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明細書 :電気絶縁材とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3163380号 (P3163380)
公開番号 特開2001-052526 (P2001-052526A)
登録日 平成13年3月2日(2001.3.2)
発行日 平成13年5月8日(2001.5.8)
公開日 平成13年2月23日(2001.2.23)
発明の名称または考案の名称 電気絶縁材とその製造方法
国際特許分類 H01B  3/08      
H01B 17/62      
H01L 35/16      
H01L 35/30      
FI H01B 3/08 A
H01B 17/62
H01L 35/16
H01L 35/30
請求項の数または発明の数 6
全頁数 4
出願番号 特願平11-222527 (P1999-222527)
出願日 平成11年8月5日(1999.8.5)
審査請求日 平成11年8月5日(1999.8.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391037397
【氏名又は名称】科学技術庁航空宇宙技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】丹治 雍典
【氏名】木皿 且人
【氏名】熊谷 達夫
【氏名】森谷 信一
【氏名】新野 正之
個別代理人の代理人 【識別番号】100092200、【弁理士】、【氏名又は名称】大城 重信 (外2名)
審査官 【審査官】小川 進
参考文献・文献 特開 昭59-182246(JP,A)
特開 昭54-38598(JP,A)
特開 昭62-31903(JP,A)
特開 昭61-13502(JP,A)
特開 昭62-8404(JP,A)
特開 平3-42076(JP,A)
大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀昭.「化学大辞典」第1版第1刷、1989年10月20日、p.1657、株式会社東京化学同人
調査した分野 H01B 3/00 - 3/14
H01B 17/62
特許請求の範囲 【請求項1】
主原料が水ガラスと酸化剤からなる電気絶縁性被膜材を金属板表面に塗布し、乾燥及び加熱処理を施して熱酸化反応を起こさせ、前記水ガラスの吸湿性を消失させると同時に、前記金属表面に電気絶縁性酸化物層とガラス基被膜からなる電気絶縁性被膜を形成させてなることを特徴とする電気絶縁材

【請求項2】
前記酸化剤がPbO等を含むガラス粉末である請求項1記載の電気絶縁

【請求項3】
前記電気絶縁性被膜材に、電気絶縁性補強材として絶縁性セラミック粉末が添加され、前記ガラス基被膜に電気絶縁性粉末が分散している請求項1又は2記載の電気絶縁材。

【請求項4】
主原料が水ガラスと酸化剤からなる電気絶縁性被膜材を、金属板表面に塗布し、乾燥及び500℃以下の温度で加熱処理して熱酸化反応を起こさせ、前記水ガラスの吸湿性を消失させると同時に、前記金属表面に電気絶縁性酸化物層とガラス基被膜からなる電気絶縁性被膜を生成させてなることを特徴とする電気絶縁の製造方法

【請求項5】
前記酸化剤として、PbOを含むガラス粉末を使用すること特徴とする請求項記載の電気絶縁材の製造方法

【請求項6】
前記電気絶縁性被膜材に電気絶縁性補強材として、電気絶縁性セラミックス粉末が添加されていことを特徴とする請求項4又は5記載の電気絶縁材の製造方法
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、金属表面上に熱伝導性及び耐熱性に優れた電気絶縁性被膜を形成した電気絶縁及びその製造方法に関する。

【10】
本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、500℃以下の熱処理温度で電気絶縁性被膜が形成され、常用温度200~500℃での使用で、安定して耐熱性及び熱透過性に優れ、且つ廉価である電気絶縁材及びその製造方法を提供することを目的とする。

【11】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の電気絶縁は、主原料が水ガラスと酸化剤からなる電気絶縁性被膜材を金属板表面に塗布し、乾燥及び加熱処理を施して熱酸化反応を起こさせ、前記水ガラスの吸湿性を消失させると同時に、前記金属表面に電気絶縁性酸化物層とガラス基被膜からなる電気絶縁性被膜を形成させてなることを特徴とするものである。前記酸化剤としては、PbO等を含むガラス粉末等が採用できる。前記水ガラスに電気絶縁性補強材を添加することによって、ガラス被膜の電気絶縁性を補強することができ好ましい。なお特許請求の範囲に記載されている「酸化剤」の用語は直接的な酸化剤に限らず、酸化剤の原料となるものも含むものものである。

【12】
前記電気絶縁性補強材として、絶縁性セラミツク粉末を添加することによって、ガラス基被膜の電気絶縁性がより向上する。絶縁性セラミック粉末としては、例えばAl23,SiO2、ZrO2、Si34、SiAlON、SiC等の電気絶縁性絶縁性セラミック粉末が採用できる。本発明の電気絶縁材は、種々の用途の物品に適用できるが、例えば熱電変換装置の低温側の熱伝達板となるモジュール基板に好適である。

【13】
上記電気絶縁材を製造する本発明の電気絶縁材の製造方法は、主原料が水ガラスと酸化剤からなる電気絶縁性被膜材を金属板表面に塗布し、乾燥及び500℃以下の温度で加熱処理して熱酸化反応を起こさせ、前記水ガラスのもつ吸湿性を消失させると同時に、前記金属面に電気絶縁性酸化物層とガラス基被膜からなる電気絶縁性被膜を生成させることを特徴とするものである。前記熱酸化反応は、PbO等を含む低軟化温度をもつ複合ガラス粉末を用いることにより、500℃以下の比較的低い熱処理温度で電気絶縁性酸化物層を形成することができる。

【14】

【発明の実施の形態】本発明の実施形態を図面を基に詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、その技術的思想の範囲内で種々の設計変更が可能である。本実施形態の電気絶縁は、本発明者らが先に提案した前記熱電モジュールに適用可能な電気絶縁材を得るものであり、図1にその模式図が示されている。

【15】
アルミニウム板等の金属板1の表面に、水ガラス、PbO等を含む複合系ガラス粉末からなる酸化剤、及びAl23等の電気絶縁性粉末3で構成される原料を適当な量の水の中に溶いたもの(電気絶縁性被膜材2)を金属表面に塗布する(図1(a))。次いで、それを適当な温度で乾燥及び熱処理を行うと、水ガラスの中に含まれる水分は消失すると同時にガラス粉末の中に含まれる酸化剤が金属との熱酸化反応によって金属と塗布されたガラス被膜との界面に電気絶縁性酸化物層が形成される。それと同時に水ガラスの組成が変質しその吸湿性が失われる。その結果、図1(b)に示すように、電気絶縁性酸化物層5と、Al23の電気絶縁性粉末3が分散したガラス基被膜6からなる電気絶縁性被膜7が形成される。

【16】
なお、PbO等を含む複合系ガラス粉末は、可能な限り軟化温度の低いもの例えば300℃傍であることが望ましい。しかしながら、酸化剤は、必ずしもPbO等を含む複合系ガラス粉末に限らず、例えばPbO2、酸化銀、酸化銅等の粉末が採用できる。また、金属基板は、アルミニウム板に限らず他の酸化し易い金属材料を使用することが好ましい。

【17】
以上のように、本実施形態の電気絶縁は、水ガラス、PbO等を含む複合ガラス粉末、Al23粉末の電気絶縁性セラミック粉末(電気絶縁性補強材)の混合物で構成され、その混合割合は、各成分がその効果を奏するためには少なくとも10%以上含まれているのが望ましく、用途に応じて適宜選択できる。なお、前記のように、電気絶縁性補強材は必ずしも必須のものではなく、電気絶縁性補強材を添加しないで水ガラスと酸化剤のみで構成する場合も、水ガラスと酸化剤がそれぞれ10%以上含まれていることが望ましい。

【18】
上記のようにPbO等を含む複合系ガラス粉末を用いて熱処理することにより、アルミニウムのような酸化され易い金属との界面に、ごく薄い電気絶縁性酸化物層5が形成される。本実施形態では、低軟化温度(320℃)をもつPbOの酸化剤原料を含む複合系ガラス粉末を用いているため、500℃以下の比較的低い熱処理温度で電気絶縁性酸化物層を形成することができる。また、電気絶縁性酸化物層と同時にガラス基被膜が形成されるが、該ガラス基被膜は、水ガラスが持っていた吸湿性が失われている。また、ガラス被膜内にAl23等の電気絶縁性粉末を絶縁性補強材として添加することによって、電気絶縁性を補強することができる。

【19】
前記電気絶縁性被膜材は、その使用温度領域において耐熱性、熱透過性に優れ、かつ剥離しにくい密着性の優れたものでなければならない。そのためには、被膜を形成させる材料の耐熱温度に応じて、ガラス粉末の軟化温度を調整し、酸化剤の流動性を確保する。例えば、アルミニウム板の絶縁被膜形成や、BiTe系及びPbTe系モジュール素子等の揮発性防止被膜形成のためには、300℃近傍に軟化温度をもつガラス粉末を使用する。

【2】

【従来の技術】従来、金属面に電気絶縁性被膜を有する電気絶縁材は、その用途に応じて種々のものが知られており、以下にその代表的なものを示す。例えば、シリコーングリースを塗布したアルミナ薄板は,熱透過特性及び耐熱特性に優れた電気絶縁材として,従来の熱電モジュールに広く使用されている。しかしながら,この材料は、高価であり,しかも割れ易い欠点を有している。

【20】
以上のようにして、得られた電気絶縁性被膜材は、従来の水ガラスがもっていた吸湿性を消失した水ガラス中のアルカリ塩のイオン伝導による電気伝導はなくなり、優れた耐熱性、熱透過性及び密着性のみ残る。その結果、熱電モジュールの絶縁材料として好適である。

【21】

【実施例】粒度100μm以下のアルミナ粉末、適当な結晶水を含む水ガラス及び硼酸鉛系ガラス粉末(軟化温度320℃)をそれぞれ1:1:1の割合で混合し、その混合物を適当な量の水の中に溶いたものを、板厚100μmの金属アルミニウム薄板上に刷毛で塗布する。その際、被膜の均一性を確認するためにベンガラを混入し着色することもできる。それを200℃の真空乾燥炉の中で乾燥処理を施す。この状態で既に、室温において優れた熱透過性をもつ電気絶縁性被膜が形成されるが、中高温における電気絶縁性と被膜の密着強度は十分でない。金属板が660℃の融点をもつアルミニウム薄板であることを考慮して、500℃に保持された大気炉中で数分間加熱すると、金属アルミ板上に塗布されたうぐいす色の被膜は黒褐色に変色する。これはガラス粉末中のPbOがPbO2に変化したことを意味する。このPbO2が酸化剤として作用する。即ち、金属との界面に薄い電気絶縁性酸化物層が形成されると同時に被膜成分の水ガラスが変質し、吸湿性を消失する。生成されたガラス基被膜にはAl23粉末が均一に分散している。なお、被膜形成が十分でなかった場合には、上記の熱処理を繰り返すことにより、所定の被膜を得ることができる。

【22】
以上のようにして形成されたガラス基被膜の表面粗度は1500#の研磨紙程度であった。また、板厚100μmの金属アルミニウム板上に形成された電気絶縁性被膜は、折り曲げたり、接着テープによる剥離テスト(JIS8305-1982)を数回繰り返しても剥離することがなく、優れた形状追随性を有し熱ひずみが生じても剥離しにくい特徴を有していることが確認された。また、加熱しながら熱透過性及び電気絶縁性を測定した結果、温度500℃近傍までは、熱透過性及び電気絶縁性は良好に保持され、初期の目的を達成することができた。

【23】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば、500℃以下の熱処理温度で電気絶縁性被膜が形成され、常用温度200~500℃での使用で、耐熱性、熱透過性、及び耐熱ひずみ特性に優れ、特に優れた形状追随性を有し熱ひずみが生じても剥離しにくい特徴を有し、且つ廉価である電気絶縁材を得ることができる。また、水ガラスと酸化剤からなる電気絶縁性被膜材に、さらに電気絶縁性補強材を混合することによって、金属基板上に形成されるごく薄い電気絶縁性酸化物層と電気絶縁性粉末が均一に分散したガラス基被膜が構成され、より良好な耐熱性、熱透過性、密着性を持つ電気絶縁性被膜を得ることができる。

【3】
また、Na2O・SiO・nH2O系水ガラスは,空気中で乾燥させるとガラス状になり,ガラス及び陶磁器等の接合材として広く使用されている。一方、ガラス粉末を用いて、金属表面にガラス被膜を形成させる技術は、電気絶縁性被膜形成技術として古くから知られている。このガラス被膜形成のための熱処理の多くは、600℃以上の高温で行わなければならない。

【4】
従って、このガラス被膜形成技術は、500℃以下の温度領域での使用が要求される物品、例えば、本発明者らが提案した新型熱電モジュール(特許第287396号参照)の金属アルミ等の低融点部品の絶縁被膜や、BiTe系及びPbTe系熱電素子等の揮発性材料の揮発防止被膜の形成には適用できない。

【5】
一方、水ガラスのみ、或いは、被膜の電気絶縁性補強剤としてアルミナ粉末を添加した水ガラスを金属表面に塗布し、さらに乾燥処理を施すことにより、室温においては、水ガラスのもつ熱伝導性と電気伝導性はかなり改良される。しかし、水ガラスのもつ吸湿性は残存され、その特性は安定しない。

【6】
さらに、従来から使用されているアルミナ薄板は、上記の耐熱性と熱透過性を満足するが、割れ易く、従って熱ひずみに弱い。かつ高価であるという欠点をもっている。一方、エナメル等の合成樹脂塗布材は、室温における電気絶縁性は優れているが、100~200℃の温領域で長時間使用すると、その絶縁性は劣化し、熱透過性もよくない欠点がある。また雲母薄板の耐熱性及び電気絶縁性は、500℃程度まで保持されるが、やはり熱透過性がよくない欠点がある。

【7】
以上の様に、種々の電気絶縁材が存在するが、200~500℃の温度領域で、上記熱電モジュールに適合し、アルミナ薄板と同等かそれよりも優れた耐熱性、熱透過性をもち、しかも廉価な電気絶縁材は、従来知られている材料の中から見出すことは出来なかった。

【8】

【発明が解決しようとする課題】例えば、(Bi,Sb)2(Te,Se)3系及びPbTe系熱電素子をもつ熱電モジュールの熱源温度は、それぞれ200~300℃と300~450℃である。従って、それぞれの常用温度で、十分な耐熱性及び熱透過性をもつ電気絶縁材が要求される。

【9】
しかしながら、上記のように、500℃以下の熱処理温度で電気絶縁性被膜が形成され、常用温度200~500℃で、安定して耐熱性及び熱透過性の優れた電気絶縁は、従来知られていない。従って、従来知られている電気絶縁性被膜の形成技術は、例えば本発明者らが先に提案した前記新型モジュールの製造技術等には適用できないものである。
図面
【図1】
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