同一となるように、各系統の局部発振器の振幅と位相を、上記ベクトルに基づいてフィードバック制御することにより、上記単一の信号の近傍に特定の周波数帯にあって任意の方向から到来する通信信号に対して、各系統間において存在する振幅と位相の上記不均一性を実時間で相殺するアレーアンテナの較正方法を提供する。

【0015】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に関わる実施形態について説明する。

【0016】
<アレーアンテナのエレメントスペース較正>
図1は、本発明に関わる第1の実施形態である受信用のアレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実施形態では、4素子のアレーアンテナに1つの無変調または変調された通信信号がある既知の方向から到来している場合、各アンテナ素子1で受信した信号をそのまま用いて、各系統における振幅と位相の不均一性を相殺するための較正係数を演算して出力する。

【0017】
図中、ek(k=1,2,3,4)、(kは各系統の番号)は各アンテナ素子1に接続する高周波帯、中間周波帯のアンテナ素子、給電線、増幅器、フィルタなどから構成される、アンテナ素子1からそれらアンテナ素子1で受信した信号を合成あるいは検波するまでの各系統がもつ振幅と位相の不均一性を複素数で表した係数、A/Dは各系統の高周波帯または中間周波帯のアナログ信号をディジタル信号に変換するためのA/Dコンバータ2を示す。

【0018】
各系統の信号は、A/D変換された後、適当なサイドローブ制御等を行うためのある所定の励振振幅係数ak(k=1,2,3,4)が乗算される。次に、各系統の信号は、アレーアンテナの較正を行うための振幅と位相が各系統毎に個別に制御することが可能なディジタル局部信号発生器3によりディジタル演算の準同期検波回路(Q-DET)4でベースバンド信号に変換され、その後、各系統のベースバンド信号に基づいてekを相殺する較正係数(CAL factor)を演算し出力する。

【0019】
なお、本実施形態では、各系統毎のA/Dコンバータは省略し、準同期検波もアナログで行う構成でも構わない。また、各系統毎の準同期検波は行わず、高周波信号または中間周波信号のままビーム形成や較正係数の演算を行い、較正のために局部信号発生器の振幅と位相を制御する代わりに別途、各系統の振幅と位相を個別に制御する回路を導入した構成でも構わない。

【0020】
本較正装置では、ekを相殺する較正係数(CAL factor)を検出するため、単一の無変調または変調された通信信号を受信した場合の、各系統の準同期検波出力信号または高周波信号あるいは中間周波信号を最大比合成(MRC)回路5に入力する。較正係数の演算中は、準同期検波のための局部信号発生器3あるいは別途導入された振幅と位相の制御回路の振幅と位相は各系統で同じ値に設定する。

【0021】
このとき、最大比合成回路5に入力される各系統のベースバンド信号または振幅と位相で決定される複素数で表現された高周波あるいは中間周波信号sk’は、次のように表される。

【0022】

【数1】
JP0003138728B2_000002t.gif【0023】ただし、kは各アンテナ素子1に接続された各系統の番号(4素子の場合はk=1,2,3,4)、sk,ekは各アンテナ素子1で受信される高周波信号、及び各系統に接続された高周波帯並びに中間周波数帯のコンポーネントがもつ振幅と位相の不均一性を、それぞれ振幅と位相で決定される複素数で表現したものである。

【0024】
また、akはある適当なサイドローブ特性を得るための所定の励振振幅係数(実数)である。一方、sk’を最大比合成するためにsk’に与えられる重みvkは、次式の演算により求められる。

【0025】

【数2】
JP0003138728B2_000003t.gif【0026】ただし、rは最大比合成するために適当に選ばれた同相化の基準となる系統の番号、*は複素共役を表す。すなわち、vkは各系統の信号sk’に比例した振幅をもち、基準となる信号sr’に同相化するための位相差分の位相をもつ重みであることになる。ここで、この重みの位相成分は、受信した信号が情報シンボルによって位相が変化する変調信号であっても、その情報シンボルにはほとんど影響を受けない。実際には、vkは実数部と虚数部とを個別にローパスフィルタに通して雑音や変調に伴う誤差成分を抑圧するが、ここでの説明では簡略を期するため、これを省略している。

【0027】
この最大比合成回路5は、図に示すようなベースバンド帯での処理だけでなく、高周波あるいは中間周波帯での処理でも構わない。すなわち、数式2に数式1を代入すれば、vkは次のように表される。

【0028】

【数3】
JP0003138728B2_000004t.gif【0029】ただし、φkは遠方から到来する単一の信号が各アンテナ素子1に到達した時点での受信位相分布を表し、アンテナ素子1の位置と信号到来方向で決定される。φkは、リニアアレーアンテナの場合、例えば次式で与えられる。

【0030】

【数4】
JP0003138728B2_000005t.gif【0031】ここで、xkはアンテナ素子1の位置を表す座標値、lは受信する搬送波の波長、θはアンテナ正面方向からみた信号の到来角を表す。

【0032】
数式3において、sr’は全系統で共通の係数であり、また各アンテナで受信する信号の振幅は等しいため|sk|も各系統で等しく、その結果、次式に示す比例関係が成り立つ。

【0033】

【数5】
JP0003138728B2_000006t.gif【0034】従って、各系統の高周波帯または中間周波帯のコンポーネントに存在する系統間の不均一性を相殺するための較正係数は、次式で与えられる。

【0035】

【数6】
JP0003138728B2_000007t.gif【0036】したがって、図1に示す通りディジタル演算により、最大比合成回路(MRC)5から出力される各系統に対応した重みに対して係数ak/|vk|2 を乗じ、既知なる信号到来方向とアンテナ素子配置で決まるφkだけベクトル回転させれば較正係数を振幅と位相の情報を含む複素数の形で検出することができる。なお、実際は、MRC5の演算には先に記述したようにローパスフィルタが適用されるため、数式2の演算はある所定の時間だけ繰り返し行い、vkの確度を高めた上で数式6の処理を行う。

【0037】
各アンテナ素子1に接続された各系統で個別に振幅と位相の制御が可能な局部信号発生器3を備えた準同期検波をディジタル演算で行っている場合には、数式6で求められた較正係数を各系統の局部信号発振器3の初期ベクトルとすることにより、各系統の高周波帯または中間周波帯に存在する振幅と位相の不均一性は相殺され、アレーアンテナは較正される。なお、準同期検波回路4がアナログの場合においても、別の手段により、局部発振器3の振幅と位相を較正係数を用いて制御することが可能ならば、同様に較正できる。

【0038】
さらに、高周波帯あるいは中間周波帯で振幅と位相を制御する別の機構を各系統毎に用意して、これにより求められた較正係数を適用して較正する方法でも構わない。

【0039】
較正係数が適用された後は、未知の方向から到来する場合も含む較正用に受信した信号の近傍の周波数帯における任意の通信信号を受信し、この時の最大比合成回路出力は、そのまま到来信号の方向に自動的に正しくビームが向けられたアレーアンテナの受信信号として、そのあとに続く復調等に利用できる。

【0040】
なお、較正係数の適用された準同期検波出力または高周波あるいは中間周波出力を最大比合成回路に入力せず、別に用意した任意のビーム形成回路に入力しても構わない。さらに、較正係数が適用された後に、任意の方向から到来する通信信号に対して演算される各アンテナ素子1に接続した各系統に対応した重みvkは、ekが相殺されているため、次式となる。

【0041】

【数7】
JP0003138728B2_000008t.gif【0042】数式7は、k番目のアンテナ素子1に到達した受信信号が位相基準となるアンテナ素子1に到達した受信信号に比べてφkだけ位相が進み、しかもある所定のサイドローブ特性を得るための励振振幅がakである場合、位相φkだけ遅らせ、かつ同じ励振振幅akを乗ずる重みとなっている。

【0043】
したがって、vkをそのままあらかじめ別の手段により較正された送信アレーアンテナのビーム形成用のための、各アンテナ素子1に接続した各系統の重みとして適用すれば、送信アレーアンテナが受信アレーアンテナと波長からみて同じ配置並びに素子間隔であるならば、受信信号が到来した方向に自動的に送信ビームを向けることができる。

【0044】
なお、送信アレーアンテナが受信アレーアンテナと波長からみて同じ配置並びに素子間隔でない場合でも、適当なアンテナ素子配置及び送受周波数を考慮した処理を行うことにより、同様に受信信号の到来方向に送信ビームを向けるための重みを演算することができる。

【0045】
本実施形態は、受信信号の強度が比較的強く、信号対雑音電力比が比較的大きい場合に適用可能であり、演算処理の規模が小さく済むという特徴をもつ。また本実施形態では、アレーアンテナの各アンテナ素子1で直接電波を受信する場合を想定したが、アンテナが広い面積の反射鏡等を備え、これを介してアレーアンテナで受信する場合にも有効で、その場合は反射鏡の鏡面誤差なども含めて較正することが可能である。

【0046】
<マルチビームアンテナのビームスペース較正>
図2は、本発明に関わる第2の実施形態である受信用のアレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実施形態では、4素子からなり、複数の方向に同時に互いに直交するマルチビームを向けることが可能なアレーアンテナに1つの無変調または変調された通信信号がある既知の方向から到来している場合において、アンテナ素子1からそれらアンテナ素子1で受信した信号を合成あるいは検波するまでの各系統に存在する振幅と位相の不均一性を相殺するための較正係数を演算して出力する。

【0047】
図中のアンテナ素子1から準同期検波回路(Q-DET)4までの構成は第1の実施形態と同じである。本実施形態では、その準同期検波出力信号をマルチビーム形成を行うための空間離散高速フーリエ変換(FFT)回路8に入力し、その出力、すなわちマルチビーム信号bn(nはFFT出力ビームの番号)に対してビーム合成演算を行い、到来信号方向に自動的にビームを向けてアレーアンテナ出力を得る構成をとっている。

【0048】
なお、FFT回路8は、空間離散フーリエ変換(DFT)回路であっても構わない。また、本実施形態においても、各系統毎のA/Dコンバータ2は省略し、準同期検波回路4もアナログで行う構成でも構わない。さらに、各系統毎の準同期検波は行わず、高周波信号または中間周波信号のままバトラマトリクス等に代表されるアナログのマルチビーム形成や較正係数出力を行い、較正のために局部信号発生器3の振幅と位相を制御する代わりに別途、各系統の振幅と位相を個別に制御する回路を導入した構成でも構わない。

【0049】
本較正装置では、ekを相殺する較正係数(CAL factor)を検出するため、単一の無変調または変調された通信信号を受信した場合のFFT出力ビームを最大比合成回路(MRC)5に入力する。較正係数の検出中は、準同期検波のための局部信号発生器3あるいは別途導入された振幅と位相の制御回路の振幅と位相は各系統で同じ値に設定する。このとき、n番目のFFT出力ビームbnは複素数により次式で表される。

【0050】

【数8】
JP0003138728B2_000009t.gif【0051】
【数9】
JP0003138728B2_000010t.gif【0052】ただし、mはアンテナ素子数(本実施形態の場合は4)である。このビームに対して最大比合成を行う場合に、各ビームにかかる重みは次式で表される演算によって求められる。

【0053】

【数10】
JP0003138728B2_000011t.gif【0054】ただし、rは最大比合成のための位相基準となるビームの番号である。位相基準となるビームは信号品質が高い方がよいため、FFT出力ビームの中から最も強度の大きいビームを選ぶ。実際には第1の実施形態と同様に、最大比合成の演算にはローパスフィルタが適用され、数式10の演算は所定の時間だけ繰り返して次の処理に移る。すなわち、数式8を数式10に代入すれば次式を得る。

【0055】

【数11】
JP0003138728B2_000012t.gif【0056】ここで、br・Sk*・ek*・ak をvkとおいて、数式11の逆フーリエ変換式を表すと、次式のようになる。

【0057】

【数12】
JP0003138728B2_000013t.gif【0058】このvkは、第1の実施形態において数式3で求められたvkのsr’をbrで置き換えただけのものであり、結局、数式12は、FFT出力ビームを最大比合成するために各ビームにかけられる重みを、各アンテナ素子1に接続された各系統の信号を最大比合成するために各信号にかけられるべき重みに変換する演算を与えることになる。

【0059】
数式12は、wnにもう1度FFTの演算を施すことによりvkが求められることを意味している。なお、マルチビームを形成する回路がFFT回路8ではなく、DFT回路か、あるいは、それらに等価なアナログ回路の場合、それと同じ処理をする演算回路を較正係数出力回路にFFT回路の代わりに導入する構成をとることとしても構わない。

【0060】
後は第1の実施形態と同様にvkに対してak/|vk|2 を乗じ、信号到来方向及びアンテナ素子1の配置で決まる位相分布φkだけ各系統毎にベクトル回転演算をすることで較正係数を求めることができ、またこれを利用してアレーアンテナを較正することができる。さらに、較正がなされた後のvkを送信ビーム形成用の重みとして利用することができる。

【0061】
本実施形態は、演算処理の規模が比較的大きくなるが、アレーアンテナの素子数が多く、かつ1素子当たりの信号対雑音電力比が小さい場合に、アレーアンテナの高い利得を有効に利用した較正並びビーム形成が可能であるという特徴を有する。また第1の実施形態と同様、本実施形態では、アレーアンテナの各アンテナ素子1で直接電波を受信する場合を想定したが、アンテナが広い面積の反射鏡等を備え、これを介してアレーアンテナで受信する場合にも有効で、その場合は反射鏡の鏡面誤差なども含めて較正することが可能である。

【0062】
<単一指向性アレーアンテナのビームスペース較正>
図3は、本発明に関わる第3の実施形態である受信用のアレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実施形態では、4素子からなり、任意の単一の方向にビームを向けることが可能なアレーアンテナに、単一の無変調信号がある既知の方向から到来している場合において、アンテナ素子1からそれらアンテナ素子1で受信した信号を合成あるいは検波するまでの各系統に存在する振幅と位相の不均一性を相殺するための較正係数を演算して出力する。

【0063】
本実施形態におけるアンテナは、各アンテナ素子1に接続された各系統毎に高周波帯あるいは中間周波帯において、移相器10並びに可変利得増幅器11あるいは可変減衰器を備え、高周波帯あるいは中間周波帯のままで各系統の信号を合成したのち、これをA/Dコンバータ(図示せず)によりディジタル信号に変換して出力する構成を想定している。

【0064】
なお、上記移相器10並びに可変利得増幅器11あるいは可変減衰器は、各系統毎に個別に振幅と位相を制御することが可能な局部発振器、並びに準同期検波回路で置き換え、ベースバンドで各系統の信号を合成する構成であっても構わない。また、較正係数出力回路は受信アンテナの近傍であってもよいし、受信アンテナの合成出力信号さえ別の手段によって得られれば、受信アンテナから離れた場所にあってもよい。

【0065】
本較正装置では、ekを相殺する較正係数(CAL factor)を検出するため、既知の方向から到来する単一の無変調信号を受信した場合において、初めに各系統の移相器を制御し、信号の到来方向に最も近い方向にビームを向け、その時の全系統の合成受信信号の周波数に、別途用意したアナログまたはディジタル演算による基準信号発生器13の周波数を調整して一致させ、この時の基準信号をbrとする。

【0066】
次に、各系統の移相器10を制御し、アンテナのビームを空間離散フーリエ変換で形成されるであろうマルチビームの全ての方向に順次向けていき、各方向における合成受信信号bnと上記基準信号brとの間で、数式10、数式12並びに数式6の演算を行うことにより、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に較正係数を求めることができ、またこれを利用してアレーアンテナを較正することができる。

【0067】
本実施形態は、ディジタル信号処理でビームを形成する方式のアレーアンテナのみでなく、アナログで高周波あるいは中間周波領域の信号を合成する方式の従来型のフェーズドアレーアンテナにおいても適用が可能であるという特徴をもっている。

【0068】
また、アレーアンテナの合成出力信号さえ得られればよいため、較正信号出力回路をアンテナから離れた位置に設置せざるを得ない場合にも適しており、例えば、任意の方向に単一の指向性を形成することが可能なアナログ方式のフェーズドアレーアンテナが衛星上に搭載されている場合、アレーアンテナの受信信号をそのまま地上局に折り返して受信し、地上から衛星上の移相器10を制御しながら衛星搭載アレーアンテナの較正係数を演算して得ることが可能である。

【0069】
この時、アレーアンテナの高い利得を活用しながら較正係数の演算が行えるため、アンテナ素子数が多く、1素子当たりの受信電力が小さい場合でも精度の高い較正が可能となる。

【0070】
また、第1、第2の実施形態と同様に、本実施形態では、アレーアンテナの各アンテナ素子で直接電波を受信する場合を想定したが、アンテナが広い面積の反射鏡等を備え、これを介してアレーアンテナで受信する場合にも有効で、その場合は反射鏡の鏡面誤差なども含めて較正することが可能である。

【0071】
<FFT回路及びMRC回路の共用>
図4は、本発明に関わる第4の実施形態である受信用のアレーアンテナの較正装置のブロック図である。この図の例においては、4素子からなり、複数の方向に同時に互いに直交するマルチビームを向けることが可能なアレーアンテナに1つの無変調または変調された通信信号がある既知の方向から到来している場合において、アンテナ素子1からそれらアンテナ素子1で受信した信号を合成あるいは検波するまでの各系統に存在する振幅と位相の不均一性を相殺するための較正係数を演算して出力する。

【0072】
本実施形態では、較正係数出力機能は第2の実施形態と同一であるが、ビーム形成回路9は全てディジタル信号処理によって構成されていることを前提としている。その前提のもとで、FFT回路8をビーム形成の目的と、較正係数出力の目的の両方で共用し、信号処理回路の規模を節約している。

【0073】
また、ビーム形成方法として、FFT回路8の出力信号の中から強度の大きいビームをビーム選択回路(SEL)16において複数選択し、位相中心シフト回路(Phase center shift)17によって、FFTにおいて偏った、それら選択されたビームの位相中心をアンテナの幾何学的中心に移し、その出力ビームの間でディジタル演算に基づく最大比合成をすることによってアレー合成出力信号を得る方法をとっている。

【0074】
この方法は、自動的に到来信号の方向にアンテナのビームを向け、これを追尾する機能を実現する。この場合、MRC回路5もビーム形成用と較正係数出力用で共用し、上記FFT回路8の共用と併用すれば、信号処理回路の規模を大幅に節約することが可能となる。上記FFT回路8とMRC回路5を共用するため、本実施形態においてはアルゴリズム内のFFT前段において信号経路を切り換えるスイッチ(SW)15を備えている。また、較正係数演算時にビーム形成用のビーム選択回路16と位相中心シフト回路17をスキップするための制御を行っている。

【0075】
本実施形態における較正装置の動作手順は次の通りである。
1.準同期検波(Q-DET)出力信号をFFTに接続する。
2.ビーム形成用の空間離散フーリエ変換を行い、bnを得る。
3.較正係数演算中は、ビーム選択回路(SEL)16及び位相中心シフト回路(Phase center shift)17はスキップし、FFT出力を全ビームとも最大比合成回路(MRC)5に直接入力する。
4.MRC5の重み演算は内部のローパスフィルタにより、受信信号サンプルが増えるにしたがって、その確度を高めていくため、ある適当なサンプル数だけMRC5の重み演算を繰り返す。
5.FFT前段のSW15をQ-DET4からMRC5側に切り換え、MRC5の重み出力wnをFFT回路8に入力する。
6.そのFFT回路出力として、各アンテナ素子1に接続された各系統に対応した重みvkが得られる。
7.数式6にしたがって較正係数(CAL factor)が得られる。

【0076】
較正係数がQ-DET4の局部信号発生器3に適用された後は、任意の方向から到来する通信信号に対して、FFT前段のスイッチ15がQ-DET4に接続している時に同時にビーム選択回路16と位相中心シフト回路17を動作可能にすれば、MRC5の合成出力として、通信信号の到来方向に向けられたアレーアンテナのビームによる受信信号が得られる。

【0077】
さらに、送信ビーム形成のための重みを得る必要がある場合には、MRC5から出力される重みの空間離散フーリエ変換が引き続き必要となるため、次の手順を繰り返す。
1.準同期検波(Q-DET)4出力信号をFFT8に接続する。
2.ビーム形成用の空間離散フーリエ変換を行い、bnを得る。
3.ビーム選択回路16、位相中心シフト回路17を動作可能とし、その出力をMRC5に入力して、連続してアレー合成出力yを得る。
4.次の受信信号サンプルでは、ビーム選択回路16、位相中心シフト回路17をスキップさせ、FFT8の全ビーム出力をMRC5入力する。この時、MRC内部のローパスフィルタはアレー合成出力で用いたものとは別のものを用いる。
5.FFT前段のスイッチ15をMRC5側に接続し、MRC5の重み出力をFFT8に入力する。
6.FFT出力を送信ビーム形成用の重みとして送信ビーム形成装置に出力する。
7.各受信信号サンプル毎に、上記1から6を繰り返す。

【0078】
<リアルタイム較正>
図5は、本発明に関わる第5の実施形態である受信用のアレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実施形態では、4素子からなるアレーアンテナにある既知の方向から1つの無変調または変調された通信信号が到来し、加えて未知の任意の方向からその近傍の周波数帯の複数の通信信号が到来している場合において、上記既知の方向から到来している通信信号に対応して較正係数出力回路(CAL factor detector)から出力される較正係数に基づき、各通信信号に対応した準同期検波のための局部信号発生器3の振幅と位相をフィードバック制御することにより、上記全ての通信信号を受信しながらアレーアンテナを実時間で較正し、較正されたアレーアンテナによる受信信号を各通信信号に対応して出力する。

【0079】
図において、ビーム形成回路(Beamformer)18とは別に、あるいは一部回路を共用する較正係数出力回路(CAL factor detector)19から出力される較正係数はある時間間隔Δτ毎にサンプラ(Sampler)20でサンプルされ、乗算回路21に入力される。例えば、t-Δτの時点での各系統毎の較正係数eCK(t-Δτ)は、サンプル後、同じくe′CK(t-Δτ)の時点での各系統毎の局部発振器3の振幅と位相を与えるベクトルと乗算される。次にその乗算結果はホールド回路(Hold)22で保持されるとともに、局部発振器3にフィードバックされ、tの時点での局部発振器の振幅と位相を与える。すなわち、tの時点で局部発振器にフィードバックされるベクトルは、各系統毎に次の数式で表される。

【0080】

【数13】
JP0003138728B2_000014t.gif【0081】ホールド回路22で保持された乗算結果のベクトルeCK(t)は、次のΔτ後の乗算に再び使用される。このフィードバック演算を時間間隔Δτ毎に繰り返す。例えば、準同期検波がディジタル演算によって行われている場合は、局部信号の1周期がnsサンプルからなるものとし、その系統kにおける各周期毎の初期ベクトルをlk(0)とすれば、Nをサンプル数とおいて、各周期毎の局部信号の時間変化は例えば次のようになる。

【0082】

【数14】
JP0003138728B2_000015t.gif【0083】(N=0,1,2,3,...,ns-1)
lk(N)は、nsサンプル毎に位相が2π回転し初期ベクトルlk(0)に戻るが、この局部信号初期ベクトルとして常にホールド回路出力を用いる。すなわち、数式15となる。

【0084】

【数15】
JP0003138728B2_000016t.gif【0085】ただし、e′CK(t)の初期値e′CK(0)は、任意のベクトルでよく、例えば各系統共通に単位ベクトル(1,0)などとしておく。Δτを適当な値に選べば、以上の演算を繰り返すことにより、較正係数出力は各系統とも単位ベクトル(1,0)に収束し、局部発振器3の振幅と位相に対応したベクトルlk(0)は、各系統間に存在する振幅と位相の不均一性に対応したベクトルek (t)を自動的に相殺するようなベクトルに収束する。すなわち、アレーアンテナは較正されたことになる。

【0086】
なお、準同期検波回路4がアナログ回路である場合、局部発振器3を電圧制御発振器あるいは数値制御発振器として、ある適当な制御ループを構成することとしても構わない。また、上記振幅と位相を制御可能な局部信号発生器3をもつ準同期検波回路4は、高周波帯あるいは中間周波帯の可変移相回路と可変利得増幅器あるいは可変減衰器であっても構わない。

【0087】
本実施形態は、アレーアンテナが複数の近接周波数の通信信号を受信しているときに、高周波帯あるいは中間周波帯において各系統がもつ振幅と位相の不均一性が時間と共に比較的速く変化する場合、また、アンテナが広い面積の反射器等を備え、その形状や鏡面精度が時間と共に変化するような場合に有効である。

【0088】

【発明の効果】以上、詳述したように本発明に関わる請求項1に記載のアレーアンテナの較正装置によれば、アレーアンテナの各アンテナ素子に接続された各系統の受信信号出力、あるいはそれに空間離散フーリエ変換またはそれに相当する信号変換を行った際に得られる複数の受信信号出力にディジタル信号処理演算を行うことにより、アレーアンテナを較正するための係数を出力する。したがって、本発明は以下の特有の効果を有する。
(1)較正用の特別な高周波回路を装備することなく、ディジタル集積回路の中において、アレーアンテナのアンテナ素子あるいは反射鏡を介してそれらアンテナ素子で受信した信号を合成あるいは検波するまでの各系統に存在する、所定の励振分布以外の振幅と位相の不均一性が相殺するための係数を高速かつ精度良く検出し、これを用いて通信開始前に、あるいは通信中に実時間で、所定の励振分布以外に存在する各系統間の振幅と位相の不均一性を相殺するための較正係数を出力する。
(2)較正用の信号としては、遠方から到来する無変調の信号だけでなく、変調された通信信号それ自体を用いることができ、周波数の有効利用ができる。

【0089】
また、請求項2に記載のアレーアンテナの較正装置によれば、各アンテナ素子での受信信号を最大比合成する際に求められる重みを用いてアレーアンテナを較正するための係数を出力し、上記の効果を得るための回路規模を小さく押さえることができる。

【0090】
また、請求項3に記載のアレーアンテナの較正装置によれば、各アンテナ素子での受信信号のFFT出力を最大比合成する際に求められる重みを用いてアレーアンテナを較正するための係数を出力し、アレーアンテナの素子数が多く、かつ1素子当たりの信号対雑音電力比が小さい場合に、アレーアンテナの高い利得を有効に利用した較正並びビーム形成が可能であるという特徴を有する。

【0091】
また、請求項4および5に記載のアレーアンテナの較正装置によれば、通信信号の到来方向にビームを向けるためのビーム形成回路の一部を共用してアレーアンテナを較正するための係数を出力し、ビーム形成回路と較正系数出力回路の各1部を共用することで、信号処理回路全体の規模を大幅に節約することが可能となる。

【0092】
また、請求項6に記載のアレーアンテナの較正装置によれば、簡単なディジタル信号処理回路でアレーアンテナをオフライン較正することができる。

【0093】
また、請求項7に記載のアレーアンテナの較正装置によれば、通信中において、上記不均一性が時間変化する場合においても、これを実時間で較正することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4