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明細書 :四角錐台型5孔ピトー管を用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおける演算処理方法及び方式

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3486672号 (P3486672)
公開番号 特開2001-242190 (P2001-242190A)
登録日 平成15年10月31日(2003.10.31)
発行日 平成16年1月13日(2004.1.13)
公開日 平成13年9月7日(2001.9.7)
発明の名称または考案の名称 四角錐台型5孔ピトー管を用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおける演算処理方法及び方式
国際特許分類 G01P  5/175     
G01L  7/00      
G01P  5/16      
FI G01P 5/175
G01L 7/00
G01P 5/16
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2000-049666 (P2000-049666)
出願日 平成12年2月25日(2000.2.25)
審査請求日 平成12年12月1日(2000.12.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501137577
【氏名又は名称】独立行政法人航空宇宙技術研究所
発明者または考案者 【氏名】重見 仁
【氏名】中谷 輝臣
【氏名】進藤 重美
【氏名】滝沢 実
【氏名】大貫 武
個別代理人の代理人 【識別番号】100110515、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 益男 (外2名)
審査官 【審査官】白石 光男
参考文献・文献 特開 平8-62091(JP,A)
特開2000-275269(JP,A)
特許2884502(JP,B2)
特許2913005(JP,B2)
調査した分野 G01P 5/175
G01L 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
四角錐台型5孔ピトー管プローブを用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおいて実行される演算処理方法であって、前記5孔プローブが検出する5つの圧力情報から上下圧力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の迎角圧力係数Cαと左右圧力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の横滑り角圧力係数Cβおよび該CαとCβのそれぞれ二乗の和を平方根とした対気流角圧力係数Cγと、該総圧と四角錐面上の4孔平均圧の差圧情報を総圧で無次元化してマッハ圧力係数CMとを得る演算処理ステップと、該演算処理器に広速度域における対気流角圧力係数Cγとマッハ圧力係数CMとの平面座標上に対応するマッハ数Mをあらかじめ求めて記憶しておいたマッハ数算出用ルックアップテーブルに、上記の算出Cγ値と算出CM値を当てはめてその時点のマッハ数Mを割出すステップとを含み、前記マッハ数算出用ルックアップテーブルは対気流角圧力係数Cγとマッハ圧力係数CMとの平面座標上において所定の気流角γ値と所定のマッハ圧力係数CM値との交点毎にマッハ数Mデータを記憶するようにしたことを特徴とする飛行速度ベクトル計測値の演算処理方法。

【請求項2】
マッハ数Mの割出しに際し、算出Cγ値と算出CM値がマッハ数算出用ルックアップテーブル上の所定値交点でない場合には、該当算出値の座標が存在する菱形格子領域の4隅のマッハ数値から双1次補間を実行してマッハ数Mを算出する請求項1に記載の飛行速度ベクトル計測値の演算処理方法。

【請求項3】
四角錐台型5孔ピトー管プローブを用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおいて実行される演算処理方法であって、前記5孔プローブが検出する5つの圧力情報から上下圧力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の迎角圧力係数Cαと左右圧力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の横滑り角圧力係数Cβおよび該CαとCβのそれぞれ二乗の和を平方根とした対気流角圧力係数Cγと、該総圧と四角錐面上の4孔平均圧の差圧情報を総圧で無次元化してマッハ圧力係数CMとを得る演算処理ステップと、該演算処理器に広速度域における対気流角圧力係数Cγとマッハ圧力係数CMとの平面座標上に対応するマッハ数Mをあらかじめ求めて記憶しておいたマッハ数算出用ルックアップテーブルに、上記の算出Cγ値と算出CM値を当てはめてその時点のマッハ数Mを割出すステップと、迎角αを求める迎角圧力係数Cαについての高次近似式と横滑り角βを求める横滑り角圧力係数Cβについての高次近似式に、上記の算出Cα値と算出Cβ値と上記演算処理器に予め求め記憶している圧力校正係数とを当てはめて迎角αと横滑り角βを求める演算ステップとを含む飛行速度ベクトル計測値の演算処理方法。

【請求項4】
迎角αを求める迎角圧力係数Cαについての高次近似式と横滑り角βを求める横滑り角圧力係数Cβについての高次近似式は
α=A+ACα+ACα+ACα
但し A=A00+A01M+A02+A03+A04+A05
=A10+A11M+A12+A13+A14+A15
=A20+A21M+A22+A23+A24+A25
=A30+A31M+A32+A33+A34+A35
β=B+BCβ+BCβ+BCβ
但し B=B00+B01M+B02+B03+B04+B05
=B10+B11M+B12+B13+B14+B15
=B20+B21M+B22+B23+B24+B25
=B30+B31M+B32+B33+B34+B35
とし、圧力校正係数“Aij”と“Bij”は、予め風洞試験において設定した迎角α、横滑り角β、同じく設定したマッハ数Mと、算出したCα,Cβとを前記高次近似式の値に取り込むことで、未知数として計算して求めたことを特徴とする請求項3に記載の飛行速度ベクトル計測値の演算処理方法。

【請求項5】
四角錐台型5孔ピトー管プローブを用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムの演算処理装置であって、前記5孔プローブが検出する5つの圧力情報を受け、上下圧力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の迎角圧力係数Cαと左右圧力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の横滑り角圧力係数Cβおよび該CαとCβのそれぞれ二乗の和を平方根とした対気流角圧力係数Cγと、該総圧と四角錐面上の4孔平均圧の差圧情報を総圧で無次元化してマッハ圧力係数CMとを得る第1演算処理部と、記憶手段に広速度域における対気流角圧力係数Cγとマッハ圧力係数CMとの平面座標上に対応するマッハ数Mをあらかじめ求めて記憶しておいたマッハ数算出用ルックアップテーブルに、上記の算出Cγ値と算出CM値を当てはめてその時点のマッハ数Mを割出す手段と、迎角αを求める迎角圧力係数Cαについての高次近似式と横滑り角βを求める横滑り角圧力係数Cβについての高次近似式に、上記の算出Cα値と算出Cβ値と上記記憶手段に予め求め蓄積している圧力校正係数とを当てはめて迎角αと横滑り角βを求める演算手段とを含む第2演算処理部と、第1演算処理部から総圧PH値と第2演算処理部からマッハ数M値をえて静圧pと動圧qを算出する第3演算処理部とからなり、算出したデータを表示装置と飛行制御装置に送る広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおける演算処理方式。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、四角錐台型5孔プローブのピトー管を用いた飛行速度ベクトル計測システムに適用する低速から超音速までの広速度域において、飛行速度ベクトル(速度の大きさと気流角)と静圧(高度)を高精度で高更新率で演算処理することができる演算処理アルゴリズムとそれを用いたシステムに関するものである。

【10】

【発明の実施の形態】本発明における演算処理方式の概要を図1の演算処理ブロック概念図を基に説明する。本発明は低速から超音速までの広速度域における飛行において、検出した5つの圧力情報(総圧:PH,圧力群1:Pb1,圧力群2:Pb2,圧力群3:Pb3,圧力群4:Pb4)を図6に示したような5孔プローブ1から受信し、飛行ベクトル(M,α,β)と静圧pと動圧qの情報を精度よくかつリアルタイムで演算して表示装置・飛行制御装置等3に送信するために、飛行速度ベクトル計測システムの演算処理器2に適用される演算アルゴリズムとその具体化に関する。前記の検出した5つの圧力情報を圧力変換器24,図示していないCPU,記憶手段(ROM25)等から構成される前記飛行速度ベクトル計測システムの演算処理器2にまず導入し、圧力信号を電気信号に変換してCPUのワークエリアに取り込む。該5孔プローブの上下圧力孔の差圧(Pb1-Pb3)を中央の総圧PHで割って無次元化する(1)式に代入して算出した気流の迎角圧力係数Cαと、同様に左右圧力孔の差庄(Pb2-Pb4)を中央の総圧PHで割って無次元化する(2)式に代入して算出した気流の横滑り角圧力係数Cβとを(3)式に代入して該5孔プローブ軸に対する気流の角度である対気流角の圧力係数Cγを得、更に総圧PHと四角錐面上の4孔平均圧の差圧{PH-(Pb1+Pb2+Pb3+Pb4)/4}を同様に中央の総圧PHで無次元化する(4)式に代入してマッハ圧力係数CMを得る第1次演算処理を実行する。この処理は図1中破線で囲われた1次演算処理部21でなされる。
【数1】
JP0003486672B2_000002t.gif【0011】 本発明においてマッハ数Mは予め風洞でマッハ数と気流軸に対するプローブ角を種々に変化させて設定し、前記の5孔プローブの検出情報から(3)(4)式で得たマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの関係グラフからマッハ数が決定できるように、広速度領域に亘りマッハ数Mの値をテーブルとしてROM等の記憶手段に蓄積しておき、実際の計測においては前記第1次演算処理で得たマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγをこのマッハ数ルックアップテーブル上で特定し、マッハ数を割出して決定する。このマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの関係は図5と図2から判るように、プローブ軸と気流軸とのなす角γが0の場合は対気流角圧力係数Cγはマッハ圧力係数CMの値の関係無く常に0、すなわちマッハ圧力係数CMの値はグラフにおいてCγ=0上にある。両者は原点を通る1次式の関係にあり、プローブ軸と気流軸とのなす角γが増えるに従ってその傾斜が低くなるという関係にある。次に迎角αと横滑り角βの求め方について説明する。該迎角αと該横滑り角βを求める近似式を既知数の迎角圧力係数Cα,横滑り角圧力係数Cβについての3次式の形(5)(6)式とすると共に、その各係数A,A,A,AとB,B,B,Bをルックアップテーブルから瞬時に割出せるマッハ数Mについての5次までの多項式の形で表すようにした。そしてそのマッハ数Mについての多項式に関する係数"Aij"は迎角圧力校正係数であり、係数"Bij"は横滑り角圧力校正係数である。この圧力校正係数"Aij"と"Bij"を決めるに先立ち迎角圧力係数Cα,横滑り角圧力係数Cβと実気流迎角α,実気流横滑り角βの関係曲線を図3に示す。図においてAは迎角圧力係数Cαと実気流迎角αの関係を示し、Bは横滑り角圧力係数Cβと実気流横滑り角βの関係を示している。図3に示すように、あるマッハ数において実気流迎角αと迎角圧力係数Cαのグラフはほぼ直線(一次式)で表される。同様に、実気流横滑り角βと横滑り角圧力係数Cβのグラフもほぼ直線(一次式)で表される。しかし、厳密にはどちらも直線から少しずれるのでこの効果を容れるために、実気流迎角αを迎角圧力係数Cαの三次式(5)で、実気流横滑り角βを横滑り角圧力係数Cβの三次式(6)で表すことにした。そして、迎角圧力係数Cαの各次の係数A、A、A、Aと横滑り角圧力係数Cβの各次の係数B、B、B、Bのマッハ数による変化をそれぞれマッハ数Mの5次までの多項式で表した。
【数式2】
JP0003486672B2_000003t.gif上記式中の該校正係数Aij,Bijは、事前の風洞試験において取付けたプローブの軸方向(α,β)の下でマッハ数を種々に設定した状態で得た5孔プローブが検出した5つの圧力情報(PH,Pb1,Pb2,Pb3,Pb4)を(1)(2)式に入れて得たCα,Cβデータと、該設定値(迎角α、横滑り角β、マッハ数M)とを(5)(6)式に用いて、該校正係数Aij,Bijを未知数として計算により求めるのであるが、正確を期するため多くのデータを取って最小自乗法により処理し、複数の速度領域に対応した4×6のマトリックス情報としてROM等の記憶手段に蓄積しておく。本発明の最大の特徴点は迎角αと横滑り角βを求める近似式を(5)(6)式として既知数のCα,Cβについての3次式の形で、そしてその各係数をルックアップテーブルから瞬時に割出せるマッハ数Mについての5次までの多項式の形で表した点にある。従って、従来のように3次の方程式を解く必要はなく、5次まで式の係数計算も3次式の迎角αと横滑り角βの算出も既知数に基づいて即座に実行でき、マッハ数がルックアップテーブルから瞬時に割出せることと相まって航空機における運行制御にリアルタイムで対応できるものである。

【12】
飛行時における実際の迎角αと横滑り角βの算出は2次演算処理として実行する。すなわち本発明の迎角αと横滑り角βの求め方は、記憶手段に蓄積されているルックアップテーブルから割出された前記マッハ数Mと、やはり記憶手段に蓄積されている迎角αに対する迎角圧力校正係数Aijおよび1次演算処理で得た迎角圧力係数Cαと、求める迎角α(未知量)との関係を多項近似式で表した演算処理式(5)に基づいて、また同様にマッハ数Mと、記憶手段に蓄積されている横滑り角圧力校正係数Bijおよび1次演算処理で得た横滑り角圧力係数Cβと、求める横滑り角β(未知量)との関係を多項近似式で表した演算処理式(6)に基づいてそれぞれ演算により求めることになる。以上により、飛行速度ベクトル(M,α,β)を決定することができる。これが2次演算処理であり、図1中の破線で囲われた2次演算処理部22で実行される。

【13】
次に、前記ルックアップテーブルから割出されたマッハ数Mと検出された総圧PHに基づいて高度情報に対応する静圧pと速度情報に対応する動圧qとを第3次演算処理として算出する。この演算は圧縮性を考慮する必要のない低速度領域と、音速に近づくにつれて無視できなくなる圧縮性の影響を考慮した遷音速領域、衝撃波面がプローブの直前にできるためそれを考慮する必要のある超音速域とで演算式を異にする。マッハ数Mに応じた演算処理式、すなわち静圧算出式の(7-1)式・(8-1)式・(9-1)式と動圧算出式の(7-2)式・(8-2)式・(9-2)式の中からルックアップテーブルで割出されたマッハ数Mに対応する式を選択して適用することで、静圧Pと動圧qを演算により求めることができ、図1中の破線で囲われた第3次演算処理部23で実行される。
【数3】
JP0003486672B2_000004t.gif以上の演算によって、飛行速度ベクトルと静圧(高度情報)と動圧の計測を精度よく高更新率で実行することができ、インターフェース26を介して表示装置・飛行制御装置等3に送信される。本発明はこのような演算方法を採用しそれをシステム化したことにより飛行制御装置の検出部として求められるリアルタイム対応が可能となった。

【14】

【実施例】次に本発明を更に具体化した例について詳述する。広速度域飛行速度ベクトル計測システムに組込まれるマッハ数算出用ルックアップテーブルは、事前に本発明に係る5孔プローブを風洞内に種々の気流角で設置し広帯域の流速状態を設定する風洞試験によりデータをとって作成されるものである。本実施例のテーブルはマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの直交座標上に該当するマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの交点にその時のマッハ数Mの値をプロットしていく点では基本的には図5に示した従来のルックアップテーブルと同様であるが、所定マッハ圧力係数CMと所定対気流角圧力係数Cγの交点毎のマッハ数Mデータをとるのではなく、図2に示したようにプローブ軸と気流軸とのなす角γとマッハ圧力係数CMとの所定値の交点毎にマッハ数Mデータをとるようにした。図から判るようにマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの関係は気流角γが一定である場合原点を通り気流角γに応じた傾斜角をもつ線形特性を持っている。本実施例のルックアップテーブルは上記したように気流角γとマッハ圧力係数CMとの所定値の交点毎にマッハ数Mデータをとるようにしたので、テーブルの格子領域は従来のような定型の長方形状では無く不定形の菱形となる。このようなテーブルの格子形態でデータをとるようにしたので、自然に低速域ではデータを密にとり高速になるにしたがってデータを粗に広くとりたい要望に対応したものとなる。しかも広帯域の速度に対して連続した1テーブルとして得ることができ、従来のように領域毎の異なるテーブルを準備し選択したり境界データの整合をとるという厄介な作業が不要となる。

【15】
また、本発明では迎角αと横滑り角βを求める際に、演算上必要となる迎角圧力校正係数“Aij”と横滑り角圧力校正係数“Bij”をデータとして蓄積記憶しておくことが必要であり、これも事前の風洞試験によって予め得ておくことになる。この校正係数“Aij”と“Bij”は、前記の(5)(6)式の係数を算出するためのマッハ数Mについての5次式までの係数であるが、前述したように予め風洞試験により設定した迎角α、横滑り角β、同じく設定したマッハ数Mと、その際5孔プローブが検出する5つの圧力情報を(1)(2)式に入れて得たCα,Cβとを用いて(5)(6)式における未知数として計算し、最小自乗法を用いて適正値を決める、4×6のマトリックス情報である。実際のこの計算はかなり厄介な作業となるが、飛行時の計測と異なりリアルタイム処理を求められるものではないので十分に時間をかけて実行することができる。この校正係数は迎角αと横滑り角βの算出精度に影響を与えるため、角度精度において0.1°以内を要求される場合には細かく領域を区分してデータを得ておくことが必要となる。もし0.3~0.5°以内程度の精度で良いならば全速度領域に同じ校正係数データを用いても問題はない。一般的には3乃至6の速度領域に区分してデータを蓄積しておくことが適当である。多くの領域に区分する場合は精度が求められる領域について細かく区分してデータを準備しておくことが合理的である。

【16】
本実施例では上記のマッハ数算出用ルックアップテーブルと迎角圧力校正係数“Aij”と横滑り角圧力校正係数“Bij”のデータを演算処理器2のROM等の記憶手段に事前に記憶させておく。この記憶手段にはこの他各圧力変換器の係数、データの平滑式、各種演算処理式、プローブ位置取付誤差補正値等の情報を蓄積しておくものとする。以下に本実施例の演算処理動作を図4のフローチャートにそって詳しく説明する。スタートでスイッチがONされるとステップ1(図中ではST1と表示)でROM内の必要情報がRAM(ワークエリア)に読み込まれスタンバイ状態となる。ROMにある蓄積情報をワークエリアとなるRAMに読出しておくのは、各ステップにおいて実行する演算において必要情報をいちいちROMにまでとりにゆくことなく、ワークエリア内の作業として迅速に実行できるようにするためである。飛行が開始されると、ステップ2で5孔プローブの検出した圧力情報がとり込まれ圧力変換器により電気信号(電圧値)に変換されるが、この際ROM内に格納されていた当該変換器の特性係数を用いて変換が実行される。5つの圧力情報(PH,Pb1,Pb2,Pb3,Pb4)はステップ3で平滑化処理されるが、この平滑化の演算はROMからRAMに読出したデータの平滑式に基づいてなされる。該平滑化された各圧力データはステップ4において、迎角圧力係数Cαは演算式(1)により、横滑り角圧力係数Cβは演算式(2)により、対気流角圧力係数Cγは演算式(3)により、マッハ圧力係数CMは演算式(4)によりそれぞれ算出される。これらの演算式ももともとROM内に格納されているが、ST1でRAM(ワークエリア)に読出されている。各圧力係数が求まったところでステップ5ではルックアップテーブルを用いたマッハ数Mの割出し作業が行われる。本実施例のルックアップテーブルは前述のように所定の気流角γと所定のマッハ圧力係数CMとの交点毎にマッハ数Mデータをとっているので、格子領域は長方形状では無く不定形の菱形である。特定された対気流角圧力係数値Cγとマッハ圧力係数値CMがテーブル上の交点に当たるときは該当するマッハ数をそのまま読み出せばよいのであるが、普通は上記の菱形領域内の座標点となるので、その場合には4隅のマッハ数から双1次補間を実行してマッハ数Mを算出する。この際に使われる補間式はルックアップテーブルと共に記憶手段に記憶しておく。続いてステップ6で迎角αと横滑り角βとの演算を行うが、この演算はマトリックス形態で記憶している迎角圧力校正係数“Aij”と横滑り角圧力校正係数“Bij”のデータと先に割出したマッハ数値Mと迎角圧力係数Cα及び横滑り角圧力係数Cβを、同じく記憶している演算式(5)(6)に当てはめ演算を実行する。その際演算に先立ちまずマッハ数Mの値に対応する角圧力校正係数“Aij”と“Bij”のデータ表を選択する。係数計算はマッハ数Mについての5次までの式、演算式(5)(6)は迎角圧力係数Cα及び横滑り角圧力係数Cβについての3次式となっているが、この多項式演算は方程式を解くわけではなく、既知の値を代入して単純計算を行うだけであるから、時間を要すること無く即座に実行できる。以上の演算処理でプローブ軸に対する飛行速度ベクトル(M,α,β)が決定されたことになる。

【17】
ステップ7では静圧pと動圧qの演算を行う。この演算はステップ3で得られた平滑化された総圧PHとステップ5で割出されたマッハ数Mを演算式に代入して実行するのであるが、演算式は飛行速度領域に対応して静圧算出式の(7-1)式・(8-1)式・(9-1)式と動圧算出式の(7-2)式・(8-2)式・(9-2)式と複数個準備されているので、演算に先立ちマッハ数Mの値に対応してまず演算式が選択特定され、それによって演算が実行される。ステップ8ではプローブが機体軸に一致しているか否かのチェックがあり、プローブの取付に狂いがあればステップ9で予めプローブ位置取付け誤差に対応する補正値を記憶しておき、これを読み出して機体軸に対する飛行速度(マッハ数M)を補正演算して算出する。さらにステップ10で迎角αと横滑り角βについて誤差分を補正して修正する。ステップ11では得られた値を表示装置や飛行制御装置に計測信号として送信する。もしステップ8でプローブが機体軸に一致していると判断された場合はステップ9,10の補正は必要ないのでステップ7までに得られた値をそのまま採用しステップ11に進む。ステップ11で値を送信した後ステップ12では飛行が続行されるか否かの確認が行われ、続行される場合にはステップ2に戻り新たな検出情報に基づく演算が実行され、データの更新処理をする。飛行が終了したときにはステップ12でストップとなり作業を終了する。この計測演算フローは多項式の解法作業を無くしたことにより高速処理が可能となって飛行制御に求められていた高更新率に応えることができるものである。

【18】

【発明の効果】本発明は、四角錐台型5孔プローブを用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおいて検出情報から所望の計測データを演算処理するに際し、事前の風洞試験によってマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγとマッハ数Mとの関係を直交する両圧力係数Cγ,CM座標上に対応させてマッハ数Mを示す低速から超音速までの広速度域について連続した1つのルックアップテーブルを作成して演算処理器に記憶しておくことにより、低速から超音速飛行に亘り逐次のマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの値を該テーブルに当てはめることで厄介な多項式解法を必要とせずにその時点のマッハ数Mを直接割出すことができる。また、本発明のルックアップテーブルは所定気流角γと所定マッハ圧力係数CMとの交点毎にマッハ数Mデータをとるようにしたので、テーブルの格子領域は従来のような定型の長方形状では無く不定形の菱形となり、このようなテーブルの格子形態でデータをとるようにしたことにより、低速域ではデータを密にとり高速になるにしたがってデータを粗に広くとりたい要望に自然に対応したものとなっている。しかも広帯域の速度に対して連続した1テーブルとして得ることができ、従来のように領域毎の異なるテーブルを準備し選択したり境界データの整合をとるという厄介な作業が不要となる。

【19】
また、本発明は迎角αと横滑り角βとの演算に関して事前の風洞試験において得られた迎角圧力校正係数“Aij”と横滑り角圧力校正係数“Bij”のデータを複数の速度領域に対応してマトリックス形態で記憶しているので、5孔プローブから検出される5つの圧力データからまずCα,Cβ,Cγ,CMを演算し、さらに該Cγ,CM値からルックアップテーブルを用いてマッハ数Mを得て、該マッハ数Mに対応した圧力校正係BR>数のマトリックス情報を選択すると共に上記の演算値を(5)(6)式に当てはめるだけで迎角αと横滑り角βの演算を即座に実行することが出来る。さらに、マッハ数Mと総圧PHを該マッハ数Mに対応した演算処理式である(7)(8)(9)式に代入すれば静圧p(高度)と動圧qが即座に算出できる。

【2】

【従来の技術】本出願人は、先に図6に示したような四角錐台型5孔プローブのピトー管を用いた飛行速度ベクトル計測システムを開発し、特許権(日本国特許第2913005号;米国特許第5423209号)を得ている。図中Aは正面図であり、Bは一部断面側面図である。正面図Aに示したように中央部に総圧孔があり、ピラミッド形の4斜面にそれぞれ圧力孔群が設けられている。この特許発明は「先端部が多角錐台型をなしてその頂点に遮蔽孔を設け、該遮蔽孔の先端から遮蔽孔の径との関係で定まる一定長だけ入った位置に、孔径より小径の全圧管を配設固定すると共に、前記多角錐台型の各角錐面上にそれぞれ圧力孔を配置してなる多角錐台型ピトー管型ブローブが検出する各圧力情報を速度ベクトル演算処理器に入力して電気信号に変換し、該速度ベクトル演算処理器に予め記憶させておいた速度ベクトルに対する前記ブローブ各孔の圧力係数を用いて信号処理することによって、該圧力情報と空気密度からブローブ軸に対する飛行速度ベクトル(V、α、β)を算出すると共に、前記速度ベクトル演算処理器に姿勢方位基準装置の出力を入力させ、前記機体軸に対する飛行速度ベクトル情報に、姿勢方位基準装置からの情報を系合させることによって、対気飛行速度ベクトルを算出することを特徹とする多角錐台型ピトー管型ブローブを用いた飛行速度ベクトル検出システム。」である。このような構成を採ることによって、一つの多角錐台型ピトー管型ブローブ及び演算処理器で、従来の速度計、高度計、昇降計、マッハ計、ヨーメーターの機能を果たすことができ、検出装置を減らすことができると共に、これらの情報を系合させて出力表示でき、パイロットに信頼性の高い対気情報を提供することができる。また、速度変化における圧力係数の影響が小さく、複雑な補正を行う必要がなく、広角度範囲で精度良く速度ベクトル情報を得ることができ、高度のコンピュータを必要とすることなくヘリコプター等の垂直離陸機を含む一般の航空機から宇宙往還機を含む極超音速機まで、広範囲の飛行機に容易に搭載することができる。さらに、風向を検出する圧力孔の速度変化における圧力係数の影響が小さく、複雑な補正を行う必要がなく、広角度範囲で精度良く速度ベクトル情報を検出でき、且つ目詰まりや振動等による測定不良が発生するおそれもない、といった種々の優れた効果を奏する画期的な発明である。

【20】
以上のように本発明は、従来のように3次の方程式を解く必要がなく、マッハ数が準備されたルックアップテーブルから瞬時に割出せることと、迎角αと横滑り角βがやはり事前に準備されている圧力校正係数のマトリックス情報から即座に演算できることと相まって航空機における運行制御にリアルタイムで対応できる飛行速度ベクトル値が高精度・高更新率で確保でき、計測装置の機能向上が図られ、超音速実験機等へ搭載する飛行速度ベクトル計測システムとして寄与できるものである。

【3】
この四角錐台型5孔プローブのピトー管を用いた飛行速度ベクトル計測システムの演算処理器にROM化して採用されているマッハ数M(又は速度V)と角度算出に関する演算処理法には、当該プローブが圧縮性を受ず、高速演算処理を要求されない低速度域に適用したものと、低速から衝撃波を伴う超音速までの広速度域に適用したものとがある。前者の当該プローブが圧縮性を受けない低速度域の演算処理は、予め求めておいた迎角と横滑り角および速度に関する各圧力校正係数と、飛行時に得られる該5孔プローブの5つの圧力情報をもとに迎角αと横滑り角βおよび速度(動圧q)の3つのパラメータについてニュートン・ラフソン法(N-R法)を用いた繰り返し計算にて解く処理技術である。この技術は、前述した特許発明の明細書中に開示されており、HOPEの小型自動着陸実証機(ALFLEX)とNAL実験機への装備実績がある。

【4】
また、後者の該5孔プローブが低速から衝撃波を受けて超音速飛行する広速度域の演算処理方法に関しては、やはり本出願人が開発した5つの圧力情報を基礎データとし、はじめに何らかの処理方法を用いてマッハ数Mを決定し、求まったマッハ数Mに基づいて角度を決定する飛行速度ベクトル演算処理式が提示されている[特許第2884502号「四角錐台型5孔プローブを用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システム」]。この技術は、超音速風洞の気流計測へ適用した実績がある。

【5】
前記項の広速度域用の飛行速度ベクトル算出法には2通りあり、一つは多分割の速度域毎にマッハ数M算出式と各角度算出式を共に3次式の多項近似式に置いて直接解く方式であり、もう一つは途中のマッハ数算出の3次方程式の解法を省き、あらかじめ求めてある気流角圧力係数とマッハ圧力係数からマッハ数Mを計算してマッハ数テーブルを作成しておき、直接マッハ数を読むルックアップテーブル方式である。前記、マッハ数Mと角度を共に3次式から解く前者の方式のうち、マッハ数M算出は該5孔プローブが検出する5つの圧力情報を処理して得る総圧と四角錐台面上の4孔平均圧の差圧を総圧で無次元化して得るマッハ圧力係数CM、四角錐台面上4孔の上下差圧と左右差圧をそれぞれ総圧で無次元化して得る各圧力係数Cα、Cβをさらに処理して対気流角圧力係数Cγを得ておき、前記圧力係数CMから多分割の速度領域を決定し、速度領域の決定に伴い、速度領域毎に求めてある圧力校正係数と前記対気流角圧力係数Cγとを用いて、3次式のマッハ数算出の演算処理式を特定する。マッハ数Mは速度領域毎の該3次式を解いて適切な根を決定することにより求める。そして、角度の算出は、前記各圧力係数CαとCβと角度に対する各圧力校正係数とを用いて、同じく3次式の各角度α角・β角度に関する演算処理式を解くことで求める。ここで、各演算処理式は、マッハ数算出用・α角算出用・β角算出用とそれぞれに3次式であるため、それぞれに3つの根(3つの根がすべて実根、若しくは1実根と2虚根)が存在することになり、適切な根を選択するためには複雑な判別手法を用いることになる。

【6】
もう一つのルックアップテーブル方法は、マッハ数の決定に3次式を用いずに上記の5孔プローブを風洞に適用した校正風試時に得られる設定マッハ数Mと、該5孔プローブの角度α・β(気流軸に対するプローブの設定角度値)設定毎に得る5つの圧力情報からマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγを得ておき、該マッハ数M、対気流角圧力係数Cγ,マッハ圧力係数CMの3つのパラメータをもとに、横軸に対気流角圧力係数Cγ、縦軸にマッハ圧力係数CMから成る直交平面上にマッハ数Mをグラフ化したルックアップテーブル(図5参照)を構成し、前記対気流角圧力係数Cγとマッハ圧力係数CMを当てはめることでマッハ数Mを直接、決定できるものである。このルックアップテーブルは図5から分かるように速度領域毎に分割して作成されている。そして、気流角である迎角α・横滑り角βの算出は、このルックアップテーブルから得られたマッハ数Mと予め求めておいた迎角圧力校正係数Aijと前記マッハ圧力係数Cαとを用いて迎角αに関する3次式を立て、同様に前記マッハ数Mと予め求めておいた横滑り角β圧力校正係数Bijと前記マッハ圧力係数Cβとにおいて横滑り角βに関する3次式を立てて、該3次式を直接解いて適切な根を選択することにより迎角αと横滑り角βを求める方法である。この手法は、テーブル方式の適用によりマッハ数Mの算出は容易となったが、迎角α・横滑り角βという気流角算出には3次式を解き判別する作業が必要である。

【7】
一般に、低速から超音速までの広速度域で飛行できる航空機に搭載する飛行速度ベクトル計測システムの演算処理器は、圧力変換器・CPU・ROM・インタフェース等を含む構成であって、小型軽量であること、電磁環境に強いこと、また高精度すなわち信頼性と演算処理能力が高いことが求められる。さらに演算処理信号は外部接続の航空計器類と飛行制御装置に導入して大気外乱に対する能動制御へ役立たせるためリアルタイムで得られることが要求される。そのために、前記飛行速度ベクトル計測システムの既設の演算処理器による3次式解法を要する演算処理では十分でなく、新たな高精度・高速演算処理が可能な方法が必要とされている。ちなみに前記項の技術の適用は、基本的にN-R法を用いる演算のため測定精度を上げるのに繰り返し計算回数を増やす必要があり、高速処理は難しく高更新率の確保には不向きの手法である。また、項の技術は、前述したように、テーブル方式の適用によりマッハ数Mの割出しは容易となったが、α角・β角という気流角算出には3次式を解く必要がある。特に各精度を上げるために適用している多項近似式(3次式)を直接解くにも限度があり、3次式であることに基づき3つの根(3つの根がすべて実根、若しくは1実根と2虚根)が存在するために、適切な根の決定には複雑な判定アルゴリズムを必要とし、判定値を甘くすると測定精度に問題が生じることになる。高精度と高更新率を得るにはやはり限界がある。そこで、超音速飛行機まで適用できる飛行速度ベクトル計測システムとしては高信頼性・高精度・高更新率が得られる新しい演算処理手法が望まれていた。

【8】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的課題は上記の問題点を解決すること、すなわち四角錐台型5孔プローブのピトー管を用いた飛行速度ベクトル計測システムに適用する低速から超音速までの広速度域において、速度の大きさと気流角を示す飛行速度ベクトルと高度を示す静圧を、高精度で高更新率で演算処理することができる演算処理アルゴリズムを提供することと、小型軽量であり、電磁環境に強く、また高精度すなわち信頼性と演算処理能力が高い上に、前記アルゴリズムを演算処理装置に採用した高精度で高更新率で演算処理することができる飛行速度ベクトル計測システムを提供することにある。

【9】

【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するための本発明の演算処理方法は、迎角αと横滑り角βを求める近似式を既知数の迎角圧力係数Cα,横滑り角圧力係数Cβについての3次式の形とし、そしてその各係数をルックアップテーブルから瞬時に割出せるマッハ数Mについての多項式の形で表したものであり、該多項式の係数計算の基になる各校正係数をまず風洞試験において音速領域毎にテーブルとして記憶しておき、従来のように3次の方程式を解くことなく、多項式の係数計算と、迎角α及び横滑り角βの算出は近似式に既知数を入れて特定することで単純演算できるようにし、マッハ数がマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγを特定することでルックアップテーブルから瞬時に割出せることと相まって広速度域飛行速度ベクトル計測を高更新率で実行でき、航空機に求められるリアルタイム運行制御に対応できるものである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
4
【図4】
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