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明細書 :回転動翼振動計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3038382号 (P3038382)
登録日 平成12年3月3日(2000.3.3)
発行日 平成12年5月8日(2000.5.8)
発明の名称または考案の名称 回転動翼振動計測装置
国際特許分類 G01H 17/00      
F01D 25/00      
FI G01H 17/00 A
F01D 25/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願平11-130932 (P1999-130932)
出願日 平成11年5月12日(1999.5.12)
審査請求日 平成11年5月12日(1999.5.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391037397
【氏名又は名称】科学技術庁航空宇宙技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】松田 幸雄
【氏名】遠藤 征紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100110515、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 益男 (外2名)
審査官 【審査官】菊井 広行
参考文献・文献 特開 平2-216018(JP,A)
特開 昭52-133401(JP,A)
特公 平1-56694(JP,B2)
調査した分野 G01H 9/00 - 17/00
F01D 25/00
要約 【課題】 本発明は、基準点αと基準点検出器Pの設置を必要としないものであって、かつ動翼に正規位置からの変位がないものとした回転機械の状態での動翼検出時間計測を予め実施しておく必要のない、通常運転における1回の計測で動翼振動がより簡単に求められると共に、測定精度が高く、経済性、取扱性に優れた回転動翼振動計測装置を提供しようというものである。
【解決手段】 本発明は、回転機械における回転する動翼は正規分布状に静止位置から振動しているという知見に基づき、複数個の動翼先端検出器を動翼の回転周囲に配設し、該動翼先端検出器が検出する一連の検出信号のタイミング時間を総合的に統計処理することによって、動翼に正規位置からの変位がない回転機械の状態における動翼通過時間計測値を演算によって直接求める点に特徴を有し、更にその値と計測時点における実際の各動翼通過時間計測値との差から該動翼の振動を算出するようにしたものである。
特許請求の範囲 【請求項1】
回転体に放射状に配置された多数の動翼を有する回転機械において、前記動翼の回転周囲に配設され該動翼の通過を検出する複数個の動翼先端検出器と、任意の開始時点から前記多数の動翼が前記動翼先端検出器で検出される時点までの時間を計測する手段と、該計測時間データを順次蓄える記憶手段と、前記計測時間データを演算処理すると共に前記手段を制御する演算制御部とから構成され、前記演算制御部は、得られた一連の計測時間データより回転体の回転周期時間と、動翼の先端部が振動変位していないものとした基準位置時間と、該基準位置時間と前記計測時間データとの差より前記動翼先端の振動変位を求め、前記動翼の振動を割出すことを特徴とする回転動翼振動計測装置。

【請求項2】
動翼の材質や構造に基づいてその振動範囲、すなわち下限基準値と上限基準値を特定し、得られた一連の計測時間データがこの範囲に属するものであれば真として採用し、それ以外は偽すなわちノイズとみなし不採用とする計測時間データの真偽を判定する手段を備えたものである請求項1に記載の回転動翼振動計測装置。

【請求項3】
演算制御部において、動翼の先端部が振動変位していないものとした基準位置時間と検出時の動翼通過時間は一連の計測時間データをその時点の回転周期で割り戻して無次元化することで、回転速度の変化の影響を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の回転動翼振動計測装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この発明は、回転体の回転動翼の振動を、非接触に計測する技術に関するものである。

【10】
図4の列4は列1、2、3で表された各動翼先端検出器の検出信号の中から同じ動翼B の変位量を抽出してプロットしたグラフで、動翼Bの振動状態を示している。n個の動翼先端検出器は動翼の回転周囲に配置角度(θ,θ,‥‥θn-1)をもって設置されているので、各動翼の検出信号はその配置角度に対応する遅れをもって順次検出される。ちなみにこの場合動翼Bは検出器Sに対応する列1ではΔT11と後続のΔT1m+1 が、検出器Sに対応する列2ではΔT22、と後続のΔT2m+2 が、検出器Sに対応する列3ではΔT33、と後続のΔT3m+3 が対応しているから、前記動翼先端変位を求める演算により各時点のδ11、δ22、δ33………δ1m+1、δ2m+2、……を求め、これにより動翼Bの振動が列4にグラフ表示されたように検知できる。同様にして動翼B 以下動翼B まですべての動翼について振動を算出検知する。いずれかの動翼が許容量を超えた振動を起こしていた場合には警報を発し運転を減速または停止するように制御する。

【11】
図5は本発明の動翼振動実測例と、特開平1-S6694号「回転翼振動計測装置」に記載された装置による動翼振動実測例を比較表示したもので、本発明は単に複数個の動翼先端検出器を動翼の回転周囲に配設し、該動翼先端検出器が検出する一連の検出信号のタイミング時間を総合的に統計処理することによって、動翼に正規位置からの変位がない回転機械の状態における動翼通過時間計測値を演算によって直接求め、更にその値と計測時点における実際の各動翼通過時間計測値との差から該動翼の振動を算出するようにしたもの(図Aに示す)であるが、事前に動翼に正規位置からの変位がないものとして、基準点が基準点検出器Pで検出された時点から動翼先端検出器Sが動翼を検出する時点までの正確な時間や、動翼先端部が正規位置から変位がない回転機械の状態での精度の高い動翼通過時間計測を要求された特開平1-56694号「回転翼振動計測装置」に記載された方法による動翼振動実測例(図Bに示す)との比較において計測結果に違いはほとんど見られない。

【12】

【発明の効果】この発明は、被測定対象である回転動翼並びに回転機械内部に何ら付加する部品等や加工を必要とせず、単に複数個の動翼先端検出器を回転機械のケース等動翼の回転周囲に配設し、該動翼先端検出器が検出する一連の検出信号のタイミング時間を総合的に統計処理することで全回転動翼の振動計測が可能であることから、航空用ガスタービンをはじめ、産業用ガスタービンや圧縮機などの運転時の動翼振動計測に使用することにより、これらの回転機械の安全性向上や性能向上に資することができる。

【13】
そして、事前に行われる基準点が基準点検出器Pで検出された時点から動翼先端検出器Sが動翼を検出する時点までの時間計測や、動翼先端部が正規位置から変位がない回転機械の状態での動翼通過時間計測の精度が運転時の振動計測の精度に影響してしまう従来技術の欠点もなく、運転時における計測だけで簡便に精度のよい動翼振動の計測が実行できる。

【2】

【従来の技術】例えば、ガスターピン、圧縮機などの回転機械では、その内部で回転している動翼は、その機械的特性と機械内部を流れる流体の影響を受けて常に振動しながら回転しており、その機械的特性や運転条件によっては振動が増大し、損傷や破壊に至り、極めて重大な事故を起こす可能性があるため、回転中の動翼振動を計測し監視する必要がある。従来回転動翼振動を計測するには、ひずみゲージを被測定動翼に貼付し、その出力をスリップリングやテレメータ手段などで機械外部に引き出し、その電気抵抗変化を測定することを行ってきたが、基本的にひずみゲージを既設の機械の被測定動翼に貼付する作業が難しく、またひずみゲージ自体の耐高温性、耐遠心力、耐腐食性などの問題がある。さらにその出力を外部に引き出すスリップリングでは耐ノイズ性、寿命、冷却など、またテレメータ手段では送信機の回転体への装着、受信機の回転体内部への設置など、回転体内部に多くの工作、施工が必要となり、簡単に準備を行うことができないため計測の実行は難しく、基本的に限られた回転動翼について短時間計測することが限度である。

【3】
また本出願人の先の出願に係る特公平1-56694号「回転翼振動計測装置」では、図1に示すように、回転体2に設けた基準点αの通過を検出する基準点検出器Pと、動翼先端検出器Sによって、動翼4が正規位置から変位していないものとしてあらかじめ求めた、基準点検出器Pがαの通過を検出してから動翼先端検出器Sが動翼通過を検出するまでの時間と、計測を目的とする回転時における基準点検出器Pがαの通過を検出してから、動翼先端検出器Sが振動を伴っている動翼の通過を検出するまでの時間とを比較する手段によって動翼の変位を求めた後、この変位量から動翼の振動を求める方法Aと、動翼先端検出器Sを複数個用いて、動翼が正規位置からの変位がないものとしてあらかじめ求めた、1個の動翼先端検出器で動翼通過を検出してから相隣る動翼先端検出器で同じ動翼の通過を検出されるまでの時間と、計測を目的とする回転時において1個の動翼先端検出器で振動を伴っている動翼の通過を検出してから相隣る動翼先端検出器で同じ動翼の通過を検出されるまでの時間を比較する手段によって動翼の変位を求めた後、この変位量から動翼の振動を求める方法Bを開示している。しかしながらこの動翼振動計測装置及びこれを使った計測手段には次のような欠点があった。
(1)Aの計測装置では基準点αとこれを非接触に検出する基準点検出器Pが必要であるが、基準点αの工作が必要なこと及び基準点検出器は一般に回転機械内部に設置するため施工は簡単ではない。
(2)Aの計測手段では、動翼に正規位置からの変位がないものとして、基準点が基準点検出器Pで検出された時間から、動翼先端検出器Sが動翼を検出するまでの時間をあらかじめ求めておく必要があり、この時間値がこの計測法の測定精度に影響を及ぼす。しかし正規位置から変位がない回転機械の状態を規定する基準が曖昧であるため、この時間を正確に計測することは簡単でなく、実質的に異なった回転機械の運転状態で少なくとも2回の計測が必要である。
(3)Bの計測手段は基準点検出器を必要としないが、(2)と同様に正規位置からの変位がないものとしてあらかじめ求めた相隣なる他の動翼先端検出器Sが検出した時間間隔値を必要とするため、(2)と同様な問題がある。

【4】

【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の問題に鑑みて提案されたもので、基準点αと基準点検出器Pの設置を必要としないものであって、かつ動翼に正規位置からの変位がないものとした回転機械の状態での動翼検出時間計測を予め実施しておく必要のない、通常運転における1回の計測で動翼振動がより簡単に求められると共に、測定精度が高く、経済性、取扱性に優れた回転動翼振動計測装置を提供しようというものである。

【5】

【課題を解決するための手段】この発明にかかる動翼振動計測装置における計測手段は、動翼振動の物理的状態を計測した経験則に基づくもので、回転機械における回転する動翼は、図2に示すように正規分布状に静止位置から振動していることが経験的に判明した知見に基づき、複数個の動翼先端検出器を動翼の回転周囲に配設し、該動翼先端検出器が検出する一連の検出信号のタイミング時間を総合的に統計処理することによって、動翼に正規位置からの変位がない回転機械の状態における動翼通過時間計測値を演算によって直接求める点に特徴を有し、更にその値と計測時点における実際の各動翼通過時間計測値との差から該動翼の振動を算出するようにしたものである。

【6】

【発明の実施の形態】本発明は図3に示すように回転機械1の動翼の通過を検出する複数個の動翼先端検出器Sを、回転する動翼Bに対向する如く回転周囲に固定的に配設し、各動翼の通過を複数個の動翼先端検出器Sが検出してその時点までのクロックパルスをカウンタ等で計測し記憶手段Mに蓄積する。ところで、複数個の動翼先端検出器Sは回転周囲に固定的に配設されるので、それらの検出器は特定された動翼の通過を位置関係に応じた時間的ずれを伴って順次検出することになる。すなわち一つの動翼先端検出器の検出する動翼検出信号列と他の動翼先端検出器の検出する動翼検出信号列とは、回転速度が等速であればこれらの動翼先端検出器の位置関係に基づく位相差を有する相関関係をもつことになる。また、回転中の動翼には回転運動の他に振動が重畳されることになるが、この振動する動翼先端部の位置は振動していない本来の位置(基準位置)に対して図2に示すように正規分布を示すことが実験的に分かった。

【7】
本発明はこれらの知見に基づくものであって、複数個の動翼先端検出器Sの検出信号列の時間間隔からまず回転速度を算出すると共に正規分布のピーク値から振動の無い状態における各動翼間隔すなわち回転速度が安定した状態での動翼検出時間間隔値を算出するのであるが、回転機械の複数個の動翼は設計上等間隔に配置されるものであるため、回転速度が一定であるならば所定期間に各動翼先端検出器Sで検出された信号列の時間間隔の平均値を採ることでこれを得ることができ、更にこの値と振動を伴った各動翼の逐次の検出時間間隔値との差から動翼の変位を算出し、着目する動翼について回転周囲に配設された複数個の動翼先端検出器Sに順次検出される変位量を集計して振動を算出する。そしてすべての動翼について振動を算出し、安全領域を越えるものが一つでもあれば、警報することが出来る。そして本発明は下記の特徴を有している。
(1) 回転機械の内部に一切の加工・工作を必要とせず、回転機械を覆うケース等に動翼先端検出器を配置するだけで計測が可能なため、その費用が節約でき計測手段設置の準備作業が簡便である。
(2) 何らの準備計測を必要とせず、動翼振動計測を目的とする状態において通常運転時における1回の計測で回転する全動翼の振動が計測可能であるため、計測が簡便である。
(3) 動翼に正規位置からの変位がないとした回転機械の状態での予めの計測値との比較で動翼振動を求めていないので、計測誤差の発生が減少して測定精度が高くなる。

【8】

【実施例1】図3はこの発明の動翼振動計測装置の基本構成を示したものである。図3において、S,S‥‥Sn は回転機械を覆うケース等に配置されたn個の動翼先端検出器であり、B,B‥‥Bm は回転軸に設置されたm枚の動翼である。動翼先端検出器には、光の反射を利用して動翼先端通過を検出する反射型光ファイバセンサや、電磁気現象を利用して動翼先端通過を検出する電磁ピックアップなどが利用できる。図3においてA,A‥‥An は動翼先端検出器の出力アンプ、C,C‥‥Cnは計時手段(カウンタ)、M,M‥‥Mn は記憶手段、そしてCTRは取得した一連の計時データの演算処理を実行したり、計時手段・記憶手段を制御したりする演算制御部である。上記の計時手段は任意の時点から計時を開始し、動翼先端通過の検出すなわち動翼先端検出器からの出力信号を受けた時点までの時間を順次記憶手段に蓄える。ここでいま動翼先端検出器Sがj番目の動翼の通過を検出した時間をTijとすれば、計測される動翼通過時間は次のように表せる。
については、T11,T12‥‥‥T1m,T1(m+1)‥‥‥T1j
‥‥T1z
については、T21,T22‥‥‥T2m,T2(m+1)‥‥‥T2j
‥‥T2z
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
については、Ti1,Ti2‥‥‥Tim,Ti(m+1)‥‥‥Tij
‥‥Tiz
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【9】
この計測時間を用いて動翼先端変位を求める手段を次に述べる。まず、累積回転周期時間を求める。計測回転回数をk=1,2‥‥‥KRとし、計測開始時点からの累積回転周期時間をTc(k)で表すとすれば、
【数1】
JP0003038382B1_000002t.gifこれは動翼B が計測回転k回目に1回転する時間をn個の動翼先端検出器で計測した値(回転周期時間)の平均を計測開始時点から積算したものである。次に計測されたTijの真偽を判定する。動翼の振動範囲は材質や構造に基づいて特定できるものであり、今これを動翼間隔のβ%とすれば、下限基準α1と上限基準α2 は次式で表せることになり、
α1=(1-β/100)*Tc(k)/m
α2=(1+β/100)*Tc(k)/m
α1<(Tij-Ti(j-1))<α2 であれば真として採用し、それ以外は偽すなわちノイズとみなし不採用とする。続いて先端が振動による変位をしていないものとした動翼についての基準位置時間(無次元化時間)を求める。振動による動翼先端部の振動変位分布は図2に示すように振動変位のない本来の位置を意味する基準位置に対して正規分布を示すことになるので、計測k回転目に入った時点からi番目の動翼先端検出器がj番目の振動変位のない動翼を検出するまでの時間を意味する動翼の基準位置時間データijは回転数が一定であるならば計測された全ての動翼通過時間間隔(各動翼の1回転周期時間)の平均値から単純に算出できる。しかし、実際の回転数は長期間に亘り一定ということは無いので次式のように各時点の回転周期で無次元化された形で平均値を求める。
【数2】
JP0003038382B1_000003t.gifこの値を用いて動翼先端変位を求める。まずTij検出時の動翼通過時間をと同様にその時点の回転周期で無次元化する。これをTij’で表すとすると、
ij’=(Tij-Tc(k-1))/(Tc(k)-Tc(k-1))
以上二つの値を用い動翼先端変位δijは次式で求められる。
δij=(Tij’-ij )×π×D=ΔTij×π×D
ここにπは円周率、Dは動翼先端ピッチ円の直径である。図4は動翼先端検出器Sの検出信号と、計測される動翼通過時間及びその時間から動翼振動を求める手段を示したものである。列1は動翼B,B‥‥Bmが通過するたびにSが検出する信号を示したものである。また列2、列3も同様に検出器S、Sが動翼通過を検出した信号を示したものである。図中実線は動翼振動が生じていないと考えられる場合の信号すなわち動翼の基準位置時間、破線は動翼振動が生じている計測時の検出信号を示している。それぞれの検出信号に対して動翼通過時間が計測され、該動翼通過時間は動翼が振動しているために前回翼通過時間に対して進むか、遅れた時間として計測される。なお、この図は基準位置時間も検出信号も無次元化したもので無く実時間軸にとって表してあるが、この間の回転速度に変動が無いものとすれば、回転周期で無次元化したものと差異は無い。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
4