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明細書 :酸素濃度測定用の高機能感圧塗料および素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3380894号 (P3380894)
公開番号 特開2001-249076 (P2001-249076A)
登録日 平成14年12月20日(2002.12.20)
発行日 平成15年2月24日(2003.2.24)
公開日 平成13年9月14日(2001.9.14)
発明の名称または考案の名称 酸素濃度測定用の高機能感圧塗料および素子
国際特許分類 G01N 21/64      
G01N 21/78      
FI G01N 21/64 B
G01N 21/64
G01N 21/78
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願2000-061625 (P2000-061625)
出願日 平成12年3月7日(2000.3.7)
審査請求日 平成12年3月9日(2000.3.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501137577
【氏名又は名称】独立行政法人 航空宇宙技術研究所
発明者または考案者 【氏名】浅井 圭介
【氏名】大倉 一郎
【氏名】西出 宏之
個別代理人の代理人 【識別番号】100084607、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 文男 (外2名)
審査官 【審査官】横井 亜矢子
参考文献・文献 特開 平5-249036(JP,A)
特開 昭59-170748(JP,A)
特開 昭61-178646(JP,A)
特開 平11-194094(JP,A)
特開 平11-37944(JP,A)
調査した分野 G01N 21/62 - 21/83
特許請求の範囲 【請求項1】
光励起物質とバインダを溶剤を用いて混合した塗布式の酸素濃度測定用の感圧塗料において、バインダとしてポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](以下poly(TMSP)と表記する。)を用い、前記溶剤としてトルエンを用いたことを特徴とする酸素濃度測定用の高機能感圧塗料。

【請求項2】
上記光励起物質は、発光色素であることを特徴とする請求項1の酸素濃度測定用の高機能感圧塗料

【請求項3】
上記請求項1あるいは請求項2の感圧塗料を基板上に塗布し固化させたものであることを特徴とする酸素濃度測定用の高機能感圧素子
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【産業上の利用分野】本発明は、高い圧力感度を持つ酸素濃度測定用の高機能感圧塗料および素子に関する。

【10】
低温風洞実験
窒素ガスを作動流体とする低温風洞実験として、温度100K(-173℃)において、酸素濃度5~1000ppmの範囲の試験を行った。結果を図3に示す。上図(a)は酸素濃度が952ppmの場合に対する出力比であり、下図(b)は円弧翼模型における圧力分布の測定例である。横軸はCCDカメラのピクセルで表した模型上の位置を示す。液体窒素温度でも酸素感度を保ち、下図(b)では翼面上で発生した衝撃波が捕らえられていることからも明らかなように、低温風洞での圧力計測に十分に使用可能である。

【11】
圧力応答試験
常温において、真空から大気圧へのステップ状の圧力変化に対する応答を測定した。結果を図4に示す。上図(a)は本発明の感圧塗料の光電子増倍管による出力、下図(b)は参照のための半導体式圧力センサーの出力である。これによれば、従来の感圧塗料においては、塗料層内における気体の拡散速度が遅いので、数秒の遅れ時間が生じていたのに対し、本発明の感圧塗料を用いたセンサーには圧力のステップ状変化に対する応答の時間遅れがないことが明らかである。

【12】

【発明の効果】上記のように、本発明の感圧塗料は、最適なバインダを選択したことにより、圧力感度は顕著に高く、温度感度は極めて小さく、液体窒素温度でも酸素感度を保つだけでなく、圧力変化に対する応答の時間遅れがない、従来に例を見ない高機能感圧塗料を得ることが出来た。その結果、液体窒素温度のような低温風洞での圧力計測に十分に使用可能であり、しかもスプレーコーティングなどの方法による塗装可能な、使いやすい塗料となり、酸素センサーが容易に作ることが出来るものとなった。また、実施例中では、センサーはガラス基板のすりガラス部分にキャストして自然乾燥し、あるいはアルミ板にエアブラシで吹き付け塗装したものとして説明したが、これらの基板を用いず、感圧塗料自体を固化してセンサーとすることもできる。

【2】

【従来の技術】従来、酸素センサーとして知られている酸素感応塗料は、酸素消光性を有する光励起物質を、塩化ビニル、ポリスチレン等の酸素透過性樹脂に溶かしたものであった。この塗料を母材に塗布して酸素センサーとするが、この塗料を用いたセンサーにおいては、光励起物質と酸素の接触は樹脂内の酸素の拡散現象に依存するため、酸素感度が温度に依存したり、圧力変動に対する時間応答性が悪いという問題があった。また、低温においては、樹脂の酸素透過性が低下するため、感度が極めて小さくなり、高層大気環境での微量酸素検出、物体表面での微小圧力測定や低温風洞での供試体の表面の圧力分布測定等に利用することは出来なかった。

【3】
このため、本発明者は、先に光励起物質を樹脂中に分散させるのではなく、直接に酸素に接触させるため、センサー母材表面に多孔質膜を形成し、この多孔質膜中に直接光励起物質を吸着保持する方法と、この方法を用いて作成したセンサーを提案した(特開平11-37944号)。この方法によるセンサーは、高い感度を有し、低温での感度の低下も少ない極めて優れたものではあったが、多孔質膜の形成に適したセンサー母材が限られること、多孔質膜に光励起物質を吸着させる操作が、どのような供試体においても容易であるとは云えないことなどの問題も残されていた。

【4】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、速い時間応答性と極低温でも低下しない高い酸素感度を有しながら、供試体の材質によらず容易に酸素感応膜の形成が可能な高機能感圧塗料を得ようとするものである。

【5】

【課題を解決するための手段】本発明の高機能感圧塗料は、光励起物質のバインダとしてポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](以下 poly(TMSP) と表記する。)を用い、溶剤としてトルエンを用いたことを特徴とする。本発明者は研究の結果、バインダとしてpoly(TMSP)を用い、これに光励起物質を混入した塗料は、バインダが高い酸素透過率を持つことにより、また、その高い透過性が温度に依存せず、低温でも高いままに保たれることにより、高い圧力感度と、小さい温度感度を併せ持ち、液体窒素温度でも酸素感度を失わないだけでなく、圧力変動に対する応答性がよく、しかもスプレーコーティングが可能なので、供試体の材質、形状にかかわらず塗装が可能であるという、極めて優れた高機能感圧塗料およびこれを用いた感圧素子を得たものである。

【6】

【発明の実施の形態】より具体的には、本発明においては、バインダの選定が重要であり、他の点では従来法において使用されていた色素、励起法、測定法が広く利用できる。すなわち、光励起物質としてはPlatinum Octaethylprophyrin ( 略記:PtOEP)、Platinum Tetrakis (Pentafluorophenyl) porphyrin ( 略記:PtTFPP) などの金属ポルフィリンRu(bpy)32+、Ru(dpp)32+などのルテニウムやオスミウムなどの遷移金属錯体などの発光物質が色素として使用できる。また、光源としてはキセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザー、発光ダイオードなど、色素の吸収スペクトルに一致する各種の光源が使用可能である。測定は、連続光励起による蛍光強度の測定によってもよく、また、パルス光励起による蛍光寿命の測定によってもよい。また、溶剤としては、比較的揮発性の遅いトルエンを用いる。

【7】

【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。センサーは、色素としてPtOEP 、バインダとしてpoly(TMSP)、溶剤としてトルエンを用い、色素/バインダ/溶剤=2.5mg/0.5g/50ccの割合に混合して感圧塗料を調整した。この塗料をプレパラートのすりガラス部分にキャストして自然乾燥、あるいは表面を荒らしたアルミ板にエアブラシで吹き付け塗装して、センサーとした。

【8】
酸素感度試験
常温下、酸素濃度を0~100%に変化させた酸素/アルゴン混合気の表面吹き付けにより、酸素感度試験を行った。分光蛍光光度計を用いた測定結果を図1に示す。横軸は発光波長であり、縦軸は発光強度の相対変化を示す。酸素分圧の上昇と共に発光強度は急速に低下し、アルゴン雰囲気下と酸素雰囲気下の発光強度比は約476を示している。従来得られている例えばポリスチレンをバインダとする塗料の強度比は4.5であるので、酸素感度は顕著に高くなっている。

【9】
圧力・温度感度試験
励起光源として高安定Xeランプ(バンドパスフィルタ400±50nmを使用)を用い、観測は650±20nmのバンドパスフィルタを通して冷却CCDカメラにより、圧力は真空~大気圧、温度は摂氏0~60度の範囲で測定した。温度を一定として圧力を変化させたときの結果を、従来から使用されているポリスチレンをバインダとして使用したセンサーと対比して、図2に示す。圧力感度係数は約0.95を示している。これは従来の塗料の0.6~0.8という値に対して顕著に高くなっている。温度感度は-0.3%/℃程度であり、従来のものの-2%/℃程度に比して極めて小さい。
図面
【図1】
0
【図4】
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【図2】
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【図3】
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