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明細書 :航空機用超音波式対気速度センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3574814号 (P3574814)
公開番号 特開2001-278196 (P2001-278196A)
登録日 平成16年7月16日(2004.7.16)
発行日 平成16年10月6日(2004.10.6)
公開日 平成13年10月10日(2001.10.10)
発明の名称または考案の名称 航空機用超音波式対気速度センサ
国際特許分類 B64D 43/02      
B64B  1/06      
G01P  5/00      
FI B64D 43/02
B64B 1/06
G01P 5/00 B
G01P 5/00 J
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2000-090200 (P2000-090200)
出願日 平成12年3月29日(2000.3.29)
審査請求日 平成12年3月29日(2000.3.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503361400
【氏名又は名称】独立行政法人 宇宙航空研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】井之口 浜木
個別代理人の代理人 【識別番号】100110515、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 益男
【識別番号】100092200、【弁理士】、【氏名又は名称】大城 重信
【識別番号】100084607、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 文男
審査官 【審査官】小山 卓志
参考文献・文献 特開昭55-156877(JP,A)
特開平06-064592(JP,A)
特開平10-227808(JP,A)
特開平05-215761(JP,A)
調査した分野 B64D 43/02
B64B 1/06
G01P 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
軸芯が三角形の各頂点に位置すると共に軸方向が航空機の前後方向に向くように機体に取り付けられた3本の平行若しくは等しい若干の開き角をもった支持棒上に、複数個の超音波送受信機を支持棒上軸方向に位置を異ならせて配備し、隣接する支持棒上の前記超音波送受信機との組合せで複数組の超音波送受信経路が形成されるようにし、3次元情報としての対気速度を得る航空機用超音波対気速度センサ。
【請求項2】
機体の前後方向に直交する面における支持棒の軸芯位置を結ぶ三角形が正三角形であって、超音波送受信機は前記支持棒の軸方向に直交する2つの面において各支持棒上2個づつ配備し、隣接する支持棒上の前記超音波送受信機のうち一方が前方配置されたものであるとき他方は後方配置されたものとの組合せで3組の超音波送受信経路が形成されるようにした請求項1に記載の航空機用超音波対気速度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の航空機用超音波対気速度センサと対地速度計測手段とを備え、前記航空機用超音波対気速度センサによって検出した対気速度情報から対地速度情報を減ずることにより該当位置における風速を検知するシステム。
【請求項4】
成層圏プラットフォーム用飛行船に請求項1又は2に記載の航空機用超音波対気速度センサを搭載し、該飛行船が風によって受ける力を前記航空機用超音波対気速度センサによって検出し、それを消去させるような運転制御を実行して飛行船を一定位置にとどめる飛行船制御システム。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対気速度計測に関するものであり、特に低速航空機に適した対気速度計測に関するものである。対気速度とは物体に対する3次元的な気流の方向および速さを表す。低速航空機とは、短距離離着陸機、垂直離着陸機、回転翼機、飛行船、気球などである。
【0002】
【従来の技術】
通常、航空機で使用されているピトー管は、空気の総圧及び静圧を測定して、その差の動圧から対気速度を求めるものであって、気流方向は矢羽根等により測定される。ところで、ピトー管で測定される動圧は、対気速度の2乗に比例する関係にあるために、低速では測定誤差が大きくなってしまい、ピトー管は低速域の速度計測には適していない。ピトー管が利用できる速度は通常、30~40m/s以上の領域である。それより低速であるとか、気流方向が機体軸線と大きく異なる場合には、速度測定自体が不可能となる。そして、気流方向を測定するための矢羽根は、可動部分があるため矢羽根の質量による応答性の低下や振動が問題となってくる。したがって、対気速度センサとしてピトー管を搭載している一般の航空機は、低速域での対気速度計測値は測定誤差が大きいかあるいは測定が出来ないということになっている。
【0003】
これに対して気象観測に用いられている超音波風速計は、一定区間を伝搬する超音波の伝搬時間が、風の影響で変化することを利用したもので、全方位的に所定の間隔で配設された複数個(一般には6個)の超音波送受信器は平面上のあらゆる方位の風を測定することが出来る。しかし、超音波送受信機同士の空気力学的干渉により、強風時の測定は困難で、航空機搭載が可能な大きさのものでは20m/s以下、地上設置用の大型装置でも60m/s以下が測定可能領域である。この測定可能領域では航空機に利用するには高速側の計測範囲が充分とはいえず、気象観測用の超音波風速計は、航空機に搭載する対気流速計測器には適していない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的課題は、上記の問題点を解決するもの、すなわち弱風の測定に適し可動部が存在しない超音波風速計のセンサ・ブローブを改良して低速領域の計測が可能である航空機用の対気速度計測装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
航空機の前方方向に向けその軸芯が三角形の各頂点に位置するように機体に取り付けられた3本の平行な支持棒上に、複数個の超音波送受信機を軸方向に位置を異ならせて配備し、隣接する支持棒上の超音波送受信機との組合せで複数組の超音波送受信経路が形成されるようにし、所定距離の前記複数組の超音波送受信経路を伝搬する時間情報から対気速度に関する3次元情報を得る。
【0006】
【発明の実施の形態】図1は、超音波風速計の原理を示す図である。超音波が空気中を伝搬する場合、超音波が風と順方向に伝搬するときは、風速分だけ伝搬速度が速くなり、逆方向のときは風速分だけ伝搬速度が遅くなる。したがって、距離を速度で割った関係にある超音波の伝搬時間と風速との関係は以下の式の通りになる。
【数1】
JP0003574814B2_000002t.gifただし、V: 風速D:超音波送受信機の間隔
: 風速に順方向の超音波の伝搬時間
: 風速に逆方向の超音波の伝搬時間
【0007】
従来、気象観測用の超音波風速計は全方位の風速を等しい精度で検出する必要から、6個の超音波送受信機を6本の支持棒に取りつけていたため形状が複雑となり、空気力学的騒音や気流の乱れによる指示棒の振動が生じやすかった。しかし、一般的に航空機は1方向にのみ高速で飛行し、他の方向は飛行できないか、または非常に低速で飛行する。したがって、航空機用対気速度センサとしては、あらゆる方位の気流が同じように測定できる必要はなく、比較的高速域が測定できるのは1方向のみでよい。したがって、1方向の気流の計測を重視する観点から超音波風速計で必要な6個の超音波送受信機の配列を工夫すると共に、装置の全体形状を単純化し、空気力学的騒音や気流の乱れを低減させることを考えた。特に、超音波送受信機の上流に物体があると、気流の乱れの影響を受けやすいため、1方向の気流を重視して、送受信機の上流に気流の乱れを生じさせる構造物を配置しないようにすることは重要である。
【0008】
図2と図3を参照して本発明の基本原理を説明する。図2はプローブ形状を示したもので、Aは前方からの正面図であり、Bは側面図である。基部1に3本の支持棒11、12、13を軸が互いに平行で軸芯が三角形の各頂点に位置するように植設し、その先端部は流線形状としている。このプローブ形状は超音波計測の安定性確保の観点から航空機の主たる検出成分となる流速方向が機体前方からの軸方向と一致する気流に対し最も気流に乱れを生じさせないようにすることを考慮して案出したものである。本発明は航空機の対気速度計測に用いるものであるから、前述したように機体に対して流速方向は前方から後方に向かう成分が主となる。したがって、その成分を検出するために超音波送受信機は前後方向に位置を違えた配置を必須とするが、必ずしも別個の支持部材に設置する必要がないことに鑑み、本発明者は気流を乱す原因となる支持部材の数を極力少なくするため同じ支持棒に複数個の超音波送受信機を設置することを考えた。そして超音波送受信する複数組の伝搬経路を形成させて気体の流速成分が重畳される伝搬時間情報を基にその気体の流速成分を3次元情報として計測するものである。具体的には従来の超音波風速計の6個の超音波送受信機を図3に示したような形態、すなわち、プローブの取り付け方向として支持棒11、12、13の軸方向が航空機の前後方向に向くように機体に固定し、この支持棒11、12、13に超音波送受信機1a、1b、2a、2b、3a、3bを各支持棒上に軸方向所定距離間隔Lをもたせて2個ずつ配備し、隣接する支持棒上の前記超音波送受信機のうち一方が前方配置されたものであるとき他方は後方配置されたものとの組合せで3組(1a-2b、2a-3b、3a-1b)の超音波送受信経路が形成されるようにした。機体の前後方向の異なる位置に配置された超音波送受信機間で超音波送受信経路が形成されているので、機体の前後方向の成分の流速が検知できるのである。しかもこの方向の気流に対してはプローブの支持棒11、12、13が最も抵抗が少ない構造となっているため、流れの状態が安定して精度の良い計測ができる。なお、図3では各支持棒上の2つの超音波送受信機を軸方向同じ距離間隔Lで配置したが、原理上は各支持棒とも既知の値であればよく必ずしも同じ間隔にする必要はないのであるが、同じであることは信号処理の演算上簡便で有利である。また各支持棒の軸芯が作る三角形も正三角形であることが対称構造となってやはり信号処理の演算上簡便で有利である。
【0009】
上記のような機体に対する超音波送受信機の配置構成により、3次元的な対気速度を求めることが出来る。そしてこの配置は矢印で示した方向の流速計測を最も重視したものである。図3のように機体の前後方向にX軸を、左右方向にY軸をそして上下方向にZ軸の直交座標系を定義し、対気速度のXYZ成分をVx、Vy、Vzとすると、計測される各組の超音波送受信機間の超音波伝搬方向の気流の速度成分、すなわち2a-3b間の速度成分W、3a-1b間の速度成分W、1a-2b間の速度成分Wは、それぞれ以下の式で表される。
【数2】
JP0003574814B2_000003t.gifただし、Vx:対気速度のX方向成分
Vy:対気速度のY方向成分
Vz:対気速度のZ方向成分
:気流の超音波送受信機方向(経路1)の速度成分
:気流の超音波送受信機方向(経路2)の速度成分
:気流の超音波送受信機方向(経路3)の速度成分
θ:YZ面とWとの成す角
θ:YZ面とWとの成す角
θ:YZ面とWとの成す角
φ:YZ面内でのY軸とWとの成す角
φ:YZ面内でのY軸とWとの成す角
ここで仮に各センサの配列を正三角形、つまりφを240度、φを120度とし、さらにθ=θ= θ=θ とすると、
【数3】
JP0003574814B2_000004t.gifとなり、この演算式によって対気速度を求めることが出来る。
【0010】
前後配置した2つの超音波送受信機の所定距離間隔Lが支持棒11、12、13間の距離Dより大きければ、伝搬経路方向に近い流速成分ほど往復の伝搬時間差が大きくなる原理に基づき、対気速度計測において航空機の前方からの流速成分に対し感度がよくなるため、その成分の検出に有利となる。Lの値を大きくするということはθの値を大きくすることであるが、その場合超音波送受信機のユニットを大きく傾斜させて支持棒に設置する必要があり、そのことが構造的に気流の乱れを起こす原因になってしまうため好ましくない。実際にはθの値は30度以下としているため、機体軸に直交する方向の成分の方が検出感度が高いのであるが、反面その方向の気流に対しては支持棒が気流を乱す構造となるため検出結果としてS/N比は低くなってしまう。本発明が対象としている低速航空機に適した対気速度計測には2つの超音波送受信機の所定距離間隔Lが支持棒11、12、13間の距離Dより小さくても十分に対応できるのである。
【0011】
【実施例】
以下では、回転翼機における対気速度計測用に製作した例を図4に示し、本実施例について詳述する。一般的な回転翼機では前進方向の対気速度が最大80m/s程度で、それ以外の方向、例えば上下左右に飛行する場合の速度は極低速である。対気速度40m/s以上の高速域では、従来のピトー管が充分使用可能なため、本発明と併用、または選択的に利用することが出来る。さて、本実施例は3つの支持棒11,12,13の軸が基体1の軸に対し平行ではなく、図に示されたように等しい若干の開き角をもって取付けられている。これは回転翼機において高速状態すなわち強い気流を受けるのは前方方向に限られるため、それに対して構造的に強い必要があることと、気流を乱す構造的ではあるが、その際の気流の乱れは後流として生じるため超音波伝搬路には影響が少ないことを勘案して想到したものである。ちなみにこの実施例では超音波送受信機2a-3b、3a-1b、1a-2b間の伝搬経路長は50mm、θ角は20度とした。また、使用される超音波の周波数は200kH である。
【0012】
図5は、回転翼機に本実施例によるセンサを設置搭載した例を示す。回転翼機は、前進速度が他の方向に卓越して大きくしかもメインロータRの吹下しという現象を伴う。したがって、対気流計測においてその影響を避けるため、センサSはメインロータの先端よりも前方に位置するように機体前方方向に一致する長いロッド状の基体1の先端に支持棒11,12,13が取り付けた形態で搭載される。これを用いて回転翼機の最高速度(140kt≒70m/s)までの使用が確認できた。
【0013】
以上本発明のセンサを低速航空機に適用し対気速度計測に用いるものとして説明してきたが、本発明よるセンサはこれに限らず、もし低速航空機に慣性計測装置など適宜の計測器が備えられ、それにより対地速度が計測されれば、図5にベクトルで示したように、本発明の検出値である対気速度情報Vから対地速度分Vを減じることにより、低速航空機の飛行位置での風速Wを求めることもできる。更に、これを成層圏プラットフォーム用飛行船に適用した場合には、飛行船が風によって受ける力を本発明の航空機用超音波対気速度計によって検出し、それを消去させるような運転制御を実行して飛行船を一定位置にとどめる飛行船制御システムを実現することもできる。
【0014】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、超音波風速計のセンサ・ブローブを前方方向からの気流に対して乱れを生じにくい形状に改良し、かつ複数個の超音波送受信機を基体の前後方向に位置を異ならせて配置する形態で低速航空機に搭載するものであるから、従来のピトー管では不可能であった航空機の低速度領域の対気速度計測が可能となる。本発明を操縦用計器に適用すれば、その結果として低速飛行時の速度表示が従来より高精度となり、航空機の飛行安全性を向上させることができる。また、慣性計測装置など適宜の計測器により対地速度が計測されれば、その位置での風速を割出すことができ、空中の特定位置の風を計測することもできる。更に、これを成層圏プラットフォーム用飛行船に適用した場合には、飛行船を一定位置にとどめるための制御用センサとしても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な超音波風速計の原理説明図である。
【図2】本発明による対気速度センサプローブの形状であり、Aは前方からの正面図であり、Bは側面図である。
【図3】本発明による対気速度センサでの対気速度測定原理図である。
【図4】本発明による対気速度センサを回転翼機用に具体化した実施例を示す図である。
【図5】本発明による対気速度センサを回転翼機に設置搭載した例を示す図である。
【符号の説明】
W 伝搬速度 L 支持棒上の超音波送受信機距離
V 風速 D 超音波伝搬距離
C 音速 S センサ・プローブ
1 基体 11,12,13 支持棒
a,b,1a,1b,2a,2b,3a,3b 超音波送受信機
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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